サイコネフロロジー・エッセンシャル
慢性腎臓病・透析・腎移植の患者と家族のこころのケア
定価 8,250円(税込) (本体7,500円+税)
- B5判 424ページ 2色
- 2022年12月9日刊行
- ISBN978-4-7583-2235-5
序文
本書はサイコネフロロジーに関して初めて体系立てた教科書である。2021年に本書の原版が出版され,その翌年にこの日本語版を出版できたことを大変光栄に思う。
慢性腎臓病(chronic kidney disease ; CKD)によって末期腎不全に至る人は増え続け,現在,わが国では30万人を超える人が維持透析療法を受けている。腎移植は諸外国に比べると利用される機会が少ない現状はあるが,生体間移植を中心に確実にその数を増やしている。これらの腎代替療法の進歩は目覚ましい。しかし,CKDとともに生きる人,そのご家族,そしてケアギバーの負担はいまなお大きく,さまざまな心理社会的な問題が生じている。また,高齢化に伴い,近年は維持透析の開始と継続に関する意思決定支援やエンドオブライフ・ケアといった医療倫理的に重要な課題にも直面している。
米国ではすでに1970年代に,Norman Levy氏らが末期腎不全患者の心理社会的な側面に注目し,サイコネフロロジーの先駆者となった。そのLevy氏は本書原版の序文を執筆している。日本では1990年に太田和夫,春木繁一の両氏によって日本サイコネフロロジー研究会が立ち上げられた。この小さな研究会は脈々と続き,全国に裾野を広げ,30年の年月を経て,2019年に一般社団法人日本サイコネフロロジー学会として新たなスタートが切られた。
今もCKD医療を担うほとんどの施設ではメンタルヘルスの専門家のサポートを得ることができないまま,各施設が独自の方法でサイコネフロロジーのケアを提供せざるを得ない状況が続いている。この状況を変えるため,学会の喫緊の課題として,サイコネフロロジーに関する診療ガイドの作成にまさに着手しようとしていたところに,本書の原版が出版されたのだ。
本書の原版は出版されると同時に,編者のDaniel Cukor氏の友人であり,本書監訳者の1人である舩越 哲によってわれわれに届けられた。われわれは本書が日本のCKDとともに生きる人,そのご家族,そして医療者にとって計り知れない意義をもつことを直感した。
翻訳は日本サイコネフロロジー学会の有志が中心となって担当し,「第67回日本透析医学会学術集会・総会」からの援助・協力を得て,このたび日本語版として上梓することができた。翻訳編集をお願いしたエンゲルマン里恵氏には多大な尽力をいただいたばかりでなく,素晴らしい絵を本書のカバーに提供していただいた。メジカルビュー社の吉川みゆき氏,山田麻祐子氏,石田奈緒美氏をはじめ,編集部の方々には限られた時間のなかで非常に丁寧かつ迅速にサポートをいただいた。ここに深く感謝の意を表したい。
本書とともに,日本のサイコネフロロジーがさらに広がり,深まっていくことを切に願っている。
2022年10月
西村勝治
舩越 哲
土谷 健
慢性腎臓病(chronic kidney disease ; CKD)によって末期腎不全に至る人は増え続け,現在,わが国では30万人を超える人が維持透析療法を受けている。腎移植は諸外国に比べると利用される機会が少ない現状はあるが,生体間移植を中心に確実にその数を増やしている。これらの腎代替療法の進歩は目覚ましい。しかし,CKDとともに生きる人,そのご家族,そしてケアギバーの負担はいまなお大きく,さまざまな心理社会的な問題が生じている。また,高齢化に伴い,近年は維持透析の開始と継続に関する意思決定支援やエンドオブライフ・ケアといった医療倫理的に重要な課題にも直面している。
米国ではすでに1970年代に,Norman Levy氏らが末期腎不全患者の心理社会的な側面に注目し,サイコネフロロジーの先駆者となった。そのLevy氏は本書原版の序文を執筆している。日本では1990年に太田和夫,春木繁一の両氏によって日本サイコネフロロジー研究会が立ち上げられた。この小さな研究会は脈々と続き,全国に裾野を広げ,30年の年月を経て,2019年に一般社団法人日本サイコネフロロジー学会として新たなスタートが切られた。
