人工股関節のバイオマテリアル
材料選択からデザインまで
定価 9,900円(税込) (本体9,000円+税)
- B5変型判 280ページ オールカラー,イラスト80点,写真50点
- 2017年5月1日刊行
- ISBN978-4-7583-1376-6
序文
超高齢社会を迎えた日本では,股関節や膝関節に対する人工関節置換術のニーズが急増し,本邦における人工股関節置換術(THA)施行件数は,この10年でほぼ倍増しています。THAで使用するインプラントの材料やデザインの選定は,長期耐用性を左右する極めて重要な因子ですが,多種多様な選択肢が存在しているのが現状です。
整形外科医は,QOL改善を願う個々の患者の要求に応えるべく,各インプラントの特性を十全に把握し,これを責任をもって適用しなければなりません。材料学的特性の理解度によって,時には手術適応や手術手技にまで影響を及ぼすことも想定されます。しかし臨床の現場ではインプラント選定に際しては,メーカー主導の提案や時流に,疑いの目を向けることなく追従しているような傾向が存在していることが危惧されます。その結果,不具合や製品リコールに至る事例が少なからず報告されています。さらにその背景には先人たちが積み上げてきた基礎研究,臨床経験を十分に理解することなく新しいインプラントに目を向けてしまいがちな現代の風潮の関与も否定できません。歴史に学び,過去の財産を役立てるという心構えも忘れてはならないと考えます。
さらに材料学的知見は,不適合品選択の未然防止に繋がるだけでなく,より適合性の高いインプラントの選択により,術後合併症の低減の実現も期待されます。今後,更なる良好な長期成績を目指すためには,治療技術の向上と共に,バイオマテリアルの視点から“自ら”材料戦略を構築していくことが重要になると考えられます。
このような思いから本書では,人工股関節分野の最前線で活躍する整形外科の先生方および理工学分野の先生方に執筆を依頼し,臨床医の立場からだけでなく開発・研究者の視点からも解説を頂戴し,読者が多角的に検討できるような編集を心がけました。 項目としては,人工股関節インプラントに関する過去から現在までの科学的歩みを理解しさらに未来の発展を予見するうえで読者の手助けとなるようインプラントの歴史から,市場の動向,合併症,材質・デザインなどの最先端の材料学的トピックスまでを各執筆者にわかりやすく記述して頂きました。材料学に関する全ての知見を網羅することは不可能であるため,重要項目を厳選し,若い外科医・研究者らの実践書としてもお役立て頂けるよう比較的コンパクトに編集しております。
本書が,材料,デザインを含めたインプラント選択に際しての適切な判断の一助となり,股関節の障害を有する患者さんの長期にわたるQOLの改善に貢献できれば幸甚です。
2017年4月
東京医科大学整形外科学分野主任教授
山本謙吾
整形外科医は,QOL改善を願う個々の患者の要求に応えるべく,各インプラントの特性を十全に把握し,これを責任をもって適用しなければなりません。材料学的特性の理解度によって,時には手術適応や手術手技にまで影響を及ぼすことも想定されます。しかし臨床の現場ではインプラント選定に際しては,メーカー主導の提案や時流に,疑いの目を向けることなく追従しているような傾向が存在していることが危惧されます。その結果,不具合や製品リコールに至る事例が少なからず報告されています。さらにその背景には先人たちが積み上げてきた基礎研究,臨床経験を十分に理解することなく新しいインプラントに目を向けてしまいがちな現代の風潮の関与も否定できません。歴史に学び,過去の財産を役立てるという心構えも忘れてはならないと考えます。
さらに材料学的知見は,不適合品選択の未然防止に繋がるだけでなく,より適合性の高いインプラントの選択により,術後合併症の低減の実現も期待されます。今後,更なる良好な長期成績を目指すためには,治療技術の向上と共に,バイオマテリアルの視点から“自ら”材料戦略を構築していくことが重要になると考えられます。
このような思いから本書では,人工股関節分野の最前線で活躍する整形外科の先生方および理工学分野の先生方に執筆を依頼し,臨床医の立場からだけでなく開発・研究者の視点からも解説を頂戴し,読者が多角的に検討できるような編集を心がけました。 項目としては,人工股関節インプラントに関する過去から現在までの科学的歩みを理解しさらに未来の発展を予見するうえで読者の手助けとなるようインプラントの歴史から,市場の動向,合併症,材質・デザインなどの最先端の材料学的トピックスまでを各執筆者にわかりやすく記述して頂きました。材料学に関する全ての知見を網羅することは不可能であるため,重要項目を厳選し,若い外科医・研究者らの実践書としてもお役立て頂けるよう比較的コンパクトに編集しております。
本書が,材料,デザインを含めたインプラント選択に際しての適切な判断の一助となり,股関節の障害を有する患者さんの長期にわたるQOLの改善に貢献できれば幸甚です。
2017年4月
東京医科大学整形外科学分野主任教授
山本謙吾
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目次
■1章 人工股関節の歴史と現況
メタル人工股関節の歴史 菅野伸彦
メタルインプラントのはじまり
米国での開発/英国での開発
標準ステム型人工股関節の金属材料の課題
セメントレス人工股関節の金属選択と表面加工
セラミック人工股関節の歴史 中村孝志
生体材料としてのセラミックス
分類
人工関節材料としてのアルミナセラミック
アルミナセラミック人工股関節開発の歴史/わが国でのアルミナセラミック
ジルコニア骨頭について
最近の進歩:ジルコニア強化アルミナとOxinium®
ポリエチレン人工股関節の歴史 河村 孟,飯田寛和
ポリエチレン使用に至る歴史
ポリエチレンの基礎
ポリエチレンの改良の失敗
第一世代クロスリンクポリエチレン
第二世代クロスリンクポリエチレン
日本人工関節登録制度 秋山治彦
NationalJointRegistry
日本人工関節登録制度
日本人工関節登録制度登録データ解析
人工股関節全置換術の合併症 石堂康弘,小宮節郎
再置換要因
再置換のリスクとして年齢は関与するか/
固定様式の違い(セメント VS非セメント)では差があるか?/
摺動面の選択は影響するか?/骨頭径の影響は?
