中澤 誠編集 ビジュアルスタイル
先天性心疾患
血行動態と心機能の基礎知識
定価 6,600円(税込) (本体6,000円+税)
- B5判 152ページ オールカラー,イラスト300点
- 2016年3月3日刊行
- ISBN978-4-7583-1428-2
序文
先天性心疾患の診療には血行動態の理解が欠かせないが,肺体血流比,圧較差,あるいは拡張末期圧などはわかるが,それ以上のことはなかなか難しいとの声を聞く。その理由を考えると,先天性心疾患では,種々の構築異常を基に,発達途上の心臓血管機能,心内血流動態,呼吸機能,患者身体の成長発達などが,複合相互的に作用しており,同じ臨床指標であっても解釈が異なることがある。そこで,それらの理解が少しでも容易になるように,可能な限り図を多くした企画として本書を編集執筆した。
総論では病態の基礎の解説を目指し,まずは総論1において,発達的見地から心筋特性,心室機能の変化の一端を示し,先天性心疾患で主たる病態である容量負荷・圧負荷に対する心筋心室の反応の基礎,心膜の心室機能への影響について概観した。総論2は血管血流を扱った。心臓は血管との相互作用のなかで機能している。そのため,血管と血流の特性は,循環異常の正確な把握と適正な治療の基礎となるので,多少,難解な点もあろうが,コンセプトをある程度単純化して示した。事項によっては単純化しすぎているものもあり,さらなる理解は,より詳細な書物なり文献にあたって欲しい。総論3では血行動態指標を得る方法とその解釈については示した。出てきたデータをそのまま鵜呑みにすると,時として患者の状態の正しい理解に繋がらない。目の前のデータがいかなる特性のもとに得られたのか,そのデータのpit fallはいかなるものか,を知ってもらいたい。
各論では,疾患を網羅的に示すのではなく,血行動態的に代表的な疾患について図示した。比較的まれで類似の血行動態の疾患については代表例から演繹して欲しいと考えている。さらに,手術の影響については,術直後の血行動態変化が治療上重要と考え,主に急性変化を示した。本書が先天性心疾患の病態把握とより適切な治療に,また,患者サイドへの説明にも役立てば編集者としては望外の喜びである。
最後に,これまでともに働いてきた諸氏,指導応援を賜った方々に深謝します。また,私の現所属施設の渡邉一夫理事長の支援に心から感謝いたします。そして,本書の企画をくださったメジカルビュー社の吉田富生氏,編集者の無理な注文に我慢強く耐えて編集作業を担当された高橋範子氏に深謝します。
平成28年1月
総合南東北病院小児・生涯心臓疾患研究所所長
東京女子医科大学名誉教授
中澤 誠
総論では病態の基礎の解説を目指し,まずは総論1において,発達的見地から心筋特性,心室機能の変化の一端を示し,先天性心疾患で主たる病態である容量負荷・圧負荷に対する心筋心室の反応の基礎,心膜の心室機能への影響について概観した。総論2は血管血流を扱った。心臓は血管との相互作用のなかで機能している。そのため,血管と血流の特性は,循環異常の正確な把握と適正な治療の基礎となるので,多少,難解な点もあろうが,コンセプトをある程度単純化して示した。事項によっては単純化しすぎているものもあり,さらなる理解は,より詳細な書物なり文献にあたって欲しい。総論3では血行動態指標を得る方法とその解釈については示した。出てきたデータをそのまま鵜呑みにすると,時として患者の状態の正しい理解に繋がらない。目の前のデータがいかなる特性のもとに得られたのか,そのデータのpit fallはいかなるものか,を知ってもらいたい。
各論では,疾患を網羅的に示すのではなく,血行動態的に代表的な疾患について図示した。比較的まれで類似の血行動態の疾患については代表例から演繹して欲しいと考えている。さらに,手術の影響については,術直後の血行動態変化が治療上重要と考え,主に急性変化を示した。本書が先天性心疾患の病態把握とより適切な治療に,また,患者サイドへの説明にも役立てば編集者としては望外の喜びである。
最後に,これまでともに働いてきた諸氏,指導応援を賜った方々に深謝します。また,私の現所属施設の渡邉一夫理事長の支援に心から感謝いたします。そして,本書の企画をくださったメジカルビュー社の吉田富生氏,編集者の無理な注文に我慢強く耐えて編集作業を担当された高橋範子氏に深謝します。