今もCKD医療を担うほとんどの施設ではメンタルヘルスの専門家のサポートを得ることができないまま,各施設が独自の方法でサイコネフロロジーのケアを提供せざるを得ない状況が続いている。この状況を変えるため,学会の喫緊の課題として,サイコネフロロジーに関する診療ガイドの作成にまさに着手しようとしていたところに,本書の原版が出版されたのだ。
本書の原版は出版されると同時に,編者のDaniel Cukor氏の友人であり,本書監訳者の1人である舩越 哲によってわれわれに届けられた。われわれは本書が日本のCKDとともに生きる人,そのご家族,そして医療者にとって計り知れない意義をもつことを直感した。
翻訳は日本サイコネフロロジー学会の有志が中心となって担当し,「第67回日本透析医学会学術集会・総会」からの援助・協力を得て,このたび日本語版として上梓することができた。翻訳編集をお願いしたエンゲルマン里恵氏には多大な尽力をいただいたばかりでなく,素晴らしい絵を本書のカバーに提供していただいた。メジカルビュー社の吉川みゆき氏,山田麻祐子氏,石田奈緒美氏をはじめ,編集部の方々には限られた時間のなかで非常に丁寧かつ迅速にサポートをいただいた。ここに深く感謝の意を表したい。
本書とともに,日本のサイコネフロロジーがさらに広がり,深まっていくことを切に願っている。
2022年10月
西村勝治
舩越 哲
土谷 健
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目次
第1部 イントロダクション
1章 イントロダクション [Norman B. Levy]
2章 慢性疾患への対処:腎疾患患者の課題 [Daniel Cukor, Scott D. Cohen, and Paul L. Kimmel]
併存する精神疾患の影響に関するモデル
慢性疾患への対処
ESRD患者の現実世界:複雑な相互関係
3章 慢性腎臓病・末期腎不全における精神疾患の状況 [Alice Won and Paul L. Kimmel]
CKDとESRD
CKDおよびESRDにおける精神疾患
うつ病
不安(不安症)
4章 慢性腎臓病・末期腎不全における人種間格差および
社会経済的格差の社会的要因 [Jenna M. Norton]
社会の構成物としての人種と民族
CKDおよびESRDにおける人種的,民族的,社会経済的格差
腎疾患の人種間,民族間,社会経済的格差における社会的リスクの作用
第2部 慢性腎臓病
5章 慢性腎臓病の初期段階における心理的課題と精神疾患 [L. Parker Gregg and S. Susan Hedayati]
大うつ病性障害
双極性障害
不安症
アルコール使用障害
オピオイド使用障害
6 章 慢性腎臓病患者の身体活動 [Capri G. Foy]
身体活動の定義
CKD患者の身体活動,体力,機能,およびフレイル
一般人口にとっての身体活動の利点
CKD患者のアウトカムに対する身体活動と運動療法の効果
身体活動に関する現在の一般的な推奨事項
CKD患者の身体活動と運動に関する最近の推奨事項
CKD患者の身体活動の障壁
CKDにおける身体活動のリスク
第3部 透析を受けている末期腎不全患者
7 章 慢性腎臓病・末期腎不全患者におけるうつ病 [Davin K. Quinn and Daniel Cukor]
CKDにおけるうつ病の疫学
CKD患者のうつ病のスクリーニングと診断
ESRDにおけるうつ病の治療方法
ESRDにおけるうつ病の代替治療薬
三環系抗うつ薬
CKD/ESRD/HD患者が抗うつ薬を使用する際の特別な注意点
セロトニン症候群
抗うつ薬中断症候群
ニューロモデュレーション:CKD患者のうつ病の治療法として期待される
うつ病の非薬物療法
治療内容
8章 慢性腎臓病・末期腎不全患者における不安 [Paul L. Kimmel, Scott D. Cohen, and Daniel Cukor]
不安:症状および診断
疫学的考察
治療
9章 慢性腎臓病・末期腎不全患者における睡眠障害 [Maria-Eleni Roumelioti, Christos P. Argyropoulos, and Mark L. Unruh]
睡眠時無呼吸症候群(SA)
不眠症
むずむず脚症候群(RLS;ウィリス・エクボム病)
周期性四肢運動(PLM)
日中の過度の眠気(EDS)
睡眠の質(SQ)の低下
CKDの進行における睡眠障害の役割
CKDおよび透析患者の血圧調節における睡眠障害の役割
