痛みにチームでアプローチ!
慢性疼痛ケースカンファレンス
定価 8,250円(税込) (本体7,500円+税)
- B5判 488ページ 2色(一部カラー),イラスト100点,写真50点
- 2020年3月28日刊行
- ISBN978-4-7583-1880-8
電子版
序文
『慢性疼痛ケースカンファレンス』発刊:百聞は一見に如かずを目指して
長引く痛みを有する患者の多くは整形外科やペインクリニックを訪れる。われわれは画像検査,血液検査などさまざまな検査を行い,なんとか診断をつけて保存療法や外科的な処置を行うが,その結果が思うようにいかないケースも多い。しかし,これらを詳細にみてみると大きな器質的疾患が隠れていたり,精神科的な病態や長引かざるをえない社会的な背景が存在することなどが明らかになってくる。すなわち,慢性疼痛疾患はさまざまであり,多種多様であり,小さいフィールドだけではわからないことも多い。多くの専門的な医療者の関与が必要となるケースも多く,それはさまざますぎてしばしば一つの診療科・ユニットのなかだけで診断が困難な場合もある。また,原因や病態が分析できてもスタッフが対応できない場合や,そもそも治療しえないものも存在することから,治療の方向性を決めることに難渋するケースも多い。
集学的な診療チームによる診療アプローチは,そのような病態に立ち向かうにあたり有用性が高いシステムである。ただ,そうしたシステムインフラは,人員確保だけではなく医療経済的にも非常に構築が難しいのが実情である。
そうした課題のなか,古くからの書による知識はわれわれを常に助けてくれる。ただ,形のない痛みをターゲットとした医療を書にしていくと,どうしても概論風になり,つかみにくいものになるものである。われわれが最も学ぶことができるのは,常に実臨床のなかで経験することである。一例一例の慢性疼痛患者に実際に対峙したときの記録・記憶は,後々大きな財産として自分たちのなかに留まり,次に同じような患者が来たときのリファレンスとして活用できる。
このたび,慢性疼痛治療の臨床に携わられている多くの先生方に,症例ベースで実際にどのように対峙したのか,そのときにご自身が学んだことを本書にできるだけ具体的に書き記していただいた。いずれのケースも多くの先生方が苦労して取り組んだ結晶であり,先生方が重要と考えたケースばかりである。
本書のすべてのケースのパターンをわれわれが実経験するには何年もかかるかもしれないし,診ることはないかもしれない。ただ,読者の先生方が困ったケースに遭遇したときに,本書ご執筆の先生方が実際に取り組んだ過去のケースを見て学ぶことで,本当に対応が難しい患者を少しでも改善の方向の道に近づけていければと思う。
本書の作成にあたり,ご執筆をいただいた先生方,ならびに本書の企画にあたっていただいたメジカルビュー社の方々に感謝したい。
牛田享宏,福井 聖,川﨑元敬
長引く痛みを有する患者の多くは整形外科やペインクリニックを訪れる。われわれは画像検査,血液検査などさまざまな検査を行い,なんとか診断をつけて保存療法や外科的な処置を行うが,その結果が思うようにいかないケースも多い。しかし,これらを詳細にみてみると大きな器質的疾患が隠れていたり,精神科的な病態や長引かざるをえない社会的な背景が存在することなどが明らかになってくる。すなわち,慢性疼痛疾患はさまざまであり,多種多様であり,小さいフィールドだけではわからないことも多い。多くの専門的な医療者の関与が必要となるケースも多く,それはさまざますぎてしばしば一つの診療科・ユニットのなかだけで診断が困難な場合もある。また,原因や病態が分析できてもスタッフが対応できない場合や,そもそも治療しえないものも存在することから,治療の方向性を決めることに難渋するケースも多い。
