腫瘍循環器診療ハンドブック
改訂第2版

定価 5,720円(税込) (本体5,200円+税)
- B5判 284ページ 2色(一部4色),イラスト30点,写真45点
- 2025年11月2日刊行
- ISBN978-4-7583-2433-5
電子版
序文
序
アントラサイクリン系抗悪性腫瘍薬による心毒性は1960年代から知られ,1970年代には蓄積毒性が明確となり総投与量が制限された。しかし,制限量までの安全性が保障されているわけではなく,半量以下でも心機能低下は起き得る。心毒性を予防したり治療しながら抗悪性腫瘍薬の恩恵をがん患者に届ける必要がある。そのためには腫瘍専門医と循環器専門医が,お互いの領域の知見を理解し緊密に連携する診療が必要である。その一助として日本腫瘍循環器学会では2020年11月に『腫瘍循環器診療ハンドブック』を出版し,臨床現場で広く使われてきた。
しかし,がん治療の進歩は目覚ましく,毎月のように新規薬剤が承認され,適応が拡大している。5年を待たずに改訂が必要となった。最近開発される抗悪性腫瘍薬のほとんどが分子標的薬や免疫を利用する治療であるが,これらは従来の殺細胞性薬物よりも心血管系の毒性が問題となる。本書の第1版が刊行された後,2022年に欧州心臓病学会(ESC)より腫瘍循環器ガイドラインが公表された。ところがESCのガイドラインは量が膨大なうえに英語であり,忙しい日常診療のなかで通読するのは大変である。しかも記載されている300近い推奨はエキスパートオピニオンがほとんどであり,レベルが高いエビデンスに裏付けられている推奨は3%しかない。そこで日本腫瘍循環器学会と日本臨床腫瘍学会が合同でMindsの手法によりエビデンスに基づいて『Onco-cardiologyガイドライン』を2023年に出版した。しかし,エビデンスが少ないために扱えたクリニカルクエスチョンは5つしかない。質の高いエビデンスが乏しくても,日々がん治療は行われ,心血管系の副作用は発生する。現時点で得られるエビデンスを最大限に駆使して腫瘍循環器診療を行う必要がある。本書ではエビデンスを意識しながら現実的なガイダンスを与えてくれる。
がん治療の進歩に即して,今回の改訂では構成が大きく変わった。具体的には,BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害薬,ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬,BRAFおよびMEK阻害薬など新しい分子標的薬や,CAR-TやT-cell engagersなど新しい作用機序の治療も取り上げた。抗腫瘍効果が大きくてもQTc延長作用のある分子標的薬が増えたため,第1版では不整脈の一部として扱っていたQTc延長を独立した章として新設した。
また,第1版の構成はがん種ごとの記載が多かったが,抗悪性腫瘍薬はがん種にとらわれずに使用される。特に近年はがん種を越えて遺伝子異常に基づいて抗悪性腫瘍薬治療を行う時代になった。がん種横断的ながん薬物療法の浸透に伴い,改訂第2版ではがん種を越えた各治療薬の解説を大きく増やしている。
本書がエビデンスと臨床の間を埋めて,腫瘍循環器診療の一助となることを願ってやまない。最後に,本書の改訂に多大な貢献をしていただいた日本腫瘍循環器学会編集委員会やご協力いただいた各位に感謝したい。
2025年9月
日本腫瘍循環器学会理事長
神戸大学大学院医学研究科腫瘍・血液内科学教授
南 博信
------------------------------
刊行によせて
『腫瘍循環器診療ハンドブック』第1版(2020年11月刊行)は,腫瘍循環器学の重要性が徐々に認識されはじめた時期に,臨床現場で活用できる実践的な参考書が乏しい状況のなかで刊行された。幸い,多くの循環器専門医,腫瘍専門医,医療スタッフに広く活用され,がんおよびがん薬物療法に伴う心血管有害事象とその対策をまとめた初の書籍として高い評価をいただいた。がん治療の進歩に伴い,心血管合併症への対応がますます重要となるなかで,本書はその診療の質の向上に大きく貢献してきた。