CKDおよび透析患者の睡眠におけるメラトニンの役割
10章 慢性腎臓病・末期腎不全患者における痛みと症状による負担感 [Manisha Jhamb and Jennifer Steel]
痛みと症状の重さが患者中心のアウトカムに与える影響
CKD/ESRDにおける痛みの評価と管理の課題
痛みの評価
疼痛管理の一般原則
薬物療法
非薬物療法
11章 慢性腎臓病・末期腎不全患者における認知機能 [Konstadina Griva and Stanton P. Newman]
定義-認知機能,認知領域,およびCI
CKDにおける認知機能
認知機能と腎代替療法(RRT)
慢性腎臓病において認知機能が障害されるメカニズム
認知機能とそのほかのアウトカム
介入方法
12章 慢性腎臓病・末期腎不全患者における性機能 [Connie J. Wang, James B. Wetmore, and Kirsten L. Johansen]
定義
診断
有病率
性機能障害および透析モダリティ
病態生理
診断および管理
女性における性機能障害
男性における性機能障害
13章 慢性腎臓病・末期腎不全患者におけるソーシャルサポート [Saad Alshihiri and Scott D. Cohen]
ソーシャルサポート,QOL,患者のアウトカム
ソーシャルサポートの認識とCKD患者への影響
ソーシャルサポートに対する患者の認識を高めるための介入
14章 慢性腎臓病・末期腎不全患者におけるアドヒアランスと病気の認識 [Joseph Chilcot, John Weinman, and Ken Farrington]
透析患者におけるノンアドヒアランスの測定と影響
アドヒアランス指標としての生化学的・生理学的なパラメータ
透析ノンアドヒアランス
ESRDのノンアドヒアランスに関連する生物心理社会的要因
病気および治療への認識がノンアドヒアランスに与える影響
ノンアドヒアランス理解における理論の発展:COM-B
ESRDのノンアドヒアランスを改善するための介入
15 章 腹膜透析を受けている患者の精神的課題 [Susie Q. Lew and Patricia Centron]
うつ病と不安
睡眠障害,不眠症
認知症,認知機能
Illness intrusion(病気の侵入)
ボディイメージ
性的機能
慢性疲労
失感情症
病気に対する認識
介護者のストレス
QOL
孤独感
16章 末期腎不全患者における緩和ケア,エンドオブライフ・ケア [Nathaniel Berman and Elly Varma]
緩和ケアの必要性:死亡率
高リスクのサブグループにおける死亡率
ESRDの緩和ケアにおける課題:罹病率
症状の負担:疼痛
症状の負担:精神症状
症状の負担:身体的症状
QOLと身体機能
保存的腎臓療法(CKM)
アドバンス・ケア・プランニング
第4部 腎移植
17 章 腎移植における心理社会的評価 [Kristy L. Engel and Kristin K. Kuntz]
アドヒアランス
精神病理
物質(薬物)使用
生活史と支援
認知機能
文化的配慮
18 章 腎移植における精神医学的課題と管理 [Matthew Christian Cornelius]
移植前
移植前のうつ病
移植前の不安症
移植前の双極性障害
移植前の精神病性障害
物質使用障害
移植直後の期間(移植後3カ月以内)
免疫抑制薬
せん妄
躁病,精神病(サイコーシス)
可逆性後頭葉白質脳症症候群(PRES)とカタトニア
セロトニン症候群
移植急性期の不安
移植後3カ月以上経過した時期
移植患者のうつ病に対する精神療法
腎移植後の不安
摂食障害
移植後の心理社会的変化
生体腎ドナーの課題
19章 移植におけるアドヒアランス管理 [Sabina M. De Geest, Janette Ribaut, Kris Denhaerynck, and Fabienne Dobbels]
服薬アドヒアランス・ノンアドヒアランスの定義
臓器移植後の服薬ノンアドヒアランスの測定
ノンアドヒアランスの多層的な決定要因
服薬アドヒアランス強化のための介入
アドヒアランスの実践パターン
アドヒアランス介入を実施するための慢性疾患ケアモデルの導入
実践を向上させるための方法としての実装科学
第5部 特別な考慮事項
