リハビリテーション義肢装具学
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定価 6,380円(税込) (本体5,800円+税)
- B5判 472ページ 2色(一部カラー),イラスト300点,写真800点
- 2017年3月17日刊行
- ISBN978-4-7583-1722-1
電子版
序文
義肢(義手,義足)・装具は,「ヒト-モノ-ライフ」をつなげ,人間としての生き方を実現するために重要な器具です。この領域にかかわる医療職としては,医師,義肢装具士(PO),理学療法士(PT),作業療法士(OT),看護師が挙げられますが,なかでもPO,PT,OTは,臨床において直接当事者と出会い,その人に必要かつ的確な義肢装具を製作し,リハビリテーションを進めなければなりません。本書はPT,OTを対象に,義肢・装具を用いる人に対するリハビリテーションについて解説した書籍です。
2010年以降,義肢装具領域の技術の発展には著しいものがあります。これは,コンピュータ技術とその応用であるロボット技術の進歩によっています。例えば義足では,膝継手にマイクロプロセッサー制御による油圧シリンダーを組み込むことで,使用者個人の歩容に合わせて自動的に動作を制御することができ,膝折れの防止や快適な歩行の獲得が可能になってきています。さらに,空圧制御,電子制御などが融合したハイブリッド継手も誕生しています。義手は20世紀には大きな進歩がみられませんでしたが,21世紀になってからは,筋電位を採取する電極の進歩や各種感覚センサーの開発により,ロボット技術を応用した電動筋電義手が大きく発展しました。これには,家庭用電気製品に使用されているモーターや充電式電池の発展も影響しています。
2020年には東京でパラリンピックが開催されますが,障害者スポーツを盛り上げるためにも義手・義足は重要です。また,障害者がADLを行えるようになるだけではなく,社会活動へ参加する範囲を広げるためには,適切な製作と更なる開発が併せて必要となります。
本書では,義肢装具学の基本的な知識を解説すると同時に,事例を挙げて説明しています。臨床で用いられる義手,義足,上肢装具,体幹装具,下肢装具に関して,事例を紹介しながら,臨床から生活・就労へ向けて,PT・OTが,いつ,どこで,どのようかかわるかを解説しています。
なお,4章ではPT・OTの養成教育で行われている上肢装具と下肢装具の製作過程について説明しています。付録では「体験用義肢」の項目で,養成校での取り組みを紹介しています。これは,教員の指導法においても参考になります。
PT・OTの国家試験問題には義肢・装具の設問が必ず含まれます。そこで,章末に「知識の確認」,付録に「実地問題」として確認すべき代表的な問題を掲載しました。これらを活用することで,知識の整理に役立てていただくことを望みます。
2017年2月
執筆者を代表して
清水順市
2010年以降,義肢装具領域の技術の発展には著しいものがあります。これは,コンピュータ技術とその応用であるロボット技術の進歩によっています。例えば義足では,膝継手にマイクロプロセッサー制御による油圧シリンダーを組み込むことで,使用者個人の歩容に合わせて自動的に動作を制御することができ,膝折れの防止や快適な歩行の獲得が可能になってきています。さらに,空圧制御,電子制御などが融合したハイブリッド継手も誕生しています。義手は20世紀には大きな進歩がみられませんでしたが,21世紀になってからは,筋電位を採取する電極の進歩や各種感覚センサーの開発により,ロボット技術を応用した電動筋電義手が大きく発展しました。これには,家庭用電気製品に使用されているモーターや充電式電池の発展も影響しています。
2020年には東京でパラリンピックが開催されますが,障害者スポーツを盛り上げるためにも義手・義足は重要です。また,障害者がADLを行えるようになるだけではなく,社会活動へ参加する範囲を広げるためには,適切な製作と更なる開発が併せて必要となります。
本書では,義肢装具学の基本的な知識を解説すると同時に,事例を挙げて説明しています。臨床で用いられる義手,義足,上肢装具,体幹装具,下肢装具に関して,事例を紹介しながら,臨床から生活・就労へ向けて,PT・OTが,いつ,どこで,どのようかかわるかを解説しています。
