老年医学テキスト
改訂第3版
定価 7,700円(税込) (本体7,000円+税)
- A5判 640ページ 上製,2色
- 2008年6月13日刊行
- ISBN978-4-7583-0475-7
序文
第3版 巻頭言
本書の初版は,老年病医学の研修用テキストとして1997年に発刊された。記述されている内容は,老年医学会専門医制度の研修カリキュラムの項目・内容に準拠している。日本老年医学会教育委員会が編集の責任を持ち,執筆者の大多数は日本老年医学会の評議員や専門医である。本書はコンパクトにまとまっており,老年病専門医ばかりではなく,高齢者の医療を担う一般医やコメディカルの人々にも役立ち,日本の老年医学分野のバイブル的な存在の教科書であると考える。
その後,2002年に改訂第2版が出版されたが,コンピュターなどの情報分野の技術革新と同様,日進月歩の勢いで改革が進んでいる医療,教育や制度に対応するため,今回,6年振りに改訂第3版を発行した。
欧米の先進国が経験したことのないスピードで高齢化が進んでいる日本において,増加する高齢者の医療にどのように対処するかが大問題となっている。高齢者が,増加しているという指標の中で最も分かりやすいものは,100歳を超えた老人である百寿者の人数の推移である。1963年には全国で百寿者が153人であったが,現在は,全国では合計3万人に達しており,その人数は指数関数的に増加している。このままの割合で増加すると,団塊の世代が百寿者になる2050年頃(約40年後)には,全国で百寿者が100万人前後になるだろうと予想されている。勿論,65歳以上の老人が全人口に占める割合も,2050年には,40%前後になると予想される。このことは,今後,益々,高齢者の医療が重要となることを示唆している。
迫っている高齢化社会に対応するために 本年4月から開始された「後期高齢者医療制度」は,日本老年医学会に最も関連する制度であり,これまでの日本老年医学会の経験を本制度の普及に生かせるように努力しているところである。「後期高齢者医療制度」の中の「かかりつけ医=高齢者担当医」の受ける研修の内容の多くは本テキスト内に詳細に記載されており,本テキストの内容を理解すれば「かかりつけ医」の責務は果たせるものと考える。「かかりつけ医」となるためのキーワードとなる老年医学的総合機能評価,退院支援,認知症,服薬指導,在宅医療,終末期医療などはすべて本テキストに記載されている。
さらに,改訂第2版出版後,今回の出版までの出来事は,2004年から始まった「卒後研修義務化」がある。この制度により,医師数の診療科や地域による偏在が顕著となり,さらに医師の絶対数の不足が露呈した。また,2000年から始まった「介護保険制度」については,改革が2005年に行われたが,やはり増え続ける高齢者の介護にいかに対応するかが問題となっている。
高齢者医療を廻る諸改革に対処するためにも,老年病医学分野の最新の基本的な情報はこのテキストから得られるため,大いにこのテキストを利用して,最新の有用な知識を吸収して欲しい。
平成20年5月
日本老年医学会教育委員会
委員長 三木 哲郎
本書の初版は,老年病医学の研修用テキストとして1997年に発刊された。記述されている内容は,老年医学会専門医制度の研修カリキュラムの項目・内容に準拠している。日本老年医学会教育委員会が編集の責任を持ち,執筆者の大多数は日本老年医学会の評議員や専門医である。本書はコンパクトにまとまっており,老年病専門医ばかりではなく,高齢者の医療を担う一般医やコメディカルの人々にも役立ち,日本の老年医学分野のバイブル的な存在の教科書であると考える。
その後,2002年に改訂第2版が出版されたが,コンピュターなどの情報分野の技術革新と同様,日進月歩の勢いで改革が進んでいる医療,教育や制度に対応するため,今回,6年振りに改訂第3版を発行した。
欧米の先進国が経験したことのないスピードで高齢化が進んでいる日本において,増加する高齢者の医療にどのように対処するかが大問題となっている。高齢者が,増加しているという指標の中で最も分かりやすいものは,100歳を超えた老人である百寿者の人数の推移である。1963年には全国で百寿者が153人であったが,現在は,全国では合計3万人に達しており,その人数は指数関数的に増加している。このままの割合で増加すると,団塊の世代が百寿者になる2050年頃(約40年後)には,全国で百寿者が100万人前後になるだろうと予想されている。勿論,65歳以上の老人が全人口に占める割合も,2050年には,40%前後になると予想される。このことは,今後,益々,高齢者の医療が重要となることを示唆している。