それから約5年が経過し,腫瘍循環器学を取り巻く状況は大きく変化し,その重要性は一層高まっている。2022年には欧州心臓病学会(ESC),2023年には日本腫瘍循環器学会・日本臨床腫瘍学会から,それぞれガイドラインが相次いで発刊された。さらに,ONCO-DVT試験,PRADA試験/PRADAⅡ試験,SUCCOUR試験など,多くの臨床試験の成果が報告され,新たなエビデンスの蓄積が進んでいる。一方で,これらのガイドラインの推奨事項(エビデンス)が日常診療に十分活かされていない“evidence-practice gap”も依然として存在し,現場での適用には課題が残されている。
これらの背景を踏まえ,今回の改訂第2版では初版の構成を基本的に踏襲しつつ学会員へのアンケート結果も反映しながら,最新の知見と臨床現場での実践に役立つ情報を大幅に改訂した。特に,BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害薬,ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬,BRAF/MEK阻害薬,CAR-T細胞療法など,近年急速に臨床導入が進むがん治療法と,それに伴う心血管合併症およびその対策について,包括的に解説している。また,がん種横断的ながん薬物療法に関する記述を強化し,より実践的で現場に即した対応が可能となるよう構成している。
本書では,第1版同様,薬剤や合併症ごとの対応が一目で理解できるよう,豊富な図版やアルゴリズムを掲載しており,日常診療のなかで直ちに活用できることを重視している。なお,改訂にあたっては全体の構成を見直し,症例提示の記述を省略することで,よりコンパクトかつ要点を絞った構成とし,忙しい医療者が必要な情報に迅速にアクセスできるよう工夫している。
本書が,腫瘍循環器診療に携わるすべての医療従事者にとって,日々の診療を支える信頼できるガイドとなり,さらに質の高い医療提供と教育に貢献することを願ってやまない。
2025年9月
日本腫瘍循環器学会前理事長
国際医療福祉大学教授
東京大学名誉教授
小室一成
アントラサイクリン系抗悪性腫瘍薬による心毒性は1960年代から知られ,1970年代には蓄積毒性が明確となり総投与量が制限された。しかし,制限量までの安全性が保障されているわけではなく,半量以下でも心機能低下は起き得る。心毒性を予防したり治療しながら抗悪性腫瘍薬の恩恵をがん患者に届ける必要がある。そのためには腫瘍専門医と循環器専門医が,お互いの領域の知見を理解し緊密に連携する診療が必要である。その一助として日本腫瘍循環器学会では2020年11月に『腫瘍循環器診療ハンドブック』を出版し,臨床現場で広く使われてきた。
しかし,がん治療の進歩は目覚ましく,毎月のように新規薬剤が承認され,適応が拡大している。5年を待たずに改訂が必要となった。最近開発される抗悪性腫瘍薬のほとんどが分子標的薬や免疫を利用する治療であるが,これらは従来の殺細胞性薬物よりも心血管系の毒性が問題となる。本書の第1版が刊行された後,2022年に欧州心臓病学会(ESC)より腫瘍循環器ガイドラインが公表された。ところがESCのガイドラインは量が膨大なうえに英語であり,忙しい日常診療のなかで通読するのは大変である。しかも記載されている300近い推奨はエキスパートオピニオンがほとんどであり,レベルが高いエビデンスに裏付けられている推奨は3%しかない。そこで日本腫瘍循環器学会と日本臨床腫瘍学会が合同でMindsの手法によりエビデンスに基づいて『Onco-cardiologyガイドライン』を2023年に出版した。しかし,エビデンスが少ないために扱えたクリニカルクエスチョンは5つしかない。質の高いエビデンスが乏しくても,日々がん治療は行われ,心血管系の副作用は発生する。現時点で得られるエビデンスを最大限に駆使して腫瘍循環器診療を行う必要がある。本書ではエビデンスを意識しながら現実的なガイダンスを与えてくれる。
