臨床生理機能検査

編集の序

　生理機能検査学は，臨床検査学の中の重要項目の1つに挙げられる。この学問の知識を習得しようと，多くの書籍を読みあさる学生諸氏が多数存在していることは周知の事実である。ただ，そこに遅遅として学習が進まない自分がいないだろうか？ 一般に教科書とされている書籍の多くは，広範にわたる項目を網羅すべく，情報過多になっている。さらに，理論を重視しすぎるあまり解説が難解となっているため，理解するスピードを遅らせているのが現状ではないだろうか？
　本書は，「臨床における生理機能検査学に関するエッセンス」を凝縮し，本文はイラストや写真を箇条書きスタイルで表現することにより，直感的な理解を促すように工夫を凝らした書籍とした。視覚情報による教育効果の高さは認知心理学の分野でも証明されていることから，本書のスタイルは読者の理解を後押しするテキストであると考えている。また，「補足」や「Coffee Break」などのコーナーを設けることにより，学習していて飽きがこないようにも配慮した。このように，生理機能検査学のエッセンスを凝縮した本書は，読み手だけを満足させるものではない。本書は，講義用に独自の資料を作成せずとも本書を用いてそのまま講義ができる構成となっているため，教える側の先生方にもご満足いただけるものと確信している。いわば，「先生方にとっての講義資料作成用のサブテキスト」ともいえる1冊である。
　本書は，臨床検査技師養成校の学生諸氏や現場経験の少ない新人技師，さらには経験を積んだ方々の再教育まで，対象のダイバーシティ（多様性）を意識して作成した。本書が，生理機能検査学の知識を習得しようとしている方々のお役に立てれば幸いである。
　最後に，本書籍の刊行にあたり，編集にご尽力戴いたメジカルビュー社編集部の方々に深甚の謝意を表したい。

2013年3月
筑波大学 医学医療系
磯辺智範