Save the Athlete
股関節スポーツ損傷
定価 8,250円(税込) (本体7,500円+税)
- B5変型判 240ページ 2色(一部4色),イラスト200点,写真50点
- 2020年10月1日刊行
- ISBN978-4-7583-1882-2
在庫僅少です。
電子版
序文
股関節はスポーツパフォーマンスにおいて非常に重要な役割を果たしています。股関節周囲には人体の大筋群のほとんどが存在しており,大きな力の発揮が可能です。また,下肢で発揮した力を体幹・上肢に伝える要となっています。しかし裏を返せば,大きな力が繰り返し加わるため外傷・障害(以下,損傷)も多く,下肢と上肢の運動を連携させるため他部位に問題があるとその影響を受けやすいと言えます。さらに股関節には,いわゆるインナーマッスルである外旋六筋や細かい内転筋群があり,肩関節以上に複雑な機能解剖となっています。一口に股関節と言っても範囲が広く,また深さもあるため,患者自身も「なんとなく奥のほうが痛い」と的確に表現ができないことや,痛いと言った部位と原因巣がまったく違うこともあります。股関節を診療する整形外科医は,原因が関節内にあるのか,外にあるのか,股関節ではなく腰背部や膝なのかなどを的確に診断したうえで,適切な治療を行わなければなりません。特に股関節の慢性スポーツ障害は容易に再発し,難治のことが多く,治療のためには競技特性についての知識も必要です。
そのようなことから本書は,股関節周辺に生じるスポーツ損傷に悩むアスリートを救うべく企画しました。股関節スポーツ損傷の病態,診断,治療からリハビリテーションまでを解説し,アスリートのスムーズな競技復帰をサポートできる内容を目指しました。特に,エコー,アスリートリハビリテーションプログラム,股関節と連動する他部位との関係などを始め,最新の情報がアップデートされています。
本書を編集した率直な印象として「これはヤバい」,そう感じてしまいました。ヤバいとは,凄いという意味です。そもそも現在のスポーツ損傷の診療にかかわる第一線のドクターにご執筆を依頼したので当然ではあるのですが,これまでにない,かなり読み応えのある専門的な内容に仕上がっています。また,スポーツの現場(フィールド)だけではなくアカデミックにも超多忙なドクターに,ご執筆依頼をご快諾いただけました。これは,この領域の知識あるいは技術が急速にアップデートしている時代の要請に応えたいというミッションと,アスリートを救いたいという強い思いのパッションの2つを持ち合わせているドクターだからであると考えています。この場をお借りして,深く深く感謝を申し上げます。
本書はこれまでの正書にはなかった新たな知見や最新の情報が網羅されており,興味深い内容になっています。そして,アスリートを診察する際,かたわらに常備しておきたい正書の役割も果たしています。もちろん,これでアスリートの股関節周囲の痛みや損傷が完全に解明されて治せるとは言い切れませんが,これまで原因不明,病態不明,手をつけられない最後の部位として後回しにされていた股関節および股関節周囲の部位に対しては,積極的にアプローチしてもよい,あるいは病態によっては始めにアプローチしなければならないことがわかります。読者の皆様にはどうぞその点を汲み取っていただければ幸いです。
2020年は,1964年以来わが国で二度目の夏のオリンピックが開催される予定でありましたが,2021年に延期されています。そのときには,世界中からさまざまな種目の多くのトップアスリートに遭遇することが予想されます。本書はそのような世界中のトップアスリートからわが国の現役アスリート,そしてスポーツ復帰を楽しみにしている患者まで,さまざまな股関節スポーツ損傷に悩むアスリートにとって,必ずや福音になると信じています。多くのスポーツドクター,スポーツにかかわる理学療法士(PT/フィジオ),アスレティックトレーナー,フィジカルコンディショナー,スポーツ指導者,またコーチや監督など,さまざまなスポーツに関与する方の手に本書が渡り,実際のフィールドや医療の現場で最大限に活用されることを願ってやみません。
最後に,本書発刊のためにお力添えをいただきましたメジカルビュー社編集部の阿部篤仁様,ほか同社の皆様に深謝を申し上げます。
