Urologic Surgery Next 6

尿失禁・女性泌尿器科手術

尿失禁・女性泌尿器科手術

■担当編集委員 髙橋 悟

定価 13,200円(税込) (本体12,000円+税)
  • A4判  224ページ  オールカラー,イラスト180点,写真160点
  • 2020年3月22日刊行
  • ISBN978-4-7583-1335-3

泌尿器科,婦人科の両科が治療の対象とする尿失禁の手術,骨盤臓器脱を代表とする女性泌尿器科手術を詳細に解説

近年めざましい進歩を遂げた泌尿器科手術の最前線を,第一線で活躍するエキスパートがオールカラーの豊富な写真・イラストとともにわかりやすく解説した『Urologic Surgery Next』シリーズ。
第6巻では最新の尿失禁の手術をイラスト,写真を用いてわかりやすく解説。女性泌尿器科手術では,骨盤臓器脱の手術を,経験豊富な婦人科医が解説。泌尿器科,婦人科の両科が治療の対象とする尿失禁の手術,骨盤臓器脱を代表とする女性泌尿器科手術を詳細に解説し,泌尿器科医だけではなく婦人科の先生にも役立つ手術書です。

■シリーズ編集委員
荒井陽一/髙橋 悟/山本新吾/土谷順彦


序文

「Urologic Surgery Next」シリーズ 刊行にあたって

 近年の泌尿器科手術の進化はめざましい。既に普及しているエンドウロロジー,腹腔鏡手術は,機器の進歩と相まってさらに洗練されてきた。近年,手術支援ロボットの導入により泌尿器科手術はさらに大きく変貌した。前立腺全摘術の多くがロボット支援下に行われ,腎部分切除術や膀胱全摘術にも適応が拡大されてきている。このような背景を踏まえて,現在の泌尿器科手術の実際をまとめた新たな手術シリーズとして「Urologic Surgery Next」シリーズを刊行することとなった。
 本シリーズでは,これまで「Urologic Surgery」シリーズ全12巻(2000~2002年),「新Urologic Surgery」シリーズ全8巻(2009~2011年)が刊行され,いずれも好評を得てきた。最初のシリーズの刊行は泌尿器腹腔鏡手術の多くが保険収載されていなかった時期であり,第1巻としてエンドウロロジー,第2 巻として泌尿器腹腔鏡手術が上梓されている。次の新シリーズは臓器別・疾患別の構成となり,低侵襲手術の普及を反映して,各巻にエンドウロロジー,腹腔鏡手術,開放手術が併記して解説されている。
 前シリーズ刊行後の2012年は,ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘術が保険収載され,文字通り本邦におけるロボット手術元年となった。その後のロボット手術の普及は急速であり,標準手術の一つとして定着している。腹腔鏡手術においては,泌尿器腹腔鏡技術認定制度の発足後10年以上が経過し,より洗練された標準術式として進化してきた。細径尿管鏡の開発などによりエンドウロロジーもさらに進化を遂げている。今後,手術開発と教育は新たな局面を迎えていると言えよう。
 今回,シリーズ3作目として発刊される「Urologic Surgery Next」シリーズでは,最近の手術の進歩を踏まえ,以下の編集方針にて企画された。
1 . Urologic Surgeryシリーズの中でも進化した術式を重点的に解説する。
2 . 主にアプローチ別に構成し,必要な解剖,基本手技,トラブルシューティングなどを充実させる。
3 . 主要な術式では,テーマ・ポイントを絞った手術手技の解説を設ける。
4 . オープンサージャリーを一つの巻にまとめ,到達法,代表的な術式,血管処理,などを詳述する。
5 . これまでのシリーズと同様に,イラストを駆使して視覚的にわかりやすい記述とする。
 執筆は第一線で活躍されておられる若手の術者にお願いした。本シリーズが多くの泌尿器外科医の日々の研鑽に役立てられることを願っている。

