不整脈概論
専門医になるためのエッセンシャルブック
定価 12,100円(税込) (本体11,000円+税)
- B5判 422ページ オールカラー
- 2013年1月25日刊行
- ISBN978-4-7583-1404-6
序文
不整脈は,循環器領域のなかでも最も幅広い知識を必要とする学問である。基礎的な知識(活動電位・イオンチャネルレベルでの電気生理学)に加えて,検査(電気生理学的検査,微小電位心電図など),治療(薬物治療,カテーテルアブレーション,デバイス治療),さらには新しい遺伝性疾患の理解に至るまで,不整脈医を志す医師は膨大な知識の習得を必要とする。どのようにして知識を習得したらよいか頭を悩ましている医師も多いと思われる。
このような現状のなか,平成24年に日本不整脈学会および日本心電学会による不整脈専門医認定制度がスタートした。本制度の目的は,不整脈診療における医師のレベル向上,医療受給者に対する施設ならびに医師選択基準の提供,専門医への紹介の適正化および迅速化などとなっている。本制度はある一定の専門的不整脈診療の経験と知識をもつ医師あるいは施設に対して,学会がその資質を認定するものである。不整脈診療を実際に担当している医師においては,是非とも得たい専門医資格の1つと思われる。
書籍には,最新の話題を提供するものもあれば,既成事実だけを取り上げるもの,ある特定の事柄を掘り下げて記載するものなど,様々である。本書は不整脈専門医試験に合格するための知識を整理する書籍と位置づけている。そのため,一定のコンセンサスが得られていないような事柄や新しい話題ではあるものの確証が得られていないことは省くことにした。あくまでも近年発行されたガイドラインに矛盾せず,多くの不整脈を専門とする医師の同意が得られる内容で記載することを目指した。不整脈専門医を目指す医師においては教科書,若手医師においては今後知っておくべき知識の吸収,そして熟練医においては現在の不整脈診療のあり方の整理に役立つ書籍になったといえる。
目次を見ていただけるとわかるが,Ⅰ章「基礎編」では臨床医が苦手とするイオンチャネルの機能や不整脈のメカニズムなどが要点を絞って記載されている。Ⅱ章「症候編」では不整脈と症状の関係が記載されており,基礎不整脈を専門とする医師にも配慮している。Ⅲ章「検査編」とⅣ章「治療編」では,現在不整脈診療で行われている検査および治療を個別に解説しており,自身において普段診療で取り扱っていない検査や治療の理解を深めることができる。Ⅴ章「臨床編(不整脈別)」とⅥ章「臨床編(疾患別)」では,個々の不整脈および疾患を均等に解説するのではなく,重要と考えられると項目については掘り下げ,逆にさほど重要でないことは簡単に記載している。
本書の特徴として,長文を読み込まなくても理解できるように図表が多用され,なるべくガイドラインや確固たる地位を築いている書籍を引用して記載されている。また,勉強時間が十分にとれない医師に配慮して,各項目の最後に「理解度のチェックリスト」を入れてある。このチェックリストを確認することで,その項目で何が重要であるか,何を覚えなければならないかが判断できるように工夫されている。さらに,「専門医はこう考える」,「専門医のロジック」が随所に盛り込まれており,考え方が整理できるようにもなっている。
本書は不整脈専門医を目指す医師への指南書と位置づけているが,そうでなく現在の不整脈診療における知識を整理したい医師にも十分配慮した構成となっている。是非,本書を十分にご活用いただき,目的を達成していただくことを願っている。
平成25年1月
東邦大学医学部内科学講座
循環器内科学分野教授
池田隆徳
心臓血管研究所所長・付属病院長
山下武志
このような現状のなか,平成24年に日本不整脈学会および日本心電学会による不整脈専門医認定制度がスタートした。本制度の目的は,不整脈診療における医師のレベル向上,医療受給者に対する施設ならびに医師選択基準の提供,専門医への紹介の適正化および迅速化などとなっている。本制度はある一定の専門的不整脈診療の経験と知識をもつ医師あるいは施設に対して,学会がその資質を認定するものである。不整脈診療を実際に担当している医師においては,是非とも得たい専門医資格の1つと思われる。