平成28年1月
総合南東北病院小児・生涯心臓疾患研究所所長
東京女子医科大学名誉教授
中澤 誠
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目次
総論
1.心機能の基礎 中澤 誠
心筋機能:1
興奮・収縮連関
心筋機能:2
フランク・スターリン機構
心室機能:1
左室のフランク・スターリン機構
心室機能:2
右室と左室の相互作用
心室機能:3
右室と左室の相互作用
心室機能:4
発達〜成熟の影響:発達途中の心室は硬い
収縮期負荷(圧負荷)への心室の反応
圧負荷に対する筋原線維の増加
拡張期負荷(容量負荷)への心室の反応
容量負荷に対する筋原線維の増加
左室の後負荷心および前負荷心での壁応力
心膜の影響
2.血行動態の基礎 村上智明
血流と血圧:1
血流と血圧:2
位置エネルギーと運動エネルギー:1
位置エネルギーと運動エネルギー:2
位置エネルギーと運動エネルギー:3
圧反射:1
圧反射:2
Stress-velocity 関係
3.心臓カテーテル検査および超音波検査 青墳裕之
カテーテル検査による圧波形:1
カテーテル検査による圧波形:2
カテーテルを挿入しにくい場合の左房圧,肺動脈圧推定法
心拍出量の求め方:1
心拍出量の求め方:2
心拍出量の求め方:3
熱希釈法およびその他の方法
肺循環動態評価の重要な指標
肺血流量,肺体血流量比,肺血管抵抗の評価:1
肺血流量,肺体血流量比,肺血管抵抗の評価:2
心室容積の計測法:1
心室容積の計測法:2
心室容積の体格を考慮した評価法と容積評価の意義
超音波法による一次元的計測:1
超音波法による一次元的計測:2
超音波断層法を用いた小児における左室容積の正常値
ドプラを用いた血流速度からの圧差推定
大動脈弁狭窄,肺動脈弁狭窄
TEI index
組織ドプラの有用性
超音波検査による右室圧,肺動脈圧評価
下行大動脈血流パターン
ドプラエコーを用いた流量計測
連続の式:continuity equation
僧帽弁狭窄重症度の評価
各論 中澤 誠
1.短絡性心疾患 ①主として左右短絡性心疾患
心室中隔欠損症
欠損部位による短絡動態の違い
短絡量の規定因子
心室中隔欠損症+肺高血圧症での瞬時的な短絡血流
術後早期
術後早期肺高血圧クリーゼ(PH Crisis)
心室中隔欠損症+心房間交通(ダブルシャント)
心房中隔欠損症
二次孔欠損
術後早期
部分肺静脈還流異常
右肺静脈が右房に直接還流している例
術後
心房中隔欠損症(不完全型房室中隔欠損)
一次孔欠損
術後
完全型心内膜床欠損(完全型房室中隔欠損)
術後
大動脈肺動脈短絡
動脈管開存症
大動脈肺動脈中隔欠損(窓)
右肺動脈上行大動脈起始
閉鎖術後(動脈管開存例)
Valsalva洞動脈瘤破裂
右房へ
右室へ
1.短絡性心疾患 ②主として右左短絡性心疾患
Fallot四徴症
低酸素発作
肺動脈閉鎖+主要大動脈肺動脈側副動脈(MAPCAs)
肺動脈弁欠損
大動脈肺動脈短絡術後
心内修復術後,早期
心内修復術後,長期
心室中隔欠損+肺動脈閉鎖:Rastelli術後
完全大血管転位症
Ⅰ型
Ⅱ型
Ⅲ型
大動脈スイッチ術後
Ⅲ型:Rastelli術後
心房内スイッチ術・術後
両大血管右室起始
病型
大動脈弁下心室中隔欠損,肺動脈狭窄なし(VSD+PH型)
大動脈弁下心室中隔欠損+肺動脈狭窄(TF型)
肺動脈弁下心室中隔欠損,肺動脈狭窄なし(TGA型)
総肺静脈還流異常症
上心臓型
傍心臓型
下心臓型
総肺静脈還流異常症の防御的肺動脈収縮
術後
純型肺動脈閉鎖(心室中隔欠損症のない肺動脈閉鎖)
弁性閉鎖+細い動脈管開存
弁性閉鎖+太い動脈管開存
強い三尖弁閉鎖不全合併(Ebstein病合併)
冠動脈の異常
二心室修復術後
肺動脈閉鎖+心室間交通
両大血管右室起始
左室性単心室(L-loop型)
三尖弁閉鎖
Keith-Edwards分類
肺動脈狭窄(Ⅰb型)
肺血流増加
大動脈縮窄合併例(Ⅱc型)
Fontan型手術後(1)右房肺動脈直接吻合術
