心原性ショック 最強の教科書
定価 7,150円(税込) (本体6,500円+税)
- B5判 388ページ イラスト60点
- 2024年3月31日刊行
- ISBN978-4-7583-2211-9
電子版
序文
近年になって高まる現場ニーズから本書は誕生した。Impellaの臨床普及に伴って,ショックチームという取り組みが循環器救急の領域で認識・実行されつつある。既存の循環器救急やハートチームと何が違うのか?という指摘もごもっともであるが,おそらく,いまだに予後改善に課題が多い「心原性ショック」という病態を克服するための知識量,テクノロジー,スタッフの数および労力を考えたときに,一つの重要な医療の枠組みとみなし,さまざまな分野の協力関係の下で取り組まなくてはならないという現場の認識が高まった結果,ショックチームという言葉が普及し,取り組みが増え始めたのだと理解している。日本に先行して,欧米諸国でも,ショックチームに関連した取り組みは現場のみならず科学,テクノロジー,学会などさまざまなアプローチで急速に拡大している。
多面的な知識や多職種協力体制が必要なショックチームであるが,例えばAmazonで「心原性ショック」と検索しても同分野の正書にあたる教科書が出てこない。救急や循環器の教科書を読めばある程度書いてあるものの,年々アップデートされるテクノロジーや倫理観を十分に盛り込んだ教科書があるか? と問われたら皆が答えに詰まるであろう。
一昔前の治療法やチーム感,患者管理体制を前提にした教科書しかないという現状を打破できる系統立てた実践の書を作りたい。本書の前段階として,メジカルビュー社刊行のHeart View(2022年)にて「最強の心原性ショックチームを作ろう」という特集を行った。病態把握,診断,治療,意思決定など多面的テーマを日本全国のエキスパートに書いていただいたが,編集を行った自分自身がいかに無知であったかを反省するとともに,この分野の最適化には相当に広い領域の知識や経験の集合が必要であるという事実を再認識した。最も尊敬する同世代の医師であり,友人である中田 淳先生(日本医科大学)および丸橋孝昭先生(北里大学)と会議を繰り返し,「心原性ショック」における現代の重要テーマをできる限りもれなく解説した教科書が本書である。また,心臓だけでなく全身,全身だけでなく命,命だけじゃなくて人生を見据えたエキスパートアプローチが随所に紹介されている点も特徴である。
それぞれのスタッフにおいて,ショックチームは,自分が磨いてきた専門性を活かせる場である。必須知識と最新情報の提供を行うことで個々の症例において,最良と最適を整理し,治療戦略を立て,適切に実行するチーム形成の一助としたい。
さあ,最強の教科書を読んで,最強の心原性ショックチームを作ろう
2024年2月
国立循環器病研究センター 循環動態制御部
朔 啓太
多面的な知識や多職種協力体制が必要なショックチームであるが,例えばAmazonで「心原性ショック」と検索しても同分野の正書にあたる教科書が出てこない。救急や循環器の教科書を読めばある程度書いてあるものの,年々アップデートされるテクノロジーや倫理観を十分に盛り込んだ教科書があるか? と問われたら皆が答えに詰まるであろう。
一昔前の治療法やチーム感,患者管理体制を前提にした教科書しかないという現状を打破できる系統立てた実践の書を作りたい。本書の前段階として,メジカルビュー社刊行のHeart View(2022年)にて「最強の心原性ショックチームを作ろう」という特集を行った。病態把握,診断,治療,意思決定など多面的テーマを日本全国のエキスパートに書いていただいたが,編集を行った自分自身がいかに無知であったかを反省するとともに,この分野の最適化には相当に広い領域の知識や経験の集合が必要であるという事実を再認識した。最も尊敬する同世代の医師であり,友人である中田 淳先生(日本医科大学)および丸橋孝昭先生(北里大学)と会議を繰り返し,「心原性ショック」における現代の重要テーマをできる限りもれなく解説した教科書が本書である。また,心臓だけでなく全身,全身だけでなく命,命だけじゃなくて人生を見据えたエキスパートアプローチが随所に紹介されている点も特徴である。
それぞれのスタッフにおいて,ショックチームは,自分が磨いてきた専門性を活かせる場である。必須知識と最新情報の提供を行うことで個々の症例において,最良と最適を整理し,治療戦略を立て,適切に実行するチーム形成の一助としたい。
さあ,最強の教科書を読んで,最強の心原性ショックチームを作ろう
2024年2月
国立循環器病研究センター 循環動態制御部
朔 啓太
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目次
1章 心原性ショック総論
1 現状と課題 佐藤直樹
2 定義・病態生理 中田 淳
3 循環生理 中村謙介
4 重症度評価の課題 北原賢一,川上将司
2章 心原性ショックの評価
1 モニタリング総論 松下裕貴
2 心力学・循環平衡 假屋太郎
3 血液ガス分析・バイオマーカー 原 哲也
4 胸部X 線,そのほか画像検査 船曵知弘
5 心電図 小鹿野道雄
