NS NOW No.14
脊髄外科
脳神経外科医が識っておくべきエッセンシャル
定価 11,000円(税込) (本体10,000円+税)
- A4判 224ページ 2色(一部カラー),イラスト100点,写真40点
- 2011年4月28日刊行
- ISBN978-4-7583-1193-9
序文
本号で第14号となるNS NOWシリーズでは,“脊髄外科”をテーマとして取り上げた。構成としては,脊髄の画像診断,解剖,モニタリングなどの基礎知識の整理をまず行い,それに続いて,腫瘍,血管障害,脊髄空洞症,小児奇形などの手術手技をそれぞれのエキスパートに分かりやすく解説していただき,最後に脊髄性疼痛と脊髄炎の最新情報を説明していただいた。本シリーズ第4号『脳神経外科医のための脊椎外科』に本号を合わせることにより脊椎脊髄手術としてのspinal surgeryが完結する。
第4号では加齢に伴う一般的な脊椎疾患が対象であったが,今回は稀少疾患と言える脊髄病変が対象となっている。外科医は稀少疾患を教育・研修の対象から外してはならず,エレベストを登るような困難な手術について絶えず知識を積み経験を重ねることにより日常的な疾患の手術はより容易に,しかも不安なく行うことができるようになる。前床突起の削除,視神経管の開放,内耳道の開放,1mm以下の脆弱なモヤモヤ血管の吻合,穿通枝の剥離などのマイクロサージェリーに慣れ親しんだ脳神経外科医にとってすれば,術野が浅い脊髄腫瘍は,理屈さえわかれば脳手術より簡単に思えるに違いない。
脊髄は中枢神経系の要であり,手術概念的には脳と同じ構造を有する。腹側の前脊髄動脈は脳底動脈やウイルス動脈輪に相当し,椎体は頭蓋底部骨構造に類似する。後正中溝および中隔は中枢神経の発生の段階で生じたものであり,大脳縦裂に類似する。脊髄の神経線維が縦に走行するためmyelotomyは縦に行い,その切開部位は後正中溝,後外側溝(DREZ)にほぼ限られる。その他には病変に近い脊髄に切開を加えることがある。後正中中隔に沿って切開し脊髄を2分割しても理論的には神経脱落症状は軽微である。脊髄外科では脳ベラの代わりに,歯状靱帯や軟膜に糸をかけて牽引したり回旋させたりして間隙を得る。バイポーラの使用に当たっては低出力とし,出血部位をポイントで凝固する。脊椎の再建については,前方では固定を行い,後方では椎弓形成を行うが,これらは脊椎外科に準ずる。
脊髄は中枢神経の要であり,またspinal surgeryは脳神経外科手術の本流の1つである。若手脳神経外科医が実際の症例を前にして,指導医のもとで手術に望む際に本書が実践的に活用されることを切に希望する。
2011年4月
大畑建治
第4号では加齢に伴う一般的な脊椎疾患が対象であったが,今回は稀少疾患と言える脊髄病変が対象となっている。外科医は稀少疾患を教育・研修の対象から外してはならず,エレベストを登るような困難な手術について絶えず知識を積み経験を重ねることにより日常的な疾患の手術はより容易に,しかも不安なく行うことができるようになる。前床突起の削除,視神経管の開放,内耳道の開放,1mm以下の脆弱なモヤモヤ血管の吻合,穿通枝の剥離などのマイクロサージェリーに慣れ親しんだ脳神経外科医にとってすれば,術野が浅い脊髄腫瘍は,理屈さえわかれば脳手術より簡単に思えるに違いない。
脊髄は中枢神経系の要であり,手術概念的には脳と同じ構造を有する。腹側の前脊髄動脈は脳底動脈やウイルス動脈輪に相当し,椎体は頭蓋底部骨構造に類似する。後正中溝および中隔は中枢神経の発生の段階で生じたものであり,大脳縦裂に類似する。脊髄の神経線維が縦に走行するためmyelotomyは縦に行い,その切開部位は後正中溝,後外側溝(DREZ)にほぼ限られる。その他には病変に近い脊髄に切開を加えることがある。後正中中隔に沿って切開し脊髄を2分割しても理論的には神経脱落症状は軽微である。脊髄外科では脳ベラの代わりに,歯状靱帯や軟膜に糸をかけて牽引したり回旋させたりして間隙を得る。バイポーラの使用に当たっては低出力とし,出血部位をポイントで凝固する。脊椎の再建については,前方では固定を行い,後方では椎弓形成を行うが,これらは脊椎外科に準ずる。
脊髄は中枢神経の要であり,またspinal surgeryは脳神経外科手術の本流の1つである。若手脳神経外科医が実際の症例を前にして,指導医のもとで手術に望む際に本書が実践的に活用されることを切に希望する。
2011年4月
大畑建治
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目次
I 基本
脊髄髄内腫瘍の画像診断
■アウトライン
■髄内腫瘍の画像診断
星細胞系腫瘍