Fontan型手術後(2)Total Cavo-Pulmonary Connection(TCPC)術
1.短絡性心疾患 ③両方向短絡が存在する疾患
Eisenmenger症候群
心室中隔欠損症
心房中隔欠損症
大動脈縮窄
単純型,新生児期発症例
大動脈縮窄・複合型
正常大血管関係+心室中隔欠損
完全大血管転位+心室中隔欠損
右鎖骨下動脈起始異常でのDifferential Cyanosis
大動脈弓離断複合
正常大血管関係+心室中隔欠損(A型で動脈管は開存している)
病型
単心室
左室性,肺血流増加
肺動脈狭窄
総動脈幹症
左心低形成症候群
ductal shock時
第一段階の姑息術
2.修正大血管転位
修正大血管転位
心内合併奇形のない型
心室中隔欠損合併
心室中隔欠損+肺動脈狭窄合併
両大血管右室起始+心室中隔欠損+肺動脈狭窄合併
ダブル・スイッチ術後
3.狭窄性心疾患 ①左室流出路狭窄
大動脈弁狭窄
運動時
大動脈弁上狭窄
大動脈弁下狭窄
固定性
肥大型閉塞型心筋症(hypertrophic obstructive cardiomyopathy)
大動脈縮窄(単純型)
3.狭窄性心疾患 ②右室流出路狭窄
肺動脈弁狭窄
肺動脈弁狭窄,重症(乳児期)
右室拡張型
右室低形成型
肺動脈弁下狭窄(右室二腔症)
末梢性肺動脈狭窄
3.狭窄性心疾患 ③流入路狭窄
僧帽弁狭窄
三心房心
急性増悪
僧帽弁上狭窄輪
肺静脈閉塞
三尖弁狭窄
Ebstein病TS優位型(安藤分類Ⅲb)
4.逆流性心疾患 ①房室弁逆流
僧帽弁閉鎖不全
病期による変化
三尖弁閉鎖不全
Ebstein病(TR型)
Fallot四徴症術後
4.逆流性心疾患 ②半月弁逆流
大動脈弁閉鎖不全
肺動脈弁閉鎖不全
5.肺動脈性肺高血圧症
肺動脈性肺高血圧症
6.冠動脈異常
冠動脈異常
左冠動脈肺動脈起始
冠動脈瘻
1.心機能の基礎 中澤 誠
心筋機能:1
興奮・収縮連関
心筋機能:2
フランク・スターリン機構
心室機能:1
左室のフランク・スターリン機構
心室機能:2
右室と左室の相互作用
心室機能:3
右室と左室の相互作用
心室機能:4
発達〜成熟の影響:発達途中の心室は硬い
収縮期負荷(圧負荷)への心室の反応
圧負荷に対する筋原線維の増加
拡張期負荷(容量負荷)への心室の反応
容量負荷に対する筋原線維の増加
左室の後負荷心および前負荷心での壁応力
心膜の影響
2.血行動態の基礎 村上智明
血流と血圧:1
血流と血圧:2
位置エネルギーと運動エネルギー:1
位置エネルギーと運動エネルギー:2
位置エネルギーと運動エネルギー:3
圧反射:1
圧反射:2
Stress-velocity 関係
3.心臓カテーテル検査および超音波検査 青墳裕之
カテーテル検査による圧波形:1
カテーテル検査による圧波形:2
カテーテルを挿入しにくい場合の左房圧,肺動脈圧推定法
心拍出量の求め方:1
心拍出量の求め方:2
心拍出量の求め方:3
熱希釈法およびその他の方法
肺循環動態評価の重要な指標
肺血流量,肺体血流量比,肺血管抵抗の評価:1
肺血流量,肺体血流量比,肺血管抵抗の評価:2
心室容積の計測法:1
心室容積の計測法:2
心室容積の体格を考慮した評価法と容積評価の意義
超音波法による一次元的計測:1
超音波法による一次元的計測:2
超音波断層法を用いた小児における左室容積の正常値
ドプラを用いた血流速度からの圧差推定
大動脈弁狭窄,肺動脈弁狭窄
TEI index
組織ドプラの有用性
超音波検査による右室圧,肺動脈圧評価
下行大動脈血流パターン
ドプラエコーを用いた流量計測
連続の式:continuity equation
僧帽弁狭窄重症度の評価
各論 中澤 誠
1.短絡性心疾患 ①主として左右短絡性心疾患
心室中隔欠損症
欠損部位による短絡動態の違い
短絡量の規定因子
心室中隔欠損症+肺高血圧症での瞬時的な短絡血流
術後早期
術後早期肺高血圧クリーゼ(PH Crisis)
心室中隔欠損症+心房間交通(ダブルシャント)
心房中隔欠損症
二次孔欠損
術後早期
部分肺静脈還流異常
右肺静脈が右房に直接還流している例
術後
心房中隔欠損症(不完全型房室中隔欠損)
一次孔欠損
術後
完全型心内膜床欠損(完全型房室中隔欠損)
