腫瘍循環器診療 実践トレーニング
定価 5,280円(税込) (本体4,800円+税)
- B5判 240ページ 2色(一部カラー),イラスト50点,写真70点
- 2024年3月14日刊行
- ISBN978-4-7583-2214-0
電子版
序文
2000年代になり,がん治療が進歩し,がん患者の生命予後が大幅に改善した。それに伴ってがん患者やがんサバイバーが循環器疾患を発症するという新たな問題が生じ,がんと循環器疾患を扱う腫瘍循環器学が世界的に注目されるようになった。わが国でも2010年以降,腫瘍循環器に関する研究会が開催され,循環器やがんの関連学会でも腫瘍循環器に関するシンポジウムが企画されるようになった。
2017年10月には,腫瘍専門医と循環器専門医が一緒になって日本腫瘍循環器学会が設立された。日本腫瘍循環器学会は,腫瘍循環器学の啓発・普及・教育,診療体制の整備,疫学・臨床・基礎研究の推進,産官学連携の推進などを中心に活動している。ガイドラインなど,診療の手引きの作成も学会の重要な使命であるため,2020年12月に『腫瘍循環器診療ハンドブック』を日本腫瘍循環器学会が編集し刊行した。幸いこのハンドブックは好評を得たが,2022年には欧州心臓病学会からガイドラインが発表され,2023年3月にはわが国においても待望の『Onco-cardiologyガイドライン』が発行された。大部の欧州心臓病学会ガイドラインも,Mindsに準拠したわが国のガイドラインも素晴らしい出来栄えではあるものの,ガイドラインに資するエビデンスが少ないために明確な指針を示すことが困難であった。そこで十分なエビデンスがないなかでも実際に腫瘍循環器診療を行うための指針が必要なのではないかと考えた。
本書では,循環器専門医,腫瘍専門医ばかりでなく,実地医家,メディカルスタッフなど,がん患者の診療にかかわるすべての医療従事者が臨床現場で役立つように,症例ごとにガイドラインなどをどのように活かすかばかりでなく,ガイドラインに載っていない場合はどうするかについても解説した。基本方針として,最初に基礎知識を簡潔に解説し,その後,症例問題を解くトレーニング形式で実臨床に即した解説をした。疾患や薬剤などの解説はできるだけ図解し,適切な診療を行うための最新知識・Tipsなどを「Advice」として示した。本書によって,姉妹書の『腫瘍循環器診療ハンドブック』やガイドラインの理解が深まり,実際の腫瘍循環器診療に役立つことを心より祈念している。
最後に本書の企画に関して大変お世話になった,国立がん研究センター東病院循環器科長の田尻和子先生に深謝する。
2024年1月
国際医療福祉大学・東京大学
小室一成
2017年10月には,腫瘍専門医と循環器専門医が一緒になって日本腫瘍循環器学会が設立された。日本腫瘍循環器学会は,腫瘍循環器学の啓発・普及・教育,診療体制の整備,疫学・臨床・基礎研究の推進,産官学連携の推進などを中心に活動している。ガイドラインなど,診療の手引きの作成も学会の重要な使命であるため,2020年12月に『腫瘍循環器診療ハンドブック』を日本腫瘍循環器学会が編集し刊行した。幸いこのハンドブックは好評を得たが,2022年には欧州心臓病学会からガイドラインが発表され,2023年3月にはわが国においても待望の『Onco-cardiologyガイドライン』が発行された。大部の欧州心臓病学会ガイドラインも,Mindsに準拠したわが国のガイドラインも素晴らしい出来栄えではあるものの,ガイドラインに資するエビデンスが少ないために明確な指針を示すことが困難であった。そこで十分なエビデンスがないなかでも実際に腫瘍循環器診療を行うための指針が必要なのではないかと考えた。
