日本版救急蘇生ガイドライン2020に基づく
新生児蘇生法
インストラクターマニュアル
[Web動画付]
第5版
定価 7,700円(税込) (本体7,000円+税)
- A4判 260ページ オールカラー,イラスト68点,写真36点,綴込み別冊88ページ(本冊172ページ)
- 2021年5月15日刊行
- ISBN978-4-7583-2126-6
電子版
序文
NCPR 普及事業における本書の意義
日本周産期・新生児医学会では日本版新生児蘇生法(Neonatal Cardio-Pulmonary Resuscitation;NCPR)普及事業を2007年7月から開始しました。主たる活動は,出生時に子宮内環境から子宮外環境への移行,すなわち“呼吸循環の確立”が遅れる新生児に対して,いかにして効果的な心肺蘇生法を行うかを学んで頂くことを目的とした「新生児蘇生法(NCPR)講習会」の開催とそのための教材作成,そしてその講習会を行うインストラクターの養成にあります。
学会公認インストラクターは,2020年12月末現在で4,705名(専門コースインストラクター3,007名,一次コースインストラクター1,698名)となり,5年前と比較して439名増加しました。その結果,新型コロナウイルス感染症流行前の2019年までは,講習会開催実績および受講者数とも右肩上がりの伸びを示していました。新規インストラクターの養成およびインストラクターの質の向上のため,全国22か所のトレーニングサイトにおいてインストラクター養成およびインストラクターフォローアップ講習会を開催し,アクティブなインストラクターを増やす目的で,2016年からはインストラクター養成講習会の受講資格を,A コース認定後2回以上のインストラクター補助の実績(うち1回以上はA コース補助)とインストラクターの推薦を要すると変更いたしました。また,2020年からはインストラクターの更新要件として,3年間に3回以上の実績を必要とすることとしました。
講習会で推奨している日本蘇生協議会(JRC)蘇生ガイドラインに基づいた新生児蘇生法テキストは,国際蘇生連絡委員会(International Liaison Committee on Resuscitation)で作成されたConsensus on Science with Treatment Recommendation(CoSTR)に基づいて,日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会が中心となり作成し,日本蘇生協議会で承認を受けたものです。本書は,公認インストラクターが講習会を開催するにあたり,必要な知識を盛り込んだ内容となっています。インストラクターとして最新の新生児蘇生に関する知識を受講者に正しく伝える教科書にとどまらず,インストラクターとしての技術および態度も併せて習得できるよう工夫されています。
この事業の最終的な目標は,「新生児仮死の予後を改善すること」にあります。それを達成するために,「すべての分娩に質の高い新生児蘇生を直ちに開始できる人員が立ち会うことのできる体制を整備するための人材育成」が事業の重要な柱になっています。分娩は全国津々浦々の施設で行われています。そのため,最終的には各施設に1名以上のインストラクターが在籍し,そのインストラクターに施設内で講習会を開催していただけるのが理想です。
インストラクターに特別な能力は必要なく,本書を参考に系統的知識を身につけ実践でスキルを磨くことで,自信をもってインストラクションできるようになります。そうはいっても,インストラクションをしていくうえでは,いろいろな問題がでてくると思います。今回のガイドラインの改訂にあわせて現場のインストラクターの声を集約して,よりわかりやすく,実践的なインストラクターマニュアルの作成を目指してきました。
本書に書かれている教育論は新生児蘇生法の教育にとどまらず,幅広く日常の人材育成にも応用できる成人教育論を基盤としています。インストラクターの皆様には,是非とも講習会ならびに日常の診療のなかで,広くご活用いただければ幸いです。
日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会 委員長
国際蘇生連絡委員会 Neonatal Life Support Task Force
日本蘇生協議会 理事
細野茂春
--------------------------------------------------------
NCPR 普及事業におけるトレーニングサイトの役割
出生時に子宮外生活に必要な呼吸循環動態の移行が順調に進行しない事例は,全出産の約15% にみられ,約5% が人工呼吸をはじめとする積極的な新生児心肺蘇生法処置を受けなければ死亡するか,重篤な障害を残すとされています。一方では,マスク&バッグを用いた人工呼吸のみで蘇生に成功し,胸骨圧迫による心臓マッサージまでを加えれば,基礎疾患がない事例の大部分が蘇生できると報告されています。
そこで,新生児蘇生技術の習得に向け,日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法(Neonatal Cardiopulmonary Resuscitation;NCPR)普及事業が2007年度から開始され,講習会が始まりました。
しかし当初は,インストラクターコースの受講は東京,大阪の会場と,日本周産期・新生児医学会学術集会や日本新生児成育医学会学術集会に併設したインストラクターコース講習会でしか受講できませんでした。それゆえ,インストラクター養成数は限られていました。また,地方の受講者は旅費や宿泊費が必要であり,中央と地方の格差がうまれておりました。