書籍には,最新の話題を提供するものもあれば,既成事実だけを取り上げるもの,ある特定の事柄を掘り下げて記載するものなど,様々である。本書は不整脈専門医試験に合格するための知識を整理する書籍と位置づけている。そのため,一定のコンセンサスが得られていないような事柄や新しい話題ではあるものの確証が得られていないことは省くことにした。あくまでも近年発行されたガイドラインに矛盾せず,多くの不整脈を専門とする医師の同意が得られる内容で記載することを目指した。不整脈専門医を目指す医師においては教科書,若手医師においては今後知っておくべき知識の吸収,そして熟練医においては現在の不整脈診療のあり方の整理に役立つ書籍になったといえる。
目次を見ていただけるとわかるが,Ⅰ章「基礎編」では臨床医が苦手とするイオンチャネルの機能や不整脈のメカニズムなどが要点を絞って記載されている。Ⅱ章「症候編」では不整脈と症状の関係が記載されており,基礎不整脈を専門とする医師にも配慮している。Ⅲ章「検査編」とⅣ章「治療編」では,現在不整脈診療で行われている検査および治療を個別に解説しており,自身において普段診療で取り扱っていない検査や治療の理解を深めることができる。Ⅴ章「臨床編(不整脈別)」とⅥ章「臨床編(疾患別)」では,個々の不整脈および疾患を均等に解説するのではなく,重要と考えられると項目については掘り下げ,逆にさほど重要でないことは簡単に記載している。
本書の特徴として,長文を読み込まなくても理解できるように図表が多用され,なるべくガイドラインや確固たる地位を築いている書籍を引用して記載されている。また,勉強時間が十分にとれない医師に配慮して,各項目の最後に「理解度のチェックリスト」を入れてある。このチェックリストを確認することで,その項目で何が重要であるか,何を覚えなければならないかが判断できるように工夫されている。さらに,「専門医はこう考える」,「専門医のロジック」が随所に盛り込まれており,考え方が整理できるようにもなっている。
本書は不整脈専門医を目指す医師への指南書と位置づけているが,そうでなく現在の不整脈診療における知識を整理したい医師にも十分配慮した構成となっている。是非,本書を十分にご活用いただき,目的を達成していただくことを願っている。
平成25年1月
東邦大学医学部内科学講座
循環器内科学分野教授
池田隆徳
心臓血管研究所所長・付属病院長
山下武志
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目次
Ⅰ−基礎編
心筋細胞のイオンチャネルと活動電位 山下武志
心臓における興奮伝導特性 李 鍾國
心筋細胞のCaハンドリング 古川哲史
不整脈をきたす遺伝子異常 渡部 裕
不整脈の発生メカニズム 相庭武司
不整脈を誘発する外的因子 足立正光
不整脈に対する薬理作用 杉山 篤
Ⅱ−症候編
動悸・脈の欠帯感 岡村英夫
失神・めまい 志賀 剛
息切れ・浮腫 古嶋博司
Ⅲ−検査編
不整脈スクリーニングの進め方 因田恭也
12誘導心電図 小松 隆
Holter心電図・携帯型心電図 水牧功一
運動負荷心電図・薬物負荷試験 笠巻祐二,相馬正義
加算平均心電図・T wave alternans 池田隆徳
自律神経活動指標 吉岡公一郎
Head-up tilt試験 伊藤啓之,丹野 郁
心臓電気生理学的検査 山根禎一
植込み型心電用データレコーダ 芦原貴司
遺伝子解析 森田 宏
Ⅳ−治療編
抗不整脈薬(チャネル・受容体遮断薬) 池田隆徳
その他の循環器薬とアップストリーム治療 庭野慎一
抗凝固療法 奥山裕司
電気的除細動(AEDを含む) 佐藤俊明
カテーテルアブレーション 西山崇比古,髙月誠司
ペースメーカ 河野律子,安部治彦
心臓再同期療法(CRT) 野田 崇
植込み型除細動器(ICD)・両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D) 中井俊子
手術療法 今井克彦
救急蘇生法 渡部智紀,三橋武司
Clinical evidenceと個別治療 山下武志
V−臨床編(不整脈別)