上衣細胞系腫瘍
血管芽腫 hemangioblastoma
髄内海綿状血管腫 cavernous hemangioma
胚細胞腫 germ cell tumor
原発性髄内悪性リンパ腫 primary intramedullary malignant lymphoma
髄内神経鞘腫 intramedullary schwannoma
■髄内腫瘍に類似した画像所見を示す非腫瘍性疾患
横断性脊髄炎 transverse myelitis
神経サルコイドーシス sarcoidosis
硬膜動静脈瘻 dural arteriovenous fistula
亜急性壊死性脊髄炎 subacute necrotizing myelitis
脊髄血管の機能解剖
■アウトライン
■脊髄血管の機能解剖
脊髄動脈とは
根動脈
脊髄に関与する根動脈
脊髄自身への動脈
脊髄内部への動脈
脊髄外部の成分に対する血液供給
硬膜への血管
脊髄の手術解剖
■アウトライン
■脊髄の手術解剖
脊髄の全体像
髄膜
後正中溝
後正中中隔
DREZ
脊髄動脈系
脊髄静脈系
神経根の血管系
脊髄モニタリング
■アウトライン
■モニタリングの実際
経頭蓋電気刺激筋誘発電位(myogenic MEP)
経頭蓋刺激脊髄運動誘発電位(spinal MEP)
体性感覚誘発電位(SEP)
II 腫瘍
硬膜外腫瘍—胸椎前方固定術:Transthoracic approach
■本術式の特徴
■手術手技
術前準備
手術手技
術後管理
後療法
■硬膜外腫瘍に対する胸椎前方固定術のコンセプト
髄膜腫
■本術式の特徴
■脊椎レベルに発生する髄膜腫とは
■胸椎レベルの硬膜内髄膜腫(背外側および腹外側)の手術
術前準備
手術手技
■硬膜外進展を伴う上位頚椎髄膜腫の手術
術前準備
手術手技
神経鞘腫
■本術式の特徴
■硬膜内限局神経鞘腫
術前準備
手術手技:マクロ手技
手術手技:マイクロ操作
■砂時計型神経鞘腫
術前準備
手術手技:マクロ手技
手術手技:マイクロ操作
上衣腫
■本術式の特徴
■手術手技
術前準備
手術手技
術後経過
まとめ
■粘液乳頭状上衣腫
グリオーマ
■本術式の特徴
■手術手技
術前準備
手術手技
■後療法
血管性腫瘍
■本術式の特徴
■手術手技
術前準備
手術手技:マクロ手技
手術手技:マイクロ操作
脊髄・脊椎腫瘍に対する放射線治療
■放射線治療の特徴
■治療手技
照射の準備
手技
合併症
III 血管障害
脊髄動静脈奇形:直達手術
■本術式の特徴
■手術手技
治療方法の決定
部位の決定
術前準備
手術手技:Dural AVFの場合
手術手技:Perimedullary AVFの場合
脊髄動静脈奇形:血管内手術
■本術式の特徴
■手術手技
術前準備
手術手技
■脊髄動静脈奇形の実際
硬膜動静脈瘻
辺縁動静脈瘻
脊髄動静脈奇形
■合併症
IV 脊髄空洞症
Chiari奇形の手術:大孔部減圧術と後頭蓋窩拡大形成術
■本術式の特徴
■手術に必要な解剖
大孔部周辺の解剖
■手術手技
術前準備
手術手技
■合併症
脊髄癒着性くも膜炎:空洞−くも膜下腔シャント術
■本術式の特徴
■空洞−くも膜下腔シャント(Syrinx-Subarachnoid shunt)
術前準備
手術手技
■術後管理,合併症
V 小児
脊髄披裂
■本術式の特徴
■手術手技
術前準備
手術手技
術後管理
■合併症の予防と対応
腰仙部脂肪腫
■本術式の特徴
■手術手技
術前評価
手術手技
■各病型の手術の特徴
Filar type lipoma
Caudal type lipoma
Dorsal type lipoma
Combined type lypoma
Lypomyelomeningocele
■まとめ
VI その他
神経障害性疼痛の治療
■アウトライン
■定義と分類
■症状と診断
■痛覚の伝達と抑制
痛覚伝達経路
痛覚抑制機構
■神経障害性疼痛のメカニズム
末梢神経系での病態
中枢神経系での病態
その他
Drug challenging test
■神経障害性疼痛の治療
薬物療法
外科治療
脊髄炎の診断と治療
■アウトライン
■脊髄炎の診断と治療
ウイルス性脊髄炎
HTLV-1関連脊髄症(HAM)
脊髄サルコイドーシス
感染後,ワクチン接種後脊髄炎
多発性硬化症(MS)
視神経脊髄炎(NMO)
脊髄髄内腫瘍の画像診断
■アウトライン
■髄内腫瘍の画像診断
星細胞系腫瘍
上衣細胞系腫瘍
血管芽腫 hemangioblastoma
髄内海綿状血管腫 cavernous hemangioma
胚細胞腫 germ cell tumor
原発性髄内悪性リンパ腫 primary intramedullary malignant lymphoma
