神経内科外来シリーズ 3
もの忘れ外来
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定価 7,700円(税込) (本体7,000円+税)
- B5変型判 268ページ 2色(一部カラー)
- 2016年9月16日刊行
- ISBN978-4-7583-0384-2
電子版
序文
もの忘れ外来(メモリークリニック)は欧米では1970年代から開設され,わが国においては1994年に国立精神・神経センターにおいて初めて開設されました。以後急速に数を増し2005年には351施設,最新のデータ(認知症の人と家族の会発表)では全国で1,343施設(北海道55施設,東北81,関東346,北陸110,東海167,関西202,中国・四国65,九州・沖縄207)まで増えています。この要因は言うまでもなく認知症患者の増大であります。その他の要因として塩酸ドネぺジル(アリセプトⓇ)が1999年に発売され,認知症の中核症状に対する治療が可能となり,進行抑制作用が早期であればあるほど効果的であることが判明,2011年にはガランタミン(レミニールⓇ),リバスチグミン(リバスタッチⓇ,イクセロンⓇパッチ),メマンチン(メマリーⓇ)が相次いで発売され,認知症においても早期診断・早期治療が可能となった点,中核症状の治療に伴い周辺症状に対しても非定型向精神薬,抗てんかん薬,抗うつ薬,抑肝散,メマリーⓇなどによる効果も認められる様になった点,正常圧水頭症を始めとした疾患に対して,適切な処置により,認知機能が回復する治療可能な認知症の鑑別の必要性が認められるようになった点,2000年に始まった介護保険,2008年に始まった認知症疾患医療センター事業,2015年の新オレンジプランにより国策としての認知症対策が唱えられてきたことなどが挙げられます。
我々は2004年よりもの忘れ外来を始め,この間の経験から,もの忘れ外来の役割として①認知症の鑑別診断,②認知症の治療,③介護保険など社会的なサービスの説明と利用の推進,④家族支援などではないかと考え,診療を行っています。
本書においてはもの忘れ外来の総論に続き,それぞれの項目に専門的なメッセージを盛り込みました。もの忘れ外来の基本から,悩んだ時の辞書的な使用として利用可能かと考えます。もの忘れ外来を標榜していない非専門医,かかりつけ医の先生方にもお役に立てる内容と考えております。ご活用のほどよろしくお願いいたします。
今回快く執筆していただいた諸先生方ならびにメディカルビュー社の安原氏ならびに編集部の方々に感謝の意を表したいと存じます。
平成28年7月
埼玉精神神経センター 丸木 雄一
我々は2004年よりもの忘れ外来を始め,この間の経験から,もの忘れ外来の役割として①認知症の鑑別診断,②認知症の治療,③介護保険など社会的なサービスの説明と利用の推進,④家族支援などではないかと考え,診療を行っています。
本書においてはもの忘れ外来の総論に続き,それぞれの項目に専門的なメッセージを盛り込みました。もの忘れ外来の基本から,悩んだ時の辞書的な使用として利用可能かと考えます。もの忘れ外来を標榜していない非専門医,かかりつけ医の先生方にもお役に立てる内容と考えております。ご活用のほどよろしくお願いいたします。
今回快く執筆していただいた諸先生方ならびにメディカルビュー社の安原氏ならびに編集部の方々に感謝の意を表したいと存じます。
平成28年7月
埼玉精神神経センター 丸木 雄一
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目次
Ⅰ もの忘れ外来
総論 丸木雄一
はじめに
予約
問診票、病歴聴取
神経所見
心理テスト
画像検査
診断
病状説明
薬物療法
非薬物療法
経過観察
おわりに
Ⅱ 診察・治療の進め方
診断に必要な心理テスト 北嶋綾子
はじめに
認知機能障害のスクリーニング
認知機能の経過観察
より詳しい質問式の心理テスト
気分状態(抑うつ)の評価
複数の検査を組み合わせて行う
BPSDの評価
認知機能障害、BPSD以外の評価
全般的な知的能力と日常生活における評価
画像診断 佐々木貴浩
はじめに
頭部MRIによる形態診断
脳血流SPECT による認知症の鑑別診断
DATスキャン
MIBG心筋シンチグラフィー
アミロイドPET
主な認知症疾患の画像所見
認知症疾患画像診断のフローチャート
BPSD に対する薬物療法 谷古宇慎悟
はじめに
睡眠−覚醒周期の改善
BPSDに対する薬物療法
おわりに
BPSD に対する非薬物療法 藤井昌彦、佐々木英忠
はじめに
介護者の精神行動異常(BPSC)
BPSDの非薬物治療(情動療法)
認知症の予防 宇良千秋
はじめに
認知症発症に影響を及ぼす生活習慣
認知症予防プログラムの実際と効果
住民による認知症予防活動の実践例
認知症になってもQOLを低下させないために
