ぼっちでもできる医学研究
初心者にちょうどいいデータ(食材)で論文執筆(料理)してみる
定価 3,960円(税込) (本体3,600円+税)
- A5判 192ページ 2色(一部カラー)
- 2024年3月29日刊行
- ISBN978-4-7583-2300-0
電子版
序文
本書は論文を執筆した経験の比較的少ない,初期研修医から卒後6~7年目くらいまでの若手医師を対象にして,「論文の書き方」を解説したものになる。本職の研究者を目指す人たちというより,「本業は臨床だが論文を書く必要がある,または書いてみたい」という人たちが効率的に執筆を進められるよう,諸々の助言を集めたものと考えていただきたい。またタイトルにもあるよう,医局に所属していなかったり身近に研究経験の豊富な上級医がいなかったりと,指導者や仲間に恵まれていない人たちにも執筆の過程が想像できるよう配慮したつもりである。
類書と比較した本書の特徴は主に以下の2点にある。
・ データの重要性を強調したこと
・ 研究を構想してから投稿・掲載に至るまでのプロセスをひととおり概観したこと
まず論文を書こうと思うのならそのための材料(データ)が必須になるが,その入手方法がいろいろあることについて触れている書籍は少ないように思う。レセプトデータやリアルワールドデータについて詳述した書籍も最近は上梓されているが,個々のデータ源というよりは「データの重要性とその入手方法」について認識し,概観してもらいたい。
また,統計解析手法などに焦点を当てた初学者向けの書籍はすでに複数存在するので,統計解析そのものについての詳細はあえて省き,論文掲載までに越えなければならないその他諸々の障壁について紙面を多く割いた。特にインパクトファクターにまつわる注意事項や査読への返答について詳しく語られた書籍はあまり見ないので,頼れる指導者がいないけれども論文を書いてみたい,という読者は参考にしていただければ幸いである。
2024年1月
著者記す
類書と比較した本書の特徴は主に以下の2点にある。
・ データの重要性を強調したこと
・ 研究を構想してから投稿・掲載に至るまでのプロセスをひととおり概観したこと
まず論文を書こうと思うのならそのための材料(データ)が必須になるが,その入手方法がいろいろあることについて触れている書籍は少ないように思う。レセプトデータやリアルワールドデータについて詳述した書籍も最近は上梓されているが,個々のデータ源というよりは「データの重要性とその入手方法」について認識し,概観してもらいたい。
また,統計解析手法などに焦点を当てた初学者向けの書籍はすでに複数存在するので,統計解析そのものについての詳細はあえて省き,論文掲載までに越えなければならないその他諸々の障壁について紙面を多く割いた。特にインパクトファクターにまつわる注意事項や査読への返答について詳しく語られた書籍はあまり見ないので,頼れる指導者がいないけれども論文を書いてみたい,という読者は参考にしていただければ幸いである。
2024年1月
著者記す
全文表示する
閉じる
目次
概論 料理≒論文ができるまで
Section1. 論文は料理に似ている
食材がなければ料理は作れない
食材はスーパーで買ってよい
食材を「自分で獲る」必要はない
Section2. 食材( データ) の入手法
「入手する方法」は何でもよい
「獲る」「買う」「貰う」という方法
魚1匹捌く無謀な所業「獲る」
全身全霊を注いでも高評価を得られない
ここでひと匙「他人に獲ってもらう」
これがおすすめ! 「買う」
「アンケートデータ」という切り身を100万円で買う
100万円の出費に臆するなかれ
正の循環を生むための初期投資
ここでひと匙「100万円は高い? 安い?」
カツオ1本買い! 国レベルの「販売量データ」
マグロ1本「レセプトデータ」を解体する覚悟はあるか
ここでひと匙「リアルワールドデータ」
無料の「拾い食い」も食べられれば立派な食材
国から「貰える」データあれこれ
ここでひと匙「疫学データにおける欧米との格差」
無料で使用できるレセプトデータ,NDBは巨大すぎて扱えない?