本書では,循環器専門医,腫瘍専門医ばかりでなく,実地医家,メディカルスタッフなど,がん患者の診療にかかわるすべての医療従事者が臨床現場で役立つように,症例ごとにガイドラインなどをどのように活かすかばかりでなく,ガイドラインに載っていない場合はどうするかについても解説した。基本方針として,最初に基礎知識を簡潔に解説し,その後,症例問題を解くトレーニング形式で実臨床に即した解説をした。疾患や薬剤などの解説はできるだけ図解し,適切な診療を行うための最新知識・Tipsなどを「Advice」として示した。本書によって,姉妹書の『腫瘍循環器診療ハンドブック』やガイドラインの理解が深まり,実際の腫瘍循環器診療に役立つことを心より祈念している。
最後に本書の企画に関して大変お世話になった,国立がん研究センター東病院循環器科長の田尻和子先生に深謝する。
2024年1月
国際医療福祉大学・東京大学
小室一成
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目次
1章 がん治療を始める前に
1 CTR-CVTとは 筒井裕之
2 がん治療前のリスク評価をどう行う? 森 繭代・大須賀 穣
3 がん手術前の心血管評価をどう行う? 中村真潮
4 CTR-CVTをどう防ぐ? 保田知生
5 腫瘍循環器診療における連携はどう行う? 大倉裕二
6 特別に配慮が必要な患者群の腫瘍循環器診療はどうする? 石井正紀・秋下雅弘
2章 がん治療に関連する心血管合併症とモニタリング
1 アントラサイクリン系薬剤はなにに気を付ける? 中川 仁・斎藤能彦
2 抗HER2薬はなにに気を付ける? 能勢 拓・南 博信
3 血管新生阻害薬はなにに気を付ける? 宮﨑彩記子・南野 徹
4 多発性骨髄腫はなにに気を付ける? Robert Zheng・西條良仁・佐田政隆
5 チロシンキナーゼ阻害薬はなにに気を付ける? 畠 清彦
6 免疫チェックポイント阻害薬はなにに気を付ける? 猪又孝元
7 放射線治療はなにに気を付ける? 石田隆史・及川雅啓・小林 淳・竹石恭知
8 代謝拮抗薬(ピリミジン代謝拮抗薬)はなにに気を付ける? 大迫亮介・田中敦史・野出孝一
9 BRAF阻害薬/MEK阻害薬はなにに気を付ける? 吉田裕也・高橋雅信・石岡千加史
10 造血幹細胞移植はなにに気を付ける? 安藤寿彦・木村晋也
11 前立腺がんに対するホルモン療法はなにに気をつける? 田尻和子
12 ALK阻害薬やEGFR阻害薬はなにに気を付ける? 植田智美・赤澤 宏
13 CAR-T細胞療法はなにに気を付ける? 矢野真吾
14 サイクリン依存性キナーゼ阻害薬(CDK4/6阻害薬)はなにに気を付ける? 田村研治
15 乳がんに対するホルモン療法はなにに気を付ける? 石場俊之・戸井雅和
3章 がん/がん治療に関連する心血管合併症のマネジメント
1 心血管合併症を発症した患者の治療継続,減量,中止の判断をどう行う? 加藤 浩
2 がん治療関連心機能障害(CTRCD)の診断治療をどう行う? 坂本二郎・泉 知里
3 がん治療関連心機能障害(CTRCD)の一次予防に有効な薬剤は? 木岡秀隆・坂田泰史
4 心筋炎の診断治療をどう行う? 及川雅啓
5 たこつぼ症候群の診断治療をどう行う? 泉田俊秀・絹川弘一郎
6 虚血性心疾患とがん治療 石坂信和
7 末梢動脈疾患の診断治療をどう行う? 清水優樹・室原豊明
8 高血圧症の診断治療をどう行う? 長谷部智美・長谷部直幸
9 不整脈の診断治療をどう行う? 庄司正昭
10 肺高血圧症の診断治療をどう行う? 赤木 達・伊藤 浩
11 肺腫瘍血栓性微小血管症(PTTM)の診断治療をどう行う? 谷口 悠・平田健一
12 静脈血栓塞栓症(VTE)の治療をどう行う? 野中顕子
13 心タンポナーデの診断治療をどう行う? 佐藤希美
14 心臓腫瘍の診断治療をどう行う? 石坂 傑・安斉俊久
4章 がんサバイバーシップ
がんサバイバーにはなにに気を付ける? 川村眞智子
付録
1 がん治療薬によるCTR-CVTの一覧 渋谷悠真
2 有害事象共通用語規準(CTCAE)における心血管合併症一覧 照井康仁