なお,4章ではPT・OTの養成教育で行われている上肢装具と下肢装具の製作過程について説明しています。付録では「体験用義肢」の項目で,養成校での取り組みを紹介しています。これは,教員の指導法においても参考になります。
PT・OTの国家試験問題には義肢・装具の設問が必ず含まれます。そこで,章末に「知識の確認」,付録に「実地問題」として確認すべき代表的な問題を掲載しました。これらを活用することで,知識の整理に役立てていただくことを望みます。
2017年2月
執筆者を代表して
清水順市
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目次
Ⅰ. 義肢
1章 切断
1. 切断 総論
切断とは/切断の原因/切断と呼称/切断と機能損失
2章 義手
1. 義手 総論:構造と部品
義手の種類/義手の構造
2. 肩義手
肩義手の適応/能動肩義手/症例紹介
3. 上腕義手
上腕義手/症例紹介
4. 手部義手・前腕義手
手部義手/前腕能動義手/症例紹介
5. 筋電義手の構造と部品
筋電義手とは/症例紹介
6. 義手のチェックポイント
はじめに/義手本体の検査/義手の長さ/前腕義手(能動式)のチェックアウト/上腕義手(能動式)のチェックアウト/能動義手の伝達効率向上
知識の確認 義手
3章 義足
1. 義足 総論:構造と部品
はじめに:義足とは/ソケット/継手/義足の不適合による歩行障害
2. 切断・義足のリハビリテーションのコンセプト
セラピストに求められる役割/義足の重要性/訓練用仮義足装着を前提としたマネジメント/主要な評価
3. 股義足
はじめに/障害像/リハビリテーションの実際
4. 大腿義足・膝義足
軟部組織の評価とその臨床的観点/断端管理の方法とその臨床的観点/関節可動域評価および筋力強化とその臨床的観点/シリコーンライナー装着の臨床的観点/大腿義足・膝義足のリハビリテーションの流れ/大腿義足・膝義足アライメント調整に必要な知識
5. 下腿義足
はじめに/ソケットの機能/下腿義足のアライメント設定
6. サイム義足
サイム切断/サイム義足
7. 足部義足
はじめに/リスク管理/足潰瘍による足部切断患者の身体機能/義足・装具との適合チェックと留意点/症例紹介/おわりに
8. スポーツ用義肢
はじめに/陸上競技用義足/陸上競技用義手/スノーボード用義足/その他のスポーツ用義肢/スポーツ用義肢の問題点
9. 骨直結義肢
骨直結義肢とは/骨直結義肢の適応条件/骨直結義肢の利点と問題点/骨直結義肢のリハビリテーションプログラム/おわりに
知識の確認 義足
Ⅱ 装具
1章 上肢装具
1. 装具 総論:構造と部品
はじめに/上肢装具総論
2. 肩装具
肩関節の構造/肩装具/脳卒中片麻痺患者に対する/アームスリング/症例紹介
3. 肘装具
肘関節疾患と装具/肘関節の運動学/症例紹介
4. 手関節装具
手関節疾患と装具/手関節・前腕の運動学/症例紹介
5. 手部装具 総論:構造と部品
手部装具の製作/手部装具の分類/構造と部品/熱可塑性プラスチック材料の選択
6. 手部装具 各論1:腱損傷
手指の腱の構造/腱損傷と治療/症例紹介:屈筋腱損傷/症例紹介:伸筋腱損傷
7. 手部装具 各論2:末梢神経損傷
末梢神経損傷と手の肢位/末梢神経損傷と装具/症例紹介
8. 手部装具 各論3:関節リウマチ
関節リウマチの治療/関節リウマチの手部装具/症例紹介/その他の手部装具
9. 手部装具 各論4:脳卒中
脳卒中と治療/脳卒中片麻痺の手部装具/症例紹介/その他の手部装具
10. 手部装具 各論 5:頚髄損傷
頚髄損傷とは/頚髄損傷のリハビリテーション
知識の確認 上肢装具
2章 体幹装具
1. 体幹装具 総論:構造と部品
はじめに/処方時に必要な基礎知識/体幹装具の分類と構成部品/体幹装具を用いる主な疾患と適応
2. 頚椎装具
頚椎について
3. 胸腰仙椎装具
体幹について
4. 側弯症装具
側弯症について
3章 下肢装具
1. 下肢装具 総論:構造と部品
下肢装具とは/下肢装具の目的/下肢装具の基本構造と生体への作用/下肢装具の適合判定
2. 長下肢装具
長下肢装具の使用目的/治療用としての長下肢装具に求められる機能/継手/長下肢装具の製作について/実際のリハビリテーション/長下肢装具のカットダウン/症例紹介
3. 短下肢装具
短下肢装具の適応/短下肢装具の役割/退院後の対応/症例紹介
