呼吸器外科
ロボット支援手術実践マニュアル
[Web動画付]
ロボットの導入と安全・確実な手術のために
定価 9,900円(税込) (本体9,000円+税)
- A4判 140ページ オールカラー,イラスト20点,写真180点
- 2019年5月17日刊行
- ISBN978-4-7583-0466-5
序文
発刊に寄せて
このたび,『呼吸器外科ロボット支援手術実践マニュアル-ロボット手術の安全な導入と確実な手術のために-』が,日本呼吸器外科学会 / 呼吸器外科ロボット支援手術検討部会の編集により作成され上梓されることになりました。これは,平成30年4月より呼吸器外科領域のロボット支援手術が保険適用になり,各施設で導入が進んできていることに対応したものです。副題に「ロボット手術の安全な導入と確実な手術のために」とありますように,これからロボット支援手術の導入を考えている,あるいは導入を開始したがまだ不安がある呼吸器外科医の方々には,ぜひ,本書を手にとって熟読していただきたいと考えています。
わが国では,すでに過半数の肺癌手術がVATSで行われ,その多くはmulti-port VATSによります。一方,アジア,欧州ではsingle-port VATSが増加しており,北米ではロボット支援手術が普及しています。そういったなか,single-portロボットの開発も進められており,1990年代から2000年代にかけ肺癌手術が開胸手術からVATSに移行したときのような大きなパラダイムシフトが,再び呼吸器外科領域でも起きる可能性があります。われわれは今大きな時代の境目にいるのかもしれません。
現在のロボット支援手術は,熟練した術者によるmulti-port VATSを凌駕するものではないかもしれません。しかし,ロボット支援手術にはメリットがあるのも事実です。本書を熟読していただき,準備ができた施設から,この新しい技術へ挑戦していただければと思います。
しかし,新しい技術の導入にあたっては,経験症例が増加するにつれ不測の事態に直面することも増加すると考えられます。何よりも安全な技術の普及が重要とわれわれは考えています。本書は,呼吸器外科ロボット支援手術検討部会を中心としたわが国における経験豊富な執筆陣により作成されています。本書は,この新しい技術に携わる多くの呼吸器外科医にとってよき道標になることでしょう。患者にとって最善の手術治療を行っていただくために,本書が役立つことを願っています。
最後に,本書の作成に多大なるご尽力をいただいた,執筆者ならびに部会員の先生方に対し深く感謝いたします。
2019年 陽春
千田雅之
獨協医科大学呼吸器外科学講座 教授
日本呼吸器外科学会 理事長
---------------------------------
序
このたび,日本呼吸器外科学会 / 呼吸器外科ロボット支援手術検討部会の編集で,『呼吸器外科ロボット支援手術実践マニュアル-ロボット手術の安全な導入と確実な手術のために-』が刊行されました。目的は,2018年4月から保険適用となった呼吸器外科のロボット支援手術が安全に導入され,広く普及することを手助けするためです。
本邦では実際に2018年4月からの保険収載後1年間で,肺癌と縦隔腫瘍に対して,約1,000例のロボット支援手術が行われました。しかしながら,これまで呼吸器外科領域では,ロボット支援手術に特化したテキストは発刊されておらず,各施設が手探りで手術を行ってきました。従って,このたびはこれから導入する施設,上手に行いたい施設のために,画期的なロボット支援手術書になることを目指しました。
本書は専門性の高い内容となっていますが,理解が深まるように,オールカラーで図や写真を数多く配置して,各項目には筆者からのアドバイスを入れました。また,第Ⅳ章の手術手技には典型的な手術ビデオを加えて実践に役立つように工夫しています。ご多忙のなかで執筆にご協力をしていただいた先生方,サポートをしていただいたメジカルビュー社の関係者各位に深く感謝を申し上げます。
呼吸器外科のロボット支援手術は,まだまだ発展途上ですが,将来へ向けてたくさんの魅力を有しています。問題点を共有して,よりよい方向へ進むことを心から期待しています。本書が呼吸器外科医はもちろん,他科の外科医,修練医,研修医,看護師,臨床工学技士など,多くの医療従事者の皆さまのためにもお役に立つことを願ってやみません。
おわりに,呼吸器外科のロボット支援手術に対する日本呼吸器外科学会のこれまでの取り組みを紹介して「序」に代えます。
【呼吸器外科ロボット支援手術ガイドラインの制定】
