リハ実践テクニック

関節リウマチ

改訂第2版

関節リウマチ

■監修 西林 保朗

■編集 佐浦 隆一
八木 範彦

定価 5,280円(税込) (本体4,800円+税)
  • B5変型判  288ページ  オールカラー,イラスト50点,写真400点
  • 2014年12月1日刊行
  • ISBN978-4-7583-1491-6

関節リウマチのリハビリ技術を豊富な写真とともにトータルに学べる実践書,オールカラー改訂版!

関節リウマチのリハビリ技術を豊富な写真とともに解説した『リハ実践テクニック 関節リウマチ』オールカラー改訂版。
今回の改訂では,「手術療法」「患者の心理」など,昨今のリウマチ治療に欠かせない知識を新たに加え,関節リウマチ治療において重要な「薬物治療」の解説を増補。また,リハビリの様子を一目で理解できるよう実際の患者をとらえた臨床写真を豊富に掲載。関節リウマチのリハビリ技術と知識をトータルに学べる1冊である。


序文

 関節リウマチ(RA)患者に対するリハビリテーションは,関節保護とエネルギー温存に始まり,疼痛の軽減,筋力の強化,関節可動域の拡大,ADLの維持と改善,QOLの向上と,疾患活動性の変化や病期の進行に伴い,必要とされる介入方法が大きく変わる。わが国のRAの有病率は健保データより0.6〜1%程度(Yamanaka H, et al.:Mod Rheumatol 24:33-40,2013.)と考えられ,およそ70〜120万人のRA患者がいると推測されている。RAは免疫異常を背景とした炎症性肉芽腫性疾患であり,発症直後より関節症状だけでなく,多彩な全身性の臨床症状を呈する。RAに対する治療的アプローチは,よく患者の話を聴き,病気の説明を十分にすること(傾聴と十分なインフォームドコンセント),薬物療法,物理療法と運動療法,作業療法,必要に応じた外科的治療,そして,身体障害に対する包括的なケアである。生物学的製剤の導入を契機にRAの治療は大きく変化(パラダイムシフト)したが,RAに対する治療的アプローチはその割合の変化はあっても,基本的な構成要素には変化はない。
 近年,RAの治療は,生物学的製剤の導入により格段の進歩を遂げた。本書は,初版刊行からおよそ5年半が経過したが,RAのリハビリテーションも最新化が望まれる。そのため,今回の改訂では公開されたばかりの『関節リウマチ診療ガイドライン2014』を皮切りに最新の情報を盛り込み,EBM(evidence-based medicine)をより意識した内容に刷新した。また「ADL評価」,「患者の心理(Women’s Health)」の項を新たに追加し,初版のイメージを踏襲しながら,理学療法および作業療法以外の周辺領域の治療内容なども記載して,RAに対する知識・技術に関する内容をこの1冊で網羅できるように構成した。
 本書の執筆は,初版に引き続き「日本RAのリハビリ研究会」に所属する会員を中心に執筆を依頼した。本書の内容は,長い臨床経験に裏打ちされたRAのリハビリテーションの実績そのものであり,臨床の現場をオールカラーの図・写真にて解説し,誰にでも実践できるような記述になっている。本書が医師,理学療法士,作業療法士だけでなく,看護師,地域ケアスタッフなどRAの治療とリハビリテーションに関わるすべての関係者のよりどころの1つとなれば,執筆者一同にとって望外の喜びである。また,ご意見ご批判は,よりよいRAのリハビリテーションを作り上げていくために必要なものであるので,遠慮なくご教示を願いたい。

2014年11月
西林保朗
佐浦隆一
八木範彦
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目次

Ⅰ章 関節リウマチリハビリテーションの概要
 1 関節リウマチリハビリテーションの概要
  関節リウマチリハビリテーションの概要
  RA治療の現状
  病態の理解
  RAの治療体系
  おわりに
 2 薬物療法(1)目的と流れ
  薬物療法の目的
 3 薬物療法(2)薬剤の種類と特徴
  メトトレキサート
  生物学的製剤(biological agent)
  MTX以外の免疫抑制剤(immunosuppresants)
  低分子量分子標的薬
  疾患修飾性抗リウマチ薬(免疫抑制剤を除く)
  ステロイド薬(steroids)
  非ステロイド性抗炎症薬
 4 薬物療法(3)薬剤の副作用
  はじめに
  疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)
  生物学的製剤
  MTXと生物学的製剤で生じやすい感染症について
  副腎皮質ステロイド
  非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
 5 手術療法
  RA関連整形外科手術の考え方
  手術の動向
  手術の優先順位
  上肢手術の適応と部位別術式
  下肢手術の適応と部位別術式
  合併症と注意点
  まとめ

Ⅱ章 障害評価
 1 関節炎の評価
  RAの関節炎とは
  視診
  触診
  検査所見
  診断と病勢の評価
 2 痛みの評価
  痛みの種類と評価
  RAの炎症の器質面
  痛みの心理面
  RA患者の不安・つらさ
  痛みの意義
  RAの関節痛の評価
  痛みの評価法
 3 機能評価
  障害評価における身体機能
  RA患者の身体機能のとらえ方
  障害評価の手順
 4 ADL
  関節リウマチの生活機能障害
  ADL評価の意義
  生物学的製剤時代のADL評価
  RAのADL
  まとめ
 5 患者の心理(Women's Health)
  患者が抱える思い
  心理面の評価
  実際の症例とのかかわり(作業療法を中心として)
  まとめ

Ⅲ章 治療の実際
 1 運動療法
  関節可動域(ROM)治療
  筋力に対する治療
  全身循環動態に対する治療
  RA運動療法のパラダイムシフト
 2 物理療法
  実施手順
  RAの炎症マーカーと物理療法
  物理療法の実際
 3 装具療法(1)
  RAの下肢装具に求められるもの
  股関節罹患による歩行障害
  膝関節罹患による歩行障害
  足部罹患による装具対策
  今後の課題
  おわりに
 4 装具療法(2)
  母指スプリント
  手指スプリント
  手関節スプリント
  尺側偏位矯正スプリント
  スプリント装着のアドヒアランス
 5 各種の術後療法(1)
  八木範彦
  人工股関節置換術
  人工膝関節置換術
 6 各種の術後療法(2)
  蓬莱谷耕士,長尾佳奈,仲野春樹
  生物学的製剤と上肢手術療法
  人工肘関節置換術(TEA)
  手指伸筋腱皮下断裂の再建
  代表的な術後療法
  手指MP関節形成術
  まとめ

Ⅳ章 ADL
 1 起居・移動動作(杖・車いすを含む)
  背臥位・側臥位
  背臥位から端座位
  端座位から立位(立ち上がり)
  歩行
  階段昇降
  車いす・電動車いす
 2 関節保護
  関節保護の基本
  関節保護の方法とコツ
  関節保護の実際
 3 自助具
  自助具導入ポイント(動作分析とEBMに基づく設計)
  食事動作で役立つ自助具
  更衣動作で役立つ自助具
  整容で役立つ自助具
  入浴時に役立つ自助具
  服薬関連の自助具
  ケアのための自助具
  調理動作で役立つ道具
  その他
  自助具の発展と将来の展望
 4 靴
  靴作製手順
  靴の有用性
  靴作製上の手続きおよび費用について
  まとめ

Ⅴ章 在宅ケア
 1 生活指導
  生活指導のための評価
  生活指導
  個別指導
  集団指導
 2 家屋改造
  環境整備の目標設定
  生活を構成する動作
  環境整備の基本的な考え方
  事前の体験的評価
  環境整備の実際
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