臨床画像
2022年7月号 Vol.38 No.7
特集1:絶対に苦手分野にしない 卵巣腫瘍の画像診断/特集2:中枢神経系の脱髄・炎症・感染症

定価 2,750円(税込) (本体2,500円+税)
- B5判 128ページ
- 2022年6月26日刊行
電子版
序説(特集1:絶対に苦手分野にしない 卵巣腫瘍の画像診断)
卵巣腫瘍はさまざまな組織型があり,画像所見も多彩である。MRIを中心にその鑑別点や特徴的所見などが多く報告されているが,容易に覚えきれる量ではなく,診断を苦手と感じている放射線診断医も多いのではないだろうか。しかし,実は卵巣腫瘍は良性でもある程度大きければ切除の適応であり,術後病理組織診断が可能である。実際は卵巣腫瘍の組織型を「あてる」よりも,鑑別疾患を想定したうえで,どういった治療に結び付けるかを意識して診断することが重要である。
決してまれな組織型の腫瘍を診断することが必要とされているわけではない。むしろ,日常的には囊胞性で充実部分がなく「良性病変」と考えられるのかどうかが第一歩である。充実性成分がある場合は,「まず良性病変」なのか,あるいは「悪性の可能性が高い」のか,そして特徴的な所見を呈する「境界悪性腫瘍の可能性」があるかが術式決定に重要である。この点を術前に言及することで,臨床医にとって頼りにされる所見になると思われる。また,特にAYA世代(adolescent and young adult generation)を含む若年者では疾患分布も異なるので注意が必要である。そして明らかに悪性で,腹膜播種を伴う卵巣がんであれば,組織型云々よりも術式を含めた治療法を知り,どのような所見を臨床医が欲しているのかを理解することが重要である。
そこで,本特集では,産婦人科の本音を,臨床でご活躍の産婦人科医に解説をお願いした。そしておさえておきたい「良性腫瘍」と「境界悪性腫瘍」,「若年者の付属器腫瘍」の画像所見と,さらに「卵巣がん」の所見に何が必要とされているのかをエキスパートの先生方に解説をお願いした。
また,急性腹症を呈する場合や,骨盤内の腫瘤性病変がどの臓器由来なのか,内科医,外科医,婦人科医にはさまれて“ドギマギ”してしまうといった経験をされたことも多いと思う。消化器系の疾患ではなく,付属器病変であるということを画像診断で的確に振り分ける役割も期待されているので,注意点を解説していただいた。
担当していただいた先生方には,主旨を十分に理解したうえでお忙しいなかご執筆いただいたことに深謝致します。婦人科領域の画像診断が苦手と思われている先生方の日常臨床へ還元できれば幸いです。
髙濱潤子
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序説(特集2:中枢神経系の脱髄・炎症・感染症)
中枢神経系における炎症性疾患は脱髄〜自己免疫性疾患〜種々の感染症に至るまで,非常に多岐にわたる。正確に診断がなされないと,治療が無効になるばかりでなく,むしろ増悪する可能性がある。画像診断が大きな役割を果たすことはいうまでもない。特徴的な臨床像や画像所見の特徴を正しく理解することで,自信をもって診断することが可能になる。しかしながら一方で,それぞれの疾患において原因が異なるにもかかわらず,画像所見がオーバーラップすることもしばしばである。また,ほかの炎症性疾患だけではなく腫瘍性病変との鑑別が必要なものまであり,主治医や読影医がとても困惑することがある。それゆえ,診断に苦手意識をもつ放射線診断医も多いと推察する。
本特集は「中枢神経系の脱髄・炎症・感染症」と題して,脱髄性疾患,感染症や自己免疫性疾患を含めたさまざまな脳炎の画像所見を神経放射線診断のエキスパートの先生に豊富な画像を用いて詳説していただいた。
