中枢神経障害・運動器障害 × 内部障害を解釈するための
臨床検査値活用術
リハビリテーション治療の実践
定価 4,400円(税込) (本体4,000円+税)
- B5判 256ページ 2色,イラスト100点
- 2022年3月31日刊行
- ISBN978-4-7583-2076-4
電子版
序文
監修の序
リハビリテーション科療法士が,個々の患者にとって最良なリハビリテーション治療を提供するためには,まずは個々の患者の全体像をしっかりと把握する必要がある。そのためには,問診と直接的な診察が重要であることは間違いないが,それに加えて各種の臨床検査所見を正しく解釈することが求められる。確かに身体所見が同じように見えても,その背後に隠れた病態が異なっていることは珍しくなく,臨床検査所見をみることでその違いを認識できることがある。臨床検査所見を細かく読み取る能力を身につけることによって,病態を含めた患者の把握がより深いものとなり,ついにはよりqualityの高いリハビリテーション治療の提供につながるものと考える。しかしながら残念なことに,臨床検査所見の解釈に関して苦手意識をもっているリハビリテーション科療法士は決して少なくはないようである。実際に,臨床検査所見の解釈がおろそかなままで,リハビリテーション治療が開始されていることも,ときにはあるように見受けられる。
そのようななかで本書は,画期的な側面をもってリハビリテーション医療・医学の世界に登場する。すなわち本書は,リハビリテーション科療法士の皆様に「臨床検査値の解釈に重点をおいて,個々の患者を深く把握する」ということの重要性,そしてその面白さを大変わかりやすく説明してくれるはずである。臨床検査値をしっかりと読み取ることにより,診察で得られた身体所見の解釈が,より研ぎ澄まされたものになることは間違いない。キャリアの浅いリハビリテーション科療法士であれば,本書を読むことで「臨床検査値の解釈のイロハ」も幅広く学ぶことができるはずである。すでに経験豊富であれば,本書に目を通すことで「目から鱗が落ちるなにか」を感じ取れるものと私たちは確信する。本書を通じて,さまざまな臨床検査値から患者の病態を鋭く推測する力を身につけることができれば,言うまでもなくそれはリハビリテーション科療法士として,非常に大きな武器となる。本書をしっかりと読み込んでいただくことで,読者の皆様の臨床能力が高まることは間違いない。
本書の発刊が,リハビリテーション科療法士のレベルアップにつながり,ついにはわが国のリハビリテーション医療全体のqualityが向上していくことを,私たちは切に願っている。
2022年3月
角田 亘
西村行秀
山内克哉
------------------------------------------
編集の序
本書を手に取っていただき誠にありがとうございます。きっと本書に興味を抱かれた方の多くは,中枢神経障害もしくは運動器障害と内部障害が併存した患者さんへのリスク管理や運動負荷量の設定に日々悩んでいらっしゃるのではないでしょうか。悩ませる原因は,併存する疾患が増えることで患者さんの身体で起きている事象の要因がわかりにくくなることだと思います。例えば,中枢神経障害をもつ患者さんの下肢に浮腫が生じたとします。特に併存疾患がなければ,不活動による浮腫と考えて,活動量を増やすようにアプローチをするかもしれません。しかし,この患者さんが心不全を併存していたらどうでしょう。心機能の低下により浮腫が生じているかもしれません。そうすると,活動量を増やしてよいのか悩ましくなります。さらに,この患者さんに肝硬変が併存していたら……。想像しただけで混乱しそうです。事象の要因を特定し運動負荷量を設定することは容易ではありませんが,さまざまな検査を読み解き,推論することで糸口がみえてきます。特に,臨床検査値は目では見えない患者さんの身体の中を映し出す鏡のような存在ですので,理解を深めることで臨床判断に必ず役立つと確信しています。