3 腫瘍循環器領域の主な情報(アップデート) 向井幹夫
Column
1 腫瘍循環器学のあゆみ 向井幹夫
2 「がんも,循環器も」―腫瘍循環器学への期待― 清水千佳子
3 腫瘍循環器学の未来 佐瀬一洋
4 腫瘍循環器医の日常 福田優子
5 腫瘍循環器学のキャリア形成 岡 亨
6 腫瘍循環器外来でしばしば経験するそのほかの病態 野中顕子
1 CTR-CVTとは 筒井裕之
2 がん治療前のリスク評価をどう行う? 森 繭代・大須賀 穣
3 がん手術前の心血管評価をどう行う? 中村真潮
4 CTR-CVTをどう防ぐ? 保田知生
5 腫瘍循環器診療における連携はどう行う? 大倉裕二
6 特別に配慮が必要な患者群の腫瘍循環器診療はどうする? 石井正紀・秋下雅弘
2章 がん治療に関連する心血管合併症とモニタリング
1 アントラサイクリン系薬剤はなにに気を付ける? 中川 仁・斎藤能彦
2 抗HER2薬はなにに気を付ける? 能勢 拓・南 博信
3 血管新生阻害薬はなにに気を付ける? 宮﨑彩記子・南野 徹
4 多発性骨髄腫はなにに気を付ける? Robert Zheng・西條良仁・佐田政隆
5 チロシンキナーゼ阻害薬はなにに気を付ける? 畠 清彦
6 免疫チェックポイント阻害薬はなにに気を付ける? 猪又孝元
7 放射線治療はなにに気を付ける? 石田隆史・及川雅啓・小林 淳・竹石恭知
8 代謝拮抗薬(ピリミジン代謝拮抗薬)はなにに気を付ける? 大迫亮介・田中敦史・野出孝一
9 BRAF阻害薬/MEK阻害薬はなにに気を付ける? 吉田裕也・高橋雅信・石岡千加史
10 造血幹細胞移植はなにに気を付ける? 安藤寿彦・木村晋也
11 前立腺がんに対するホルモン療法はなにに気をつける? 田尻和子
12 ALK阻害薬やEGFR阻害薬はなにに気を付ける? 植田智美・赤澤 宏
13 CAR-T細胞療法はなにに気を付ける? 矢野真吾
14 サイクリン依存性キナーゼ阻害薬(CDK4/6阻害薬)はなにに気を付ける? 田村研治
15 乳がんに対するホルモン療法はなにに気を付ける? 石場俊之・戸井雅和
3章 がん/がん治療に関連する心血管合併症のマネジメント
1 心血管合併症を発症した患者の治療継続,減量,中止の判断をどう行う? 加藤 浩
2 がん治療関連心機能障害(CTRCD)の診断治療をどう行う? 坂本二郎・泉 知里
3 がん治療関連心機能障害(CTRCD)の一次予防に有効な薬剤は? 木岡秀隆・坂田泰史
4 心筋炎の診断治療をどう行う? 及川雅啓
5 たこつぼ症候群の診断治療をどう行う? 泉田俊秀・絹川弘一郎
6 虚血性心疾患とがん治療 石坂信和
7 末梢動脈疾患の診断治療をどう行う? 清水優樹・室原豊明
8 高血圧症の診断治療をどう行う? 長谷部智美・長谷部直幸
9 不整脈の診断治療をどう行う? 庄司正昭
10 肺高血圧症の診断治療をどう行う? 赤木 達・伊藤 浩
11 肺腫瘍血栓性微小血管症(PTTM)の診断治療をどう行う? 谷口 悠・平田健一
12 静脈血栓塞栓症(VTE)の治療をどう行う? 野中顕子
13 心タンポナーデの診断治療をどう行う? 佐藤希美
14 心臓腫瘍の診断治療をどう行う? 石坂 傑・安斉俊久
4章 がんサバイバーシップ
がんサバイバーにはなにに気を付ける? 川村眞智子
付録
1 がん治療薬によるCTR-CVTの一覧 渋谷悠真
2 有害事象共通用語規準(CTCAE)における心血管合併症一覧 照井康仁
3 腫瘍循環器領域の主な情報(アップデート) 向井幹夫
Column
1 腫瘍循環器学のあゆみ 向井幹夫
2 「がんも,循環器も」―腫瘍循環器学への期待― 清水千佳子
3 腫瘍循環器学の未来 佐瀬一洋
4 腫瘍循環器医の日常 福田優子
5 腫瘍循環器学のキャリア形成 岡 亨
6 腫瘍循環器外来でしばしば経験するそのほかの病態 野中顕子
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