がん治療の進歩に即して,今回の改訂では構成が大きく変わった。具体的には,BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害薬,ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬,BRAFおよびMEK阻害薬など新しい分子標的薬や,CAR-TやT-cell engagersなど新しい作用機序の治療も取り上げた。抗腫瘍効果が大きくてもQTc延長作用のある分子標的薬が増えたため,第1版では不整脈の一部として扱っていたQTc延長を独立した章として新設した。
また,第1版の構成はがん種ごとの記載が多かったが,抗悪性腫瘍薬はがん種にとらわれずに使用される。特に近年はがん種を越えて遺伝子異常に基づいて抗悪性腫瘍薬治療を行う時代になった。がん種横断的ながん薬物療法の浸透に伴い,改訂第2版ではがん種を越えた各治療薬の解説を大きく増やしている。
本書がエビデンスと臨床の間を埋めて,腫瘍循環器診療の一助となることを願ってやまない。最後に,本書の改訂に多大な貢献をしていただいた日本腫瘍循環器学会編集委員会やご協力いただいた各位に感謝したい。
2025年9月
日本腫瘍循環器学会理事長
神戸大学大学院医学研究科腫瘍・血液内科学教授
南 博信
------------------------------
刊行によせて
『腫瘍循環器診療ハンドブック』第1版(2020年11月刊行)は,腫瘍循環器学の重要性が徐々に認識されはじめた時期に,臨床現場で活用できる実践的な参考書が乏しい状況のなかで刊行された。幸い,多くの循環器専門医,腫瘍専門医,医療スタッフに広く活用され,がんおよびがん薬物療法に伴う心血管有害事象とその対策をまとめた初の書籍として高い評価をいただいた。がん治療の進歩に伴い,心血管合併症への対応がますます重要となるなかで,本書はその診療の質の向上に大きく貢献してきた。
それから約5年が経過し,腫瘍循環器学を取り巻く状況は大きく変化し,その重要性は一層高まっている。2022年には欧州心臓病学会(ESC),2023年には日本腫瘍循環器学会・日本臨床腫瘍学会から,それぞれガイドラインが相次いで発刊された。さらに,ONCO-DVT試験,PRADA試験/PRADAⅡ試験,SUCCOUR試験など,多くの臨床試験の成果が報告され,新たなエビデンスの蓄積が進んでいる。一方で,これらのガイドラインの推奨事項(エビデンス)が日常診療に十分活かされていない“evidence-practice gap”も依然として存在し,現場での適用には課題が残されている。
これらの背景を踏まえ,今回の改訂第2版では初版の構成を基本的に踏襲しつつ学会員へのアンケート結果も反映しながら,最新の知見と臨床現場での実践に役立つ情報を大幅に改訂した。特に,BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害薬,ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬,BRAF/MEK阻害薬,CAR-T細胞療法など,近年急速に臨床導入が進むがん治療法と,それに伴う心血管合併症およびその対策について,包括的に解説している。また,がん種横断的ながん薬物療法に関する記述を強化し,より実践的で現場に即した対応が可能となるよう構成している。
本書では,第1版同様,薬剤や合併症ごとの対応が一目で理解できるよう,豊富な図版やアルゴリズムを掲載しており,日常診療のなかで直ちに活用できることを重視している。なお,改訂にあたっては全体の構成を見直し,症例提示の記述を省略することで,よりコンパクトかつ要点を絞った構成とし,忙しい医療者が必要な情報に迅速にアクセスできるよう工夫している。