髄内神経鞘腫 intramedullary schwannoma
■髄内腫瘍に類似した画像所見を示す非腫瘍性疾患
横断性脊髄炎 transverse myelitis
神経サルコイドーシス sarcoidosis
硬膜動静脈瘻 dural arteriovenous fistula
亜急性壊死性脊髄炎 subacute necrotizing myelitis
脊髄血管の機能解剖
■アウトライン
■脊髄血管の機能解剖
脊髄動脈とは
根動脈
脊髄に関与する根動脈
脊髄自身への動脈
脊髄内部への動脈
脊髄外部の成分に対する血液供給
硬膜への血管
脊髄の手術解剖
■アウトライン
■脊髄の手術解剖
脊髄の全体像
髄膜
後正中溝
後正中中隔
DREZ
脊髄動脈系
脊髄静脈系
神経根の血管系
脊髄モニタリング
■アウトライン
■モニタリングの実際
経頭蓋電気刺激筋誘発電位(myogenic MEP)
経頭蓋刺激脊髄運動誘発電位(spinal MEP)
体性感覚誘発電位(SEP)
II 腫瘍
硬膜外腫瘍—胸椎前方固定術:Transthoracic approach
■本術式の特徴
■手術手技
術前準備
手術手技
術後管理
後療法
■硬膜外腫瘍に対する胸椎前方固定術のコンセプト
髄膜腫
■本術式の特徴
■脊椎レベルに発生する髄膜腫とは
■胸椎レベルの硬膜内髄膜腫(背外側および腹外側)の手術
術前準備
手術手技
■硬膜外進展を伴う上位頚椎髄膜腫の手術
術前準備
手術手技
神経鞘腫
■本術式の特徴
■硬膜内限局神経鞘腫
術前準備
手術手技:マクロ手技
手術手技:マイクロ操作
■砂時計型神経鞘腫
術前準備
手術手技:マクロ手技
手術手技:マイクロ操作
上衣腫
■本術式の特徴
■手術手技
術前準備
手術手技
術後経過
まとめ
■粘液乳頭状上衣腫
グリオーマ
■本術式の特徴
■手術手技
術前準備
手術手技
■後療法
血管性腫瘍
■本術式の特徴
■手術手技
術前準備
手術手技:マクロ手技
手術手技:マイクロ操作
脊髄・脊椎腫瘍に対する放射線治療
■放射線治療の特徴
■治療手技
照射の準備
手技
合併症
III 血管障害
脊髄動静脈奇形:直達手術
■本術式の特徴
■手術手技
治療方法の決定
部位の決定
術前準備
手術手技:Dural AVFの場合
手術手技:Perimedullary AVFの場合
脊髄動静脈奇形:血管内手術
■本術式の特徴
■手術手技
術前準備
手術手技
■脊髄動静脈奇形の実際
硬膜動静脈瘻
辺縁動静脈瘻
脊髄動静脈奇形
■合併症
IV 脊髄空洞症
Chiari奇形の手術:大孔部減圧術と後頭蓋窩拡大形成術
■本術式の特徴
■手術に必要な解剖
大孔部周辺の解剖
■手術手技
術前準備
手術手技
■合併症
脊髄癒着性くも膜炎:空洞−くも膜下腔シャント術
■本術式の特徴
■空洞−くも膜下腔シャント(Syrinx-Subarachnoid shunt)
術前準備
手術手技
■術後管理,合併症
V 小児
脊髄披裂
■本術式の特徴
■手術手技
術前準備
手術手技
術後管理
■合併症の予防と対応
腰仙部脂肪腫
■本術式の特徴
■手術手技
術前評価
手術手技
■各病型の手術の特徴
Filar type lipoma
Caudal type lipoma
Dorsal type lipoma
Combined type lypoma
Lypomyelomeningocele
■まとめ
VI その他
神経障害性疼痛の治療
■アウトライン
■定義と分類
■症状と診断
■痛覚の伝達と抑制
痛覚伝達経路
痛覚抑制機構
■神経障害性疼痛のメカニズム
末梢神経系での病態
中枢神経系での病態
その他
Drug challenging test
■神経障害性疼痛の治療
薬物療法
外科治療
脊髄炎の診断と治療
■アウトライン
■脊髄炎の診断と治療
ウイルス性脊髄炎
HTLV-1関連脊髄症(HAM)
脊髄サルコイドーシス
感染後,ワクチン接種後脊髄炎
多発性硬化症(MS)
視神経脊髄炎(NMO)
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脳神経外科医が識っておくべき脊髄外科のすべてを網羅
脊髄疾患の症例は脳神経外科ではまだまだ少ないが,頭蓋内疾患でのマイクロサージェリーで培われた微細な手術手技は脊髄外科手術でも十分に活かすことができると考える。本書では画像診断・モニタリングにはじまり,腫瘍,血管障害,小児などに対する具体的な手術手技まで,脳神経外科医が識っておくべき脊髄外科の知識を網羅する。「NS NOW No.4 脳神経外科医のための脊椎外科」と合わせて脊椎脊髄外科の臨床に活用していただきたい。