Crosslink 言語聴覚療法学テキスト

言語学・言語発達学
[Web動画付]

言語学・言語発達学[Web動画付]

■編集 岩田 一成
岩﨑 淳也

定価 4,400円(税込) (本体4,000円+税)
  • i_movie.jpg
  • B5判  204ページ  オールカラー,イラスト115点
  • 2022年12月3日刊行
  • ISBN978-4-7583-2070-2

講義,実習,臨床に! 広く長く活用できる「Crosslinkテキスト」から,言語聴覚士向けの新シリーズが登場!繋がりの強い『言語学』・『言語発達学』を1冊に,どちらの講義にも対応可能!

Crosslinkテキストから言語聴覚士向けの新シリーズが登場!
噛み砕いた表現で詳しく解説する本文と,記載内容の理解を助ける図表やイラストを多用して視覚的にも理解しやすい紙面構成で広く長く活用できるテキスト。
各見出しごとの「POINT」で重点を置くべき重要事項が一目でわかり,「用語解説」や「補足」,「学習の要点」,「実践!臨床に役立つアドバイス」など,さまざまな角度からの情報を盛り込む囲み記事も満載。
本巻では「言語学」「言語発達学」の2章構成とし,2つの講義に対応。
さらに学習に役立つストリーミング動画付き。


序文

 言語聴覚士は,聴覚や言語機能に障害のある人の回復をお手伝いする職種です。対象とする障害には,脳血管障害などが原因で生じる失語症や高次脳機能障害,子どもの言語発達障害,音声や構音の障害,聴覚の障害などがあります。言語聴覚士はこれらの障害の原因を探り,患者さんのQOL の向上のために指導を行います。幅広い障害を取り扱うため,さまざまな科目を学習する必要がありますが,本書ではそのうち言語学と言語発達学を取り扱っています。
 言語聴覚士にとって,言葉の本質を探究する言語学は身近で興味深い分野であるはずですが,実際に勉強をする学生の声を聞くと「難しくてよくわからない」「言語聴覚士の仕事との関係がよくわからない」などの声が聞かれます。しかし,失語症や言語発達障害などのことばの障害を取り扱う言語聴覚士が,言語のもつさまざまな性質を理解せずに指導を行うことは,地図なしで未開の地を冒険するようなものです。本書の言語学の章が,皆さんが言語指導を行う際の道標となれば嬉しいです。
 言語発達学は言語発達障害学の基礎となる分野です。子どもが言葉を話せるようになる過程には,まだわかっていないことも多く,今もたくさんの研究が行われています。ただ学習する際には「〇歳になると〜ができる」といった暗記が優先され,子どもが言葉を身につけていく過程には興味をもちにくいようです。本書の言語発達学の章から,子どもが言葉を獲得する際の生き生きした姿を感じ取ってもらいたいと考えています。
 本書は岩田一成が第1 章,岩﨑淳也が第2 章を担当しています。第1 章は,国家試験の過去問題を解けるようになることを基本方針としてまとめました。言語学分野で出題された用語や解答のための知識を網羅的に扱っています。ただ,試験対策だけでは無味乾燥の記述になるため,一般の方でも楽しめるような言語学関連のトピックを載せるようにしました。言葉を研究する学問がどのようなものか知ってもらいたい,そして興味をもってもらいたいという願いを込めています。第1 章は言語学の専門家が執筆しているため,「臨床に役立つアドバイス」を岩﨑淳也が執筆・挿入することで,単なる言語学概説にならないよう工夫を行いました。実は,言語学の知識は言語聴覚士の仕事と深くかかわっているということに気付いていただけることと思います。
 第2 章では,子どもが言葉を獲得していく過程を発達段階ごとに解説しています。単なる用語解説ではなく,子どもがどのように言葉を獲得していくのか,その発達過程が理解しやすいよう,イラストや表を多く用いて解説しています。また,臨床場面でも役立つよう,「臨床に役立つアドバイス」では検査や指導法の紹介も行っています。言語発達学の学習に留まらず,臨床実習や現場での臨床にも生かしてもらえると幸いです。
 本書は,言語学と言語発達学を1 冊で学べることを特長としています。言語聴覚士にとって,「言葉とは何か」「人はどのように言葉を身に付けていくのか」といった問いは非常に魅力的だと思います。本書がこれらの問いを考える際の手助けとなれば,これ以上の喜びはありません。

2022年10月
岩田一成
岩﨑淳也
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目次

第1章 言語学
 1 言葉の特徴を考える(言語学の基礎)  [建石 始]
  (1) 言語とは何か
  (2) 言語の基本的な性質
  (3) 言語の特徴
 2 日本語の音を考える(音韻論)  [田川恭識]
  (1) 音素
  (2) アクセント
  (3) 形態音韻論
 3 日本語の単語を考える(形態論・意味論)  [橋本直幸]
  (1) 語とは何か
  (2) 語の成り立ち
  (3) 語種
  (4) 語の意味
  (5) 動詞の活用と自他
 4 日本語の文法を考える(統語論)  [清水由貴子]
  (1) 格関係と項
  (2) 文法カテゴリー(ヴォイス,テンス)
  (3) 文法カテゴリー(アスペクト,モダリティ)
  (4) 複文
 5 日本語のバリエーションを考える  [岩田一成]
  (1) 地域方言
  (2) 社会方言
  (3) 敬語・やさしい日本語
  (4) 言語変化
 6 日本語の文字を考える  [森 篤嗣]
  (1) 言語における文字
  (2) 漢字
  (3) 仮名
  (4) 表記法

第2章 言語発達学
 1 言語発達を説明する理論
  (1) 学習説  [矢口幸康]
  (2) 生得説  [柳村 裕]
  (3) 認知説  [矢口幸康]
  (4) 社会・相互交渉説  [柳村 裕]
  (5) 言語発達に関する理論のまとめ
 2 前言語期の発達  [岩﨑淳也]
  (1) コミュニケーション行動の発達
  (2) 共同注意の発達
  (3) 発声行動・言語音知覚の発達
  (4) 認知機能の発達
 3 1~2 歳の言語発達
  (1) 初語の出現・語彙の増加  [岩﨑淳也]
  (2) 言語発達を促す大人の役割  [岩﨑淳也,畦上恭彦]
  (3) 構文の発達  [岩﨑淳也]
  (4) 象徴機能の発達
 4 幼児期の言語発達  [佐々木香緒里]
  (1) 語彙の発達
  (2) 構文の発達
  (3) 談話の発達
  (4) 音韻意識の発達
 5 学童期の言語発達
  (1) 読み書き能力の発達  [佐藤妙子]
  (2) 語彙・構文の発達  [廣瀬綾奈]
  (3) 談話能力の発達  [廣瀬綾奈,岩﨑淳也]
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