集学的な診療チームによる診療アプローチは,そのような病態に立ち向かうにあたり有用性が高いシステムである。ただ,そうしたシステムインフラは,人員確保だけではなく医療経済的にも非常に構築が難しいのが実情である。
そうした課題のなか,古くからの書による知識はわれわれを常に助けてくれる。ただ,形のない痛みをターゲットとした医療を書にしていくと,どうしても概論風になり,つかみにくいものになるものである。われわれが最も学ぶことができるのは,常に実臨床のなかで経験することである。一例一例の慢性疼痛患者に実際に対峙したときの記録・記憶は,後々大きな財産として自分たちのなかに留まり,次に同じような患者が来たときのリファレンスとして活用できる。
このたび,慢性疼痛治療の臨床に携わられている多くの先生方に,症例ベースで実際にどのように対峙したのか,そのときにご自身が学んだことを本書にできるだけ具体的に書き記していただいた。いずれのケースも多くの先生方が苦労して取り組んだ結晶であり,先生方が重要と考えたケースばかりである。
本書のすべてのケースのパターンをわれわれが実経験するには何年もかかるかもしれないし,診ることはないかもしれない。ただ,読者の先生方が困ったケースに遭遇したときに,本書ご執筆の先生方が実際に取り組んだ過去のケースを見て学ぶことで,本当に対応が難しい患者を少しでも改善の方向の道に近づけていければと思う。
本書の作成にあたり,ご執筆をいただいた先生方,ならびに本書の企画にあたっていただいたメジカルビュー社の方々に感謝したい。
牛田享宏,福井 聖,川﨑元敬
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目次
PartⅠ 慢性疼痛の基礎知識
Chapter 1. 慢性疼痛とは
慢性疼痛の定義・分類 岩下成人
慢性疼痛の疫学 矢吹省司
Chapter 2. 慢性疼痛をもたらす疾患:原因と病態
侵害受容性疼痛:①運動器疾患 岩﨑 円,木村慎二
侵害受容性疼痛:②非運動器疾患 今村佳樹
神経障害性疼痛:総論 杉浦健之
身体症状症:疼痛が主症状のもの 細井昌子
Chapter 3. 慢性疼痛の評価
評価項目 松原貴子
心理・社会的背景 青野比奈子,西原真理
慢性疼痛に関連する問題(保障と法律) 古笛恵子
事故と補償:外傷性頚部症候群・むち打ち 三木健司,池本竜則,林 和寛
Chapter 4. 慢性疼痛の治療
慢性疼痛治療の目標設定 城 由起子
薬物療法:①疼痛治療薬 関口美穂,紺野愼一
薬物療法:②漢方療法での全人的アプローチ 中西美保
侵襲的治療:①神経ブロック,インターベンション治療 小杉志都子
侵襲的治療:②手術療法 折田純久
運動療法 西上智彦,壬生 彰
心理療法:①基礎知識 水野泰行
心理療法:②認知行動療法・マインドフルネス・ACT 細井昌子
心理療法:③コミュニケーション,催眠療法 水野泰行
ソリューション・フォーカスト・アプローチ 岡 留美子
PartⅡ 慢性疼痛に対する集学的アプローチ
Chapter 1. 集学的アプローチの実際
集学的アプローチとは 井上真輔
集学的アプローチの基本・体制構築 井上真輔
集学的アプローチにおける各職種の役割 北原雅樹
どのように集学的アプローチを構築していくか:①総論 鉄永智紀
どのように集学的アプローチを構築していくか:②チームを機能させるための医師の役割とリーダーシップ 笹良剛史
限られた職種で行う集学的アプローチ:①ペインクリニックの例 伊達 久
整形外科クリニックにおいて限られた職種で行う集学的アプローチ 山本将揮,鈴木俊明,中塚映政