本書が,腫瘍循環器診療に携わるすべての医療従事者にとって,日々の診療を支える信頼できるガイドとなり,さらに質の高い医療提供と教育に貢献することを願ってやまない。
2025年9月
日本腫瘍循環器学会前理事長
国際医療福祉大学教授
東京大学名誉教授
小室一成
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目次
1章 「腫瘍循環器学」時代のがん診療・管理とは
1 腫瘍循環器学の重要性―腫瘍専門医の立場から 照井康仁
2 腫瘍循環器学の重要性―循環器専門医の立場から 佐瀬一洋
3 Onco-cardiologyガイドライン 矢野真吾
4 腫瘍循環器診療における多職種連携と各職種の役割 岡 亨
2章 がん治療による心血管合併症の病態とモニタリング
1 がん治療関連心血管毒性(CTR-CVT)とは 多田篤司・安斉俊久
2 CTR-CVTの病態とスクリーニング
A) 殺細胞性抗がん薬
① アントラサイクリン系抗がん薬 赤澤康裕・坂田泰史
② そのほかの殺細胞性抗がん薬による心血管毒性:病態とモニタリング 今村善宣
B) 分子標的薬
① 抗HER2薬 加藤恵理
② 血管新生阻害薬 坂東泰子
③ プロテアソーム阻害薬 進藤彰人・赤澤 宏
④ BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害薬 渡邊直紀・髙久智生
⑤ ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬 秋好久美子・髙橋尚彦
⑥ BRAF阻害薬/MEK阻害薬 高橋雅信・吉田裕也
⑦ EGFR阻害薬,ALK阻害薬 國政 啓
C) ホルモン療法
① 前立腺がんとアンドロゲン遮断療法(ADT) 渡辺祥伍・内藤陽一
② 乳がんに対するホルモン療法 向原 徹
D) がん免疫療法
① 免疫チェックポイント阻害薬 田尻和子
② キメラ抗原受容体-T(CAR-T)細胞療法 齋藤 健
③ 血液がんに対する二重特異性抗体 柴山浩彦
E) 造血幹細胞移植 神田善伸
F) QTcを延長させるそのほかの抗がん薬 庄司正昭
G) 放射線治療 石田隆史・竹石恭知
H) がん悪液質治療薬(グレリン受容体作動薬) 大村洋文・馬場英司
トピックス 最近承認された/今後承認が見込まれるがん治療薬 近藤千晶・安藤雄一
3章 がん患者の心血管合併症の病態生理と疫学
1 心不全,心機能障害 鈴木 翔・桑原宏一郎
2 虚血性心疾患,末梢動脈疾患,動脈硬化性疾患 平田健一
3 不整脈
A) 心房細動 笹野哲郎
B) QT延長,心室頻拍,心室細動 城谷翔太・鈴木 敦
C) 徐脈性不整脈 大島 司・石田純一
4 肺高血圧症,肺腫瘍血栓性微小血管症 波多野 将
5 高血圧 向井幹夫
6 がん関連血栓症(CAT) 松澤泰志・山本正啓・辻田賢一
7 心膜疾患,心膜液貯留,心タンポナーデ 北原康行
8 心臓腫瘍 雨宮 妃・畠山金太
9 感染性心内膜炎,非細菌性血栓性心内膜炎 宮﨑彩記子
10 心アミロイドーシス 諏訪惠信・塩島一朗
4章 がん患者の心血管合併症の診断とマネジメント
1 心血管合併症のリスク評価と一次予防 石岡千加史
2 循環器専門医へのコンサルトのタイミングと抗がん薬の減量・休薬・中止の判断 中村文美・三谷絹子
3 がん治療関連心機能障害(CTRCD)の診断・治療 泉 知里
4 心筋炎の診断・治療 真 優スレーシュワル・南野 徹
5 虚血性心疾患,末梢動脈疾患の診断・治療 桂 有智・阿古潤哉
6 不整脈の診断・治療 夛田 浩
7 肺高血圧症,肺腫瘍血栓性微小血管症の診断・治療 田村祐大・田村雄一
8 高血圧の診断・治療 沢見康輔・田中敦史・野出孝一
9 がん関連血栓症(CAT)の診断・治療
A) 静脈血栓症 保田知生
B) 動脈血栓症,心内血栓,Trousseau症候群 志賀太郎
10 心膜疾患,心膜液貯留,心タンポナーデの診断・治療 塩山 渉