洞不全症候群 鈴木 誠
房室ブロック 横式尚司
心房期外収縮・心房頻拍 蜂谷 仁
心房細動
①疫学と予後(定義・分類を含む) 宮坂陽子
②病態,病因 小田倉弘典
③薬物治療 加藤武史
④非薬物治療 桑原大志
心房粗動 熊谷浩一郎
発作性上室頻拍
①WPW症候群 吉田明弘
②房室結節リエントリー性頻拍 佐藤弘和,八木哲夫
心室期外収縮 池主雅臣
心室頻拍
①非持続性心室頻拍 草野研吾
②持続性心室頻拍 山口尊則,土谷 健
torsade de pointes・心室細動 有本貴範,夛田 浩
Ⅵ−臨床編(病態別)
Brugada症候群 高木雅彦
早期再分極(J波)症候群 高橋尚彦
QT延長症候群・QT短縮症候群 清水 渉
カテコラミン誘発多形性心室頻拍(CPVT) 河田 宏,里見和浩
他疾患合併不整脈 臼田和生
術後不整脈 宮内靖史
デバイス関連不整脈 栗田隆志
心筋細胞のイオンチャネルと活動電位 山下武志
心臓における興奮伝導特性 李 鍾國
心筋細胞のCaハンドリング 古川哲史
不整脈をきたす遺伝子異常 渡部 裕
不整脈の発生メカニズム 相庭武司
不整脈を誘発する外的因子 足立正光
不整脈に対する薬理作用 杉山 篤
Ⅱ−症候編
動悸・脈の欠帯感 岡村英夫
失神・めまい 志賀 剛
息切れ・浮腫 古嶋博司
Ⅲ−検査編
不整脈スクリーニングの進め方 因田恭也
12誘導心電図 小松 隆
Holter心電図・携帯型心電図 水牧功一
運動負荷心電図・薬物負荷試験 笠巻祐二,相馬正義
加算平均心電図・T wave alternans 池田隆徳
自律神経活動指標 吉岡公一郎
Head-up tilt試験 伊藤啓之,丹野 郁
心臓電気生理学的検査 山根禎一
植込み型心電用データレコーダ 芦原貴司
遺伝子解析 森田 宏
Ⅳ−治療編
抗不整脈薬(チャネル・受容体遮断薬) 池田隆徳
その他の循環器薬とアップストリーム治療 庭野慎一
抗凝固療法 奥山裕司
電気的除細動(AEDを含む) 佐藤俊明
カテーテルアブレーション 西山崇比古,髙月誠司
ペースメーカ 河野律子,安部治彦
心臓再同期療法(CRT) 野田 崇
植込み型除細動器(ICD)・両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D) 中井俊子
手術療法 今井克彦
救急蘇生法 渡部智紀,三橋武司
Clinical evidenceと個別治療 山下武志
V−臨床編(不整脈別)
洞不全症候群 鈴木 誠
房室ブロック 横式尚司
心房期外収縮・心房頻拍 蜂谷 仁
心房細動
①疫学と予後(定義・分類を含む) 宮坂陽子
②病態,病因 小田倉弘典
③薬物治療 加藤武史
④非薬物治療 桑原大志
心房粗動 熊谷浩一郎
発作性上室頻拍
①WPW症候群 吉田明弘
②房室結節リエントリー性頻拍 佐藤弘和,八木哲夫
心室期外収縮 池主雅臣
心室頻拍
①非持続性心室頻拍 草野研吾
②持続性心室頻拍 山口尊則,土谷 健
torsade de pointes・心室細動 有本貴範,夛田 浩
Ⅵ−臨床編(病態別)
Brugada症候群 高木雅彦
早期再分極(J波)症候群 高橋尚彦
QT延長症候群・QT短縮症候群 清水 渉
カテコラミン誘発多形性心室頻拍(CPVT) 河田 宏,里見和浩
他疾患合併不整脈 臼田和生
術後不整脈 宮内靖史
デバイス関連不整脈 栗田隆志
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不整脈は,循環器領域のなかで基礎から検査,治療まで,最も幅広い知識を必要とする。本書は,平成24年度よりスタートした不整脈専門医試験に合格するための知識を整理する書籍である。
長文を読み込まなくても理解できるよう図表を多用し,一定のコンセンサスが得られていないような事柄やトピックスはできるだけ省き,ガイドラインに矛盾せず不整脈を専門とする医師の同意が得られる内容となっている。また勉強の時間がとれない医師に配慮して,各項目の最後に覚えるべき内容をまとめた「理解度チェックリスト」を挿入し,何が重要で,何を覚えるべきかを示した。
専門医試験だけではなく,不整脈診療の知識を改めて整理したい先生方にも十分役立つ内容となっている。