OGS NOW basic 12
明日からできる卵巣がん手術
[Web動画付]
定価 11,000円(税込) (本体10,000円+税)
- A4判 196ページ オールカラー,イラスト60点,写真160点
- 2022年11月3日刊行
- ISBN978-4-7583-1992-8
序文
私自身,卵巣がんの手術は子宮のがんに比べて「わかりにくい」という印象をもっています。なぜわかりにくいか,という理由は,手術のやり方が施設でさまざまであること,手術の部位・摘出臓器が多岐にわたること,手術の到達目標が必ずしも明確でないこと,などがあげられると思います。さらに卵巣がんの治療の基本は集学的治療ですので,そのストラトジーの選択次第で最適な手術療法がかなり異なってくることもその一因です。たとえばprimary debulking と術前化学療法のどちらが良いのかに関しては長年にわたって延々と議論された末に,まだ確固とした結論は出ていません。
そのなかで初回手術,あるいは術前化学療法後の手術(IDS)はどのような手術・手技が最適なのか,を述べるのはなかなか難しい問題です。手術の役割や,求められる完遂度は,組み合わせる薬物療法によっても異なってきます。たとえば,術後の薬物療法を確実にするために合併症を起こさないことを優先するのか,あるいは,多少はリスクに目をつむっても完全摘出を目指すのか,の選択に迷う場面も一般臨床ではよくあると思われますが,これも手術後に想定した薬物療法によって異なってくると思われます。再発の際の手術適応や手術の目標,あるいは,後腹膜リンパ節郭清の適応なども,臨床試験を経て考え方が変わったり,いまだに明確でなかったりします。
そのため,手術のビギナーの医師に卵巣がんの手術をどのように,どこまで解説したら良いのか,迷いました。腸管の切除や上腹部の手術は多くの施設では外科の医師の協力を仰いでお願いしていることが多いのではないかと思いますが,その手技をビギナーに解説する必要があるのかどうか,は難しいところです。しかしながら,どのような手術であっても,最終的にこれをコントロールするのは主科である産婦人科であり,責任をもって手術の大枠を定めるためには手術書として卵巣がん手術に必要な一通りの手技を網羅すべきだと思い,本書では,上腹部手術を含めた比較的広い範囲の手技を含めることにしました。そして本書では上腹部手術をご自分で手掛けている数少ない婦人科医のエキスパートの先生方に“ 自分でもできるように思えるくらい具体的に”上腹部の解剖や使用する器具,手術手技についての詳述をお願いしました。卵巣がんの手術をこころざす限りは,ビギナーであっても,どのように上腹部手術がおこなわれるのかの知識をもって手術に望んでほしいと思います。
ここに書かれた手技をどのように用いて最適な治療メニューを組み立てるかは,個々の先生・施設の考えかた次第だと思いますが,診療向上の一助になればと思います。
2022年10 月
万代昌紀
そのなかで初回手術,あるいは術前化学療法後の手術(IDS)はどのような手術・手技が最適なのか,を述べるのはなかなか難しい問題です。手術の役割や,求められる完遂度は,組み合わせる薬物療法によっても異なってきます。たとえば,術後の薬物療法を確実にするために合併症を起こさないことを優先するのか,あるいは,多少はリスクに目をつむっても完全摘出を目指すのか,の選択に迷う場面も一般臨床ではよくあると思われますが,これも手術後に想定した薬物療法によって異なってくると思われます。再発の際の手術適応や手術の目標,あるいは,後腹膜リンパ節郭清の適応なども,臨床試験を経て考え方が変わったり,いまだに明確でなかったりします。
そのため,手術のビギナーの医師に卵巣がんの手術をどのように,どこまで解説したら良いのか,迷いました。腸管の切除や上腹部の手術は多くの施設では外科の医師の協力を仰いでお願いしていることが多いのではないかと思いますが,その手技をビギナーに解説する必要があるのかどうか,は難しいところです。しかしながら,どのような手術であっても,最終的にこれをコントロールするのは主科である産婦人科であり,責任をもって手術の大枠を定めるためには手術書として卵巣がん手術に必要な一通りの手技を網羅すべきだと思い,本書では,上腹部手術を含めた比較的広い範囲の手技を含めることにしました。そして本書では上腹部手術をご自分で手掛けている数少ない婦人科医のエキスパートの先生方に“ 自分でもできるように思えるくらい具体的に”上腹部の解剖や使用する器具,手術手技についての詳述をお願いしました。卵巣がんの手術をこころざす限りは,ビギナーであっても,どのように上腹部手術がおこなわれるのかの知識をもって手術に望んでほしいと思います。