東京オリンピック開催の年
北里大学大学院医療系研究科長
高平尚伸
そのようなことから本書は,股関節周辺に生じるスポーツ損傷に悩むアスリートを救うべく企画しました。股関節スポーツ損傷の病態,診断,治療からリハビリテーションまでを解説し,アスリートのスムーズな競技復帰をサポートできる内容を目指しました。特に,エコー,アスリートリハビリテーションプログラム,股関節と連動する他部位との関係などを始め,最新の情報がアップデートされています。
本書を編集した率直な印象として「これはヤバい」,そう感じてしまいました。ヤバいとは,凄いという意味です。そもそも現在のスポーツ損傷の診療にかかわる第一線のドクターにご執筆を依頼したので当然ではあるのですが,これまでにない,かなり読み応えのある専門的な内容に仕上がっています。また,スポーツの現場(フィールド)だけではなくアカデミックにも超多忙なドクターに,ご執筆依頼をご快諾いただけました。これは,この領域の知識あるいは技術が急速にアップデートしている時代の要請に応えたいというミッションと,アスリートを救いたいという強い思いのパッションの2つを持ち合わせているドクターだからであると考えています。この場をお借りして,深く深く感謝を申し上げます。
本書はこれまでの正書にはなかった新たな知見や最新の情報が網羅されており,興味深い内容になっています。そして,アスリートを診察する際,かたわらに常備しておきたい正書の役割も果たしています。もちろん,これでアスリートの股関節周囲の痛みや損傷が完全に解明されて治せるとは言い切れませんが,これまで原因不明,病態不明,手をつけられない最後の部位として後回しにされていた股関節および股関節周囲の部位に対しては,積極的にアプローチしてもよい,あるいは病態によっては始めにアプローチしなければならないことがわかります。読者の皆様にはどうぞその点を汲み取っていただければ幸いです。
2020年は,1964年以来わが国で二度目の夏のオリンピックが開催される予定でありましたが,2021年に延期されています。そのときには,世界中からさまざまな種目の多くのトップアスリートに遭遇することが予想されます。本書はそのような世界中のトップアスリートからわが国の現役アスリート,そしてスポーツ復帰を楽しみにしている患者まで,さまざまな股関節スポーツ損傷に悩むアスリートにとって,必ずや福音になると信じています。多くのスポーツドクター,スポーツにかかわる理学療法士(PT/フィジオ),アスレティックトレーナー,フィジカルコンディショナー,スポーツ指導者,またコーチや監督など,さまざまなスポーツに関与する方の手に本書が渡り,実際のフィールドや医療の現場で最大限に活用されることを願ってやみません。
最後に,本書発刊のためにお力添えをいただきましたメジカルビュー社編集部の阿部篤仁様,ほか同社の皆様に深謝を申し上げます。
東京オリンピック開催の年
北里大学大学院医療系研究科長
高平尚伸
全文表示する
閉じる
目次
I 機能解剖・診察
1 股関節・骨盤の機能解剖 相澤純也,神野哲也
寛骨
大腿骨
関節軟骨・関節唇
関節包と靱帯
股関節周囲筋
2 身体所見を中心とした診察法 山崎琢磨
医療面接
身体検査
超音波(エコー)ガイド下注射による
疼痛部位の評価
まとめ
3 股関節・骨盤の画像 渡邊宣之
股関節スポーツ損傷の画像診断
単純X線検査
CT検査
MRI検査
超音波検査
おわりに
II 股関節・骨盤のスポーツ損傷
A. 疾患編
1 大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI) 福島健介
病態の理解
診断:FAI診断指針に基づいて
治療
症例
2 関節唇損傷 阿部 功
病態の理解
診断
治療
リハビリテーション
症例
3 アスリート鼡径部痛:groin pain in athletes 山藤 崇
アスリート鼡径部痛とは
ドーハ分類
内転筋関連鼡径部痛(adductor-related groin pain)
腸腰筋関連鼡径部痛(iliopsoas-related groin pain)