本書は中枢神経障害や運動器障害,内部障害それぞれに対するテクニカルな内容を指南するものではなく,複数の障害が併存する患者さんに対して,臨床検査値から読み取り推論したリスク管理や運動負荷について解説しています。臨床検査値を読み解くためには,①数値の程度を解釈する,②経時的変化で解釈する,③複数の数値を組み合わせて解釈することが大切です。本書では臨床検査値を苦手に感じている方でも臨床現場で活用できるよう,症例を通じて,上記の①②③を理解できる構成となっています。また,執筆には各分野で熱心に取り組まれているセラピストにお願いしました。本書を片手に患者さんの臨床検査値を読み解き,自信をもってリハビリテーション治療を行うセラピストの方が増えることを切に願っております。
最後になりますが,本書の執筆にあたり,快く監修を引き受けていただき,的確なご助言をくださいました国際医療福祉大学医学部リハビリテーション医学教室主任教授の角田亘先生,岩手医科大学医学部リハビリテーション医学講座 教授の西村行秀先生,浜松医科大学附属病院リハビリテーション科 病院教授の山内克哉先生に感謝申し上げます。また,読者の目線に立ち細部にわたり丁寧に本書を整えていただきました野口真一氏をはじめとするメジカルビュー社編集部の皆さまに心より感謝申し上げます。
2022年3月
鈴木啓介
リハビリテーション科療法士が,個々の患者にとって最良なリハビリテーション治療を提供するためには,まずは個々の患者の全体像をしっかりと把握する必要がある。そのためには,問診と直接的な診察が重要であることは間違いないが,それに加えて各種の臨床検査所見を正しく解釈することが求められる。確かに身体所見が同じように見えても,その背後に隠れた病態が異なっていることは珍しくなく,臨床検査所見をみることでその違いを認識できることがある。臨床検査所見を細かく読み取る能力を身につけることによって,病態を含めた患者の把握がより深いものとなり,ついにはよりqualityの高いリハビリテーション治療の提供につながるものと考える。しかしながら残念なことに,臨床検査所見の解釈に関して苦手意識をもっているリハビリテーション科療法士は決して少なくはないようである。実際に,臨床検査所見の解釈がおろそかなままで,リハビリテーション治療が開始されていることも,ときにはあるように見受けられる。
そのようななかで本書は,画期的な側面をもってリハビリテーション医療・医学の世界に登場する。すなわち本書は,リハビリテーション科療法士の皆様に「臨床検査値の解釈に重点をおいて,個々の患者を深く把握する」ということの重要性,そしてその面白さを大変わかりやすく説明してくれるはずである。臨床検査値をしっかりと読み取ることにより,診察で得られた身体所見の解釈が,より研ぎ澄まされたものになることは間違いない。キャリアの浅いリハビリテーション科療法士であれば,本書を読むことで「臨床検査値の解釈のイロハ」も幅広く学ぶことができるはずである。すでに経験豊富であれば,本書に目を通すことで「目から鱗が落ちるなにか」を感じ取れるものと私たちは確信する。本書を通じて,さまざまな臨床検査値から患者の病態を鋭く推測する力を身につけることができれば,言うまでもなくそれはリハビリテーション科療法士として,非常に大きな武器となる。本書をしっかりと読み込んでいただくことで,読者の皆様の臨床能力が高まることは間違いない。
本書の発刊が,リハビリテーション科療法士のレベルアップにつながり,ついにはわが国のリハビリテーション医療全体のqualityが向上していくことを,私たちは切に願っている。
2022年3月
角田 亘
西村行秀
山内克哉
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編集の序
本書を手に取っていただき誠にありがとうございます。きっと本書に興味を抱かれた方の多くは,中枢神経障害もしくは運動器障害と内部障害が併存した患者さんへのリスク管理や運動負荷量の設定に日々悩んでいらっしゃるのではないでしょうか。悩ませる原因は,併存する疾患が増えることで患者さんの身体で起きている事象の要因がわかりにくくなることだと思います。例えば,中枢神経障害をもつ患者さんの下肢に浮腫が生じたとします。特に併存疾患がなければ,不活動による浮腫と考えて,活動量を増やすようにアプローチをするかもしれません。しかし,この患者さんが心不全を併存していたらどうでしょう。心機能の低下により浮腫が生じているかもしれません。そうすると,活動量を増やしてよいのか悩ましくなります。さらに,この患者さんに肝硬変が併存していたら……。想像しただけで混乱しそうです。事象の要因を特定し運動負荷量を設定することは容易ではありませんが,さまざまな検査を読み解き,推論することで糸口がみえてきます。特に,臨床検査値は目では見えない患者さんの身体の中を映し出す鏡のような存在ですので,理解を深めることで臨床判断に必ず役立つと確信しています。