概論 料理≒論文ができるまで
データが「貰える」研究室に入る
ここでひと匙「研究室ではまずシェフを見よ」
Section3. メニュー( 検証したい仮説) を決める
作りたい料理(検証したい仮説)を決めておく
まずは家にある材料で作れそうなメニューを決める
Section4. 営業許可( 倫理審査委員会の承認) を得る
家庭料理から飲食店へレベルアップするための「許可証」
衛生観念のない店,消費期限を守らない店に営業許可は下りない
「個人情報」を材料から省けば申請は不要
ここでひと匙「心配ならとりあえず申請する」
開店を決めたらすぐ申請
味よりもまず安全性
Section5. 食材の下処理( データクリーニング)
下拵えは抜かりなく
まずは基礎を身につける
ここでひと匙「欠損値の扱い」
Section6. 調理( 解析)
解析について知っておくべき3箇条
高価な調理器具は買わなくてよい~無料で使える「R」と「EZR」~
ここでひと匙「話題のChatGPT,現時点で解析に多用するのはまだ早い」
調理方法はネットを参考にしてもよい
自分で調理しないという選択肢
ここでひと匙「独学者が陥りがちなピットフォール」
Section7. 盛り付け( 原稿作成)
盛り付けはお好きなところから
筆者が思う盛り付けのコツ
盛り付けには必ず「文献管理ソフト」を
Section7.5. 箸休め 学会発表をどう考えるか?
学会発表は論文執筆を頑張ったご褒美
すでに/ほぼ論文化されたことを発表すべき
Section8. 提供( 投稿)
料理をサーブする前に
「シェフを呼んでくれ」には誰が行く?
ここでひと匙「ピエール・エルメのケーキを作ったのは誰か?」
オーサーシップは盛り付け前に
誰にサーブする? インパクトファクター(IF)の見かた
ここでひと匙「IFは論文の学術的な価値を必ずしも反映しない」
ちょっと待った! ハゲタカジャーナルにご用心
ここでひと匙「メガオープンアクセス誌の誕生」
Section9. 接客( Revision) 対応
注文の多い客人「Reviewer」
客人が席につくまで(投稿~査読開始まで)
Approve ボタンを押したら,編集部の様式チェックが行われる
ここでひと匙「Rejectに耐えうる鈍感力」
客人にはくどいくらい丁寧に,かつ迅速に接客する
ここでひと匙「どんな指摘にも大人の対応を」
各論 実際にあったレシピ
Section1. 拾い食い
どういうレシピ?
たった1人で執筆・投稿した論文
治癒証明書という誰得制度の無益さを論文化
ここでひと匙「厚生労働省は治癒証明書を推奨していない」
食材の入手と調理法,評価は?
感染研のデータを切り身に解体~患者数・費用・保険点数・社会的損失~
いざ実食。評価は?
余り物で作ったチャーハン。賄いとしては美味しかった
Section2. 料理上手な友達
どういうレシピ?
予算はないけど,手伝ってくれる料理上手な友達はいる
インフルエンザの予防接種,優先すべきは小児? 高齢者?~費用対効果を評価する~
食材の入手と調理法
感染研のデータを切り身にして,総務省データと接触行列データを
加えて調理
ここでひと匙「論文に必要な数値の求め方」
いざ実食。評価は?
柚子と抹茶のマカロン
Reviewer から褒められたRevision 対応の一例
Section3. 自宅の夕食
どういうレシピ?
ちょっといい材料を買ってきて,自分で調理(統計処理)したレシピ
日本のインフルエンザは海外のインフルエンザと同じものを指すか?
ここでひと匙「日本ほどオセルタミビルを使う国はなかった」
食材の入手と調理法
欲しい食材を発注する~アンケート調査で厄介な倫理審査,業者の選定,質問票の作成~
ここでひと匙「業者を選ぶときのポイント」
ここでひと匙「質問票を作成する際のコツ」
いざ実食。評価は?
