長野県立こども病院方式
超低出生体重児の管理マニュアル
改訂第2版
定価 9,020円(税込) (本体8,200円+税)
- B5判 408ページ 2色/4色,イラスト16点,写真122点
- 2024年11月16日刊行
- ISBN978-4-7583-2147-1
電子版
序文
初版を刊行してから5年間に私達が取り組んできた試みが少しずつ目に見える成果になってきましたので,『改訂第2版長野県立こども病院方式 超低出生体重児の管理マニュアル』を刊行することとしました。
改訂版の特徴は3つあります。
1つ目は,超低出生体重児のケアの核心は看護にあります。そこで看護師の執筆を大幅に増やし,さらに初版同様,各章に「看護のポイント」を掲載しました。
2つ目は,「未熟児」という単語をできる限り「早産児」に置き換えました。疾患名として「未熟児」という単語が確立している疾患名もありますが,熟慮のうえで置き換えました。その決断を後押ししてくれたのは,日本NICU家族会機構(JOIN)の会員からのメッセージです。ご本人の許可をいただいたのでご紹介します。「早産や低体重児を出産したことで家族は自分自身を責め,その罪悪感とともに日々過ごしております。そのなかで,一つひとつの言葉を非常に敏感に拾ってしまう親も少なくありません。私自身も『未熟児』という単語は自分の罪悪感を呼び起こすきっかけになると感じております。私が自分のこどもの話をするときは『小さく,早く生まれたので』と表現することが多いです。些細な違いかもしれませんが,『未熟』という言葉が使われないことで少し罪悪感が和らいでいるような気がします」。
3つ目は,初版で使っていた「母親」「お母さん」という単語を文脈に合わせて「家族」に置き換えました。私達はフィンランドTurku大学と連携してFamily-centered care:FCC(家族と一緒に築く医療)に力を入れています。各章に適宜“FCC Point”を掲載して,私達の取り組みを紹介しました。
所々に私の「コラム」も掲載しましたので,息抜きにお読みください。表紙は長く当院NICUに入院しており,今はイラストレーターとして独立しているヤマガタコウキチ氏(スタジオロクドゴブ)に,「こども病院への思い」を込めてデザインしてもらいました。
末筆になりますが,1993年の開院以来「こども達とその家族のために」日夜献身的に尽くしている医師,看護師,その他の医療従事者に感謝するとともに,改訂第2版を刊行するに当たり,適切なアドバイスと叱咤激励をいただいたメジカルビュー社の工藤亮子氏に深謝します。
2024年10月
長野県立こども病院 名誉院長
中村 友彦
改訂版の特徴は3つあります。
1つ目は,超低出生体重児のケアの核心は看護にあります。そこで看護師の執筆を大幅に増やし,さらに初版同様,各章に「看護のポイント」を掲載しました。
2つ目は,「未熟児」という単語をできる限り「早産児」に置き換えました。疾患名として「未熟児」という単語が確立している疾患名もありますが,熟慮のうえで置き換えました。その決断を後押ししてくれたのは,日本NICU家族会機構(JOIN)の会員からのメッセージです。ご本人の許可をいただいたのでご紹介します。「早産や低体重児を出産したことで家族は自分自身を責め,その罪悪感とともに日々過ごしております。そのなかで,一つひとつの言葉を非常に敏感に拾ってしまう親も少なくありません。私自身も『未熟児』という単語は自分の罪悪感を呼び起こすきっかけになると感じております。私が自分のこどもの話をするときは『小さく,早く生まれたので』と表現することが多いです。些細な違いかもしれませんが,『未熟』という言葉が使われないことで少し罪悪感が和らいでいるような気がします」。
3つ目は,初版で使っていた「母親」「お母さん」という単語を文脈に合わせて「家族」に置き換えました。私達はフィンランドTurku大学と連携してFamily-centered care:FCC(家族と一緒に築く医療)に力を入れています。各章に適宜“FCC Point”を掲載して,私達の取り組みを紹介しました。
所々に私の「コラム」も掲載しましたので,息抜きにお読みください。表紙は長く当院NICUに入院しており,今はイラストレーターとして独立しているヤマガタコウキチ氏(スタジオロクドゴブ)に,「こども病院への思い」を込めてデザインしてもらいました。
末筆になりますが,1993年の開院以来「こども達とその家族のために」日夜献身的に尽くしている医師,看護師,その他の医療従事者に感謝するとともに,改訂第2版を刊行するに当たり,適切なアドバイスと叱咤激励をいただいたメジカルビュー社の工藤亮子氏に深謝します。
2024年10月
長野県立こども病院 名誉院長
中村 友彦
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目次
Ⅰ 総 論
①超低出生体重児とは?
