医療機器の日常お手入れガイド
清掃・消毒・滅菌
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定価 4,180円(税込) (本体3,800円+税)
- B5判 260ページ 2色,写真400点
- 2013年3月4日刊行
- ISBN978-4-7583-1468-8
序文
編集の序
近代医療より150年程前のことを物語る『外科の夜明け』(トールワルド,講談社文庫)という一冊がある。当時「手術に痛みは付き物」「傷は化膿することで治る」というのが医学常識だった。
相次ぐ戦争下にあった時代背景にあって外科学の中心にあった外傷治療は,四肢切断が唯一の救命方法であり,麻酔のない時代ゆえ患者に苦痛を少なくするためには,短時間で切断を行うための道具の開発や施術の方法が研究されていた。その一つに血管を挟み止血するペアンはあまりにも有名である。
産婦人科医ゼンメルワイスは,出産には産褥熱がつきもので,多くの場合,それは避けられないものと考えられていたが,助産婦が介助した場合には,はるかに少ない事に着目する。当時,手術や処置の前に手を洗う習慣は無く,素手で解剖を行なった後,手についた膿を布でぬぐって,出産にたち合う事もしばしばだった。彼は直ちに「出産に立ち合う前には,必ず手を洗うように」と医局員に命じる。
また「傷は化膿することで治癒する」という時代にイギリスの外科医リスターは,骨が見えている傷をフェノールに浸した布で覆ってみたところ,膿の臭いがない事に気付く。膿も出ていなければ発赤も無い。全身状態も良好で敗血症の徴候は微塵も見えない。おまけに骨折した骨の面には見た事も無い赤い組織が上がり始めていることに驚き,この大発見を学会で報告するが,しかし,完全に無視される。
病原体の存在が明らかになる以前の時代だった。それを解明したのが後のコッホだった。彼は化膿している創に細菌がいること,その細菌を化膿していない組織に移植することで化膿が起こる事を証明する。
1850年前後で外科を取り巻く状況は一変し,患者は苦痛なしに手術を受けられるようになり,同時に,外科医も感染症を心配せずに手術ができるようになった。12世紀から19世紀までの数百年間,全く進歩の無かった外科学が突如,近代外科,そして現代外科に変貌した。
それを可能にしたのは「麻酔と消毒」の発明だった。先達の苦労が伺い知れる。
本稿は,国内で活躍されている第一線の先生方に医療機器の日常のお手入れ方法を模範的ご紹介する一冊として刊行することが出来ました。日進月歩の科学の発展から取扱い方法が進展することも伺え知れますが,その折には本書へご意見をお寄せください。
前田記念腎研究所 臨床工学部 部長 川崎忠行
田口会 新橋病院 ME管理室 部長 田口彰一
近代医療より150年程前のことを物語る『外科の夜明け』(トールワルド,講談社文庫)という一冊がある。当時「手術に痛みは付き物」「傷は化膿することで治る」というのが医学常識だった。
相次ぐ戦争下にあった時代背景にあって外科学の中心にあった外傷治療は,四肢切断が唯一の救命方法であり,麻酔のない時代ゆえ患者に苦痛を少なくするためには,短時間で切断を行うための道具の開発や施術の方法が研究されていた。その一つに血管を挟み止血するペアンはあまりにも有名である。
産婦人科医ゼンメルワイスは,出産には産褥熱がつきもので,多くの場合,それは避けられないものと考えられていたが,助産婦が介助した場合には,はるかに少ない事に着目する。当時,手術や処置の前に手を洗う習慣は無く,素手で解剖を行なった後,手についた膿を布でぬぐって,出産にたち合う事もしばしばだった。彼は直ちに「出産に立ち合う前には,必ず手を洗うように」と医局員に命じる。
また「傷は化膿することで治癒する」という時代にイギリスの外科医リスターは,骨が見えている傷をフェノールに浸した布で覆ってみたところ,膿の臭いがない事に気付く。膿も出ていなければ発赤も無い。全身状態も良好で敗血症の徴候は微塵も見えない。おまけに骨折した骨の面には見た事も無い赤い組織が上がり始めていることに驚き,この大発見を学会で報告するが,しかし,完全に無視される。
病原体の存在が明らかになる以前の時代だった。それを解明したのが後のコッホだった。彼は化膿している創に細菌がいること,その細菌を化膿していない組織に移植することで化膿が起こる事を証明する。
1850年前後で外科を取り巻く状況は一変し,患者は苦痛なしに手術を受けられるようになり,同時に,外科医も感染症を心配せずに手術ができるようになった。12世紀から19世紀までの数百年間,全く進歩の無かった外科学が突如,近代外科,そして現代外科に変貌した。
それを可能にしたのは「麻酔と消毒」の発明だった。先達の苦労が伺い知れる。
本稿は,国内で活躍されている第一線の先生方に医療機器の日常のお手入れ方法を模範的ご紹介する一冊として刊行することが出来ました。日進月歩の科学の発展から取扱い方法が進展することも伺え知れますが,その折には本書へご意見をお寄せください。
前田記念腎研究所 臨床工学部 部長 川崎忠行
田口会 新橋病院 ME管理室 部長 田口彰一
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目次
1章 滅菌・消毒とは…!?
