臍の外科
小児の臍疾患治療と臍を利用した手術
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定価 14,300円(税込) (本体13,000円+税)
- A4判 288ページ 2色,イラスト200点,写真200点
- 2018年8月31日刊行
- ISBN978-4-7583-1269-1
序文
『臍の外科』はup-to-dateな臍の診療に関わる創意工夫を一冊の本としてまとめたものです。本書はこどもの臍の診療に特化したわが国で初めての本です。2015年に大塩猛人先生の発案で発足した『日本小児へそ研究会』から,第4回研究会を迎えた2018年に本書を世に出せたことは,本研究会の設立から関わってきたひとりとして望外の喜びです。
本書では,臍に関する疾患を網羅的に解説するとともに,臍を利用した手術やその工夫について多くの紙面を割いて紹介していますので,明日からの診療にきっと役立つものと思います。さて,本年4月に開催された第4回日本小児へそ研究会(田口智章会長)では,懸案であった「臍輪」の定義をすることができました。最近は臍ヘルニアの突出した皮膚の基部や,正常の臍の輪郭を表す用語としても多用されてきましたが,臍輪は臍ヘルニア門を意味する解剖用語であることを再認識し,今後はそれに限定して使用するというコンセンサスが得られました。そこで本書においては,いったん執筆していただいた原稿におきまして,執筆者には改めて臍輪という用語を適切に使用するように修正を加えていただきました。
さて,臍の診療はなぜそんなに重要なのでしょうか?さらに言えば,われわれ小児を診療するものはなぜそんなに臍の診療にこだわるのでしょうか?
成人の外科では臍にこだわった手術はあまりなされていません。しかし小児外科では臍に関する病気が多く,臍の治療をよく行ってきたという歴史的背景があり,臍にはもともと深い思い入れがあるからです。小児外科は,年齢層が広いうえに,疾患や臓器の種類も多いのが特徴です。最も多い臍ヘルニアは美容的な配慮が不可欠な疾患で,とくに大きな臍ヘルニアでは術後の傷が醜くなりがちで,そのため従来から多くの工夫がなされてきました。また近年,腹部の手術においてはできるだけ小さな傷で治療効果を損ねることのない手術を目指してきました。そのような中で,もともと窪んでいる臍を手術創に利用して,おなかに目立った傷を残さない手術が工夫されるようになりました。また,小児外科の領域にも腹腔鏡手術が広く普及し,その進歩に伴って臍からの単孔式腹腔鏡手術が登場し,多くの疾患に応用されるようになりました。最近ではさらに,臍からの開腹手術と腹腔鏡手術とを組み合わせて両方のいいところをうまく利用する手術も行われています。
手術を受けたこどもにとって,傷は一生残るものです。傷が大きく醜いほどその後の長い人生に与える影響には大きいものがあります。しかし,ちょっとした工夫をすることで,傷はできるだけ小さくすることができます。体の傷が心の傷にならないようにするために,われわれは精一杯の努力を惜しむことはありません。
小児外科医のみならず,小児およびAYA世代を対象とする医師やメディカルスタッフや学生さんにも広く本書を手に取っていただき,現在の知識や技術を今後さらに発展させていただきたいと願っています。ひとりでも多くの手術を受けたこどもが,自分の傷をみて悲しまないように,むしろ笑顔になるための手助けになれば,この上ない喜びです。
2018年5月
濵田吉則,土岐 彰,奥山宏臣,田口智章
本書では,臍に関する疾患を網羅的に解説するとともに,臍を利用した手術やその工夫について多くの紙面を割いて紹介していますので,明日からの診療にきっと役立つものと思います。さて,本年4月に開催された第4回日本小児へそ研究会(田口智章会長)では,懸案であった「臍輪」の定義をすることができました。最近は臍ヘルニアの突出した皮膚の基部や,正常の臍の輪郭を表す用語としても多用されてきましたが,臍輪は臍ヘルニア門を意味する解剖用語であることを再認識し,今後はそれに限定して使用するというコンセンサスが得られました。そこで本書においては,いったん執筆していただいた原稿におきまして,執筆者には改めて臍輪という用語を適切に使用するように修正を加えていただきました。
さて,臍の診療はなぜそんなに重要なのでしょうか?さらに言えば,われわれ小児を診療するものはなぜそんなに臍の診療にこだわるのでしょうか?