4. 膝装具
膝装具の分類/膝装具の主材料と支柱素材/膝装具の目的/症例紹介
5. 靴型装具・インソール
靴型装具とは/足部の形態と木型の形状/靴型装具の製作/症例紹介/インソール
6. 脳性麻痺と下肢装具
はじめに/脳性麻痺と短下肢装具/脳性麻痺児者の歩行に対する短下肢装具の効果と課題/蹴り出し力の改善を目的とした短下肢装具開発の取り組み/今後の展望
7. 歩行補助装具
歩行補助装具とは/外部力源を有する歩行補助装具/利用者の動きを補助に変える歩行補助装具/実際の活用における注意点/おわりに
8. HAL®(Hybrid Assistive Limb®)
はじめに/HAL®下肢タイプの種類/下肢タイプのHAL®の基本的な仕組み/HAL®の使用方法/HAL®の効果/臨床現場での工夫
9. ReWalk,Bionic Leg,足首アシスト装置
はじめに/ReWalk/Bionic Leg/足首アシスト装置
10. スポーツ用装具
前十字靱帯損傷/アキレス腱断裂/足関節捻挫:外側靱帯損傷/Osgood-Schlatter病/肩関節脱臼/肩腱板損傷/テニス肘(外側上顆炎・内側上顆炎)
知識の確認 下肢装具
4章 装具の製作
1. 低温可塑性プラスチック材料を使用した上肢装具の製作
はじめに/手関節背屈位保持装具の製作
2. プラスチックAFOの製作
はじめに/プラスチックAFOの対象となる障害像/採型から陰性モデル作成まで/陽性モデル製作と修正/プラスチック成型と加工/仮合わせ
3. インソールの製作
足部の形態と機能の評価/足底挿板の製作
付録
体験用義肢:模擬義手
はじめに/前腕能動仮義手製作実習の内容/能動仮義手・模擬義手を用いた実習の有効性
体験用義肢:模擬義足
はじめに/模擬義足の種類/模擬体験義足の必要性/模擬体験義足の使用方法とチェックポイント/模擬義足導入の効果/おわりに
法律上の区分と支給制度:障害者総合支援法と労働災害
補助具/支給制度/労働災害における義肢装具の申請と支給
実地問題1 上肢切断
実地問題2 上肢装具
実地問題3 下肢切断
実地問題4 下肢・体幹装具
1章 切断
1. 切断 総論
切断とは/切断の原因/切断と呼称/切断と機能損失
2章 義手
1. 義手 総論:構造と部品
義手の種類/義手の構造
2. 肩義手
肩義手の適応/能動肩義手/症例紹介
3. 上腕義手
上腕義手/症例紹介
4. 手部義手・前腕義手
手部義手/前腕能動義手/症例紹介
5. 筋電義手の構造と部品
筋電義手とは/症例紹介
6. 義手のチェックポイント
はじめに/義手本体の検査/義手の長さ/前腕義手(能動式)のチェックアウト/上腕義手(能動式)のチェックアウト/能動義手の伝達効率向上
知識の確認 義手
3章 義足
1. 義足 総論:構造と部品
はじめに:義足とは/ソケット/継手/義足の不適合による歩行障害
2. 切断・義足のリハビリテーションのコンセプト
セラピストに求められる役割/義足の重要性/訓練用仮義足装着を前提としたマネジメント/主要な評価
3. 股義足
はじめに/障害像/リハビリテーションの実際
4. 大腿義足・膝義足
軟部組織の評価とその臨床的観点/断端管理の方法とその臨床的観点/関節可動域評価および筋力強化とその臨床的観点/シリコーンライナー装着の臨床的観点/大腿義足・膝義足のリハビリテーションの流れ/大腿義足・膝義足アライメント調整に必要な知識
5. 下腿義足
はじめに/ソケットの機能/下腿義足のアライメント設定
6. サイム義足
サイム切断/サイム義足
7. 足部義足
はじめに/リスク管理/足潰瘍による足部切断患者の身体機能/義足・装具との適合チェックと留意点/症例紹介/おわりに
8. スポーツ用義肢
はじめに/陸上競技用義足/陸上競技用義手/スノーボード用義足/その他のスポーツ用義肢/スポーツ用義肢の問題点
9. 骨直結義肢
骨直結義肢とは/骨直結義肢の適応条件/骨直結義肢の利点と問題点/骨直結義肢のリハビリテーションプログラム/おわりに
知識の確認 義足
Ⅱ 装具
1章 上肢装具
1. 装具 総論:構造と部品
はじめに/上肢装具総論
2. 肩装具
肩関節の構造/肩装具/脳卒中片麻痺患者に対する/アームスリング/症例紹介
3. 肘装具
肘関節疾患と装具/肘関節の運動学/症例紹介
4. 手関節装具
手関節疾患と装具/手関節・前腕の運動学/症例紹介
5. 手部装具 総論:構造と部品