迫っている高齢化社会に対応するために 本年4月から開始された「後期高齢者医療制度」は,日本老年医学会に最も関連する制度であり,これまでの日本老年医学会の経験を本制度の普及に生かせるように努力しているところである。「後期高齢者医療制度」の中の「かかりつけ医=高齢者担当医」の受ける研修の内容の多くは本テキスト内に詳細に記載されており,本テキストの内容を理解すれば「かかりつけ医」の責務は果たせるものと考える。「かかりつけ医」となるためのキーワードとなる老年医学的総合機能評価,退院支援,認知症,服薬指導,在宅医療,終末期医療などはすべて本テキストに記載されている。
さらに,改訂第2版出版後,今回の出版までの出来事は,2004年から始まった「卒後研修義務化」がある。この制度により,医師数の診療科や地域による偏在が顕著となり,さらに医師の絶対数の不足が露呈した。また,2000年から始まった「介護保険制度」については,改革が2005年に行われたが,やはり増え続ける高齢者の介護にいかに対応するかが問題となっている。
高齢者医療を廻る諸改革に対処するためにも,老年病医学分野の最新の基本的な情報はこのテキストから得られるため,大いにこのテキストを利用して,最新の有用な知識を吸収して欲しい。
平成20年5月
日本老年医学会教育委員会
委員長 三木 哲郎
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目次
I—老年医学総論
1.老年学と老年医学
1)老年学と老年医学の概念
2)人口動態
3)老年医学の意義および専門医の役割
2.老化の機序
1)老化の定義および老化学説
2)生理的老化と病的老化
3)老化のバイオロジー
4)老化度の判定
5)遺伝性早老症
3.老年病の臨床
1)高齢者の主要な疾患
2)高齢者の病態と疾患の一般的特徴
3)要介護にいたる疾患
4)高齢者の悪性腫瘍
5)老年病の臓器相関(複合性疾患)
6)多臓器不全
7)高齢者との面談—外来,入院,在宅の各場面で
8)高齢者の生活指導
9)チーム医療のすすめ方
10)高齢者の看護
11)高齢者の介護
12)退院計画
13)医原性疾患
4.高齢者に特有な症候
1)老年症候群
2)意識障害
3)失神
4)認知症
5)せん妄
6)抑うつ
7)頭痛
8)不眠
9)めまい
10)手足のしびれ
11)言語障害
12)腰痛
13)歩行障害
14)転倒・骨折
15)尿失禁
16)便秘
17)寝たきり
18)廃用症候群
19)褥瘡
20)脱水
21)浮腫
22)嚥下障害・誤嚥
23)吐血・下血
5.高齢者の救急疾患と対策
1)心血管系疾患
2)脳血管障害
3)呼吸器疾患
4)消化器疾患
6.高齢者の検査値の変化と意義
1)高齢者の基準値
2)異常値の評価
7.高齢者の栄養
1)高齢者の栄養状態の特徴
2)高齢者の栄養状態の評価
3)健康維持のための栄養
4)高齢者の栄養治療
5)高齢者の過栄養に対する栄養療法
8.高齢者薬物療法
1)高齢者の薬物動態と薬力学
2)高齢者の薬物処方上の留意点
3)高齢者の薬効評価
4)高齢者医療と漢方
5)服薬指導
9.予防医学
1)老化・老年病の危険因子と予防
2)ライフスタイルの改善
3)老年病と生活習慣病
10.高齢者の生活機能障害の評価
1)老年医学的総合機能評価(CGA)
2)身体的機能評価
3)精神心理機能評価
4)介護者,サービス利用,社会環境に関する総合評価
5)高齢者のQOL
11.高齢者介護と医療
1)医療サービスと福祉サービス
2)施設介護と在宅介護
3)訪問診療(在宅医療)
4)介護保険制度
5)高齢社会を支える医療保険制度
12.高齢者介護とリハビリテーション
1)高齢者に対するリハビリテーション総論
2)高齢者介護の特徴と実際
3)高齢者のリハビリテーション 運動療法
4)高齢者のリハビリテーション 作業療法
5)高齢者のリハビリテーション 言語療法
6)嚥下障害の介護とリハビリテーション
7)脳血管障害後遺症の介護とリハビリテーション
8)骨折後の介護とリハビリテーション
9)認知症を有する高齢者の介護
10)廃用性症候群の予防
11)介護保険による在宅介護とリハビリテーション
12)介護予防とリハビリテーション
13)福祉機器