成人の外科では臍にこだわった手術はあまりなされていません。しかし小児外科では臍に関する病気が多く,臍の治療をよく行ってきたという歴史的背景があり,臍にはもともと深い思い入れがあるからです。小児外科は,年齢層が広いうえに,疾患や臓器の種類も多いのが特徴です。最も多い臍ヘルニアは美容的な配慮が不可欠な疾患で,とくに大きな臍ヘルニアでは術後の傷が醜くなりがちで,そのため従来から多くの工夫がなされてきました。また近年,腹部の手術においてはできるだけ小さな傷で治療効果を損ねることのない手術を目指してきました。そのような中で,もともと窪んでいる臍を手術創に利用して,おなかに目立った傷を残さない手術が工夫されるようになりました。また,小児外科の領域にも腹腔鏡手術が広く普及し,その進歩に伴って臍からの単孔式腹腔鏡手術が登場し,多くの疾患に応用されるようになりました。最近ではさらに,臍からの開腹手術と腹腔鏡手術とを組み合わせて両方のいいところをうまく利用する手術も行われています。
手術を受けたこどもにとって,傷は一生残るものです。傷が大きく醜いほどその後の長い人生に与える影響には大きいものがあります。しかし,ちょっとした工夫をすることで,傷はできるだけ小さくすることができます。体の傷が心の傷にならないようにするために,われわれは精一杯の努力を惜しむことはありません。
小児外科医のみならず,小児およびAYA世代を対象とする医師やメディカルスタッフや学生さんにも広く本書を手に取っていただき,現在の知識や技術を今後さらに発展させていただきたいと願っています。ひとりでも多くの手術を受けたこどもが,自分の傷をみて悲しまないように,むしろ笑顔になるための手助けになれば,この上ない喜びです。
2018年5月
濵田吉則,土岐 彰,奥山宏臣,田口智章
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目次
Ⅰ 臍について
■臍の発生と解剖
腹壁・臍帯の発生/臍の形成/正常臍の解剖/まとめ
■臍の用語(臍輪の定義など)
臍帯(umbilical cord)とその構造物/臍(umbilicus)/臍ヘルニア(umbilical hernia)/臍輪(umbilical ring)の定義について/臍にまつわるその他の用語
■臍の形態(理想とする形・位置,年齢による形の変化など)
臍の解剖学的位置と年齢に伴う変化/臍の形状分類と年齢に伴う変化/おわりに
■「臍」の医学史
臍(Navel, Umbilicus)の成り立ち/ワートン軟肉(Wharton's jelly)について/シスター マリー・ジョセフ結節(Sister Mary Joseph nodule)(癌の臍転移)/「へそのゴマ」に関するトリビア/「臍」に関連した冠名病名と用語
II 疾患各論
■臍ヘルニア/圧迫療法
実際の手技と治療成績:ガーゼ
筆者の行っている圧迫療法/圧迫療法の治療成績
実際の手技と治療成績:スポンジ
スポンジ圧迫療法/治療成績
実際の手技と治療成績:綿球
背景/方法と対象/結果/考察/おわりに
実際の手技と治療成績:新規圧迫材
概説/新規圧迫材と圧迫固定用のテープ/新規圧迫材による圧迫療法の実際/新規圧迫材を用いた圧迫療法の治療成績/臍ヘルニア圧迫療法の管理のポイント
■臍ヘルニア/臍ヘルニアの手術
一般的な手術:臍内下縁弧状切開法
わが国の小児臍ヘルニア手術/小児臍ヘルニアに対する臍内下縁弧状切開法の実際(2 歳)/臍内下縁弧状切開法におけるポイント