PartⅢ ケースカンファレンス:集学的アプローチの実際
Chapter 1. 頭頚部,顔面の慢性疼痛
若年男性の慢性群発頭痛のケース 竹島多賀夫,團野大介,後藤あかり,田畑かおり,菊井祥二
顔面痛を呈した2 症例 坂本英治
症例1 脳腫瘍による三叉神経痛のケース:鑑別診断の重要性
症例2 心理社会的因子の強い顔面痛のケース:鑑別診断,連携の重要性
Chapter 2. 上肢の慢性疼痛
変形性関節症の痛み:母指CM 関節症 岩月克之,平田 仁,茶木正樹
変形治癒骨折の痛み:橈骨遠位端骨折 岩月克之,平田 仁,茶木正樹
Chapter 3. 体幹・脊椎・腰部の慢性疼痛
脊椎手術後腰痛 大谷晃司
慢性腰痛:神経ブロックと運動療法の組み合わせが奏功したケース 鈴木秀典
交通事故後の頚部痛・腰痛のケース 伊達 久
慢性頚肩腕痛に対して集学的アプローチを行ったケース 久郷真人,榎本聖香,安達友紀,福井 聖
難治性非特異的腰痛のケース 松平 浩,吉本隆彦,川又華代
慢性緊張型頭痛に併存した運動器慢性疼痛のケース 高橋紀代
慢性化した非特異的腰痛のケース 髙橋直人
Chapter 4. 骨盤帯・下肢の慢性疼痛
骨盤帯・下肢の慢性疼痛:TKA 後の神経障害性疼痛の症例 稲垣有佐,田中康仁
THA 術後遷延痛のケース 園畑素樹,平川奈緒美,松島 淳,馬渡正明
Chapter 5. スポーツに関連する慢性疼痛
鏡視下腱板修復術を施行したパラ・パワーリフティング選手のケース
慢性腰痛:低侵襲手術とピラティスを組み合わせたスポーツ選手のケース
Chapter 6. CRPS・線維筋痛症・関節リウマチ
complex regional pain syndrome(CRPS) 土田陸平,大住倫弘,住谷昌彦
線維筋痛症:身体の強い重圧感に全身痛が併発したケース
関節リウマチ:環軸椎亜脱臼術後の慢性疼痛のケース 前島英恵,小島圭子
関節リウマチ:感染症を契機に関節痛の増悪,両下肢麻痺に至ったケース
Chapter 7. 小児・高齢者・性別特有の慢性疼痛
小児の慢性疼痛のケース 加藤 実,鳥沢伸大,高橋桃子
高齢者の運動器慢性疼痛のケース:地域で行うチーム医療 田中浩一
骨盤内腫瘍に起因する腰下肢痛のケース 尾張慶子
女性特有の痛み:骨粗鬆症に伴う多発脊椎圧迫骨折のケース 鉄永倫子
Chapter 8. その他の慢性疼痛
がんの痛み:乳癌の脊椎転移のケース 川﨑元敬
がん患者の運動器管理:痛みの管理の先にある「動ける」ことの意義
Chapter 1. 慢性疼痛とは
慢性疼痛の定義・分類 岩下成人
慢性疼痛の疫学 矢吹省司
Chapter 2. 慢性疼痛をもたらす疾患:原因と病態
侵害受容性疼痛:①運動器疾患 岩﨑 円,木村慎二
侵害受容性疼痛:②非運動器疾患 今村佳樹
神経障害性疼痛:総論 杉浦健之
身体症状症:疼痛が主症状のもの 細井昌子
Chapter 3. 慢性疼痛の評価
評価項目 松原貴子
心理・社会的背景 青野比奈子,西原真理
慢性疼痛に関連する問題(保障と法律) 古笛恵子
事故と補償:外傷性頚部症候群・むち打ち 三木健司,池本竜則,林 和寛
Chapter 4. 慢性疼痛の治療
慢性疼痛治療の目標設定 城 由起子
薬物療法:①疼痛治療薬 関口美穂,紺野愼一
薬物療法:②漢方療法での全人的アプローチ 中西美保
侵襲的治療:①神経ブロック,インターベンション治療 小杉志都子
侵襲的治療:②手術療法 折田純久
運動療法 西上智彦,壬生 彰
心理療法:①基礎知識 水野泰行
心理療法:②認知行動療法・マインドフルネス・ACT 細井昌子
心理療法:③コミュニケーション,催眠療法 水野泰行
ソリューション・フォーカスト・アプローチ 岡 留美子
PartⅡ 慢性疼痛に対する集学的アプローチ