1 滅菌(sterilization)
2 消毒の種類と方法
3 管理とトレーサビリティ
2章 ME機器の滅菌・消毒法
A 代謝関連機器
1 透析用監視装置
2 水処理装置・多人数用透析液供給装置
B 呼吸器関連機器
1 人工呼吸器
2 小児用人工呼吸器
3 加温加湿器
4 ネブライザ
5 真空吸引器
6 低圧持続吸引器
C 循環器関連機器
1 人工心肺・補助心臓装置
2 大動脈内バルーンパンピング(IABP)
3 経皮的心肺補助装置(PCPS)
4 ペースメーカ
5 輸液ポンプ
6 シリンジポンプ
D IVR関連機器
1 心拍出量モニタシステム(CCOモニタシステム)
2 生態情報モニタ(医用ポリグラフ)
3 ロータブレータシステム
4 血管内超音波検査装置(IVUS)
5 光干渉断層撮影装置(OCT)
E 手術関連機器
1 電気メス
2 レーザ手術装置
3 超音波手術装置
4 自己血回収装置
F 高気圧酸素治療関連機器
1 高気圧酸素治療装置
G その他の関連機器
1 内視鏡装置
2 経腸栄養ポンプ
1 滅菌(sterilization)
2 消毒の種類と方法
3 管理とトレーサビリティ
2章 ME機器の滅菌・消毒法
A 代謝関連機器
1 透析用監視装置
2 水処理装置・多人数用透析液供給装置
B 呼吸器関連機器
1 人工呼吸器
2 小児用人工呼吸器
3 加温加湿器
4 ネブライザ
5 真空吸引器
6 低圧持続吸引器
C 循環器関連機器
1 人工心肺・補助心臓装置
2 大動脈内バルーンパンピング(IABP)
3 経皮的心肺補助装置(PCPS)
4 ペースメーカ
5 輸液ポンプ
6 シリンジポンプ
D IVR関連機器
1 心拍出量モニタシステム(CCOモニタシステム)
2 生態情報モニタ(医用ポリグラフ)
3 ロータブレータシステム
4 血管内超音波検査装置(IVUS)
5 光干渉断層撮影装置(OCT)
E 手術関連機器
1 電気メス
2 レーザ手術装置
3 超音波手術装置
4 自己血回収装置
F 高気圧酸素治療関連機器
1 高気圧酸素治療装置
G その他の関連機器
1 内視鏡装置
2 経腸栄養ポンプ
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医療機器の装置の説明や使用目的から,日常のお手入れについて簡潔に解説した臨床の場で役立つ実践書!!
医療の現場ではさまざまな医療機器が使用されており,人体に直接関わる装置については感染症対策が欠かせない。そこで,「代謝関連機器,呼吸器関連機器,循環器関連機器,IVR関連機器,手術関連機器,高圧酸素治療関連機器,その他の関連機器(内視鏡など)」を中心に,医療機器の「清掃・消毒・滅菌の方法」を初学者にもわかりやすく,写真やイラストを数多く盛り込んでビジュアルな紙面構成で解説したのが本書である。
臨床の場においては,高度に発達した医療機器の清掃・消毒・滅菌を徹底させ,いかに2次感染を防ぐかを本書をとおして学ぶことができるとともに,医療機器ごとに,「何をする装置なのか」「装置に付属する機器や各部の名称」「日常のお手入れ」についても簡潔に記述してあるので,日頃使用している機器についての知識もより深まる。
本書は,若手の臨床工学技士の方々のみならず,看護師の方々にも役立つ1冊である。