多発性硬化症(MS)は成人の脱髄性疾患のなかで最多であり,日常の読影で目にする機会も多い。京都大学ブレインヘルスケア・ビジネスエコシステム寄付講座の渡邉啓太先生らには,MSの臨床像,McDonald診断基準,典型所見,適切な撮像法や鑑別を要する疾患,さらには多発性硬化症治療薬によって生じる進行性多巣性白質脳症(PML)の特徴について広くご解説いただいた。東北大学病院 放射線診断科の穴場比奈野先生らには,多発性硬化症以外で重要な脱髄性疾患である視神経脊髄炎スペクトラム疾患(NMOSD),抗MOG抗体関連疾患(MOG–AD),および急性散在性脳脊髄炎(ADEM)の画像所見や鑑別点についてご解説いただいた。滋賀医科大学 放射線医学講座の沖 摩耶先生らからは中枢神経系の感染症に関して,種々の細菌,結核,ウイルス,真菌および寄生虫など多岐にわたる感染症について,commonなものからrareなものまでそれぞれ豊富な画像を用いてご解説いただいた。そして,虎の門病院 放射線診断科の住田 薫先生からは,さまざまな脳炎の画像診断というテーマで神経サルコイドーシスや種々の血管炎症候群,自己免疫性脳炎に関してご解説していただいた。とらえどころのない難しいテーマであったにもかかわらず,貴重な症例を多く提示しながら,それぞれの疾患に関してわかりやすく解説していただいた。
いずれのテーマも,貴重な症例を数多くご提示いただいたので,神経放射線診断を専門としない一般の放射線診断医の先生にもわかりやすく非常に有益な内容になっていると確信している。そして,本特集が読者の先生方の読影の一助になることを期待している。最後になりますが,難しいテーマにもかかわらず,またコロナ禍の多忙をきわめるなか,本特集に素晴らしい内容の記事をご寄稿いただいた先生方に心から感謝申し上げます。
鹿戸将史
卵巣腫瘍はさまざまな組織型があり,画像所見も多彩である。MRIを中心にその鑑別点や特徴的所見などが多く報告されているが,容易に覚えきれる量ではなく,診断を苦手と感じている放射線診断医も多いのではないだろうか。しかし,実は卵巣腫瘍は良性でもある程度大きければ切除の適応であり,術後病理組織診断が可能である。実際は卵巣腫瘍の組織型を「あてる」よりも,鑑別疾患を想定したうえで,どういった治療に結び付けるかを意識して診断することが重要である。
決してまれな組織型の腫瘍を診断することが必要とされているわけではない。むしろ,日常的には囊胞性で充実部分がなく「良性病変」と考えられるのかどうかが第一歩である。充実性成分がある場合は,「まず良性病変」なのか,あるいは「悪性の可能性が高い」のか,そして特徴的な所見を呈する「境界悪性腫瘍の可能性」があるかが術式決定に重要である。この点を術前に言及することで,臨床医にとって頼りにされる所見になると思われる。また,特にAYA世代(adolescent and young adult generation)を含む若年者では疾患分布も異なるので注意が必要である。そして明らかに悪性で,腹膜播種を伴う卵巣がんであれば,組織型云々よりも術式を含めた治療法を知り,どのような所見を臨床医が欲しているのかを理解することが重要である。
そこで,本特集では,産婦人科の本音を,臨床でご活躍の産婦人科医に解説をお願いした。そしておさえておきたい「良性腫瘍」と「境界悪性腫瘍」,「若年者の付属器腫瘍」の画像所見と,さらに「卵巣がん」の所見に何が必要とされているのかをエキスパートの先生方に解説をお願いした。
また,急性腹症を呈する場合や,骨盤内の腫瘤性病変がどの臓器由来なのか,内科医,外科医,婦人科医にはさまれて“ドギマギ”してしまうといった経験をされたことも多いと思う。消化器系の疾患ではなく,付属器病変であるということを画像診断で的確に振り分ける役割も期待されているので,注意点を解説していただいた。
担当していただいた先生方には,主旨を十分に理解したうえでお忙しいなかご執筆いただいたことに深謝致します。婦人科領域の画像診断が苦手と思われている先生方の日常臨床へ還元できれば幸いです。
髙濱潤子
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序説(特集2:中枢神経系の脱髄・炎症・感染症)