Chapter 1. 集学的アプローチの実際
集学的アプローチとは 井上真輔
集学的アプローチの基本・体制構築 井上真輔
集学的アプローチにおける各職種の役割 北原雅樹
どのように集学的アプローチを構築していくか:①総論 鉄永智紀
どのように集学的アプローチを構築していくか:②チームを機能させるための医師の役割とリーダーシップ 笹良剛史
限られた職種で行う集学的アプローチ:①ペインクリニックの例 伊達 久
整形外科クリニックにおいて限られた職種で行う集学的アプローチ 山本将揮,鈴木俊明,中塚映政
PartⅢ ケースカンファレンス:集学的アプローチの実際
Chapter 1. 頭頚部,顔面の慢性疼痛
若年男性の慢性群発頭痛のケース 竹島多賀夫,團野大介,後藤あかり,田畑かおり,菊井祥二
顔面痛を呈した2 症例 坂本英治
症例1 脳腫瘍による三叉神経痛のケース:鑑別診断の重要性
症例2 心理社会的因子の強い顔面痛のケース:鑑別診断,連携の重要性
Chapter 2. 上肢の慢性疼痛
変形性関節症の痛み:母指CM 関節症 岩月克之,平田 仁,茶木正樹
変形治癒骨折の痛み:橈骨遠位端骨折 岩月克之,平田 仁,茶木正樹
Chapter 3. 体幹・脊椎・腰部の慢性疼痛
脊椎手術後腰痛 大谷晃司
慢性腰痛:神経ブロックと運動療法の組み合わせが奏功したケース 鈴木秀典
交通事故後の頚部痛・腰痛のケース 伊達 久
慢性頚肩腕痛に対して集学的アプローチを行ったケース 久郷真人,榎本聖香,安達友紀,福井 聖
難治性非特異的腰痛のケース 松平 浩,吉本隆彦,川又華代
慢性緊張型頭痛に併存した運動器慢性疼痛のケース 高橋紀代
慢性化した非特異的腰痛のケース 髙橋直人
Chapter 4. 骨盤帯・下肢の慢性疼痛
骨盤帯・下肢の慢性疼痛:TKA 後の神経障害性疼痛の症例 稲垣有佐,田中康仁
THA 術後遷延痛のケース 園畑素樹,平川奈緒美,松島 淳,馬渡正明
Chapter 5. スポーツに関連する慢性疼痛
鏡視下腱板修復術を施行したパラ・パワーリフティング選手のケース
慢性腰痛:低侵襲手術とピラティスを組み合わせたスポーツ選手のケース
Chapter 6. CRPS・線維筋痛症・関節リウマチ
complex regional pain syndrome(CRPS) 土田陸平,大住倫弘,住谷昌彦
線維筋痛症:身体の強い重圧感に全身痛が併発したケース
関節リウマチ:環軸椎亜脱臼術後の慢性疼痛のケース 前島英恵,小島圭子
関節リウマチ:感染症を契機に関節痛の増悪,両下肢麻痺に至ったケース
Chapter 7. 小児・高齢者・性別特有の慢性疼痛
小児の慢性疼痛のケース 加藤 実,鳥沢伸大,高橋桃子
高齢者の運動器慢性疼痛のケース:地域で行うチーム医療 田中浩一
骨盤内腫瘍に起因する腰下肢痛のケース 尾張慶子
女性特有の痛み:骨粗鬆症に伴う多発脊椎圧迫骨折のケース 鉄永倫子
Chapter 8. その他の慢性疼痛
がんの痛み:乳癌の脊椎転移のケース 川﨑元敬
がん患者の運動器管理:痛みの管理の先にある「動ける」ことの意義
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慢性疼痛に対するチーム医療の方法を,症例をベースに会話形式でわかりやすく解説
慢性疼痛に対するチーム医療の方法を,症例をベースに具体的に解説した書籍。
基礎知識を踏まえて,ある症例のカンファレンスという設定で治療の流れを会話形式で記載しているので,読みやすく,理解しやすい。さらに,多数の職種がいなくても,少人数でできるチーム医療の方法も紹介。これを読めば,自施設で慢性疼痛チーム医療を実施できるようになる。