巨大臍ヘルニアの手術:鬼塚法
臍形成術/考察
巨大臍ヘルニアの手術:スリット︲スライド変法
術前の準備/手術の実際
巨大臍ヘルニアの手術:cap inversion method
手術の実際/手術の要点とコツ
巨大臍ヘルニアの治療戦略
きれいな臍とは/なぜ巨大臍ヘルニアに治療戦略が必要なのか/巨大臍ヘルニアに対する圧迫療法/巨大臍ヘルニアに対する手術/巨大臍ヘルニアの治療戦略/おわりに
特殊臍ヘルニアに対する臍形成術
特殊臍ヘルニア/手術方法
臍突出症に対する臍形成術
臍突出症の臍形成術の目標/臍突出の術式とその選択/臍突出改善手術での注意点/症例供覧/考察
臍ヘルニア再形成術-臍ヘルニア根治術後の長期成績から得られた
理想的な臍の形を目指して-
手術適応/手術の実際/術後管理/まとめ
■造臍術
臍欠損に対する臍形成術
開腹術を伴わない場合/開腹術を伴う場合
腹部皮弁における島状臍の再設定
概念/手術手技/まとめ
■臍帯ヘルニア
一期的閉鎖術,多期的閉鎖術
疾患概念/成因/病型/診断/術前管理/術式/一期的閉鎖術/多期的閉鎖術/保存的治療/術後管理
腹壁閉鎖時の臍形成法
臍の発生/解剖学的術式検討/腹壁閉鎖方法/術後経過
■腹壁破裂
sutureless abdominal wall closure の実際
sutureless abdominal wall closure の実際
sutureless abdominal wall closure 術後の臍形成術
手術手技/おわりに
■臍腸管遺残:臍ポリープ・臍腸瘻・Meckel 憩室
発生/臍ポリープ/臍腸瘻/ Meckel 憩室/治療
■尿膜管遺残
発生・頻度/病型・症状/尿膜管癌/画像診断/外科治療
■門脈疾患(肝前性門脈圧亢進症など)
臍と門脈の発生学/肝外門脈閉塞症/まとめ
■臍の出血・炎症・肉芽腫
出生後の臍帯ケア/臍の出血・炎症/臍肉芽腫
■臍の腫瘍(ケロイドを含む)
臍に生じやすい原因があるもの/たまたま臍部に生じた皮膚腫瘍/その他
■白線ヘルニア
術前診断/手術方法/術後経過/長期予後
■臍の美容外科
概要/臍の変形と美容的修正法
■臍ピアス
準備する物品/デザイン/ピアッシングの実際/ピアッシング後のケア/合併症とその対策/まとめ
III 臍を利用した手術
■臍カテーテル法
概説/適応となる状況/禁忌/手順/合併症
■臍からのポート挿入
皮膚切開方法/ポート挿入方法/ポート挿入の実際/おわりに
■臍からの単孔式腹腔鏡手術:総論
歴史/意義/基礎知識/器具・材料/皮膚切開方法
■臍からの開腹手術:総論
歴史/利点と欠点/意義/本項における臍部切開創の分類
■臍からの開腹手術/切開法の実際
臍内弧状切開法
手術手技/考察/おわりに
臍内縦切開法
臍内縦切開法の手技の実際/適応疾患/他の臍内切開法との比較/おわりに
臍内ベンツ型切開法
ベンツ切開の手順/ベンツ切開の用例/おわりに
臍窩Z 型切開法
術前の準備/手術の実際/術後管理のポイント
臍内環状切開法(臍帯付着時)
開腹法/閉腹法/術後
臍弧状切開法
臍弧状切開による開腹法の実際/おわりに
臍縁切開法
臍縁切開法/具体的な症例
臍部Ω型切開法
術前の準備/切開法(手術手技)/閉創/手術時の注意点と臍部Ω型切開の応用/メリット・デメリット/合併症/適応/手術時・術後のポイント/おわりに
