- 新刊
- 消化器外科
一人で難なくこなすための
ロボット支援下結腸手術
[Web動画付]
![ロボット支援下結腸手術[Web動画付]](../database/cover_image/book/X/ISBN978-4-7583-1669-9.jpg)
定価 9,020円(税込) (本体8,200円+税)
- A4判 108ページ オールカラー,イラスト80点,写真50点
- 2025年3月28日刊行
- ISBN978-4-7583-1669-9
電子版
序文
「これまでの手術教科書の概念を覆す,新時代の教科書を作る」
2024年の春,桜の散った頃。筆者はメジカルビュー社編集者チームとのミーティングでこのコンセプトを打ち出した。
結腸癌に対するロボット支援下手術が2022年4月に保険適用となり,3年の月日が流れた。だが,ロボット結腸切除は思ったほど普及が進んでいない。その理由をリサーチすると,
①やりたいが,他科とのロボット手術枠の取り合いでできない
②やりたいが,腹腔鏡手術よりやりづらく結局ラパロでやっている
③若手外科医の腹腔鏡手術の教育を考え,ラパロでやっている
の3点に集約される。
大腸癌治療を専門として16年のキャリアを持つ筆者は,ロボット結腸癌手術の執刀および指導例が100例を超えたあたりから,確信した。
「今後10年で,結腸癌手術はすべてロボットに置き換わる」
理由は,手術支援ロボットの持つ「外科医の能力の拡張」という一言でまとめられる。ロボット手術は,腹腔鏡手術よりも簡単で,合併症が少なく,侵襲が少なく,ほぼ同じか短い時間で,助手人数を一人減らすことができる。
まだエビデンスは一部で追いついていないが,徐々にその証拠は出始めている。
唯一の致命的な弱点である「コスト」は,ダヴィンチの特許切れとともに他ロボットが出始め,価格競争が始まっており,じきに解決されてゆくであろう。
普及の進んだ米国では,ロボット手術だからといって加点(病院の収入が余計に加算されること)はない。人件費が浮くからすぐ導入するのだという。
消化器外科医不足が深刻化し始めているわが国にとって,腹腔鏡手術と比べた場合の「助手が一人で良い」メリットは大きい。
前述した①はロボット価格が下がることで解決し,③は20年前の大腸癌業界での腹腔鏡手術の普及を思い出せば「直ロボ執刀」で問題ないことは自明である。
②やりたいが,腹腔鏡手術よりやりづらく結局ラパロでやっている
この問題の解決を求めて作ったのが本書である。
ロボットは,視野の大きい移動や展開の大胆な変更にはやや不向きである。その欠点を補うコツを,本書に書き込んだ。
さらに,筆者は「大腸癌手術の初学者」に向けても,知識ゼロから学べる本を作ることにこだわった。回盲部切除における回結腸動静脈の処理やややこしい右半結腸切除の静脈走行,網嚢の構造,脾彎曲部のリオラン動脈や授動,ルーチン吻合手技である機能的端端吻合やデルタ吻合。
これらを,ほかの書籍を参照することなく本書のみですべて学び,執刀医レベルまで到達できる。
さらに熟練外科医のためのアドバンストな内容として,ラパロとのアプローチ方法の違いや展開時のアーム干渉を避ける方法,そして最新の体腔内吻合まで余すところなく書き込んだ。
そして,強欲な筆者は経験豊富な編集者チームとともに,「これまでの手術教科書の概念を覆す,新時代の教科書を作る」ことをも求めた。
この動画全盛の時代に,紙で,静止画のみで,あるいは短尺の手術動画のみでの説明が十分なはずがない。そう考えたわれわれは,まず本書の紙面を作成し,これに沿う形で動画を作成した。読者は,動画で経験豊富な筆者からロボット結腸癌手術について学ぶことができる。そして要所は,いつでも紙面をめくることで再確認することができる。
本× 動画のハイブリッド教科書。
これが本書の最大の特徴である。過去に同様のケースはない。