・2015年12月制定
・2018年7月改訂
【呼吸器外科ロボット支援手術プロクター制度の運用】
・2018年3月制定
・2018年9月から運用開始
・2019年3月までに19名のプロクターを認定
・日本呼吸器外科学会事務局でプロクター依頼書と報告書を管理
【呼吸器外科ロボット支援手術の症例レジストリー制度の実施】
・2018年9月からNCDを用いて全例の前向き登録を開始
・内視鏡外科学会と協力して運用
【呼吸器外科ロボット支援手術の講習会,セミナーの企画,実施】
・プロクター講習会の開催
・学会でのセミナー企画
2019年4月
中村廣繁
鳥取大学医学部器官制御外科学講座胸部外科学分野 教授
日本呼吸器外科学会 / 呼吸器外科ロボット支援手術検討部会 部会長
このたび,『呼吸器外科ロボット支援手術実践マニュアル-ロボット手術の安全な導入と確実な手術のために-』が,日本呼吸器外科学会 / 呼吸器外科ロボット支援手術検討部会の編集により作成され上梓されることになりました。これは,平成30年4月より呼吸器外科領域のロボット支援手術が保険適用になり,各施設で導入が進んできていることに対応したものです。副題に「ロボット手術の安全な導入と確実な手術のために」とありますように,これからロボット支援手術の導入を考えている,あるいは導入を開始したがまだ不安がある呼吸器外科医の方々には,ぜひ,本書を手にとって熟読していただきたいと考えています。
わが国では,すでに過半数の肺癌手術がVATSで行われ,その多くはmulti-port VATSによります。一方,アジア,欧州ではsingle-port VATSが増加しており,北米ではロボット支援手術が普及しています。そういったなか,single-portロボットの開発も進められており,1990年代から2000年代にかけ肺癌手術が開胸手術からVATSに移行したときのような大きなパラダイムシフトが,再び呼吸器外科領域でも起きる可能性があります。われわれは今大きな時代の境目にいるのかもしれません。
現在のロボット支援手術は,熟練した術者によるmulti-port VATSを凌駕するものではないかもしれません。しかし,ロボット支援手術にはメリットがあるのも事実です。本書を熟読していただき,準備ができた施設から,この新しい技術へ挑戦していただければと思います。
しかし,新しい技術の導入にあたっては,経験症例が増加するにつれ不測の事態に直面することも増加すると考えられます。何よりも安全な技術の普及が重要とわれわれは考えています。本書は,呼吸器外科ロボット支援手術検討部会を中心としたわが国における経験豊富な執筆陣により作成されています。本書は,この新しい技術に携わる多くの呼吸器外科医にとってよき道標になることでしょう。患者にとって最善の手術治療を行っていただくために,本書が役立つことを願っています。
最後に,本書の作成に多大なるご尽力をいただいた,執筆者ならびに部会員の先生方に対し深く感謝いたします。
2019年 陽春
千田雅之
獨協医科大学呼吸器外科学講座 教授
日本呼吸器外科学会 理事長
---------------------------------
序
このたび,日本呼吸器外科学会 / 呼吸器外科ロボット支援手術検討部会の編集で,『呼吸器外科ロボット支援手術実践マニュアル-ロボット手術の安全な導入と確実な手術のために-』が刊行されました。目的は,2018年4月から保険適用となった呼吸器外科のロボット支援手術が安全に導入され,広く普及することを手助けするためです。
本邦では実際に2018年4月からの保険収載後1年間で,肺癌と縦隔腫瘍に対して,約1,000例のロボット支援手術が行われました。しかしながら,これまで呼吸器外科領域では,ロボット支援手術に特化したテキストは発刊されておらず,各施設が手探りで手術を行ってきました。従って,このたびはこれから導入する施設,上手に行いたい施設のために,画期的なロボット支援手術書になることを目指しました。
本書は専門性の高い内容となっていますが,理解が深まるように,オールカラーで図や写真を数多く配置して,各項目には筆者からのアドバイスを入れました。また,第Ⅳ章の手術手技には典型的な手術ビデオを加えて実践に役立つように工夫しています。ご多忙のなかで執筆にご協力をしていただいた先生方,サポートをしていただいたメジカルビュー社の関係者各位に深く感謝を申し上げます。