6 心臓・末梢超音波スクリーニング 佐藤 啓
7 心臓カテーテル検査 澤田賢一郎
8 心拍出量モニター 富永直樹,瀧口 徹
3章 心原性ショックの治療
1 心肺蘇生術 西山 慶
2 脳神経保護 横堀將司
3 呼吸管理 山本一太,則末泰博
4 薬物療法 藤田文香,北井 豪
5 カテーテルインターベンション 杉本啓史郎,上野雅史,中澤 学
6 補助循環デバイス
IABP 中島啓裕
VA-ECMO 本間丈博
Impella® 中村牧子
7 AKI・血液浄化 竹田雅彦,服部憲幸,中田孝明
8 凝固異常とその管理 早川峰司
9 注意すべき感染症 後藤礼司
10 腸管・栄養管理 栗原祐太朗,丸橋孝昭
11 外科的インターベンション 堂前圭太郎
12 補助人工心臓と心臓移植 波多野 将
4章 最強の心原性ショックチームを作ろう
1 ショックプロトコールと地域連携 池田祐毅
2 ICU-acquired weakness 井上茂亮
3 心臓リハビリテーション 末松保憲
4 ショックチーム形成 中田 淳
ショックチーム形成(メディカルスタッフ編) 倉島直樹
5 AI の活用 小寺 聡
6 緩和ケア・ACP 大石醒悟
7 新しいデバイス医療 森田英剛
8 医療経済 田倉智之
9 教育システム
米国に学ぶ重症心不全専門医育成制度について 宮下 智,藤崎智礼,Marvin Konstam
米国救急医のトレーニングについて 森 香波,篠崎広一郎
5章 症例検討
1 心原性ショック治療各論 中野宏己
2 Acute coronary syndrome(ACS) 髙木健督
3 Acute on Chronic 下島正也
4 Severe shock 鵜木 崇,中山智子
5 敗血症性心筋症と体外循環 丸橋孝昭
6 劇症型心筋炎 西川哲生
編集後記(対談)
「心原性ショック 最強の教科書」はなぜ最強と言えるのか? 朔 啓太×中田 淳× 丸橋孝昭
1 現状と課題 佐藤直樹
2 定義・病態生理 中田 淳
3 循環生理 中村謙介
4 重症度評価の課題 北原賢一,川上将司
2章 心原性ショックの評価
1 モニタリング総論 松下裕貴
2 心力学・循環平衡 假屋太郎
3 血液ガス分析・バイオマーカー 原 哲也
4 胸部X 線,そのほか画像検査 船曵知弘
5 心電図 小鹿野道雄
6 心臓・末梢超音波スクリーニング 佐藤 啓
7 心臓カテーテル検査 澤田賢一郎
8 心拍出量モニター 富永直樹,瀧口 徹
3章 心原性ショックの治療
1 心肺蘇生術 西山 慶
2 脳神経保護 横堀將司
3 呼吸管理 山本一太,則末泰博
4 薬物療法 藤田文香,北井 豪
5 カテーテルインターベンション 杉本啓史郎,上野雅史,中澤 学
6 補助循環デバイス
IABP 中島啓裕
VA-ECMO 本間丈博
Impella® 中村牧子
7 AKI・血液浄化 竹田雅彦,服部憲幸,中田孝明
8 凝固異常とその管理 早川峰司
9 注意すべき感染症 後藤礼司
10 腸管・栄養管理 栗原祐太朗,丸橋孝昭
11 外科的インターベンション 堂前圭太郎
12 補助人工心臓と心臓移植 波多野 将
4章 最強の心原性ショックチームを作ろう
1 ショックプロトコールと地域連携 池田祐毅
2 ICU-acquired weakness 井上茂亮
3 心臓リハビリテーション 末松保憲
4 ショックチーム形成 中田 淳
ショックチーム形成(メディカルスタッフ編) 倉島直樹
5 AI の活用 小寺 聡
6 緩和ケア・ACP 大石醒悟
7 新しいデバイス医療 森田英剛
8 医療経済 田倉智之
9 教育システム
米国に学ぶ重症心不全専門医育成制度について 宮下 智,藤崎智礼,Marvin Konstam
米国救急医のトレーニングについて 森 香波,篠崎広一郎
5章 症例検討
1 心原性ショック治療各論 中野宏己
2 Acute coronary syndrome(ACS) 髙木健督
3 Acute on Chronic 下島正也
4 Severe shock 鵜木 崇,中山智子
5 敗血症性心筋症と体外循環 丸橋孝昭
6 劇症型心筋炎 西川哲生
編集後記(対談)
「心原性ショック 最強の教科書」はなぜ最強と言えるのか? 朔 啓太×中田 淳× 丸橋孝昭
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第一線をこの一冊に。最良と最適を理解し、実践するための入門書
心原性ショックを循環器医と集中治療医双方の視点から解説し,最新で最良かつ最適な知識をキャッチアップ。心原性ショックの定義や指標を明瞭に整理し,全身の状態がどう変わっていくのかを網羅的に展開。心電図診断や胸部X線写真から心拍出量計まで,新旧の評価方法を凝集。循環器の治療についてだけでなく,心肺蘇生から,呼吸,脳保護,腎臓,感染,血液,腸管理に至るまで,全身管理の方法を詳解。ICU acquired weakness,ACPや緩和など,ショックチーム形成にかかわるトピックも網羅。最終章「症例検討」では,基本の考え方で読み解けない部分をエキスパートはどう考えるかを解説し,より深い理解の定着を促すアドバンスな内容も盛り込んだ。日本を代表するエキスパートたちが贈る,最新にして唯一無二の決定版。