塞栓物質を使いこなす

適応と塞栓術の実際

塞栓物質を使いこなす

■編集 荒井 保明
中島 康雄
田島 廣之

定価 7,700円(税込) (本体7,000円+税)
  • B5変型判  232ページ  2色(一部カラー),写真450点
  • 2016年9月20日刊行
  • ISBN978-4-7583-1595-1

塞栓物質ごとに特徴と適応を整理し,塞栓術の実際を学べる1冊!

ゼラチンスポンジ,ビーズ,NBCA,コイルにつき,それぞれ(1) 総論:種類,構造・性質,歴史,適応・効果,注意事項など,(2) ガイドラインの解説(現在あるもののみ),(3)各論:代表的な塞栓術,を原則として見開き2ページで掲載。リピオドール,EO,エタノール,ポリドカノールといった物質や,非血管系の塞栓術についても網羅している。
塞栓術のご経験を既にお持ちの先生も,これから始めてみようという先生も必携の,実際の症例画像をもとに塞栓術を一望できる1冊である。


序文

編集の序
 空を見上げれば地球上のどこにも当たり前に雲が存在する。しかし,同じ形の雲はない。人の血管も同じであり,すべての血管塞栓術は,歴史上最初の1例であり,そして最後の1例でもある。また,そこで用いられる塞栓物質や技術も,無限とは言わないまでも多種多様である。このような領域では,生物統計学的手法を用いて提示されるエビデンスも,決定的な説得力を欠いている。気象予測技術が進歩した現在も,結局のところ,天候に翻弄されて人々が日々生活していることを考えれば,このような領域における判断の難しさはやむをえないのかもしれない。血管塞栓術も同じである。その結果は,術者個人の知識や思考,判断,技術,経験,そして運にまで大きく左右される。その点では,血管塞栓術は究極の個人技とも言える。
 もちろん,医療行為を運に任せる訳にはいかないのだが,このような個人技を学ぶ,あるいは伝承するのは極めて難しい。類似した経験を積むのに先人と同じ時間をかけていては進歩がないし,それどころか,血管塞栓術で使用されるデバイスや技術は,今もなお急速に増え続けている。それでは,より多くの若い医師が,より優れた血管塞栓術を行えるようにするにはどうしたら良いのか。この難問に応えるべく,まとめたのが本書である。
 各種のデバイスの特性がどのようなものであり,典型的な症例においてそれをどのように使用するかをできる限り簡潔に記載し,血管塞栓術の全体像を掌握可能なボリュームにまとめた。エビデンスを重視する姿勢は堅持したものの,個人技である血管塞栓術の特殊性を考慮し,正に今,その領域で血管塞栓術を行っている第一人者に「現場の感覚」が伝わる記載をお願いした。実経験にはならずとも,本書を読むことで,塞栓術の全体像や個々の状況で活用可能な「知識の引き出し」は確実に増えるはずである。
 本書で増えるであろう知識の引き出しを最大限に活用し,それぞれの医師が対峙する世界で唯一の症例に,最善の血管塞栓術が施行されることを願ってやまない。

2016年7 月
荒井保明
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目次

Ⅰ 総論

Ⅱ ゼラチンスポンジ 
◆総論
◆ガイドラインの解説
◆各論 
 1.HCCに対するTACE(基本)
 2.HCCに対するTACE(側副路から)
 3.HCCに対するTACE(AP/AVシャントを有する場合)
 4.HCCに対するTAE(肝癌破裂)
 5.転移性肝腫瘍に対するTACE
 6.外傷性出血に対するTAE(頭頸部)
 7.外傷性出血に対するTAE(胸部)
 8.外傷性出血に対するTAE(肝臓)
 9.外傷性出血に対するTAE(脾臓)
 10.外傷性出血に対するTAE(腎臓)
 11.外傷性出血に対するTAE(骨盤)
 12.外傷性出血に対するTAE(四肢)
 13.喀血に対するTAE
 14.消化管出血に対するTAE
 15.脾機能亢進症に対するTAE(PSE)
 16.子宮筋腫に対するTAE(UAE)
 17.前立腺肥大症に対するTAE(PAE)
 18.持続勃起症に対するTAE

Ⅲ ビーズ
◆総論 マイクロスフィア
◆各論
 1.HCCに対するTACE(ヘパスフィア)
 2.HCCに対するTACE(ディーシービーズ)
 3.HCCに対するTACE(エンボスフィア)
 4.転移性肝癌に対するビーズによる塞栓術(bland embolization)
 5.転移性肺腫瘍に対するTAE
 6.転移性骨腫瘍に対するTAE
 7.子宮筋腫に対するUAE(エンボスフィア)
 8.頭頸部領域のTAE(エンボスフィア)
 9.AVMに対するTAE(四肢)

Ⅳ NBCA
◆総論
  コラム
 1.Onyx(オニキス)
 2.NBCAの動態(シェーマ)
 3.NBCAの注入テクニック 〜私はこうしている〜
 4.NBCAの基礎実験データ
 5.NLEの基礎
 6.NLEの臨床
◆ガイドラインの解説
◆各論 
 1.AVMに対するTAE(脳)
 2.AVMに対するTAE(脊髄)
 3.AVMに対するTAE(頭頸部)
 4.AVMに対するTAE(腹部骨盤)
 5.AVMに対するTAE(四肢)
 6.喀血に対するTAE
 7.消化管出血に対するTAE(胃・十二指腸)
 8.消化管出血に対するTAE(小腸・大腸)(マイクロカテーテルが到達しない場合)
 9.腹部術後出血に対するTAE
 10.腹部術後出血に対するTAE(マイクロカテーテルが到達しない場合)
 11.外傷性出血に対するTAE(胸部)
 12.外傷性出血に対するTAE(腹部)
 13.外傷性出血に対するTAE(骨盤)
 14.産科出血に対するTAE
 15.ステントグラフト・エンドリークに対する塞栓術

Ⅴ コイル
◆総論
◆各論
 1.肺AVMに対するTAE(プラグ)
 2.EVAR前内腸骨動脈に対するTAE(プラグ)
 3.頸横動脈瘤に対するTAE(プラグ)
 4.未破裂脳動脈瘤に対するTAE(コイル塞栓術)
 5.内頸動脈海綿静脈洞瘻(CCF)に対するTAE
 6.腹部内臓動脈瘤に対するTAE(脾臓)
 7.腹部内臓動脈瘤に対するTAE(腎臓)
 8.消化管出血に対するTAE
 9.AVMに対するTAE(肺)
 10.AVMに対するTAE(腹部骨盤)
 11.血管損傷に対するTAE(コイル塞栓術)
 12.血流改変術
 13.腹部術後出血に対するTAE
 14.SAMに対するTAE
 15.骨盤うっ滞症候群に対する塞栓術
 16.精索静脈瘤に対する塞栓術

Ⅵ その他の塞栓物質
 1.リピオドール
 2.EO(ethanolamine oleate)
 3.エタノール
 4.ポリドカノール

Ⅶ 非血管系
 1.胆道系(コイル塞栓術)
 2.消化管系
 3.気道系
 4.尿路系(腎瘻造設に伴う出血に対する止血術)
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