呼吸器外科のロボット支援手術は,まだまだ発展途上ですが,将来へ向けてたくさんの魅力を有しています。問題点を共有して,よりよい方向へ進むことを心から期待しています。本書が呼吸器外科医はもちろん,他科の外科医,修練医,研修医,看護師,臨床工学技士など,多くの医療従事者の皆さまのためにもお役に立つことを願ってやみません。
おわりに,呼吸器外科のロボット支援手術に対する日本呼吸器外科学会のこれまでの取り組みを紹介して「序」に代えます。
【呼吸器外科ロボット支援手術ガイドラインの制定】
・2015年12月制定
・2018年7月改訂
【呼吸器外科ロボット支援手術プロクター制度の運用】
・2018年3月制定
・2018年9月から運用開始
・2019年3月までに19名のプロクターを認定
・日本呼吸器外科学会事務局でプロクター依頼書と報告書を管理
【呼吸器外科ロボット支援手術の症例レジストリー制度の実施】
・2018年9月からNCDを用いて全例の前向き登録を開始
・内視鏡外科学会と協力して運用
【呼吸器外科ロボット支援手術の講習会,セミナーの企画,実施】
・プロクター講習会の開催
・学会でのセミナー企画
2019年4月
中村廣繁
鳥取大学医学部器官制御外科学講座胸部外科学分野 教授
日本呼吸器外科学会 / 呼吸器外科ロボット支援手術検討部会 部会長
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目次
I ロボット支援手術の導入に向けての準備 岩﨑昭憲
導入にあたっての準備
手術室の整備
チーム結成と手術開始までの準備について
第1例目の手術スタートに向けて
プロクターについて
手術室内
II ロボット支援手術のトレーニング 伊達洋至
運転免許証と同じように
術者用トレーニング
症例見学(1日)
オンライントレーニング(1 ~ 2時間)
オンサイトトレーニング(半日)
TRベーシックトレーニング(1日)
助手用トレーニング
継続したトレーニングの重要性
III ロボット支援手術に用いる器具と基本操作法 伊達洋至
術者の好みに適した器具選択が重要
モノポーラインストゥルメント
バイポーラインストゥルメント
グラスパ
そのほかの8mmインストゥルメント
エネルギーデバイス
ステープラー
IV ロボット支援手術手技
肺癌に対する肺葉切除術 鈴木健司
手術の概要
手術全般におけるコツ
血管剥離
第3アームについて
胸膜全面癒着症例
セットアップ
右上葉切除
中葉切除
右下葉切除
左上葉切除
左下葉切除
縦隔リンパ節郭清
肺癌に対する区域切除術 宮田義浩,岡田守人
手術の概要
肺癌に対する区域切除の適応
ロボット支援肺区域切除
ロボット支援下区域切除手術の実際
体位とドッキング
ポート位置
鉗子の選択
手術症例
【症例1】左S6区域切除,da Vinci Xiシステム使用
【症例2】右S8区域切除,da Vinci Xiシステム使用
胸腺摘出術:側胸アプローチ 中村廣繁,春木朋広,三和 健,谷口雄司
手術の概要
手術適応
手術方法
セットアップ
手術症例
【症例1】初期導入例としてふさわしい胸腺腫
【症例2】心不全を合併した胸腺癌
【症例3】左腕頭静脈近傍の胸腺腫:右側アプローチ
【症例4】左腕頭静脈近傍の胸腺腫瘍(Castleman病):左側アプローチ
【症例5】横隔神経に接する胸腺腫に対する左側アプローチ
【症例6】大きな胸腺腫に対する右側アプローチ
【症例7】重症筋無力症を合併した大きな胸腺腫に対する両側アプローチ
【症例8】肺・心膜への浸潤型胸腺腫に対する右側アプローチ
【症例9】da Vinci Xiを用いた胸腺摘出術
胸腺摘出術:剣状突起下アプローチ 須田 隆
手術の概要
手術適応
手術方法
セットアップ
手術症例
【症例1】胸腺嚢腫
【症例2】嚢胞を伴った胸腺腫
後縦隔腫瘍に対する腫瘍摘出術 梶原直央,河手典彦,池田徳彦
手術の概要
適応と限界
術前準備
手術機器類
手術の実際
手術室の配置
体位とポート位置
手術症例
【症例1】右側傍椎体Th3-4に位置する神経原生腫瘍(神経鞘腫)
【症例2】右側高位椎体Th2-3に位置する神経原生腫瘍(神経鞘腫)
【症例3】左側傍椎体Th8-9と下行大動脈の間に位置する気管支原生嚢胞
術後管理
合併症と対策
手術時間について
出血量について
課題
V ロボット支援手術と合併症対策 春木朋広,中村廣繁,三和 健,谷口雄司
RATSの合併症:開胸・胸腔鏡アプローチとの比較
RATSの術中合併症とその対策
血管損傷に対するトラブルシューティング
気道損傷・肺実質損傷に対するトラブルシューティング
胸壁損傷に対するトラブルシューティング
神経損傷に対するトラブルシューティング
胸管損傷に対するトラブルシューティング