手部装具の製作/手部装具の分類/構造と部品/熱可塑性プラスチック材料の選択
6. 手部装具 各論1:腱損傷
手指の腱の構造/腱損傷と治療/症例紹介:屈筋腱損傷/症例紹介:伸筋腱損傷
7. 手部装具 各論2:末梢神経損傷
末梢神経損傷と手の肢位/末梢神経損傷と装具/症例紹介
8. 手部装具 各論3:関節リウマチ
関節リウマチの治療/関節リウマチの手部装具/症例紹介/その他の手部装具
9. 手部装具 各論4:脳卒中
脳卒中と治療/脳卒中片麻痺の手部装具/症例紹介/その他の手部装具
10. 手部装具 各論 5:頚髄損傷
頚髄損傷とは/頚髄損傷のリハビリテーション
知識の確認 上肢装具
2章 体幹装具
1. 体幹装具 総論:構造と部品
はじめに/処方時に必要な基礎知識/体幹装具の分類と構成部品/体幹装具を用いる主な疾患と適応
2. 頚椎装具
頚椎について
3. 胸腰仙椎装具
体幹について
4. 側弯症装具
側弯症について
3章 下肢装具
1. 下肢装具 総論:構造と部品
下肢装具とは/下肢装具の目的/下肢装具の基本構造と生体への作用/下肢装具の適合判定
2. 長下肢装具
長下肢装具の使用目的/治療用としての長下肢装具に求められる機能/継手/長下肢装具の製作について/実際のリハビリテーション/長下肢装具のカットダウン/症例紹介
3. 短下肢装具
短下肢装具の適応/短下肢装具の役割/退院後の対応/症例紹介
4. 膝装具
膝装具の分類/膝装具の主材料と支柱素材/膝装具の目的/症例紹介
5. 靴型装具・インソール
靴型装具とは/足部の形態と木型の形状/靴型装具の製作/症例紹介/インソール
6. 脳性麻痺と下肢装具
はじめに/脳性麻痺と短下肢装具/脳性麻痺児者の歩行に対する短下肢装具の効果と課題/蹴り出し力の改善を目的とした短下肢装具開発の取り組み/今後の展望
7. 歩行補助装具
歩行補助装具とは/外部力源を有する歩行補助装具/利用者の動きを補助に変える歩行補助装具/実際の活用における注意点/おわりに
8. HAL®(Hybrid Assistive Limb®)
はじめに/HAL®下肢タイプの種類/下肢タイプのHAL®の基本的な仕組み/HAL®の使用方法/HAL®の効果/臨床現場での工夫
9. ReWalk,Bionic Leg,足首アシスト装置
はじめに/ReWalk/Bionic Leg/足首アシスト装置
10. スポーツ用装具
前十字靱帯損傷/アキレス腱断裂/足関節捻挫:外側靱帯損傷/Osgood-Schlatter病/肩関節脱臼/肩腱板損傷/テニス肘(外側上顆炎・内側上顆炎)
知識の確認 下肢装具
4章 装具の製作
1. 低温可塑性プラスチック材料を使用した上肢装具の製作
はじめに/手関節背屈位保持装具の製作
2. プラスチックAFOの製作
はじめに/プラスチックAFOの対象となる障害像/採型から陰性モデル作成まで/陽性モデル製作と修正/プラスチック成型と加工/仮合わせ
3. インソールの製作
足部の形態と機能の評価/足底挿板の製作
付録
体験用義肢:模擬義手
はじめに/前腕能動仮義手製作実習の内容/能動仮義手・模擬義手を用いた実習の有効性
体験用義肢:模擬義足
はじめに/模擬義足の種類/模擬体験義足の必要性/模擬体験義足の使用方法とチェックポイント/模擬義足導入の効果/おわりに
法律上の区分と支給制度:障害者総合支援法と労働災害
補助具/支給制度/労働災害における義肢装具の申請と支給
実地問題1 上肢切断
実地問題2 上肢装具
実地問題3 下肢切断
実地問題4 下肢・体幹装具
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豊富な事例で義肢・装具のリハビリテーションの実際がわかる! 授業から国試対策まで,この1冊でカバー
本書は,理学療法士,作業療法士養成校の学生向けテキストである。義肢・装具の部品や構造といった一般的な内容だけではなく,義肢・装具とはどういったものなのか,どのように使うのかなど,リハビリテーションの臨床に即した内容を重視して解説している。事例を豊富に掲載し,義肢・装具の処方から,製作,リハビリテーション,最終的な家庭・職場復帰といった一連の経過を紹介している。
養成校の授業カリキュラムと国試出題範囲の内容を余すところなく解説。国家試験の例題も掲載しており,授業から国試対策までこの1冊でカバーできる。