ここに書かれた手技をどのように用いて最適な治療メニューを組み立てるかは,個々の先生・施設の考えかた次第だと思いますが,診療向上の一助になればと思います。
2022年10 月
万代昌紀
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目次
卵巣癌手術を始める前に [万代昌紀]
卵巣癌手術に必要な解剖知識 [小田嶋俊ほか]
卵巣癌手術に有用な器具・デバイス [小田嶋俊ほか]
卵巣癌手術における術前評価 [竹田 貴]
卵巣癌における試験開腹術および診断的腹腔鏡の目的と手技 [安彦 郁]
卵巣癌手術におけるリンパ節生検・郭清の考え方 [高野浩邦ほか]
卵巣癌における原発巣の摘出 [万代昌紀]
卵巣癌における骨盤腹膜切除術 [本原剛志ほか]
横隔膜切除に対する手術適応と実践 [楯 真一ほか]
卵巣癌の大網切除術 [寺尾泰久ほか]
卵巣癌における上腹部手術 [加藤一喜]
卵巣癌における消化管切除]
(1)婦人科の立場から [村上隆介ほか]
(2)外科の立場から「直腸低位前方切除術」 [板谷喜朗ほか]
卵巣癌における妊孕性温存手術 [志鎌あゆみほか]
妊娠中の卵巣癌手術 [齋藤文誉ほか]
リスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO) [寺尾泰久ほか]
卵巣境界悪性腫瘍に対する鏡視下手術の適応と実践 [吉田 浩]
再発卵巣癌に対する手術適応と実践 [錦見恭子ほか]
ノンテクニカルスキルを学ぶ人間を磨く [平松祐司]
卵巣癌手術に必要な解剖知識 [小田嶋俊ほか]
卵巣癌手術に有用な器具・デバイス [小田嶋俊ほか]
卵巣癌手術における術前評価 [竹田 貴]
卵巣癌における試験開腹術および診断的腹腔鏡の目的と手技 [安彦 郁]
卵巣癌手術におけるリンパ節生検・郭清の考え方 [高野浩邦ほか]
卵巣癌における原発巣の摘出 [万代昌紀]
卵巣癌における骨盤腹膜切除術 [本原剛志ほか]
横隔膜切除に対する手術適応と実践 [楯 真一ほか]
卵巣癌の大網切除術 [寺尾泰久ほか]
卵巣癌における上腹部手術 [加藤一喜]
卵巣癌における消化管切除]
(1)婦人科の立場から [村上隆介ほか]
(2)外科の立場から「直腸低位前方切除術」 [板谷喜朗ほか]
卵巣癌における妊孕性温存手術 [志鎌あゆみほか]
妊娠中の卵巣癌手術 [齋藤文誉ほか]
リスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO) [寺尾泰久ほか]
卵巣境界悪性腫瘍に対する鏡視下手術の適応と実践 [吉田 浩]
再発卵巣癌に対する手術適応と実践 [錦見恭子ほか]
ノンテクニカルスキルを学ぶ人間を磨く [平松祐司]
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婦人科腫瘍手術としては最難関の卵巣癌手術に必要な知識や技術を網羅し,さらに手術を始めるにあたっての心構えや考え方なども記載!
若手産婦人科医を対象に「基本的に身につけなければならない手技」を解説し,“十分な理解に基づく手術”をマスターできる実践的シリーズ。緻密で美しいイラストにより読むだけで手術をシミュレートできるビジュアル重視の紙面に加え,スマートフォン等でアクセスできる本文とリンクした動画をストリーミング配信。解説は簡潔かつ初心者フレンドリーで,今さら聞けないような事柄についても丁寧に記載し,助手などの補助的な立場の手術参加者にもより役立つ作りとしている。
第12巻では,婦人科腫瘍手術としては最難関の卵巣癌手術に必要な解剖知識,器具・デバイス,術前評価から試験開腹術・診断的腹腔鏡,リンパ節生検・郭清の考え方,再発・妊娠中を含む各種手術,リスク低減卵管卵巣摘出術,外科の視点からの消化管切除などを網羅し,さらに手術を始めるにあたっての心構えや考え方なども記載。