臍周囲輪状切開法(sliding window 法)
手技の実際/本法の成績/まとめ
■臍からの手術が可能な疾患・手術
横隔膜ヘルニア
適応/画像評価/術前準備/手術体位/デバイスの選択/手術操作/単孔内視鏡外科手術の特性
噴門形成術
単孔式腹腔鏡下噴門形成術の適応/手術手技/本術式について(臍からの可能性を含め)/おわりに
肥厚性幽門狭窄症
臍上部弧状切開法/臍sliding window 法
先天性腸閉鎖症
筆者らの施設での新生児経臍輪開腹手術/まとめ
腸回転異常症
症例/考察/おわりに
腸重複症
回腸重複症/他の報告例/臍アプローチ手術におけるポイント/おわりに
腸重積症
腸重積症の病態,診断/治療/治療のプロトコール/まとめ
腸閉塞症
臍部切開による開腹術/術式のポイント/単孔式腹腔鏡手術/まとめ
虫垂炎
麻酔/術前準備/使用器具/手術スタッフおよび器具の配置/手術/最後に
Hirschsprung 病
術前準備と手術法の概略/人工肛門造設と二期的手術
ストーマ造設術
臍部人工肛門造設術/臍部人工肛門造設中の合併症とケア/臍部人工肛門閉鎖術/臍部人工肛門閉鎖後の外観/臍部人工肛門の利点と注意点/臍部人工肛門の適応/おわりに
先天性胆道拡張症
先天性胆道拡張症手術のアプローチ/臍部小切開アプローチの適応/手術手技/総括
脾摘術
手術方法
卵巣腫瘤
新生児卵巣嚢胞/卵巣嚢胞の治療/新生児卵巣嚢胞の手術/新生児卵巣嚢胞以外への応用/おわりに
鼠径ヘルニア
TULPEC の適応疾患/麻酔と疼痛管理/当科での小児に対するTULPEC の実際/術後成績/考察
■創縫合法の工夫
単孔式腹腔鏡下手術における臍窩創縫合の工夫
臍窩縫合法の手技の実際/結果/結語
臍窩形成法の工夫
手術/臍窩形成法の実際/症例/考察/まとめ
IV 臍と漢方
「 幼幼家則」(ようようかそく)における臍関連の記述/臍鍼療法/敷臍治療/おわりに
V 臍帯と胎児治療
■胎児採血および輸血
胎児採血および輸血の歴史/胎児採血の対象/胎児採血の適応/胎児輸血の適応/胎児輸血における実際の手技/臍帯穿刺のリスク/推奨レベル
■TTTS の治療
双胎間輸血症候群(TTTS)とは/胎児鏡下レーザー凝固術(FLP)/ FLP の治療成績/FLP の手術適応/ FLP の母体合併症
■臍の発生と解剖
腹壁・臍帯の発生/臍の形成/正常臍の解剖/まとめ
■臍の用語(臍輪の定義など)
臍帯(umbilical cord)とその構造物/臍(umbilicus)/臍ヘルニア(umbilical hernia)/臍輪(umbilical ring)の定義について/臍にまつわるその他の用語
■臍の形態(理想とする形・位置,年齢による形の変化など)
臍の解剖学的位置と年齢に伴う変化/臍の形状分類と年齢に伴う変化/おわりに
■「臍」の医学史
臍(Navel, Umbilicus)の成り立ち/ワートン軟肉(Wharton's jelly)について/シスター マリー・ジョセフ結節(Sister Mary Joseph nodule)(癌の臍転移)/「へそのゴマ」に関するトリビア/「臍」に関連した冠名病名と用語
II 疾患各論
■臍ヘルニア/圧迫療法
実際の手技と治療成績:ガーゼ
筆者の行っている圧迫療法/圧迫療法の治療成績
実際の手技と治療成績:スポンジ
スポンジ圧迫療法/治療成績
実際の手技と治療成績:綿球
背景/方法と対象/結果/考察/おわりに
実際の手技と治療成績:新規圧迫材