本書は中枢神経障害や運動器障害,内部障害それぞれに対するテクニカルな内容を指南するものではなく,複数の障害が併存する患者さんに対して,臨床検査値から読み取り推論したリスク管理や運動負荷について解説しています。臨床検査値を読み解くためには,①数値の程度を解釈する,②経時的変化で解釈する,③複数の数値を組み合わせて解釈することが大切です。本書では臨床検査値を苦手に感じている方でも臨床現場で活用できるよう,症例を通じて,上記の①②③を理解できる構成となっています。また,執筆には各分野で熱心に取り組まれているセラピストにお願いしました。本書を片手に患者さんの臨床検査値を読み解き,自信をもってリハビリテーション治療を行うセラピストの方が増えることを切に願っております。
最後になりますが,本書の執筆にあたり,快く監修を引き受けていただき,的確なご助言をくださいました国際医療福祉大学医学部リハビリテーション医学教室主任教授の角田亘先生,岩手医科大学医学部リハビリテーション医学講座 教授の西村行秀先生,浜松医科大学附属病院リハビリテーション科 病院教授の山内克哉先生に感謝申し上げます。また,読者の目線に立ち細部にわたり丁寧に本書を整えていただきました野口真一氏をはじめとするメジカルビュー社編集部の皆さまに心より感謝申し上げます。
2022年3月
鈴木啓介
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目次
第1章 まずは検査値の基本を知ろう
1.臨床検査値の活用 [鈴木啓介]
第2章 炎症症状の原因と予後を予測しリハビリテーション治療に活かす
1.それぞれの検査値を知ろう [鈴木啓介]
WBC,好中球,赤沈,CRP,PT,APTT,d-dimer,FDP,Fib
2.くも膜下出血 × 誤嚥性肺炎 [藤田大輔]
3.人工股関節全置換術後 × 深部静脈血栓症 [鈴木啓介]
コラム:CRPと組み合わせて考える各種炎症疾患 [藤田大輔]
第3章 一過性の意識障害を予測しリハビリテーション治療に活かす
【貧血】
1.貧血に関連するそれぞれの検査値を知ろう [細川真登]
RBC,Ht,Hb,MCV,Fr,Fe,TIBC
2.脳出血 × 大腸がん [髙橋大生]
3.腰部脊柱管狭窄症術後 × 慢性腎臓病 [細川真登]
コラム:アドバンスド:こういう組み合わせも知っておこう [細川真登]
コラム:貧血のフィジカルアセスメント [髙橋大生]
【起立性低血圧】
4.起立性低血圧に関連するそれぞれの検査値を知ろう [細川真登]
Na,BUN,Cr,UA,尿比重
5.パーキンソン病 × 低栄養 [髙橋大生]
6.大腿骨骨幹部骨折 × 血液透析 [細川真登]
コラム:脱水のフィジカルアセスメント [髙橋大生]
コラム:自律神経のフィジカルアセスメント [髙橋大生]
第4章 浮腫の原因を予測しリハビリテーション治療に活かす
1.それぞれの検査値を知ろう [野田健登]
BNP,NT-proBNP,尿タンパク,AST,ALT,ChE
2.心臓弁膜症による心不全 × 一過性脳虚血発作(TIA) [野田健登]
3.慢性心不全,慢性腎不全 × 骨盤骨折 [山﨑一史]
4.非アルコール性脂肪性肝疾患×アテローム血栓性脳梗塞 [山﨑一史]
コラム:浮腫のフィジカルアセスメント [山﨑一史]
第5章 息苦しさの原因を予測しリハビリテーション治療に活かす
1.それぞれの検査値を知ろう [小椋遼治]
PaO2,PaCO2,HCO3−,pH,BE
2.血液ガスを知る前に酸塩基平衡を理解しよう [小椋遼治]
3.ギラン・バレー症候群 [櫻田隆悟]
4.心不全 × 脳梗塞 [小椋遼治]
5.慢性閉塞性肺疾患(COPD) × 腰椎圧迫骨折 [櫻田隆悟]
6.間質性肺炎 × 関節リウマチ [小椋遼治]
コラム [櫻田隆悟]