牛すね肉の赤ワイン煮的な何か
Section4. お店のまかない
どういうレシピ?
冷凍庫に眠っていた高級マグロ1本を解体・調理してみた~JMDCのデータベースを使う~
食材の入手と調理法
レセプトデータの「かぜ」と「抗菌薬処方」「薬価」を結び付けて,言え
そうなことを言う
ここでひと匙「巨大データを捌ける人間を確保すべし」
いざ実食。評価は?
マグロづくしの刺し盛
Section5. 有名店の見習い (著 中山祐次郞)
京都大学公衆衛生大学院
東京大学大学院
Section6. 助っ人料理人
どういうレシピ?
助っ人料理人として何ができる? に挑戦したレシピ
とびきり鮮度の高い食材をどうサーブするか?
食材の入手と調理法,評価は?
厨房の設備,人員の見直し~「お造り」でよかったのか?~
手の込んだ料理を作りたい料理人の性とスピード感をどう折り合わせるか
Section1. 論文は料理に似ている
食材がなければ料理は作れない
食材はスーパーで買ってよい
食材を「自分で獲る」必要はない
Section2. 食材( データ) の入手法
「入手する方法」は何でもよい
「獲る」「買う」「貰う」という方法
魚1匹捌く無謀な所業「獲る」
全身全霊を注いでも高評価を得られない
ここでひと匙「他人に獲ってもらう」
これがおすすめ! 「買う」
「アンケートデータ」という切り身を100万円で買う
100万円の出費に臆するなかれ
正の循環を生むための初期投資
ここでひと匙「100万円は高い? 安い?」
カツオ1本買い! 国レベルの「販売量データ」
マグロ1本「レセプトデータ」を解体する覚悟はあるか
ここでひと匙「リアルワールドデータ」
無料の「拾い食い」も食べられれば立派な食材
国から「貰える」データあれこれ
ここでひと匙「疫学データにおける欧米との格差」
無料で使用できるレセプトデータ,NDBは巨大すぎて扱えない?
概論 料理≒論文ができるまで
データが「貰える」研究室に入る
ここでひと匙「研究室ではまずシェフを見よ」
Section3. メニュー( 検証したい仮説) を決める
作りたい料理(検証したい仮説)を決めておく
まずは家にある材料で作れそうなメニューを決める
Section4. 営業許可( 倫理審査委員会の承認) を得る
家庭料理から飲食店へレベルアップするための「許可証」
衛生観念のない店,消費期限を守らない店に営業許可は下りない
「個人情報」を材料から省けば申請は不要
ここでひと匙「心配ならとりあえず申請する」
開店を決めたらすぐ申請
味よりもまず安全性
Section5. 食材の下処理( データクリーニング)
下拵えは抜かりなく
まずは基礎を身につける
ここでひと匙「欠損値の扱い」
Section6. 調理( 解析)
解析について知っておくべき3箇条
高価な調理器具は買わなくてよい~無料で使える「R」と「EZR」~
ここでひと匙「話題のChatGPT,現時点で解析に多用するのはまだ早い」
調理方法はネットを参考にしてもよい
自分で調理しないという選択肢
ここでひと匙「独学者が陥りがちなピットフォール」
Section7. 盛り付け( 原稿作成)
盛り付けはお好きなところから
筆者が思う盛り付けのコツ
盛り付けには必ず「文献管理ソフト」を
Section7.5. 箸休め 学会発表をどう考えるか?
学会発表は論文執筆を頑張ったご褒美
すでに/ほぼ論文化されたことを発表すべき
Section8. 提供( 投稿)
料理をサーブする前に
「シェフを呼んでくれ」には誰が行く?