11 心臓腫瘍の診断・治療 今井 亨・下井辰徳・川井 章
12 感染性心内膜炎,非細菌性血栓性心内膜炎の診断・治療 柴田龍宏・福本義弘
13 心アミロイドーシスの診断・治療 遠藤 仁・家田真樹
5章 各がん種の治療上配慮すべき心血管合併症
1 頭頸部がん,甲状腺がん 山﨑知子
2 肺がん 津端由佳里
3 乳がん 田村研治
4 上部消化管がん 仁科智裕
5 下部消化管がん 池田正孝
6 肝胆膵がん 岡田裕之
7 泌尿器系がん 宮川仁平・久米春喜
8 婦人科がん 長阪一憲・西田晴香・大須賀 穣
9 中枢神経系腫瘍 長尾毅彦
10 小児がん 清谷知賀子
11 白血病 原田陽平・木村晋也
12 悪性リンパ腫 郡司匡弘
13 多発性骨髄腫 中世古知昭
14 希少がん,肉腫 會田有香・関根郁夫
6章 腫瘍循環器診療における循環器系検査
1 心電図検査 金城貴士・竹石恭知
2 心エコー図検査 山田博胤・西條良仁・Robert Zheng
3 心筋バイオマーカー,凝固線溶系バイオマーカー 中川 仁・斎藤能彦
4 心臓MRI 中森史朗・土肥 薫
5 心臓核医学検査,心臓CT検査 上原雅恵
6 心筋生検,心臓カテーテル検査 中川 仁・尾上健児
7 下肢静脈エコー検査,血管機能検査 田村祐大
8 心肺運動負荷試験 泉田俊秀・絹川弘一郎
7章 がんサバイバーや特定の状況における心血管マネジメント
1 成人のがんサバイバー Robert Zheng・西條良仁・山田博胤・佐田政隆
2 小児・AYA世代のがんサバイバー 清谷知賀子
3 妊娠中のがん患者の心血管マネジメント 神谷千津子
4 がんサバイバーの妊娠・出産 足立未央・清水千佳子
5 腫瘍循環器リハビリテーション(CORE) 木田圭亮
付録
1 抗がん薬によるがん治療関連心血管毒性(CTR-CVT)の一覧 渋谷悠真
2 抗がん薬と循環器治療薬の相互作用一覧 藤堂真紀
3 腫瘍循環器領域の主な情報の入手先―主なガイドライン,診療コンセンサス,レビュー(2025年アップデート版) 今岡拓郎
4 がん治療情報の入手先―レジメン,CTCAE,学会,ガイドライン,HPなど 近藤 萌・森山祥平・迫田哲平・土橋賢司
1 腫瘍循環器学の重要性―腫瘍専門医の立場から 照井康仁
2 腫瘍循環器学の重要性―循環器専門医の立場から 佐瀬一洋
3 Onco-cardiologyガイドライン 矢野真吾
4 腫瘍循環器診療における多職種連携と各職種の役割 岡 亨
2章 がん治療による心血管合併症の病態とモニタリング
1 がん治療関連心血管毒性(CTR-CVT)とは 多田篤司・安斉俊久
2 CTR-CVTの病態とスクリーニング
A) 殺細胞性抗がん薬
① アントラサイクリン系抗がん薬 赤澤康裕・坂田泰史
② そのほかの殺細胞性抗がん薬による心血管毒性:病態とモニタリング 今村善宣
B) 分子標的薬
① 抗HER2薬 加藤恵理
② 血管新生阻害薬 坂東泰子
③ プロテアソーム阻害薬 進藤彰人・赤澤 宏
④ BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害薬 渡邊直紀・髙久智生
⑤ ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬 秋好久美子・髙橋尚彦
⑥ BRAF阻害薬/MEK阻害薬 高橋雅信・吉田裕也
⑦ EGFR阻害薬,ALK阻害薬 國政 啓
C) ホルモン療法
① 前立腺がんとアンドロゲン遮断療法(ADT) 渡辺祥伍・内藤陽一
② 乳がんに対するホルモン療法 向原 徹
D) がん免疫療法
① 免疫チェックポイント阻害薬 田尻和子
② キメラ抗原受容体-T(CAR-T)細胞療法 齋藤 健
③ 血液がんに対する二重特異性抗体 柴山浩彦
E) 造血幹細胞移植 神田善伸
F) QTcを延長させるそのほかの抗がん薬 庄司正昭
G) 放射線治療 石田隆史・竹石恭知
H) がん悪液質治療薬(グレリン受容体作動薬) 大村洋文・馬場英司