概説/新規圧迫材と圧迫固定用のテープ/新規圧迫材による圧迫療法の実際/新規圧迫材を用いた圧迫療法の治療成績/臍ヘルニア圧迫療法の管理のポイント
■臍ヘルニア/臍ヘルニアの手術
一般的な手術:臍内下縁弧状切開法
わが国の小児臍ヘルニア手術/小児臍ヘルニアに対する臍内下縁弧状切開法の実際(2 歳)/臍内下縁弧状切開法におけるポイント
巨大臍ヘルニアの手術:鬼塚法
臍形成術/考察
巨大臍ヘルニアの手術:スリット︲スライド変法
術前の準備/手術の実際
巨大臍ヘルニアの手術:cap inversion method
手術の実際/手術の要点とコツ
巨大臍ヘルニアの治療戦略
きれいな臍とは/なぜ巨大臍ヘルニアに治療戦略が必要なのか/巨大臍ヘルニアに対する圧迫療法/巨大臍ヘルニアに対する手術/巨大臍ヘルニアの治療戦略/おわりに
特殊臍ヘルニアに対する臍形成術
特殊臍ヘルニア/手術方法
臍突出症に対する臍形成術
臍突出症の臍形成術の目標/臍突出の術式とその選択/臍突出改善手術での注意点/症例供覧/考察
臍ヘルニア再形成術-臍ヘルニア根治術後の長期成績から得られた
理想的な臍の形を目指して-
手術適応/手術の実際/術後管理/まとめ
■造臍術
臍欠損に対する臍形成術
開腹術を伴わない場合/開腹術を伴う場合
腹部皮弁における島状臍の再設定
概念/手術手技/まとめ
■臍帯ヘルニア
一期的閉鎖術,多期的閉鎖術
疾患概念/成因/病型/診断/術前管理/術式/一期的閉鎖術/多期的閉鎖術/保存的治療/術後管理
腹壁閉鎖時の臍形成法
臍の発生/解剖学的術式検討/腹壁閉鎖方法/術後経過
■腹壁破裂
sutureless abdominal wall closure の実際
sutureless abdominal wall closure の実際
sutureless abdominal wall closure 術後の臍形成術
手術手技/おわりに
■臍腸管遺残:臍ポリープ・臍腸瘻・Meckel 憩室
発生/臍ポリープ/臍腸瘻/ Meckel 憩室/治療
■尿膜管遺残
発生・頻度/病型・症状/尿膜管癌/画像診断/外科治療
■門脈疾患(肝前性門脈圧亢進症など)
臍と門脈の発生学/肝外門脈閉塞症/まとめ
■臍の出血・炎症・肉芽腫
出生後の臍帯ケア/臍の出血・炎症/臍肉芽腫
■臍の腫瘍(ケロイドを含む)
臍に生じやすい原因があるもの/たまたま臍部に生じた皮膚腫瘍/その他
■白線ヘルニア
術前診断/手術方法/術後経過/長期予後
■臍の美容外科
概要/臍の変形と美容的修正法
■臍ピアス
準備する物品/デザイン/ピアッシングの実際/ピアッシング後のケア/合併症とその対策/まとめ
III 臍を利用した手術
■臍カテーテル法
概説/適応となる状況/禁忌/手順/合併症
■臍からのポート挿入
皮膚切開方法/ポート挿入方法/ポート挿入の実際/おわりに
■臍からの単孔式腹腔鏡手術:総論
歴史/意義/基礎知識/器具・材料/皮膚切開方法
■臍からの開腹手術:総論
歴史/利点と欠点/意義/本項における臍部切開創の分類
■臍からの開腹手術/切開法の実際
臍内弧状切開法
手術手技/考察/おわりに
臍内縦切開法
臍内縦切開法の手技の実際/適応疾患/他の臍内切開法との比較/おわりに
臍内ベンツ型切開法
ベンツ切開の手順/ベンツ切開の用例/おわりに
臍窩Z 型切開法
術前の準備/手術の実際/術後管理のポイント
臍内環状切開法(臍帯付着時)
開腹法/閉腹法/術後
臍弧状切開法