②超低出生体重児診療に関する基本的な管理とデータ
column Family-centered care「家族と一緒に築く医療」
③超低出生体重児医療における倫理的対応
④超低出生体重児における看取りの医療
⑤超低出生体重児の看護
⑥ファミリーセンタードケア(FCC)概論
ファミリーセンタードケア(FCC)とNICU
ファミリーセンタードケア(FCC)と看護
column 救っていただいた小さく生まれた息子と家族の絆
column 273gの重み
Ⅱ 出生前・出生時の管理
①出生前管理
産科管理
プレネイタルビジット
②出生・入院
総 論
蘇 生
搬 送
体温・湿度管理
Ⅲ 超低出生体重児によくみられる疾患とその管理・看護
①呼 吸
総 論
呼吸窮迫症候群
無呼吸発作
エアリーク
慢性肺疾患
慢性肺疾患の薬物療法
column CLDの児の笑顔
肺低形成
間質性肺気腫
②循 環
総 論
早産児動脈管開存症
新生児遷延性肺高血圧症
心不全
晩期循環不全
③神 経
総 論
脳室内出血
出血後水頭症
脳室周囲白質軟化症
新生児発作
④消化器
総 論
壊死性腸炎
胎便関連性腸閉塞
消化管穿孔
消化管アレルギー(新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症)
胃食道逆流症
⑤栄 養
総 論
経静脈栄養
経腸栄養
ドナーミルク(完全人乳由来栄養)
母乳育児支援
⑥内分泌代謝
総 論
低血糖症
甲状腺機能低下症
早産児骨減少症(未熟児くる病)
⑦血 液
総 論
早産児の貧血
播種性血管内凝固症候群
⑧黄 疸
総 論
黄疸(高ビリルビン血症)
ビリルビン脳症(核黄疸)
⑨感染症
総 論
後天性サイトメガロウイルス感染症
新生児敗血症
column MRSA保菌と常在菌保菌
⑩早産児の網膜症(未熟児網膜症)
早産児の網膜症(未熟児網膜症)
⑪ポジショニング・皮膚保護
ポジショニング
皮膚保護
⑫退院前検査
退院前検査
⑬退院調整
退院調整
在宅酸素療法(HOT)の調整
Ⅳ 症例から考える管理
①呼吸:呼吸窮迫症候群
a. 循環:早産児動脈管開存症
b. 循環:新生児遷延性肺高血圧症
②神経:脳室内出血および出血後水頭症
a. 消化器:消化管穿孔
b. 消化器:胃食道逆流症
③内分泌代謝:甲状腺機能低下症
④血 液
a.在胎23週の超低出生体重児の貧血管理
b.在胎27週の超低出生体重児の貧血管理
column ビタミンK欠乏性出血症とビタミンK予防投与
⑤黄 疸:黄 疸
⑥感染症:新生児敗血症
⑦皮膚保護
a.在胎22〜24週
b.在胎25〜27週
Ⅴ フォローアップと予後
①総 論
②フォローアップ健診の概要
長野県立こども病院のフォローアップ外来
RSウイルスの重症化予防
column 新生児死亡率と周産期死亡率
リハビリテーション
③フォローアップの実際
年齢別のフォローアップ健診
発育および発達のフォローアップ
神経発達症の評価と支援
column ちいさく生まれたあなたたちへ
①超低出生体重児とは?