13.高齢者の終末期医療と医療倫理
1)終末期医療
2)安楽死と尊厳死
3)Advance Directive(事前指定書)
4)ホスピス・緩和ケア
14.高齢者と精神医療
1)問題行動(徘徊,妄想,暴言,暴行ほか)
2)身体抑制,薬物による鎮静
3)虐待
4)加齢と概日リズム
5)コミュニケーション障害
6)向精神薬の使用
15.その他
1)医療経済
2)EBM(evidence based medicine)
3)鍼灸治療と相補代替医療
4)高齢者医療に関する法律
5)医療安全・医療事故対策
II—老年病各論
1.精神疾患
1)加齢変化と精神疾患
2)老年期うつ病
3)老年期精神病
2.神経疾患
1)加齢変化と神経疾患
2)脳血管障害
3)アルツハイマー病
4)パーキンソン病
3.呼吸器疾患
1)加齢変化と呼吸器疾患
2)肺炎
3)肺癌
4)慢性閉塞性肺疾患
5)肺結核
6)インフルエンザ・感冒
7)呼吸不全
4.心臓疾患
1)加齢変化と心臓疾患
2)虚血性心疾患
3)うっ血性心不全
4)不整脈
5)弁膜疾患
5.血圧異常と血管系疾患
1)加齢変化と血圧,動脈硬化
2)高血圧
3)低血圧
4)末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)
6.消化器疾患
1)加齢変化と消化器疾患
2)胃腫瘍
3)大腸腫瘍
4)肝硬変
7.腎・泌尿器疾患
1)加齢変化と腎・泌尿器疾患
2)排尿障害
3)前立腺疾患
4)腎不全
5)加齢男性・性機能低下症候群—男性更年期障害および男性メタボリック症候群
8.内分泌・代謝疾患
1)加齢変化と内分泌・代謝疾患
2)糖尿病
3)甲状腺疾患
4)脂質代謝異常
9.骨・運動器疾患
1)加齢変化と骨・運動器疾患
2)骨粗鬆症
3)変形性骨関節疾患
10.血液疾患
1)加齢変化と血液疾患
2)貧血
3)悪性リンパ腫
4)骨髄異形成症候群
5)多発性骨髄腫
6)白血病
11.感染症・免疫・膠原病
1)高齢者の感染防御能と感染症
2)高齢者に多い感染症とその病原体
3)関節リウマチ
4)リウマチ性多発筋痛症
5)その他の膠原病
12.感覚器障害
1)加齢と感覚器の変化
2)老人性(加齢性)白内障
3)その他の視覚障害
4)聴覚障害
5)味覚障害
13.皮膚・口腔疾患
1)加齢と皮膚の変化
2)瘙痒症
3)帯状疱疹
4)薬疹
5)口腔疾患
14.外科疾患
1)高齢者外科疾患の特徴
2)術前評価
3)術後管理
4)救急手術の適応と予後
5)脳,神経疾患の手術適応
6)循環器疾患の手術適応
7)消化器疾患の手術適応
8)呼吸器疾患の手術適応
9)内視鏡および腹腔鏡下手術の適応
10)麻酔と覚醒
1.老年学と老年医学
1)老年学と老年医学の概念
2)人口動態
3)老年医学の意義および専門医の役割
2.老化の機序
1)老化の定義および老化学説
2)生理的老化と病的老化
3)老化のバイオロジー
4)老化度の判定
5)遺伝性早老症
3.老年病の臨床
1)高齢者の主要な疾患
2)高齢者の病態と疾患の一般的特徴
3)要介護にいたる疾患
4)高齢者の悪性腫瘍
5)老年病の臓器相関(複合性疾患)
6)多臓器不全
7)高齢者との面談—外来,入院,在宅の各場面で
8)高齢者の生活指導
9)チーム医療のすすめ方
10)高齢者の看護
11)高齢者の介護
12)退院計画
13)医原性疾患
4.高齢者に特有な症候
1)老年症候群
2)意識障害
3)失神
4)認知症
5)せん妄
6)抑うつ
7)頭痛
8)不眠
9)めまい
10)手足のしびれ
11)言語障害
12)腰痛
13)歩行障害
14)転倒・骨折
15)尿失禁
16)便秘
17)寝たきり
18)廃用症候群
19)褥瘡
20)脱水
21)浮腫
22)嚥下障害・誤嚥
23)吐血・下血
5.高齢者の救急疾患と対策
1)心血管系疾患
2)脳血管障害
3)呼吸器疾患
4)消化器疾患
6.高齢者の検査値の変化と意義
1)高齢者の基準値
2)異常値の評価
7.高齢者の栄養
1)高齢者の栄養状態の特徴
2)高齢者の栄養状態の評価
3)健康維持のための栄養
4)高齢者の栄養治療
5)高齢者の過栄養に対する栄養療法
8.高齢者薬物療法
1)高齢者の薬物動態と薬力学
2)高齢者の薬物処方上の留意点
3)高齢者の薬効評価
4)高齢者医療と漢方
5)服薬指導
9.予防医学
1)老化・老年病の危険因子と予防
2)ライフスタイルの改善
3)老年病と生活習慣病
10.高齢者の生活機能障害の評価