高度認知症患者の看取り―人工的水分・栄養補給法の問題を中心に 会田薫子
はじめに
アルツハイマー型認知症の終末期のAHNに関する調査
医師の意識変化
ADの終末期の判断
ADの終末期にAHNを行わないことは緩和ケア
AHNの差し控えや終了も適切な選択肢
「終末期」の判断が難しいとき
生存期間の延長効果の意味の多義性―医学的判断の限界
evidence-based narrativeの構築へ
おわりに
介護者に対する支援 荒木眞知子
はじめに
生活障害
家族介護者の心理
家族支援の目的
「埼玉精神神経センター家族の集い」5 年間の経験
家族以外の介護実践者の支援
一般住民向けの施策
その他介護者支援の実践例
根本治療に向けての創薬 杉本八郎
市場を創造したドネペジル塩酸塩
Stay Hungry, Stay Foolish
塩酸ドネペジルの発見
ドネペジルの薬理作用
ドネペジルの臨床治験
根本治療薬へ向けての創薬
AD根本治療薬の開発成功のために
Ⅲ 主な認知症の診断と治療
軽度認知症(MCI)の診断と治療 高野大樹、長田 乾
はじめに
MCIの概念
MCIの診断
MCIの疫学
MCIの症候
MCIの病理
MCIの経過
MCIの治療
外来診療の実際
おわりに
Case Study
アルツハイマー病の診断と治療 和田健二、中島健二
はじめに
病態
臨床症状
診察
検査
診断フローチャートと診断基準
治療
おわりに
Case Study
アルツハイマー病の診断と治療
ドネペジルを使う患者、使わない患者 田北昌史
はじめに
ドネペジルを使う患者
ドネペジルを使わない患者
おわりに
Case Study
アルツハイマー病の診断と治療
メマンチンを使う患者、使わない患者 大野智之
はじめに
メマンチンの特性と投与のポイント
メマンチンを使う患者
メマンチンを使わない患者(=メマンチンを使えない患者)
BPSD改善を期待してメマンチンを投与するとき
Case Study
アルツハイマー病の診断と治療
ガランタミンを使う患者、使わない患者 北村ゆり
はじめに
ガランタミンの特徴
ガランタミンを使う患者
ガランタミンを使わない患者
Case Study
アルツハイマー病の診断と治療
リバスチグミンパッチを使う患者、使わない患者 丸木雄一
はじめに
リバスチグミンパッチを使用する患者
リバスチグミンパッチを使用しない患者
おわりに
レビー小体型認知症の診断と治療 水上勝義
はじめに
DLBの診断
初期状態および前駆状態における鑑別診断
DLBの治療
Case Study
脳血管性認知症の診断と治療 神谷達司
はじめに
脳血管性認知症の概念と診断
脳血管性認知症の治療
おわりに
Case Study
前頭側頭型認知症の診断と治療 瓦林 毅、東海林幹夫
はじめに
分類
行動障害型前頭側頭型認知症(bvFTD)
原発性失語症(PPA)
Case Study
特発性正常圧水頭症− Treatable dementia − 島津智一
はじめに
特発性正常圧水頭症とは
病態生理
診断
症状
検査
鑑別診断
治療
Case Study
見逃してはいけない認知症 﨑山快夫
はじめに
慢性硬膜下血腫
プリオン病
進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症
低酸素血症
てんかん
まとめ
Case Study
Ⅳ 社会資源の活用
介護保険の導入と利用法 黒川 愛
介護保険の導入
申請から認定までの流れ
地域包括支援センターの活用
ケアマネジャーとの連携
地域の社会資源の活用
新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略) 丸木雄一
はじめに
基本的考え方
新オレンジプランにある おわりに
おわりに
総論 丸木雄一
はじめに
予約
問診票、病歴聴取
神経所見
心理テスト
画像検査
診断
病状説明
薬物療法
非薬物療法
経過観察
おわりに
Ⅱ 診察・治療の進め方
診断に必要な心理テスト 北嶋綾子
はじめに
認知機能障害のスクリーニング
認知機能の経過観察
より詳しい質問式の心理テスト
気分状態(抑うつ)の評価
複数の検査を組み合わせて行う
BPSDの評価
認知機能障害、BPSD以外の評価
全般的な知的能力と日常生活における評価
画像診断 佐々木貴浩
はじめに
頭部MRIによる形態診断
脳血流SPECT による認知症の鑑別診断
DATスキャン
MIBG心筋シンチグラフィー
アミロイドPET
主な認知症疾患の画像所見
認知症疾患画像診断のフローチャート
BPSD に対する薬物療法 谷古宇慎悟
はじめに
睡眠−覚醒周期の改善
BPSDに対する薬物療法
おわりに
BPSD に対する非薬物療法 藤井昌彦、佐々木英忠
はじめに
介護者の精神行動異常(BPSC)
BPSDの非薬物治療(情動療法)