そこで,地方にもインストラクター養成コースを開催するトレーニングサイトを,徐々に開設していったのです。現在,北海道,東北(岩手,宮城),関東〔東京(3か所),茨城,埼玉,千葉,神奈川〕,新潟,長野,石川,愛知(2か所),京都,大阪(2か所),兵庫,広島,香川,鹿児島の22か所のトレーニングサイトを中心に,インストラクターコース,フォローアップコース,スキルアップコースなどが積極的に行われています。
2020年12月現在,全国で3,007名のインストラクターが認定され,各種コース修了者は,67,643名にまで増加しました。
また,離島プロジェクトとして,各地の離島(沖縄本島,石垣島,宮古島,奄美大島,種子島,沖永良部島,隠岐の島,五島列島など)において,インストラクターコース,スキルアップコースを新生児蘇生法委員会直轄で行っています。
このように,トレーニングサイトの活躍により新生児蘇生法が全国に普及することで,重症仮死の赤ちゃんの予後が改善されることを願っております。
日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会 副委員長
トレーニングサイト運営小委員会 委員長
茨 聡
日本周産期・新生児医学会では日本版新生児蘇生法(Neonatal Cardio-Pulmonary Resuscitation;NCPR)普及事業を2007年7月から開始しました。主たる活動は,出生時に子宮内環境から子宮外環境への移行,すなわち“呼吸循環の確立”が遅れる新生児に対して,いかにして効果的な心肺蘇生法を行うかを学んで頂くことを目的とした「新生児蘇生法(NCPR)講習会」の開催とそのための教材作成,そしてその講習会を行うインストラクターの養成にあります。
学会公認インストラクターは,2020年12月末現在で4,705名(専門コースインストラクター3,007名,一次コースインストラクター1,698名)となり,5年前と比較して439名増加しました。その結果,新型コロナウイルス感染症流行前の2019年までは,講習会開催実績および受講者数とも右肩上がりの伸びを示していました。新規インストラクターの養成およびインストラクターの質の向上のため,全国22か所のトレーニングサイトにおいてインストラクター養成およびインストラクターフォローアップ講習会を開催し,アクティブなインストラクターを増やす目的で,2016年からはインストラクター養成講習会の受講資格を,A コース認定後2回以上のインストラクター補助の実績(うち1回以上はA コース補助)とインストラクターの推薦を要すると変更いたしました。また,2020年からはインストラクターの更新要件として,3年間に3回以上の実績を必要とすることとしました。
講習会で推奨している日本蘇生協議会(JRC)蘇生ガイドラインに基づいた新生児蘇生法テキストは,国際蘇生連絡委員会(International Liaison Committee on Resuscitation)で作成されたConsensus on Science with Treatment Recommendation(CoSTR)に基づいて,日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会が中心となり作成し,日本蘇生協議会で承認を受けたものです。本書は,公認インストラクターが講習会を開催するにあたり,必要な知識を盛り込んだ内容となっています。インストラクターとして最新の新生児蘇生に関する知識を受講者に正しく伝える教科書にとどまらず,インストラクターとしての技術および態度も併せて習得できるよう工夫されています。
この事業の最終的な目標は,「新生児仮死の予後を改善すること」にあります。それを達成するために,「すべての分娩に質の高い新生児蘇生を直ちに開始できる人員が立ち会うことのできる体制を整備するための人材育成」が事業の重要な柱になっています。分娩は全国津々浦々の施設で行われています。そのため,最終的には各施設に1名以上のインストラクターが在籍し,そのインストラクターに施設内で講習会を開催していただけるのが理想です。
インストラクターに特別な能力は必要なく,本書を参考に系統的知識を身につけ実践でスキルを磨くことで,自信をもってインストラクションできるようになります。そうはいっても,インストラクションをしていくうえでは,いろいろな問題がでてくると思います。今回のガイドラインの改訂にあわせて現場のインストラクターの声を集約して,よりわかりやすく,実践的なインストラクターマニュアルの作成を目指してきました。
本書に書かれている教育論は新生児蘇生法の教育にとどまらず,幅広く日常の人材育成にも応用できる成人教育論を基盤としています。インストラクターの皆様には,是非とも講習会ならびに日常の診療のなかで,広くご活用いただければ幸いです。
日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会 委員長
国際蘇生連絡委員会 Neonatal Life Support Task Force
日本蘇生協議会 理事
細野茂春
--------------------------------------------------------
NCPR 普及事業におけるトレーニングサイトの役割
出生時に子宮外生活に必要な呼吸循環動態の移行が順調に進行しない事例は,全出産の約15% にみられ,約5% が人工呼吸をはじめとする積極的な新生児心肺蘇生法処置を受けなければ死亡するか,重篤な障害を残すとされています。一方では,マスク&バッグを用いた人工呼吸のみで蘇生に成功し,胸骨圧迫による心臓マッサージまでを加えれば,基礎疾患がない事例の大部分が蘇生できると報告されています。