トピックス 最近承認された/今後承認が見込まれるがん治療薬 近藤千晶・安藤雄一
3章 がん患者の心血管合併症の病態生理と疫学
1 心不全,心機能障害 鈴木 翔・桑原宏一郎
2 虚血性心疾患,末梢動脈疾患,動脈硬化性疾患 平田健一
3 不整脈
A) 心房細動 笹野哲郎
B) QT延長,心室頻拍,心室細動 城谷翔太・鈴木 敦
C) 徐脈性不整脈 大島 司・石田純一
4 肺高血圧症,肺腫瘍血栓性微小血管症 波多野 将
5 高血圧 向井幹夫
6 がん関連血栓症(CAT) 松澤泰志・山本正啓・辻田賢一
7 心膜疾患,心膜液貯留,心タンポナーデ 北原康行
8 心臓腫瘍 雨宮 妃・畠山金太
9 感染性心内膜炎,非細菌性血栓性心内膜炎 宮﨑彩記子
10 心アミロイドーシス 諏訪惠信・塩島一朗
4章 がん患者の心血管合併症の診断とマネジメント
1 心血管合併症のリスク評価と一次予防 石岡千加史
2 循環器専門医へのコンサルトのタイミングと抗がん薬の減量・休薬・中止の判断 中村文美・三谷絹子
3 がん治療関連心機能障害(CTRCD)の診断・治療 泉 知里
4 心筋炎の診断・治療 真 優スレーシュワル・南野 徹
5 虚血性心疾患,末梢動脈疾患の診断・治療 桂 有智・阿古潤哉
6 不整脈の診断・治療 夛田 浩
7 肺高血圧症,肺腫瘍血栓性微小血管症の診断・治療 田村祐大・田村雄一
8 高血圧の診断・治療 沢見康輔・田中敦史・野出孝一
9 がん関連血栓症(CAT)の診断・治療
A) 静脈血栓症 保田知生
B) 動脈血栓症,心内血栓,Trousseau症候群 志賀太郎
10 心膜疾患,心膜液貯留,心タンポナーデの診断・治療 塩山 渉
11 心臓腫瘍の診断・治療 今井 亨・下井辰徳・川井 章
12 感染性心内膜炎,非細菌性血栓性心内膜炎の診断・治療 柴田龍宏・福本義弘
13 心アミロイドーシスの診断・治療 遠藤 仁・家田真樹
5章 各がん種の治療上配慮すべき心血管合併症
1 頭頸部がん,甲状腺がん 山﨑知子
2 肺がん 津端由佳里
3 乳がん 田村研治
4 上部消化管がん 仁科智裕
5 下部消化管がん 池田正孝
6 肝胆膵がん 岡田裕之
7 泌尿器系がん 宮川仁平・久米春喜
8 婦人科がん 長阪一憲・西田晴香・大須賀 穣
9 中枢神経系腫瘍 長尾毅彦
10 小児がん 清谷知賀子
11 白血病 原田陽平・木村晋也
12 悪性リンパ腫 郡司匡弘
13 多発性骨髄腫 中世古知昭
14 希少がん,肉腫 會田有香・関根郁夫
6章 腫瘍循環器診療における循環器系検査
1 心電図検査 金城貴士・竹石恭知
2 心エコー図検査 山田博胤・西條良仁・Robert Zheng
3 心筋バイオマーカー,凝固線溶系バイオマーカー 中川 仁・斎藤能彦
4 心臓MRI 中森史朗・土肥 薫
5 心臓核医学検査,心臓CT検査 上原雅恵
6 心筋生検,心臓カテーテル検査 中川 仁・尾上健児
7 下肢静脈エコー検査,血管機能検査 田村祐大
8 心肺運動負荷試験 泉田俊秀・絹川弘一郎
7章 がんサバイバーや特定の状況における心血管マネジメント
1 成人のがんサバイバー Robert Zheng・西條良仁・山田博胤・佐田政隆
2 小児・AYA世代のがんサバイバー 清谷知賀子
3 妊娠中のがん患者の心血管マネジメント 神谷千津子
4 がんサバイバーの妊娠・出産 足立未央・清水千佳子
5 腫瘍循環器リハビリテーション(CORE) 木田圭亮
付録
1 抗がん薬によるがん治療関連心血管毒性(CTR-CVT)の一覧 渋谷悠真
2 抗がん薬と循環器治療薬の相互作用一覧 藤堂真紀
3 腫瘍循環器領域の主な情報の入手先―主なガイドライン,診療コンセンサス,レビュー(2025年アップデート版) 今岡拓郎
4 がん治療情報の入手先―レジメン,CTCAE,学会,ガイドライン,HPなど 近藤 萌・森山祥平・迫田哲平・土橋賢司
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