がん研スタイル

腹腔鏡下大腸切除術

腹腔鏡下大腸切除術

■監修 山口 俊晴

■編集 福長 洋介

定価 14,300円(税込) (本体13,000円+税)
  • A4判  120ページ  オールカラー,イラスト270点
  • 2013年3月26日刊行
  • ISBN978-4-7583-1500-5

がん研で培われた大腸がんの知識をすべて集約した腹腔鏡下手術を,多くのイラストで解説

本書は,がん研の歴史の中で培われた大腸がんの知識・手術法のすべて集約した,がん研スタイルの腹腔鏡下手術を解説する手術書である。腹腔鏡下手術を行うための基礎となる大腸の鏡視下解剖を含め,手術の手順・ポイントを多数のイラストで解説した。


序文

 「がん研スタイル腹腔鏡下大腸手術」がついに上梓された。姉妹編である「がん研スタイル腹腔鏡下胃切除術」が2011 年に刊行されてから,1 年以上が経過したが,多くの読者の支持を得て類書としては成功を収めた。本書も広く受け入れられることを確信している。胃切除術は福永哲,比企直樹の2 名が丹念に作り上げた。今回の大腸手術は,上野雅資部長のもと福長洋介医長が中心となり,長山聡,藤本佳也,小西毅,秋吉高志が多忙な診療の合間に作り上げた。執筆者が多いから楽であったというわけではなく,がん研外科としての手術書として統一性を図るという点では,胃手術とは違った難しさがあったものと推察される。しかし,出来上がったものを見ると,そこにはがん研外科としての理念がみごとに貫かれていることが感じられる。それは,梶谷鐶先生以来受け継がれてきたがん研外科のスピリッツともいうべきもので,どんな困難があっても逃げずに癌に挑戦し続ける覚悟と,常に新しい工夫を求める精神であると言い換えることもできよう。
 手術手技の標準化は,腹腔鏡下手術が普遍化するために重要なポイントであるが,一方で手術がart であるとしたら,各術者の個性も同様に尊重されるべきであろう。その点でも,本書は標準的であるべきところは画一的であっても,それぞれの担当者の個性は十分に生かされている。編集責任者の福長医長の努力と,がん研大腸外科グループの良好なチームワークのなせる業であろう。がん研大腸外科グループのスタッフは,一人当たり年間120 例ほどの手術を担当する。また,消化器外科の上部消化管グループや肝胆膵グループとは朝の7時半から術前術後カンファレンスを開いている。その他に内視鏡,化学療法,放射線治療の専門家とともに大腸カンファレンスを開催し,がん研有明病院としての大腸癌の治療方針が統一されている。判断の難しいものは,消化器センターのスタッフが集まる“消化器Cancer Board”で十分に検討が行われ,コンセンサスが得られたうえで治療方針が決定する。担当医の独断によらない,透明性の高いチーム医療が行われてきたことが,はからずも本書の統一性をもたらしたのではないかと考えている。
 上部消化管では食道,下部消化管では低位直腸の手術は,開腹手術のほうが視野の確保は難しく,むしろ鏡視下手術のほうが優れた視野が得られていることは明らかである。触診できない点は鏡視下手術の欠点ではあろうが,開腹で視野の不良な部位を手探りで行うほうが罪は重い。手術助手,介助の看護師と常に同一の視野を確保しながら行う鏡視下手術は,質の高い安全な手術の実現に不可欠のものとなった。本書がさらに,腹腔鏡下手術の正しい普及に貢献することを祈っている。
 「写真よりもわかりやすく,しかも美しい図譜」が完成した。本書の解剖に関する部分は10 年以上色あせることなく役立つものと期待されるが,吻合技術や使用するデバイスは年々進歩しており,3 年持てばよいのではないかと考えている。3 年後に,どのような執筆者により,どのような進歩が追加されるのか今から楽しみである。
 最後にがん研外科に腹腔鏡手術を導入することを支持していただいた,武藤徹一郎元院長,がん研大腸外科に腹腔鏡下手術を実際に導入し,今日在籍する大腸外科スタッフ全員の指導に貢献した,元がん研大腸外科黒柳洋弥先生(現虎の門病院消化器外科部長)に深くお礼申し上げる。また,前回に引き続き執筆者と協力して,素晴らしい図譜を書いていただいたトキア企画(株)の野村憲司氏と今牧良治氏,本書の企画を担当された中村正徳氏と宮澤進氏にもお礼申し上げる。

2013 年1月
山口俊晴
公益財団法人がん研究会有明病院,副院長,消化器センター長
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目次

Ⅰ.総論
  腹腔鏡下大腸切除術を行うために  福長洋介
Ⅱ.各論
 1 右側結腸切除術
  後腹膜剥離先行内側アプローチ(inferior approach)  藤本佳也
  内側アプローチ  福長洋介
 2 横行結腸切除術  長山 聡
 3 左半結腸切除術  秋吉高志
 4 S状結腸切除術  上野雅資
 5 直腸低位前方切除術  小西 毅
 6 消化管再建
  体外操作
   機能的端端吻合  小西 毅
   三角吻合  福長洋介
   経肛門手縫い吻合(intersphincteric resection;ISR)  秋吉高志
  体内操作
   DST(double stapling technique)  小西 毅
   反転DST(double stapling technique)吻合  藤本佳也
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