20章 小児および思春期の慢性腎臓病・末期腎不全患者 [Kaushalendra Amatya, Marva M. Moxey-Mims, and Stephen R. Hooper]
神経認知機能
小児CKDにおける神経画像
精神医学的・心理社会的機能
精神疾患の評価,診断,治療のための特別な考慮事項
QOL
睡眠障害
アドヒアランス
成人期への移行
マルチシステムの視点
21 章 腎疾患患者の介護者 [Melissa S. Nataatmadja and Nicholas A. Gray]
介護者の負担に関するケーススタディ
腎疾患患者の介護者
介護負担増の原因
透析治療を受けている患者の介護者
透析モダリティとの関連性
新規のHDモダリティ(在宅HD,拡張HD,夜間HD,頻回HD)
介護のポジティブな側面
CKDをもつ子どもの介護者
腎移植を受けた患者の介護者
腎疾患で保存療法を受けている患者の介護者
介護者の対処メカニズム
CKD患者の介護者を支援するための介入策
CKD患者の介護者のための今後の方向性
22 章 QOL の測定と改善 [C. Graham Ford, Mark L. Unruh, and Larissa Myaskovsky]
ESRD患者のQOLと症状の管理
透析タイプ別のQOLの比較
QOLの評価と測定に関する問題
透析患者のQOLの改善
結論と今後の方向性
23 章 腎疾患患者における心理社会的研究の課題 [Rajnish Mehrotra and Daniel Cukor]
1.腎疾患リサーチコミュニティの賛同を得ること
2 .精神疾患治療の臨床研究の複雑さ
3 .研究対象患者の特定
4 .精神疾患のスティグマ(差別,偏見)
5 .メンタルヘルス治療へのアクセスのしやすさ
6 .治療薬が増えることへの抵抗感
7 .アウトカムの尺度の重要性
8 .PROs(Patient Reported Outcome,患者報告アウトカム)に対する標準化された尺度の欠如
9 .研究評価完了までの課題
10 .応答バイアス
24章 精神医学的介入のための将来の方向性:医療提供の新たなモデル [Daniel Cukor and Scott D. Cohen]
メンタルヘルスケアへのアクセスの障壁
ESRDにおける精神医療の最新モデル
ほかの医療分野における統合的メンタルヘルスケアモデル
透析施設における行動医学ケアモデルの提案
1章 イントロダクション [Norman B. Levy]
2章 慢性疾患への対処:腎疾患患者の課題 [Daniel Cukor, Scott D. Cohen, and Paul L. Kimmel]
併存する精神疾患の影響に関するモデル
慢性疾患への対処
ESRD患者の現実世界:複雑な相互関係
3章 慢性腎臓病・末期腎不全における精神疾患の状況 [Alice Won and Paul L. Kimmel]
CKDとESRD
CKDおよびESRDにおける精神疾患
うつ病
不安(不安症)
4章 慢性腎臓病・末期腎不全における人種間格差および
社会経済的格差の社会的要因 [Jenna M. Norton]
社会の構成物としての人種と民族
CKDおよびESRDにおける人種的,民族的,社会経済的格差
腎疾患の人種間,民族間,社会経済的格差における社会的リスクの作用
第2部 慢性腎臓病
5章 慢性腎臓病の初期段階における心理的課題と精神疾患 [L. Parker Gregg and S. Susan Hedayati]
大うつ病性障害
双極性障害
不安症
アルコール使用障害
オピオイド使用障害
6 章 慢性腎臓病患者の身体活動 [Capri G. Foy]
身体活動の定義
CKD患者の身体活動,体力,機能,およびフレイル
一般人口にとっての身体活動の利点
CKD患者のアウトカムに対する身体活動と運動療法の効果
身体活動に関する現在の一般的な推奨事項
CKD患者の身体活動と運動に関する最近の推奨事項
CKD患者の身体活動の障壁
CKDにおける身体活動のリスク
第3部 透析を受けている末期腎不全患者
7 章 慢性腎臓病・末期腎不全患者におけるうつ病 [Davin K. Quinn and Daniel Cukor]
CKDにおけるうつ病の疫学
CKD患者のうつ病のスクリーニングと診断
ESRDにおけるうつ病の治療方法
ESRDにおけるうつ病の代替治療薬
三環系抗うつ薬
CKD/ESRD/HD患者が抗うつ薬を使用する際の特別な注意点