②超低出生体重児診療に関する基本的な管理とデータ
column Family-centered care「家族と一緒に築く医療」
③超低出生体重児医療における倫理的対応
④超低出生体重児における看取りの医療
⑤超低出生体重児の看護
⑥ファミリーセンタードケア(FCC)概論
ファミリーセンタードケア(FCC)とNICU
ファミリーセンタードケア(FCC)と看護
column 救っていただいた小さく生まれた息子と家族の絆
column 273gの重み
Ⅱ 出生前・出生時の管理
①出生前管理
産科管理
プレネイタルビジット
②出生・入院
総 論
蘇 生
搬 送
体温・湿度管理
Ⅲ 超低出生体重児によくみられる疾患とその管理・看護
①呼 吸
総 論
呼吸窮迫症候群
無呼吸発作
エアリーク
慢性肺疾患
慢性肺疾患の薬物療法
column CLDの児の笑顔
肺低形成
間質性肺気腫
②循 環
総 論
早産児動脈管開存症
新生児遷延性肺高血圧症
心不全
晩期循環不全
③神 経
総 論
脳室内出血
出血後水頭症
脳室周囲白質軟化症
新生児発作
④消化器
総 論
壊死性腸炎
胎便関連性腸閉塞
消化管穿孔
消化管アレルギー(新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症)
胃食道逆流症
⑤栄 養
総 論
経静脈栄養
経腸栄養
ドナーミルク(完全人乳由来栄養)
母乳育児支援
⑥内分泌代謝
総 論
低血糖症
甲状腺機能低下症
早産児骨減少症(未熟児くる病)
⑦血 液
総 論
早産児の貧血
播種性血管内凝固症候群
⑧黄 疸
総 論
黄疸(高ビリルビン血症)
ビリルビン脳症(核黄疸)
⑨感染症
総 論
後天性サイトメガロウイルス感染症
新生児敗血症
column MRSA保菌と常在菌保菌
⑩早産児の網膜症(未熟児網膜症)
早産児の網膜症(未熟児網膜症)
⑪ポジショニング・皮膚保護
ポジショニング
皮膚保護
⑫退院前検査
退院前検査
⑬退院調整
退院調整
在宅酸素療法(HOT)の調整
Ⅳ 症例から考える管理
①呼吸:呼吸窮迫症候群
a. 循環:早産児動脈管開存症
b. 循環:新生児遷延性肺高血圧症
②神経:脳室内出血および出血後水頭症
a. 消化器:消化管穿孔
b. 消化器:胃食道逆流症
③内分泌代謝:甲状腺機能低下症
④血 液
a.在胎23週の超低出生体重児の貧血管理
b.在胎27週の超低出生体重児の貧血管理
column ビタミンK欠乏性出血症とビタミンK予防投与
⑤黄 疸:黄 疸
⑥感染症:新生児敗血症
⑦皮膚保護
a.在胎22〜24週
b.在胎25〜27週
Ⅴ フォローアップと予後
①総 論
②フォローアップ健診の概要
長野県立こども病院のフォローアップ外来
RSウイルスの重症化予防
column 新生児死亡率と周産期死亡率
リハビリテーション
③フォローアップの実際
年齢別のフォローアップ健診
発育および発達のフォローアップ
神経発達症の評価と支援
column ちいさく生まれたあなたたちへ
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わが国の超低出生体重児出生において,高度な医療技術と救命率で知られる長野県立こども病院の新生児科。その管理法をもれなく記載した人気のマニュアルが5年ぶりに最新医学情報とファミリーセンタードケア(FCC)の内容を盛り込んで改訂。フィンランドで学んだ医療者たちが病院に持ち帰ったFCCの理念は長野で受け継がれ,実践を重ね,「家族と一緒に築く医療」として,現在進行形で進化を続けている。最新のNICU治療・チーム医療の詳細とともに,FCCの考え方から医療者のトレーニングの紹介,また,実践内容をFCC Pointとして随所にまとめるなど,ますます充実した内容をお届けする。