RATSチームで取り組む合併症対策
VI ロボット支援手術の課題と今後の展望 須田 隆
ロボット支援手術におけるシステムと手術手技の課題
ロボット支援手術の教育
ロボット支援手術の安全対策
肺癌ロボット支援手術の有用性の証明
呼吸器外科領域におけるロボット支援手術の今後の展望
導入にあたっての準備
手術室の整備
チーム結成と手術開始までの準備について
第1例目の手術スタートに向けて
プロクターについて
手術室内
II ロボット支援手術のトレーニング 伊達洋至
運転免許証と同じように
術者用トレーニング
症例見学(1日)
オンライントレーニング(1 ~ 2時間)
オンサイトトレーニング(半日)
TRベーシックトレーニング(1日)
助手用トレーニング
継続したトレーニングの重要性
III ロボット支援手術に用いる器具と基本操作法 伊達洋至
術者の好みに適した器具選択が重要
モノポーラインストゥルメント
バイポーラインストゥルメント
グラスパ
そのほかの8mmインストゥルメント
エネルギーデバイス
ステープラー
IV ロボット支援手術手技
肺癌に対する肺葉切除術 鈴木健司
手術の概要
手術全般におけるコツ
血管剥離
第3アームについて
胸膜全面癒着症例
セットアップ
右上葉切除
中葉切除
右下葉切除
左上葉切除
左下葉切除
縦隔リンパ節郭清
肺癌に対する区域切除術 宮田義浩,岡田守人
手術の概要
肺癌に対する区域切除の適応
ロボット支援肺区域切除
ロボット支援下区域切除手術の実際
体位とドッキング
ポート位置
鉗子の選択
手術症例
【症例1】左S6区域切除,da Vinci Xiシステム使用
【症例2】右S8区域切除,da Vinci Xiシステム使用
胸腺摘出術:側胸アプローチ 中村廣繁,春木朋広,三和 健,谷口雄司
手術の概要
手術適応
手術方法
セットアップ
手術症例
【症例1】初期導入例としてふさわしい胸腺腫
【症例2】心不全を合併した胸腺癌
【症例3】左腕頭静脈近傍の胸腺腫:右側アプローチ
【症例4】左腕頭静脈近傍の胸腺腫瘍(Castleman病):左側アプローチ
【症例5】横隔神経に接する胸腺腫に対する左側アプローチ
【症例6】大きな胸腺腫に対する右側アプローチ
【症例7】重症筋無力症を合併した大きな胸腺腫に対する両側アプローチ
【症例8】肺・心膜への浸潤型胸腺腫に対する右側アプローチ
【症例9】da Vinci Xiを用いた胸腺摘出術
胸腺摘出術:剣状突起下アプローチ 須田 隆
手術の概要
手術適応
手術方法
セットアップ
手術症例
【症例1】胸腺嚢腫
【症例2】嚢胞を伴った胸腺腫
後縦隔腫瘍に対する腫瘍摘出術 梶原直央,河手典彦,池田徳彦
手術の概要
適応と限界
術前準備
手術機器類
手術の実際
手術室の配置
体位とポート位置
手術症例
【症例1】右側傍椎体Th3-4に位置する神経原生腫瘍(神経鞘腫)
【症例2】右側高位椎体Th2-3に位置する神経原生腫瘍(神経鞘腫)
【症例3】左側傍椎体Th8-9と下行大動脈の間に位置する気管支原生嚢胞
術後管理
合併症と対策
手術時間について
出血量について
課題
V ロボット支援手術と合併症対策 春木朋広,中村廣繁,三和 健,谷口雄司
RATSの合併症:開胸・胸腔鏡アプローチとの比較
RATSの術中合併症とその対策
血管損傷に対するトラブルシューティング
気道損傷・肺実質損傷に対するトラブルシューティング
胸壁損傷に対するトラブルシューティング
神経損傷に対するトラブルシューティング
胸管損傷に対するトラブルシューティング
RATSチームで取り組む合併症対策
VI ロボット支援手術の課題と今後の展望 須田 隆
ロボット支援手術におけるシステムと手術手技の課題
ロボット支援手術の教育
ロボット支援手術の安全対策
肺癌ロボット支援手術の有用性の証明
呼吸器外科領域におけるロボット支援手術の今後の展望
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セットアップから手術のポイントまで。呼吸器外科ロボット支援手術のすべてがここに
2018年4月に肺癌と縦隔腫瘍に対する3つのロボット支援手術が保険適用となった。本書は日本呼吸器外科学会ロボット手術検討部会が監修する,呼吸器外科領域におけるロボット支援手術導入の手引書である。
導入に向けての準備・トレーニングから実際の手技,合併症対策まで解説している。手技では「アドバイス」としてコツを具体的に解説している。また,ストリーミング動画により,本文中の手技の実際がよくわかるようになっている。