セロトニン症候群
抗うつ薬中断症候群
ニューロモデュレーション:CKD患者のうつ病の治療法として期待される
うつ病の非薬物療法
治療内容
8章 慢性腎臓病・末期腎不全患者における不安 [Paul L. Kimmel, Scott D. Cohen, and Daniel Cukor]
不安:症状および診断
疫学的考察
治療
9章 慢性腎臓病・末期腎不全患者における睡眠障害 [Maria-Eleni Roumelioti, Christos P. Argyropoulos, and Mark L. Unruh]
睡眠時無呼吸症候群(SA)
不眠症
むずむず脚症候群(RLS;ウィリス・エクボム病)
周期性四肢運動(PLM)
日中の過度の眠気(EDS)
睡眠の質(SQ)の低下
CKDの進行における睡眠障害の役割
CKDおよび透析患者の血圧調節における睡眠障害の役割
CKDおよび透析患者の睡眠におけるメラトニンの役割
10章 慢性腎臓病・末期腎不全患者における痛みと症状による負担感 [Manisha Jhamb and Jennifer Steel]
痛みと症状の重さが患者中心のアウトカムに与える影響
CKD/ESRDにおける痛みの評価と管理の課題
痛みの評価
疼痛管理の一般原則
薬物療法
非薬物療法
11章 慢性腎臓病・末期腎不全患者における認知機能 [Konstadina Griva and Stanton P. Newman]
定義-認知機能,認知領域,およびCI
CKDにおける認知機能
認知機能と腎代替療法(RRT)
慢性腎臓病において認知機能が障害されるメカニズム
認知機能とそのほかのアウトカム
介入方法
12章 慢性腎臓病・末期腎不全患者における性機能 [Connie J. Wang, James B. Wetmore, and Kirsten L. Johansen]
定義
診断
有病率
性機能障害および透析モダリティ
病態生理
診断および管理
女性における性機能障害
男性における性機能障害
13章 慢性腎臓病・末期腎不全患者におけるソーシャルサポート [Saad Alshihiri and Scott D. Cohen]
ソーシャルサポート,QOL,患者のアウトカム
ソーシャルサポートの認識とCKD患者への影響
ソーシャルサポートに対する患者の認識を高めるための介入
14章 慢性腎臓病・末期腎不全患者におけるアドヒアランスと病気の認識 [Joseph Chilcot, John Weinman, and Ken Farrington]
透析患者におけるノンアドヒアランスの測定と影響
アドヒアランス指標としての生化学的・生理学的なパラメータ
透析ノンアドヒアランス
ESRDのノンアドヒアランスに関連する生物心理社会的要因
病気および治療への認識がノンアドヒアランスに与える影響
ノンアドヒアランス理解における理論の発展:COM-B
ESRDのノンアドヒアランスを改善するための介入
15 章 腹膜透析を受けている患者の精神的課題 [Susie Q. Lew and Patricia Centron]
うつ病と不安
睡眠障害,不眠症
認知症,認知機能
Illness intrusion(病気の侵入)
ボディイメージ
性的機能
慢性疲労
失感情症
病気に対する認識
介護者のストレス
QOL
孤独感
16章 末期腎不全患者における緩和ケア,エンドオブライフ・ケア [Nathaniel Berman and Elly Varma]
緩和ケアの必要性:死亡率
高リスクのサブグループにおける死亡率
ESRDの緩和ケアにおける課題:罹病率
症状の負担:疼痛
症状の負担:精神症状
症状の負担:身体的症状
QOLと身体機能
保存的腎臓療法(CKM)
アドバンス・ケア・プランニング
第4部 腎移植
17 章 腎移植における心理社会的評価 [Kristy L. Engel and Kristin K. Kuntz]
アドヒアランス
精神病理
物質(薬物)使用
生活史と支援
認知機能
文化的配慮
18 章 腎移植における精神医学的課題と管理 [Matthew Christian Cornelius]
移植前
移植前のうつ病
移植前の不安症
移植前の双極性障害
移植前の精神病性障害
物質使用障害
移植直後の期間(移植後3カ月以内)
免疫抑制薬
せん妄
躁病,精神病(サイコーシス)