第6章 栄養状態を予測しリハビリテーション治療に活かす
1.それぞれの検査値を知ろう [加茂智彦]
Alb,TP,A/G 比,TC,AST,ALT,ChE,Tf,TTR
2.肝硬変 × 脳梗塞 [加茂智彦]
3.心不全 × 大腿骨転子部骨折 [新津雅也]
コラム:下腿周径について [新津雅也]
第7章 倦怠感を予測しリハビリテーション治療に活かす
1.それぞれの検査値を知ろう [鈴木啓介]
BS,HbA1c,CPR,尿糖,尿ケトン,PSA,Ca,ALP,PLT
2.糖尿病 × 慢性硬膜下血腫 [鈴木啓介]
3.変形性膝関節症 × 前立腺がんの脊椎転移 [髙橋大生]
1.臨床検査値の活用 [鈴木啓介]
第2章 炎症症状の原因と予後を予測しリハビリテーション治療に活かす
1.それぞれの検査値を知ろう [鈴木啓介]
WBC,好中球,赤沈,CRP,PT,APTT,d-dimer,FDP,Fib
2.くも膜下出血 × 誤嚥性肺炎 [藤田大輔]
3.人工股関節全置換術後 × 深部静脈血栓症 [鈴木啓介]
コラム:CRPと組み合わせて考える各種炎症疾患 [藤田大輔]
第3章 一過性の意識障害を予測しリハビリテーション治療に活かす
【貧血】
1.貧血に関連するそれぞれの検査値を知ろう [細川真登]
RBC,Ht,Hb,MCV,Fr,Fe,TIBC
2.脳出血 × 大腸がん [髙橋大生]
3.腰部脊柱管狭窄症術後 × 慢性腎臓病 [細川真登]
コラム:アドバンスド:こういう組み合わせも知っておこう [細川真登]
コラム:貧血のフィジカルアセスメント [髙橋大生]
【起立性低血圧】
4.起立性低血圧に関連するそれぞれの検査値を知ろう [細川真登]
Na,BUN,Cr,UA,尿比重
5.パーキンソン病 × 低栄養 [髙橋大生]
6.大腿骨骨幹部骨折 × 血液透析 [細川真登]
コラム:脱水のフィジカルアセスメント [髙橋大生]
コラム:自律神経のフィジカルアセスメント [髙橋大生]
第4章 浮腫の原因を予測しリハビリテーション治療に活かす
1.それぞれの検査値を知ろう [野田健登]
BNP,NT-proBNP,尿タンパク,AST,ALT,ChE
2.心臓弁膜症による心不全 × 一過性脳虚血発作(TIA) [野田健登]
3.慢性心不全,慢性腎不全 × 骨盤骨折 [山﨑一史]
4.非アルコール性脂肪性肝疾患×アテローム血栓性脳梗塞 [山﨑一史]
コラム:浮腫のフィジカルアセスメント [山﨑一史]
第5章 息苦しさの原因を予測しリハビリテーション治療に活かす
1.それぞれの検査値を知ろう [小椋遼治]
PaO2,PaCO2,HCO3−,pH,BE
2.血液ガスを知る前に酸塩基平衡を理解しよう [小椋遼治]
3.ギラン・バレー症候群 [櫻田隆悟]
4.心不全 × 脳梗塞 [小椋遼治]
5.慢性閉塞性肺疾患(COPD) × 腰椎圧迫骨折 [櫻田隆悟]
6.間質性肺炎 × 関節リウマチ [小椋遼治]
コラム [櫻田隆悟]
第6章 栄養状態を予測しリハビリテーション治療に活かす
1.それぞれの検査値を知ろう [加茂智彦]
Alb,TP,A/G 比,TC,AST,ALT,ChE,Tf,TTR
2.肝硬変 × 脳梗塞 [加茂智彦]
3.心不全 × 大腿骨転子部骨折 [新津雅也]
コラム:下腿周径について [新津雅也]
第7章 倦怠感を予測しリハビリテーション治療に活かす
1.それぞれの検査値を知ろう [鈴木啓介]
BS,HbA1c,CPR,尿糖,尿ケトン,PSA,Ca,ALP,PLT
2.糖尿病 × 慢性硬膜下血腫 [鈴木啓介]
3.変形性膝関節症 × 前立腺がんの脊椎転移 [髙橋大生]
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併存症例にどう対応するか? 症例ベースで解釈とリハビリテーションの実施を具体的に解説!
PT・OT向けに,臨床で遭遇する症状(炎症,意識障害など)別に具体的な症例を挙げ,それぞれの検査結果から複数の検査値を組み合わせてどのように解釈するかを解説。さらに,そこから得られる一般的な考え方にも言及。
検査値の解釈に留まらず,検査値を踏まえたリハビリテーションについて運動負荷量やプログラム内容などをより具体的に解説しており,読者が臨床で応用しやすい構成となっている。