ここでひと匙「ピエール・エルメのケーキを作ったのは誰か?」
オーサーシップは盛り付け前に
誰にサーブする? インパクトファクター(IF)の見かた
ここでひと匙「IFは論文の学術的な価値を必ずしも反映しない」
ちょっと待った! ハゲタカジャーナルにご用心
ここでひと匙「メガオープンアクセス誌の誕生」
Section9. 接客( Revision) 対応
注文の多い客人「Reviewer」
客人が席につくまで(投稿~査読開始まで)
Approve ボタンを押したら,編集部の様式チェックが行われる
ここでひと匙「Rejectに耐えうる鈍感力」
客人にはくどいくらい丁寧に,かつ迅速に接客する
ここでひと匙「どんな指摘にも大人の対応を」
各論 実際にあったレシピ
Section1. 拾い食い
どういうレシピ?
たった1人で執筆・投稿した論文
治癒証明書という誰得制度の無益さを論文化
ここでひと匙「厚生労働省は治癒証明書を推奨していない」
食材の入手と調理法,評価は?
感染研のデータを切り身に解体~患者数・費用・保険点数・社会的損失~
いざ実食。評価は?
余り物で作ったチャーハン。賄いとしては美味しかった
Section2. 料理上手な友達
どういうレシピ?
予算はないけど,手伝ってくれる料理上手な友達はいる
インフルエンザの予防接種,優先すべきは小児? 高齢者?~費用対効果を評価する~
食材の入手と調理法
感染研のデータを切り身にして,総務省データと接触行列データを
加えて調理
ここでひと匙「論文に必要な数値の求め方」
いざ実食。評価は?
柚子と抹茶のマカロン
Reviewer から褒められたRevision 対応の一例
Section3. 自宅の夕食
どういうレシピ?
ちょっといい材料を買ってきて,自分で調理(統計処理)したレシピ
日本のインフルエンザは海外のインフルエンザと同じものを指すか?
ここでひと匙「日本ほどオセルタミビルを使う国はなかった」
食材の入手と調理法
欲しい食材を発注する~アンケート調査で厄介な倫理審査,業者の選定,質問票の作成~
ここでひと匙「業者を選ぶときのポイント」
ここでひと匙「質問票を作成する際のコツ」
いざ実食。評価は?
牛すね肉の赤ワイン煮的な何か
Section4. お店のまかない
どういうレシピ?
冷凍庫に眠っていた高級マグロ1本を解体・調理してみた~JMDCのデータベースを使う~
食材の入手と調理法
レセプトデータの「かぜ」と「抗菌薬処方」「薬価」を結び付けて,言え
そうなことを言う
ここでひと匙「巨大データを捌ける人間を確保すべし」
いざ実食。評価は?
マグロづくしの刺し盛
Section5. 有名店の見習い (著 中山祐次郞)
京都大学公衆衛生大学院
東京大学大学院
Section6. 助っ人料理人
どういうレシピ?
助っ人料理人として何ができる? に挑戦したレシピ
とびきり鮮度の高い食材をどうサーブするか?
食材の入手と調理法,評価は?
厨房の設備,人員の見直し~「お造り」でよかったのか?~
手の込んだ料理を作りたい料理人の性とスピード感をどう折り合わせるか
全文表示する
閉じる
どこにも書かれていなかった「論文執筆に使えるデータの入手→調理法」,お教えします!
論文の書き方や統計手法のその前に,どんなデータを使って論文を書いたらいいかわからない……。そんな論文執筆初心者に向けて,「いかに論文執筆に使えるデータを確保するか」に重点をおいた入門書が登場!
前半ではデータ入手から投稿・掲載までの一連のプロセスを,料理になぞらえて解説(食材/データの入手→営業許可/倫理審査委員会の承認→下処理/データクリーニング→調理/解析→盛り付け/論文執筆→提供/投稿→接客/Revision対応)。購入したり,無料で手に入るデータの選び方はもちろんのこと,投稿先の選定やRevision対応まで,著者の体験談や知っておくと役立つTipsが盛り込まれている。
後半では実際の論文を例に,どのようにデータを活用して論文化するかを,難易度やデータ種類別に紹介。そのほか,初心者が抱きやすい疑問に答えるQ&Aページも充実。
漠然とした不安も解消できる,論文執筆の前に読んでおきたい1冊!