可逆性後頭葉白質脳症症候群(PRES)とカタトニア
セロトニン症候群
移植急性期の不安
移植後3カ月以上経過した時期
移植患者のうつ病に対する精神療法
腎移植後の不安
摂食障害
移植後の心理社会的変化
生体腎ドナーの課題
19章 移植におけるアドヒアランス管理 [Sabina M. De Geest, Janette Ribaut, Kris Denhaerynck, and Fabienne Dobbels]
服薬アドヒアランス・ノンアドヒアランスの定義
臓器移植後の服薬ノンアドヒアランスの測定
ノンアドヒアランスの多層的な決定要因
服薬アドヒアランス強化のための介入
アドヒアランスの実践パターン
アドヒアランス介入を実施するための慢性疾患ケアモデルの導入
実践を向上させるための方法としての実装科学
第5部 特別な考慮事項
20章 小児および思春期の慢性腎臓病・末期腎不全患者 [Kaushalendra Amatya, Marva M. Moxey-Mims, and Stephen R. Hooper]
神経認知機能
小児CKDにおける神経画像
精神医学的・心理社会的機能
精神疾患の評価,診断,治療のための特別な考慮事項
QOL
睡眠障害
アドヒアランス
成人期への移行
マルチシステムの視点
21 章 腎疾患患者の介護者 [Melissa S. Nataatmadja and Nicholas A. Gray]
介護者の負担に関するケーススタディ
腎疾患患者の介護者
介護負担増の原因
透析治療を受けている患者の介護者
透析モダリティとの関連性
新規のHDモダリティ(在宅HD,拡張HD,夜間HD,頻回HD)
介護のポジティブな側面
CKDをもつ子どもの介護者
腎移植を受けた患者の介護者
腎疾患で保存療法を受けている患者の介護者
介護者の対処メカニズム
CKD患者の介護者を支援するための介入策
CKD患者の介護者のための今後の方向性
22 章 QOL の測定と改善 [C. Graham Ford, Mark L. Unruh, and Larissa Myaskovsky]
ESRD患者のQOLと症状の管理
透析タイプ別のQOLの比較
QOLの評価と測定に関する問題
透析患者のQOLの改善
結論と今後の方向性
23 章 腎疾患患者における心理社会的研究の課題 [Rajnish Mehrotra and Daniel Cukor]
1.腎疾患リサーチコミュニティの賛同を得ること
2 .精神疾患治療の臨床研究の複雑さ
3 .研究対象患者の特定
4 .精神疾患のスティグマ(差別,偏見)
5 .メンタルヘルス治療へのアクセスのしやすさ
6 .治療薬が増えることへの抵抗感
7 .アウトカムの尺度の重要性
8 .PROs(Patient Reported Outcome,患者報告アウトカム)に対する標準化された尺度の欠如
9 .研究評価完了までの課題
10 .応答バイアス
24章 精神医学的介入のための将来の方向性:医療提供の新たなモデル [Daniel Cukor and Scott D. Cohen]
メンタルヘルスケアへのアクセスの障壁
ESRDにおける精神医療の最新モデル
ほかの医療分野における統合的メンタルヘルスケアモデル
透析施設における行動医学ケアモデルの提案
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今こそ身につけたい“腎臓病学 ✕ 精神医学”!
サイコネフロロジー(精神腎臓学)を体系的に学べる名著の日本語版が登場。
患者の慢性腎臓病への対処,腎臓病患者における精神疾患の疫学,慢性腎臓病患者におけるうつ病,睡眠障害,不安,痛み,性機能障害,ソーシャルサポート,身体活動,アドヒアランス,介護,また腎移植の心理社会的な課題など,患者を全人的にケアするための対処法・治療法を徹底解説。今までわが国では成書のないテーマであるため臨床医やメディカルスタッフにとって役立つ1冊となっている。
日本サイコネフロロジー学会と日本透析学会の協力により,“Psychosocial Aspects of Chronic Kidney Disease: Exploring the Impact of CKD”(D. Cukor, S.D. Cohen and P.L. Kimmel 編, Elsevier, 2020)を翻訳。