1)老年医学的総合機能評価(CGA)
2)身体的機能評価
3)精神心理機能評価
4)介護者,サービス利用,社会環境に関する総合評価
5)高齢者のQOL
11.高齢者介護と医療
1)医療サービスと福祉サービス
2)施設介護と在宅介護
3)訪問診療(在宅医療)
4)介護保険制度
5)高齢社会を支える医療保険制度
12.高齢者介護とリハビリテーション
1)高齢者に対するリハビリテーション総論
2)高齢者介護の特徴と実際
3)高齢者のリハビリテーション 運動療法
4)高齢者のリハビリテーション 作業療法
5)高齢者のリハビリテーション 言語療法
6)嚥下障害の介護とリハビリテーション
7)脳血管障害後遺症の介護とリハビリテーション
8)骨折後の介護とリハビリテーション
9)認知症を有する高齢者の介護
10)廃用性症候群の予防
11)介護保険による在宅介護とリハビリテーション
12)介護予防とリハビリテーション
13)福祉機器
13.高齢者の終末期医療と医療倫理
1)終末期医療
2)安楽死と尊厳死
3)Advance Directive(事前指定書)
4)ホスピス・緩和ケア
14.高齢者と精神医療
1)問題行動(徘徊,妄想,暴言,暴行ほか)
2)身体抑制,薬物による鎮静
3)虐待
4)加齢と概日リズム
5)コミュニケーション障害
6)向精神薬の使用
15.その他
1)医療経済
2)EBM(evidence based medicine)
3)鍼灸治療と相補代替医療
4)高齢者医療に関する法律
5)医療安全・医療事故対策
II—老年病各論
1.精神疾患
1)加齢変化と精神疾患
2)老年期うつ病
3)老年期精神病
2.神経疾患
1)加齢変化と神経疾患
2)脳血管障害
3)アルツハイマー病
4)パーキンソン病
3.呼吸器疾患
1)加齢変化と呼吸器疾患
2)肺炎
3)肺癌
4)慢性閉塞性肺疾患
5)肺結核
6)インフルエンザ・感冒
7)呼吸不全
4.心臓疾患
1)加齢変化と心臓疾患
2)虚血性心疾患
3)うっ血性心不全
4)不整脈
5)弁膜疾患
5.血圧異常と血管系疾患
1)加齢変化と血圧,動脈硬化
2)高血圧
3)低血圧
4)末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)
6.消化器疾患
1)加齢変化と消化器疾患
2)胃腫瘍
3)大腸腫瘍
4)肝硬変
7.腎・泌尿器疾患
1)加齢変化と腎・泌尿器疾患
2)排尿障害
3)前立腺疾患
4)腎不全
5)加齢男性・性機能低下症候群—男性更年期障害および男性メタボリック症候群
8.内分泌・代謝疾患
1)加齢変化と内分泌・代謝疾患
2)糖尿病
3)甲状腺疾患
4)脂質代謝異常
9.骨・運動器疾患
1)加齢変化と骨・運動器疾患
2)骨粗鬆症
3)変形性骨関節疾患
10.血液疾患
1)加齢変化と血液疾患
2)貧血
3)悪性リンパ腫
4)骨髄異形成症候群
5)多発性骨髄腫
6)白血病
11.感染症・免疫・膠原病
1)高齢者の感染防御能と感染症
2)高齢者に多い感染症とその病原体
3)関節リウマチ
4)リウマチ性多発筋痛症
5)その他の膠原病
12.感覚器障害
1)加齢と感覚器の変化
2)老人性(加齢性)白内障
3)その他の視覚障害
4)聴覚障害
5)味覚障害
13.皮膚・口腔疾患
1)加齢と皮膚の変化
2)瘙痒症
3)帯状疱疹
4)薬疹
5)口腔疾患
14.外科疾患
1)高齢者外科疾患の特徴
2)術前評価
3)術後管理
4)救急手術の適応と予後
5)脳,神経疾患の手術適応
6)循環器疾患の手術適応
7)消化器疾患の手術適応
8)呼吸器疾患の手術適応
9)内視鏡および腹腔鏡下手術の適応
10)麻酔と覚醒
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日本老年医学会教育委員会編集による公式テキスト
「老年病専門医」の資格を取得するためのテキストブック。「老年病専門医専門制度カリキュラム」に準拠し,日本老年医学会教育委員会編集による公式テキスト。
第2版刊行より5年以上が経過し,「介護保険制度の変更」,「後期高齢者医療制度の発足」などの制度面,また新たな治療法の出現などの臨床面も大きく変化している。現在の老年医学の実際に則して改訂。紙面には各項目に「key point」を設け,特に重要な事項をまとめた。また,高齢者医療に携わるコメディカルやスタッフ,さらに学生が「老年医学」を学ぶための教科書としても最適。