鼡径部関連鼡径部痛(inguinal related groin pain)
恥骨関連鼡径部痛(pubic-related groin pain)
股関節関連鼡径部痛(hip-related groin pain)
アスリート鼡径部痛の治療
4 弾発股 木島泰明,岩本陽輔,山田 晋,島田洋一
病態の理解
診断
治療
リハビリテーション
症例
5 股関節周囲の神経障害:Hidden Peri-hip joint Nerve Entrapment(HiPNE) 宮武和馬,崔 賢民,稲葉 裕
HiPNE
deep gluteal syndrome
pudendal nerve entrapment
ischiofemoral impingement syndrome
6 骨盤裂離骨折 及川泰宏,西須 孝
病態の理解
診断
治療
各論・症例提示
おわりに
7 股関節周囲筋腱損傷 立石智彦
診断総論:画像診断法
受傷部位別各論
肉ばなれによる血腫凝固例:ウロキナーゼ
使用について
リハビリテーション・再発予防
8 大腿骨頚部疲労骨折 中村嘉宏,帖佐悦男
病態の理解
診断
治療
リハビリテーション
症例
まとめ
9 円靱帯損傷 加谷光規
円靱帯の解剖と機能
病態の理解
診断
円靱帯損傷の治療
円靱帯の将来展望
10 仙腸関節障害,恥骨結合障害 小澤浩司,黒澤大輔,佐々木健
病態の理解
診断
治療
リハビリテーション
症例
B. 対象編
1 ジュニアアスリート・女性アスリート:寛骨臼形成不全症・ボーダーラインDDH 宇都宮 啓
寛骨臼形成不全・ボーダーラインDDHの定義
股関節痛の原因・鑑別診断
寛骨臼形成不全およびボーダーラインDDH アスリートに対する股関節鏡手術
寛骨臼形成不全およびボーダーラインDDH アスリートに対する鏡視下寛骨臼形成術
症例
おわりに
2 ジュニアアスリート・女性アスリート:過度の股関節可動域が必要な種目 上島圭一郎
病態の理解
治療
おわりに
3 高齢アスリート:変形性股関節症 濵井 敏,原 大介,原田 知,中島康晴
運動療法とスポーツ
寛骨臼移動術後のスポーツ参加の実際
THA術後のスポーツ参加の実際
THA術後の三次元動態
症例
4 高齢者アスリート:THA後の競技復帰 高平尚伸
人工股関節全置換術とスポーツ
THAの工夫:アプローチ法,インプラントの種類など
実施可能な種目,避けるべき種目
術後からスポーツ開始までのリハビリテーション
競技復帰後の注意点(指導法),トレーニングなど
近年の考え方
5 トップアスリート:野球と股関節との関連性 見目智紀,福島健介
野球における鼡径部障害
股関節可動域制限に伴う他部位の障害とその対応
6 トップアスリート:サッカー 松永 怜
サッカー選手の鼡径部痛
ドーハ分類
原因
治療
7 パラアスリート:義足と股関節の痛み,リハビリテーション 前田慶明,渡邊裕之
義足アスリートの特徴
対処法
症例
8 パラアスリート:車いすを使用する競技 森谷光俊
障がい者スポーツの対象と障害特性
車いすを使用する競技
脊髄性障害
車いすテニス
まとめ
Column 股関節とその他の部位の関係
股関節障害と足部・足関節スポーツ損傷 渡邉耕太
股関節障害と膝関節スポーツ損傷 前 達雄
股関節障害と腰背部のスポーツ損傷 金岡恒治
股関節障害と上肢スポーツ損傷 西中直也,髙橋知之
1 股関節・骨盤の機能解剖 相澤純也,神野哲也
寛骨
大腿骨
関節軟骨・関節唇
関節包と靱帯
股関節周囲筋
2 身体所見を中心とした診察法 山崎琢磨
医療面接
身体検査
超音波(エコー)ガイド下注射による
疼痛部位の評価
まとめ
3 股関節・骨盤の画像 渡邊宣之
股関節スポーツ損傷の画像診断
単純X線検査
CT検査
MRI検査
超音波検査
おわりに
II 股関節・骨盤のスポーツ損傷
A. 疾患編
1 大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI) 福島健介
病態の理解
診断:FAI診断指針に基づいて
治療
症例
2 関節唇損傷 阿部 功
病態の理解
診断
治療
リハビリテーション
症例
3 アスリート鼡径部痛:groin pain in athletes 山藤 崇
アスリート鼡径部痛とは