われわれが切り開く,新しい時代の幕開けである。本書を皮切りとして,次々とハイブリッド教科書が出てくるであろう。
読者は最小の労力で,最大の理解を得ることができる。当たり前の時代が,やっと到来したのである。
[ 本書の使い方]
普通の教科書のようにまず読み始めるのではなく,
①まず動画を通してすべて見る
②重要な図やシェーマでは動画を止めて,教科書を参照する
③各術式の手術前に,各論のその術式の動画を見て,教科書で手順を確認する
という使い方を推奨いたします。
2025年2月 中山祐次郎
2024年の春,桜の散った頃。筆者はメジカルビュー社編集者チームとのミーティングでこのコンセプトを打ち出した。
結腸癌に対するロボット支援下手術が2022年4月に保険適用となり,3年の月日が流れた。だが,ロボット結腸切除は思ったほど普及が進んでいない。その理由をリサーチすると,
①やりたいが,他科とのロボット手術枠の取り合いでできない
②やりたいが,腹腔鏡手術よりやりづらく結局ラパロでやっている
③若手外科医の腹腔鏡手術の教育を考え,ラパロでやっている
の3点に集約される。
大腸癌治療を専門として16年のキャリアを持つ筆者は,ロボット結腸癌手術の執刀および指導例が100例を超えたあたりから,確信した。
「今後10年で,結腸癌手術はすべてロボットに置き換わる」
理由は,手術支援ロボットの持つ「外科医の能力の拡張」という一言でまとめられる。ロボット手術は,腹腔鏡手術よりも簡単で,合併症が少なく,侵襲が少なく,ほぼ同じか短い時間で,助手人数を一人減らすことができる。
まだエビデンスは一部で追いついていないが,徐々にその証拠は出始めている。
唯一の致命的な弱点である「コスト」は,ダヴィンチの特許切れとともに他ロボットが出始め,価格競争が始まっており,じきに解決されてゆくであろう。
普及の進んだ米国では,ロボット手術だからといって加点(病院の収入が余計に加算されること)はない。人件費が浮くからすぐ導入するのだという。
消化器外科医不足が深刻化し始めているわが国にとって,腹腔鏡手術と比べた場合の「助手が一人で良い」メリットは大きい。
前述した①はロボット価格が下がることで解決し,③は20年前の大腸癌業界での腹腔鏡手術の普及を思い出せば「直ロボ執刀」で問題ないことは自明である。
②やりたいが,腹腔鏡手術よりやりづらく結局ラパロでやっている
この問題の解決を求めて作ったのが本書である。
ロボットは,視野の大きい移動や展開の大胆な変更にはやや不向きである。その欠点を補うコツを,本書に書き込んだ。
さらに,筆者は「大腸癌手術の初学者」に向けても,知識ゼロから学べる本を作ることにこだわった。回盲部切除における回結腸動静脈の処理やややこしい右半結腸切除の静脈走行,網嚢の構造,脾彎曲部のリオラン動脈や授動,ルーチン吻合手技である機能的端端吻合やデルタ吻合。
これらを,ほかの書籍を参照することなく本書のみですべて学び,執刀医レベルまで到達できる。
さらに熟練外科医のためのアドバンストな内容として,ラパロとのアプローチ方法の違いや展開時のアーム干渉を避ける方法,そして最新の体腔内吻合まで余すところなく書き込んだ。
そして,強欲な筆者は経験豊富な編集者チームとともに,「これまでの手術教科書の概念を覆す,新時代の教科書を作る」ことをも求めた。
この動画全盛の時代に,紙で,静止画のみで,あるいは短尺の手術動画のみでの説明が十分なはずがない。そう考えたわれわれは,まず本書の紙面を作成し,これに沿う形で動画を作成した。読者は,動画で経験豊富な筆者からロボット結腸癌手術について学ぶことができる。そして要所は,いつでも紙面をめくることで再確認することができる。
本× 動画のハイブリッド教科書。
これが本書の最大の特徴である。過去に同様のケースはない。