術後
大動脈肺動脈短絡
動脈管開存症
大動脈肺動脈中隔欠損(窓)
右肺動脈上行大動脈起始
閉鎖術後(動脈管開存例)
Valsalva洞動脈瘤破裂
右房へ
右室へ
1.短絡性心疾患 ②主として右左短絡性心疾患
Fallot四徴症
低酸素発作
肺動脈閉鎖+主要大動脈肺動脈側副動脈(MAPCAs)
肺動脈弁欠損
大動脈肺動脈短絡術後
心内修復術後,早期
心内修復術後,長期
心室中隔欠損+肺動脈閉鎖:Rastelli術後
完全大血管転位症
Ⅰ型
Ⅱ型
Ⅲ型
大動脈スイッチ術後
Ⅲ型:Rastelli術後
心房内スイッチ術・術後
両大血管右室起始
病型
大動脈弁下心室中隔欠損,肺動脈狭窄なし(VSD+PH型)
大動脈弁下心室中隔欠損+肺動脈狭窄(TF型)
肺動脈弁下心室中隔欠損,肺動脈狭窄なし(TGA型)
総肺静脈還流異常症
上心臓型
傍心臓型
下心臓型
総肺静脈還流異常症の防御的肺動脈収縮
術後
純型肺動脈閉鎖(心室中隔欠損症のない肺動脈閉鎖)
弁性閉鎖+細い動脈管開存
弁性閉鎖+太い動脈管開存
強い三尖弁閉鎖不全合併(Ebstein病合併)
冠動脈の異常
二心室修復術後
肺動脈閉鎖+心室間交通
両大血管右室起始
左室性単心室(L-loop型)
三尖弁閉鎖
Keith-Edwards分類
肺動脈狭窄(Ⅰb型)
肺血流増加
大動脈縮窄合併例(Ⅱc型)
Fontan型手術後(1)右房肺動脈直接吻合術
Fontan型手術後(2)Total Cavo-Pulmonary Connection(TCPC)術
1.短絡性心疾患 ③両方向短絡が存在する疾患
Eisenmenger症候群
心室中隔欠損症
心房中隔欠損症
大動脈縮窄
単純型,新生児期発症例
大動脈縮窄・複合型
正常大血管関係+心室中隔欠損
完全大血管転位+心室中隔欠損
右鎖骨下動脈起始異常でのDifferential Cyanosis
大動脈弓離断複合
正常大血管関係+心室中隔欠損(A型で動脈管は開存している)
病型
単心室
左室性,肺血流増加
肺動脈狭窄
総動脈幹症
左心低形成症候群
ductal shock時
第一段階の姑息術
2.修正大血管転位
修正大血管転位
心内合併奇形のない型
心室中隔欠損合併
心室中隔欠損+肺動脈狭窄合併
両大血管右室起始+心室中隔欠損+肺動脈狭窄合併
ダブル・スイッチ術後
3.狭窄性心疾患 ①左室流出路狭窄
大動脈弁狭窄
運動時
大動脈弁上狭窄
大動脈弁下狭窄
固定性
肥大型閉塞型心筋症(hypertrophic obstructive cardiomyopathy)
大動脈縮窄(単純型)
3.狭窄性心疾患 ②右室流出路狭窄
肺動脈弁狭窄
肺動脈弁狭窄,重症(乳児期)
右室拡張型
右室低形成型
肺動脈弁下狭窄(右室二腔症)
末梢性肺動脈狭窄
3.狭窄性心疾患 ③流入路狭窄
僧帽弁狭窄
三心房心
急性増悪
僧帽弁上狭窄輪
肺静脈閉塞
三尖弁狭窄
Ebstein病TS優位型(安藤分類Ⅲb)
4.逆流性心疾患 ①房室弁逆流
僧帽弁閉鎖不全
病期による変化
三尖弁閉鎖不全
Ebstein病(TR型)
Fallot四徴症術後
4.逆流性心疾患 ②半月弁逆流
大動脈弁閉鎖不全
肺動脈弁閉鎖不全
5.肺動脈性肺高血圧症
肺動脈性肺高血圧症
6.冠動脈異常
冠動脈異常
左冠動脈肺動脈起始
冠動脈瘻
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各疾患,術式ごとの血行動態が一目でわかる!
先天性心疾患で最も難解と言われているものに,血行動態がある。術前,術後にも血行動態が変化し,さらに難解と感じさせる要因となっている。この血行動態を正確に理解し,疾患ごとの特性を理解しなければ,目の前にいる患者を正確に診断,診療することは難しく,「どうしてこのような病状なのか」を想像することは不可能である。
また,現在は,先天性心疾患に対する心臓カテーテル検査,治療も急速に普及し,年間3,000件以上の症例数を数えている。この心臓カテーテル検査を行う際,カテーテル検査の結果を読み解くためにも,血行動態の知識は不可欠である。
本書は,「先天性心疾患」の血行動態について,イラストを用いて簡単に学べる書籍となっている。