臍弧状切開による開腹法の実際/おわりに
臍縁切開法
臍縁切開法/具体的な症例
臍部Ω型切開法
術前の準備/切開法(手術手技)/閉創/手術時の注意点と臍部Ω型切開の応用/メリット・デメリット/合併症/適応/手術時・術後のポイント/おわりに
臍周囲輪状切開法(sliding window 法)
手技の実際/本法の成績/まとめ
■臍からの手術が可能な疾患・手術
横隔膜ヘルニア
適応/画像評価/術前準備/手術体位/デバイスの選択/手術操作/単孔内視鏡外科手術の特性
噴門形成術
単孔式腹腔鏡下噴門形成術の適応/手術手技/本術式について(臍からの可能性を含め)/おわりに
肥厚性幽門狭窄症
臍上部弧状切開法/臍sliding window 法
先天性腸閉鎖症
筆者らの施設での新生児経臍輪開腹手術/まとめ
腸回転異常症
症例/考察/おわりに
腸重複症
回腸重複症/他の報告例/臍アプローチ手術におけるポイント/おわりに
腸重積症
腸重積症の病態,診断/治療/治療のプロトコール/まとめ
腸閉塞症
臍部切開による開腹術/術式のポイント/単孔式腹腔鏡手術/まとめ
虫垂炎
麻酔/術前準備/使用器具/手術スタッフおよび器具の配置/手術/最後に
Hirschsprung 病
術前準備と手術法の概略/人工肛門造設と二期的手術
ストーマ造設術
臍部人工肛門造設術/臍部人工肛門造設中の合併症とケア/臍部人工肛門閉鎖術/臍部人工肛門閉鎖後の外観/臍部人工肛門の利点と注意点/臍部人工肛門の適応/おわりに
先天性胆道拡張症
先天性胆道拡張症手術のアプローチ/臍部小切開アプローチの適応/手術手技/総括
脾摘術
手術方法
卵巣腫瘤
新生児卵巣嚢胞/卵巣嚢胞の治療/新生児卵巣嚢胞の手術/新生児卵巣嚢胞以外への応用/おわりに
鼠径ヘルニア
TULPEC の適応疾患/麻酔と疼痛管理/当科での小児に対するTULPEC の実際/術後成績/考察
■創縫合法の工夫
単孔式腹腔鏡下手術における臍窩創縫合の工夫
臍窩縫合法の手技の実際/結果/結語
臍窩形成法の工夫
手術/臍窩形成法の実際/症例/考察/まとめ
IV 臍と漢方
「 幼幼家則」(ようようかそく)における臍関連の記述/臍鍼療法/敷臍治療/おわりに
V 臍帯と胎児治療
■胎児採血および輸血
胎児採血および輸血の歴史/胎児採血の対象/胎児採血の適応/胎児輸血の適応/胎児輸血における実際の手技/臍帯穿刺のリスク/推奨レベル
■TTTS の治療
双胎間輸血症候群(TTTS)とは/胎児鏡下レーザー凝固術(FLP)/ FLP の治療成績/FLP の手術適応/ FLP の母体合併症
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小児外科医必携 臍の疾患を治す! 臍を手術に活かす!
臍ヘルニアをはじめ,臍帯ヘルニア,臍腸管遺残,尿膜管遺残,臍の炎症,腹壁破裂など,小児の臍疾患は多種・多様である。治療対象として稀な疾患が多いなかで,臍に関連した疾患は発症頻度が高く,小児外科医にとってはその治療に精通することは必須で,それだけ「臍」は重要と言える。
また治療の対象としてだけでなく,腹腔内への侵入路としても臍は重要である。腹腔鏡手術での臍へのポート設置,整容性に優れた臍からの開腹手術など,臍を活用した手術の修得も小児外科医にとって必要となる。
本書は「臍疾患の治療」から「臍を利用した手術」まで,小児外科の臍の臨床をまとめた小児外科医必携の一冊である。