そこで,新生児蘇生技術の習得に向け,日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法(Neonatal Cardiopulmonary Resuscitation;NCPR)普及事業が2007年度から開始され,講習会が始まりました。
しかし当初は,インストラクターコースの受講は東京,大阪の会場と,日本周産期・新生児医学会学術集会や日本新生児成育医学会学術集会に併設したインストラクターコース講習会でしか受講できませんでした。それゆえ,インストラクター養成数は限られていました。また,地方の受講者は旅費や宿泊費が必要であり,中央と地方の格差がうまれておりました。
そこで,地方にもインストラクター養成コースを開催するトレーニングサイトを,徐々に開設していったのです。現在,北海道,東北(岩手,宮城),関東〔東京(3か所),茨城,埼玉,千葉,神奈川〕,新潟,長野,石川,愛知(2か所),京都,大阪(2か所),兵庫,広島,香川,鹿児島の22か所のトレーニングサイトを中心に,インストラクターコース,フォローアップコース,スキルアップコースなどが積極的に行われています。
2020年12月現在,全国で3,007名のインストラクターが認定され,各種コース修了者は,67,643名にまで増加しました。
また,離島プロジェクトとして,各地の離島(沖縄本島,石垣島,宮古島,奄美大島,種子島,沖永良部島,隠岐の島,五島列島など)において,インストラクターコース,スキルアップコースを新生児蘇生法委員会直轄で行っています。
このように,トレーニングサイトの活躍により新生児蘇生法が全国に普及することで,重症仮死の赤ちゃんの予後が改善されることを願っております。
日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会 副委員長
トレーニングサイト運営小委員会 委員長
茨 聡
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目次
序文
NCPR 普及事業における本書の意義 細野茂春
NCPR 普及事業におけるトレーニングサイトの役割 茨 聡
Ⅰ よりよいインストラクションのために
1 望ましいNCPRのインストラクターとは
2 現場で活きるNCPRのために
Ⅱ 講習の実際
1 NCPR各コースの概略
2 専門コース(Aコース),一次コース(B コース)
A・Bコースの位置付けとその意義
効果的な講義について
NCPRアルゴリズムの考え方
基本手技実習
高度な手技・補助教材を用いた指導のポイント
ラリンゲアルマスク
緊急臍帯静脈カテーテル留置の指導
Tピース蘇生装置
補助教材などの活用
シナリオ実習
具体的なデブリーフィング(‘振り返り’)法
3 スキルアップコース(Sコース)
Sコースの位置付けとその意義
基本手技実習
シナリオ実習
4 病院前(プレホスピタル)コース(Pコース)
Pコースの位置付けとその意義
基本手技実習
シナリオ実習
Ⅲ 講習会の開催方法について
1 講習会の開催について
2 新規修了認定コース
(Aコース・Bコース・Pコース)の開催について
3 継続学習支援コース(Sコース)の開催について
Ⅳ 資 料
1 CoSTR 2020で検討された22の課題
Systematic Review・PICOST Digest
2 付録資料
利益相反(COI)リスト
【別冊】
Ⅴ シナリオ集
A・Bコース
1 A・B コースシナリオ
S コース
2 S コース自己チェックシート(手技)
3 S コースシナリオ
P コース
4 P コースシナリオ
NCPR 普及事業における本書の意義 細野茂春
NCPR 普及事業におけるトレーニングサイトの役割 茨 聡
Ⅰ よりよいインストラクションのために
1 望ましいNCPRのインストラクターとは
2 現場で活きるNCPRのために
Ⅱ 講習の実際
1 NCPR各コースの概略
2 専門コース(Aコース),一次コース(B コース)
A・Bコースの位置付けとその意義
効果的な講義について
NCPRアルゴリズムの考え方
基本手技実習
高度な手技・補助教材を用いた指導のポイント
ラリンゲアルマスク
緊急臍帯静脈カテーテル留置の指導
Tピース蘇生装置
補助教材などの活用
シナリオ実習
具体的なデブリーフィング(‘振り返り’)法
3 スキルアップコース(Sコース)
Sコースの位置付けとその意義
基本手技実習
シナリオ実習
4 病院前(プレホスピタル)コース(Pコース)
Pコースの位置付けとその意義
基本手技実習
シナリオ実習
Ⅲ 講習会の開催方法について
1 講習会の開催について
2 新規修了認定コース
(Aコース・Bコース・Pコース)の開催について
3 継続学習支援コース(Sコース)の開催について
Ⅳ 資 料
1 CoSTR 2020で検討された22の課題
Systematic Review・PICOST Digest
2 付録資料
利益相反(COI)リスト
【別冊】
Ⅴ シナリオ集
A・Bコース
1 A・B コースシナリオ
S コース
2 S コース自己チェックシート(手技)
3 S コースシナリオ
P コース
4 P コースシナリオ
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新生児蘇生法(NCPR)講習会を開催するインストラクター必携
『第4版 新生児蘇生法テキスト』に対応したインストラクターマニュアルの第5版。
最新の成人学習論に基づき,新生児蘇生法(NCPR)講習会の開催に必要なスキルや講習会の進め方をオールカラーでわかりやすく解説。2020年から始まった病院前(P)コースの解説やシナリオも加わり,全コースのインストラクションを網羅。綴込み別冊「V シナリオ集」は,単体で講習会への持ち歩きも可能。