われわれが切り開く,新しい時代の幕開けである。本書を皮切りとして,次々とハイブリッド教科書が出てくるであろう。
読者は最小の労力で,最大の理解を得ることができる。当たり前の時代が,やっと到来したのである。
[ 本書の使い方]
普通の教科書のようにまず読み始めるのではなく,
①まず動画を通してすべて見る
②重要な図やシェーマでは動画を止めて,教科書を参照する
③各術式の手術前に,各論のその術式の動画を見て,教科書で手順を確認する
という使い方を推奨いたします。
2025年2月 中山祐次郎
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目次
1章 総論
❶なぜロボットなのか
❷手術ロボットの欠点
❸手術ロボットに特有のクセ
❹ロボット手術における助手の考え方
❺ロボット支援下結腸手術で使う鉗子たち
❻暗記すべき各部位の名称
❼手術ロボットの種類
2章 各論
回盲部切除術右半結腸切除術
①小切開で気腹,ポート挿入
②体位取り,小腸排除
③ロールイン
④(以下,コンソール操作)後腹膜アプローチで肝彎曲部授動まで
⑤Surgical trunk郭清
⑥網嚢開放,肝彎曲部授動
⑦吻合法の選択(体腔外体腔内吻合)
⑦-1体腔外吻合(機能的端端吻合)
⑦-2デルタ吻合
⑧閉創
S状結腸切除術(脾彎曲部授動なし)
①小切開で気腹,ポート挿入
②体位取り,小腸排除
③ロールイン
④(以下,コンソール操作)内側アプローチ
⑤No.253リンパ節郭清
⑥外側からの授動
⑦直腸の授動
⑧直腸間膜処理
⑨吻合法の選択
⑨-1DST吻合
⑩閉創
左半結腸切除あるいはS状結腸切除術(脾彎曲部授動あり)
脾彎曲部授動が必要な症例
脾彎曲部とは何か
①IMA根部をまたぐ内側アプローチ
②内側から脾彎曲部に向けて結腸間膜を授動
③S状結腸の外側から授動
④網嚢を開放し,脾彎曲部を完全授動
❶なぜロボットなのか
❷手術ロボットの欠点
❸手術ロボットに特有のクセ
❹ロボット手術における助手の考え方
❺ロボット支援下結腸手術で使う鉗子たち
❻暗記すべき各部位の名称
❼手術ロボットの種類
2章 各論
回盲部切除術右半結腸切除術
①小切開で気腹,ポート挿入
②体位取り,小腸排除
③ロールイン
④(以下,コンソール操作)後腹膜アプローチで肝彎曲部授動まで
⑤Surgical trunk郭清
⑥網嚢開放,肝彎曲部授動
⑦吻合法の選択(体腔外体腔内吻合)
⑦-1体腔外吻合(機能的端端吻合)
⑦-2デルタ吻合
⑧閉創
S状結腸切除術(脾彎曲部授動なし)
①小切開で気腹,ポート挿入
②体位取り,小腸排除
③ロールイン
④(以下,コンソール操作)内側アプローチ
⑤No.253リンパ節郭清
⑥外側からの授動
⑦直腸の授動
⑧直腸間膜処理
⑨吻合法の選択
⑨-1DST吻合
⑩閉創
左半結腸切除あるいはS状結腸切除術(脾彎曲部授動あり)
脾彎曲部授動が必要な症例
脾彎曲部とは何か
①IMA根部をまたぐ内側アプローチ
②内側から脾彎曲部に向けて結腸間膜を授動
③S状結腸の外側から授動
④網嚢を開放し,脾彎曲部を完全授動
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ロボット世代の若手外科医へ。腹腔鏡からやってきた消化器外科医へ。新しい時代に必須のセンスとテクニックを本+動画で徹底理解!
結腸癌手術の基本である右半結腸切除術,S状結腸切除術,および脾彎曲部授動を行うS状結腸切除術(左半結腸切除術)の3術式について,わかりやすく解説。
手技のPointや知っておきたいAdvancedな内容など,術者としてロボット支援下結腸手術を一人前に行えるようになるための知識が詰まっている。
ロボット鉗子を駆使した術野の作り方,圧覚のないロボットだからこその組織の扱い方など,ロボット手術特有のTipsも盛り込んだ。
各術式とも手順ごとに手術動画を付録。