中枢神経系における炎症性疾患は脱髄〜自己免疫性疾患〜種々の感染症に至るまで,非常に多岐にわたる。正確に診断がなされないと,治療が無効になるばかりでなく,むしろ増悪する可能性がある。画像診断が大きな役割を果たすことはいうまでもない。特徴的な臨床像や画像所見の特徴を正しく理解することで,自信をもって診断することが可能になる。しかしながら一方で,それぞれの疾患において原因が異なるにもかかわらず,画像所見がオーバーラップすることもしばしばである。また,ほかの炎症性疾患だけではなく腫瘍性病変との鑑別が必要なものまであり,主治医や読影医がとても困惑することがある。それゆえ,診断に苦手意識をもつ放射線診断医も多いと推察する。
本特集は「中枢神経系の脱髄・炎症・感染症」と題して,脱髄性疾患,感染症や自己免疫性疾患を含めたさまざまな脳炎の画像所見を神経放射線診断のエキスパートの先生に豊富な画像を用いて詳説していただいた。
多発性硬化症(MS)は成人の脱髄性疾患のなかで最多であり,日常の読影で目にする機会も多い。京都大学ブレインヘルスケア・ビジネスエコシステム寄付講座の渡邉啓太先生らには,MSの臨床像,McDonald診断基準,典型所見,適切な撮像法や鑑別を要する疾患,さらには多発性硬化症治療薬によって生じる進行性多巣性白質脳症(PML)の特徴について広くご解説いただいた。東北大学病院 放射線診断科の穴場比奈野先生らには,多発性硬化症以外で重要な脱髄性疾患である視神経脊髄炎スペクトラム疾患(NMOSD),抗MOG抗体関連疾患(MOG–AD),および急性散在性脳脊髄炎(ADEM)の画像所見や鑑別点についてご解説いただいた。滋賀医科大学 放射線医学講座の沖 摩耶先生らからは中枢神経系の感染症に関して,種々の細菌,結核,ウイルス,真菌および寄生虫など多岐にわたる感染症について,commonなものからrareなものまでそれぞれ豊富な画像を用いてご解説いただいた。そして,虎の門病院 放射線診断科の住田 薫先生からは,さまざまな脳炎の画像診断というテーマで神経サルコイドーシスや種々の血管炎症候群,自己免疫性脳炎に関してご解説していただいた。とらえどころのない難しいテーマであったにもかかわらず,貴重な症例を多く提示しながら,それぞれの疾患に関してわかりやすく解説していただいた。
いずれのテーマも,貴重な症例を数多くご提示いただいたので,神経放射線診断を専門としない一般の放射線診断医の先生にもわかりやすく非常に有益な内容になっていると確信している。そして,本特集が読者の先生方の読影の一助になることを期待している。最後になりますが,難しいテーマにもかかわらず,またコロナ禍の多忙をきわめるなか,本特集に素晴らしい内容の記事をご寄稿いただいた先生方に心から感謝申し上げます。
鹿戸将史
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目次
■特集1:絶対に苦手分野にしない 卵巣腫瘍の画像診断 企画・編集:髙濱潤子
序説 髙濱潤子
ガイドラインに基づいた卵巣腫瘍診療の実際 新納恵美子
良性卵巣腫瘍のMRI診断 笹倉康照ほか
若年者の付属器病変のMRI 竹内麻由美ほか
付属器領域の急性腹症と鑑別疾患 岡田博司ほか
上皮性境界悪性腫瘍の画像診断 坪山尚寛ほか
卵巣がんの治療方針決定に求められる画像所見 中井 豪ほか
卵巣腫瘍と鑑別が必要な骨盤内病変 蟹江悠一郎ほか
■特集2:中枢神経系の脱髄炎症感染症 企画・編集:鹿戸将史
序説 鹿戸将史
多発性硬化症の画像診断 渡邉啓太ほか
多発性硬化症以外の脱髄性疾患 穴場比奈野ほか
感染性脳炎 沖 摩耶ほか
さまざまな脳炎の画像診断 住田 薫
序説 髙濱潤子
ガイドラインに基づいた卵巣腫瘍診療の実際 新納恵美子
良性卵巣腫瘍のMRI診断 笹倉康照ほか
若年者の付属器病変のMRI 竹内麻由美ほか
付属器領域の急性腹症と鑑別疾患 岡田博司ほか
上皮性境界悪性腫瘍の画像診断 坪山尚寛ほか
卵巣がんの治療方針決定に求められる画像所見 中井 豪ほか
卵巣腫瘍と鑑別が必要な骨盤内病変 蟹江悠一郎ほか
■特集2:中枢神経系の脱髄炎症感染症 企画・編集:鹿戸将史
序説 鹿戸将史
多発性硬化症の画像診断 渡邉啓太ほか
多発性硬化症以外の脱髄性疾患 穴場比奈野ほか
感染性脳炎 沖 摩耶ほか
さまざまな脳炎の画像診断 住田 薫
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