認知症の予防 宇良千秋
はじめに
認知症発症に影響を及ぼす生活習慣
認知症予防プログラムの実際と効果
住民による認知症予防活動の実践例
認知症になってもQOLを低下させないために
高度認知症患者の看取り―人工的水分・栄養補給法の問題を中心に 会田薫子
はじめに
アルツハイマー型認知症の終末期のAHNに関する調査
医師の意識変化
ADの終末期の判断
ADの終末期にAHNを行わないことは緩和ケア
AHNの差し控えや終了も適切な選択肢
「終末期」の判断が難しいとき
生存期間の延長効果の意味の多義性―医学的判断の限界
evidence-based narrativeの構築へ
おわりに
介護者に対する支援 荒木眞知子
はじめに
生活障害
家族介護者の心理
家族支援の目的
「埼玉精神神経センター家族の集い」5 年間の経験
家族以外の介護実践者の支援
一般住民向けの施策
その他介護者支援の実践例
根本治療に向けての創薬 杉本八郎
市場を創造したドネペジル塩酸塩
Stay Hungry, Stay Foolish
塩酸ドネペジルの発見
ドネペジルの薬理作用
ドネペジルの臨床治験
根本治療薬へ向けての創薬
AD根本治療薬の開発成功のために
Ⅲ 主な認知症の診断と治療
軽度認知症(MCI)の診断と治療 高野大樹、長田 乾
はじめに
MCIの概念
MCIの診断
MCIの疫学
MCIの症候
MCIの病理
MCIの経過
MCIの治療
外来診療の実際
おわりに
Case Study
アルツハイマー病の診断と治療 和田健二、中島健二
はじめに
病態
臨床症状
診察
検査
診断フローチャートと診断基準
治療
おわりに
Case Study
アルツハイマー病の診断と治療
ドネペジルを使う患者、使わない患者 田北昌史
はじめに
ドネペジルを使う患者
ドネペジルを使わない患者
おわりに
Case Study
アルツハイマー病の診断と治療
メマンチンを使う患者、使わない患者 大野智之
はじめに
メマンチンの特性と投与のポイント
メマンチンを使う患者
メマンチンを使わない患者(=メマンチンを使えない患者)
BPSD改善を期待してメマンチンを投与するとき
Case Study
アルツハイマー病の診断と治療
ガランタミンを使う患者、使わない患者 北村ゆり
はじめに
ガランタミンの特徴
ガランタミンを使う患者
ガランタミンを使わない患者
Case Study
アルツハイマー病の診断と治療
リバスチグミンパッチを使う患者、使わない患者 丸木雄一
はじめに
リバスチグミンパッチを使用する患者
リバスチグミンパッチを使用しない患者
おわりに
レビー小体型認知症の診断と治療 水上勝義
はじめに
DLBの診断
初期状態および前駆状態における鑑別診断
DLBの治療
Case Study
脳血管性認知症の診断と治療 神谷達司
はじめに
脳血管性認知症の概念と診断
脳血管性認知症の治療
おわりに
Case Study
前頭側頭型認知症の診断と治療 瓦林 毅、東海林幹夫
はじめに
分類
行動障害型前頭側頭型認知症(bvFTD)
原発性失語症(PPA)
Case Study
特発性正常圧水頭症− Treatable dementia − 島津智一
はじめに
特発性正常圧水頭症とは
病態生理
診断
症状
検査
鑑別診断
治療
Case Study
見逃してはいけない認知症 﨑山快夫
はじめに
慢性硬膜下血腫
プリオン病
進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症
低酸素血症
てんかん
まとめ
Case Study
Ⅳ 社会資源の活用
介護保険の導入と利用法 黒川 愛
介護保険の導入
申請から認定までの流れ
地域包括支援センターの活用
ケアマネジャーとの連携
地域の社会資源の活用
新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略) 丸木雄一
はじめに
基本的考え方
新オレンジプランにある おわりに
おわりに
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「もの忘れ」にはじまる認知症の診断から治療までを学べます
神経内科医が接する機会の多い神経疾患(頭痛,認知症,パーキンソン病,てんかん,脳卒中)の外来診察に必要なノウハウを,シェーマ,フローチャートなどを多用しコンパクトにまとめて解説しているシリーズ。
今回は,認知症を取り上げる。「もの忘れ」にはじまる認知症は,その原因は一様ではなく,それに応じて治療にあたらなければならない。本書では,外来で必要な基本的知識,外来の基本的な流れを解説した後,さまざまな認知症を取り上げ,それぞれCase Studyをとおして診察から治療を学べるようになっている。また患者の大部分が高齢者のため,看取りについても取り上げる。
認知症診療の基本が身につく1冊である。