ドーハ分類
内転筋関連鼡径部痛(adductor-related groin pain)
腸腰筋関連鼡径部痛(iliopsoas-related groin pain)
鼡径部関連鼡径部痛(inguinal related groin pain)
恥骨関連鼡径部痛(pubic-related groin pain)
股関節関連鼡径部痛(hip-related groin pain)
アスリート鼡径部痛の治療
4 弾発股 木島泰明,岩本陽輔,山田 晋,島田洋一
病態の理解
診断
治療
リハビリテーション
症例
5 股関節周囲の神経障害:Hidden Peri-hip joint Nerve Entrapment(HiPNE) 宮武和馬,崔 賢民,稲葉 裕
HiPNE
deep gluteal syndrome
pudendal nerve entrapment
ischiofemoral impingement syndrome
6 骨盤裂離骨折 及川泰宏,西須 孝
病態の理解
診断
治療
各論・症例提示
おわりに
7 股関節周囲筋腱損傷 立石智彦
診断総論:画像診断法
受傷部位別各論
肉ばなれによる血腫凝固例:ウロキナーゼ
使用について
リハビリテーション・再発予防
8 大腿骨頚部疲労骨折 中村嘉宏,帖佐悦男
病態の理解
診断
治療
リハビリテーション
症例
まとめ
9 円靱帯損傷 加谷光規
円靱帯の解剖と機能
病態の理解
診断
円靱帯損傷の治療
円靱帯の将来展望
10 仙腸関節障害,恥骨結合障害 小澤浩司,黒澤大輔,佐々木健
病態の理解
診断
治療
リハビリテーション
症例
B. 対象編
1 ジュニアアスリート・女性アスリート:寛骨臼形成不全症・ボーダーラインDDH 宇都宮 啓
寛骨臼形成不全・ボーダーラインDDHの定義
股関節痛の原因・鑑別診断
寛骨臼形成不全およびボーダーラインDDH アスリートに対する股関節鏡手術
寛骨臼形成不全およびボーダーラインDDH アスリートに対する鏡視下寛骨臼形成術
症例
おわりに
2 ジュニアアスリート・女性アスリート:過度の股関節可動域が必要な種目 上島圭一郎
病態の理解
治療
おわりに
3 高齢アスリート:変形性股関節症 濵井 敏,原 大介,原田 知,中島康晴
運動療法とスポーツ
寛骨臼移動術後のスポーツ参加の実際
THA術後のスポーツ参加の実際
THA術後の三次元動態
症例
4 高齢者アスリート:THA後の競技復帰 高平尚伸
人工股関節全置換術とスポーツ
THAの工夫:アプローチ法,インプラントの種類など
実施可能な種目,避けるべき種目
術後からスポーツ開始までのリハビリテーション
競技復帰後の注意点(指導法),トレーニングなど
近年の考え方
5 トップアスリート:野球と股関節との関連性 見目智紀,福島健介
野球における鼡径部障害
股関節可動域制限に伴う他部位の障害とその対応
6 トップアスリート:サッカー 松永 怜
サッカー選手の鼡径部痛
ドーハ分類
原因
治療
7 パラアスリート:義足と股関節の痛み,リハビリテーション 前田慶明,渡邊裕之
義足アスリートの特徴
対処法
症例
8 パラアスリート:車いすを使用する競技 森谷光俊
障がい者スポーツの対象と障害特性
車いすを使用する競技
脊髄性障害
車いすテニス
まとめ
Column 股関節とその他の部位の関係
股関節障害と足部・足関節スポーツ損傷 渡邉耕太
股関節障害と膝関節スポーツ損傷 前 達雄
股関節障害と腰背部のスポーツ損傷 金岡恒治
股関節障害と上肢スポーツ損傷 西中直也,髙橋知之
全文表示する
閉じる
股関節スポーツ損傷の診断から競技復帰までをまとめた集大成の書籍!
治療に難渋することが多い股関節のスポーツ損傷について,診断から治療,リハビリテーションまでを詳細に解説。
疾患編では,病態 → 診断 → 治療(保存療法,手術療法) → リハビリテーション(メディカルリハ,アスレティックリハ) → 症例という流れで解説。対象編ではジュニア/女性/高齢者/トップアスリート/パラアスリートと,年代・性別・競技レベル別に生じる具体的な問題を挙げ,その治療を解説している。
股関節スポーツ損傷の診断から競技復帰までをまとめた集大成の書籍。