2018年3月
編集委員
荒井陽一
髙橋 悟
山本新吾
土谷順彦

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序 文

 泌尿器外科は,高齢者疾患を治療対象に含む外科であると同時に,下部尿路症状や性機能障害などのQOL 疾患も対象にすることが特徴の一つである。実際,世界一の女性長寿を誇る本邦では,腹圧性尿失禁や骨盤臓器脱などの中高年女性のQOL疾患の増加が顕著である。したがって,これからの泌尿器科医は,「女性泌尿器科」を特殊な専門分野と考えるのではなく,前立腺肥大症などの従来からの泌尿器良性疾患と同様に捉え,積極的に手術手技を習得して一人でも多くの患者を救って頂きたいと思う。
 一方,女性泌尿器科手術には近年大きな進歩・変化がみられている。すなわち,従来からのNative tissueを用いた術式に加えて,2000年にはTension-free Vaginal Mesh(TVM)techniqueが誕生した。その後本手術は,低い再発率と低侵襲性から本邦でも普及し,2010年に膀胱脱手術(メッシュを使用するもの)として保険収載された。しかし,創部メッシュ露出や慢性疼痛などの合併症に対して,FDAは度重なる警告を発表し,ついに2019年には,骨盤臓器脱に対するTVM手術用メッシュの米国内での販売を停止した。幸い本邦では,米国と比較して手術関連合併症の発生率が低い。現在国内メーカーからのメッシュの供給が継続されており,同手術は施行可能であるが,より一層の手技向上と合併症の回避が求められている。一方TVM手術に代わる術式として,腹腔鏡下仙骨腟固定術が登場した。本手術は,開腹術として良好な長期成績と優れた性機能温存性が確立しており,腹腔鏡下に行うことでさらに低侵襲性を獲得した。2014 年に本邦で保険適用となり,近年急速に普及しつつある。また2020年4月には,ロボット支援腹腔鏡下仙骨腟固定術が保険適用になる見込みである。これにより,大いに結紮手技の迅速化が期待できるが,ポートの設定は,ロボット支援腹腔鏡下前立腺摘除術と類似し,その基本手技は腹腔鏡下仙骨腟固定術と同様である。今後腹腔鏡手術やロボット手術に習熟した泌尿器科医が,新たに女性泌尿器科手術を手掛けることが予想される。
 安全で質の高い尿失禁・女性泌尿器科手術を行うためには,手技の習熟に加えて,女性骨盤底の解剖と機能を知ることが大切である。本シリーズでは,骨盤臓器脱,特に子宮脱に対するNative tissueを用いた術式の項を中心に,知識と経験が豊富な婦人科医の先生方に執筆して頂いた。また,難治性過活動膀胱への「膀胱鏡下ボツリヌス毒素注入手術」,「仙骨神経刺激療法(SNM)」を関連手術として収録した。
 本書が尿失禁・女性泌尿器科手術の習得を目指す若手泌尿器科医はもとより,手術のエキスパートを含めて多くの先生方に愛読されれば,望外の喜びである。多忙の中,丹念に詳述して下さった分担執筆者の諸兄に深謝申し上げる。

2020年2月
髙橋 悟
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目次

I 女性泌尿器科手術に必要な解剖の知識  朝倉博孝,篠島利明
Ⅱ 腹圧性尿失禁の手術
 尿道スリング手術
  tension-free vaginal tape:TVT  巴ひかる,山下かおり
  transobturator tape:TOT   藤原敦子
   筋膜スリング手術(fascial sling)   橘田岳也,千葉博基,篠原信雄
 恥骨後式膀胱頸部挙上術 腹腔鏡下Burch 手術   野村昌良
 尿失禁手術におけるトラブルシューティング   加藤久美子
 尿失禁手術後の排尿障害の対処法   嘉村康邦
Ⅲ 難治性過活動膀胱の手術
 膀胱鏡下ボツリヌス毒素注入手術   横山 修
 仙骨神経刺激療法(SNM)   山西友典,加賀勘家,加賀麻祐子,布施美樹,石塚 満
Ⅳ 骨盤臓器脱の手術
 前・後腟壁形成術   岡垣竜吾
 マンチェスター手術   岡垣竜吾
 腟式子宮全摘出術   古山将康
 腟上端固定術   古山将康
 腹腔鏡下仙骨腟固定術(LSC)  市川雅男,明樂重夫
 経腟メッシュ(TVM)手術  竹山政美,鍬田知子
 腟閉鎖術   竹村昌彦
 骨盤臓器脱手術におけるトラブルシューティング   野村昌良
Ⅴ その他の手術
 膀胱腟瘻・尿道腟瘻閉鎖術  持田淳一,髙橋 悟
 尿道憩室の摘除術 経腟的尿道憩室摘除術   髙橋 悟
 尿道脱・尿道カルンクルの手術   金城真実
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