合併症
脱臼/感染/静脈血栓塞栓症/骨溶解と弛み/応力遮蔽(stress shielding)
■2章 人工股関節の製造・構造・特性
メタル摺動面 塙 隆夫
金属の特徴:長所と短所
コバルトクロム合金
チタン合金
ジルコニウム合金
酸化物系セラミック摺動面 北島 将,馬渡正明
セラミックス
ファインセラミックスの材料
アルミナ(酸化アルミニウム,Al2 O3)/ジルコニア(ZrO2)
ファインセラミックスの製造過程
セラミックスの特性評価
セラミックスの性状/セラミックスの強度/破壊強度
ジルコニアの相転移
ジルコニア強化アルミナ(ZTA)
セラミックスの臨床使用
破損/摩耗
どのセラミックスを使用するか
高度架橋ポリエチレン摺動面①−放射線架橋と熱処理(remelt,anneal,sequential anneal) 山本謙吾,髙橋康仁
製造法,構造,および特性
放射線架橋/γ線架橋と電子線架橋の違い/
架橋後のフリーラジカル除去法の違い
高度架橋ポリエチレン摺動面②−ビタミンE添加ポリエチレン 富田直秀
ビタミンE の混合と浸潤
電子線照射
生体反応性抑制効果
筆者の私見・最近の動向
電子線照射/生体反応性
高度架橋ポリエチレン摺動面③−MPCポリマー処理 石原一彦
細胞膜表面に倣ったMPC ポリマー
特徴/現状
CLPE 表面のMPC ポリマー処理
PMPC 処理CLPE ライナーの臨床成績
ポーラス加工①−ステム 伊藤 浩
セメントレスステムと骨との生物学的固着
Ingrowth とongrowth
セメントレスステムの表面加工
Ingrowth 表面/Ongrowth 表面/ハイドロキシアパタイト/
接合部の剥離の解決法/全周性のコーティング
セメントレスステムの問題点
生体材料としてのチタン合金について
ポーラス加工②−シェル 兼氏 歩,福井清数
ポーラス材料の問題点
問題点を解決しうる材料
Trilogy® cup
金沢医科大学整形外科での成績
Press-fit 固定/カップ表面の加工の違いによる選択
症例提示
抗菌加工①−メタルコーティング 小関弘展,尾﨑 誠
光触媒TiO2
インプラント関連SSI とTiO2
光触媒TiO2 処理方法
TiO2膜の物理的特性
黄色ブドウ球菌への殺菌効果
創外固定のピン刺入部感染予防効果
抗菌加工②−ヨードコーティング 白井寿治,土屋弘行
細胞接着阻害コーティング
抗菌薬コーティング
抗菌薬以外の有機物コーティング
無機物コーティング
理想的なヨードコーティング
ヨードコーティング加工および構造
基礎研究
探索的臨床研究
カスタムメイドインプラント 岡崎義光
インプラント分野の技術革新と積層造形技術の進歩
カスタムメイドインプラントの新たな定義
三次元積層造形技術の活用分野
三次元積層造形技術の利点および考慮すべき点/代表的な三次元積層造形技術
三次元積層造形技術を用いた製品開発上有用となる考え方
三次元積層造形技術のプロセス
三次元積層造形材のレギュラトリーサイエンス
生物学的安全性評価/金属イオンの毒性学および高生体適合性元素/
高生体適合性チタン合金の鍛錬プロセス/三次元積層造形材のミクロ構造/
積層造形材の機械的性質/三次元積層造形材の疲労特性/
大腿骨ステムの力学的安全性評価
骨セメント 立岩俊之
組成
重合反応
物性
抗菌薬含有セメント
セメントの重合熱と抗菌薬/抗菌薬とセメント強度/ALAC の抗菌薬濃度と徐放性
合併症
■3章 人工股関節のデザイン
セメント/セメントレスカップ 稲葉 裕,池 裕之,齋藤知行
セメントレスカップ
Hemispherical cup/Threaded cup/フィン,ペグ,スパイク
セメントカップ
骨溶解への影響
セメント/セメントレスステム 神野哲也
セメントステム
分類とデザインコンセプト/セメントステムの素材金属/
コンポジットビームステム/ポリッシュテーパーステム
セメントレスステム
セメントレスステムの固定様式/セメントレスステムの表面/
セメントレスステムの素材金属/セメントレスステムの分類とデザインコンセプト/
テーパー型近位固定ステム(Type 1,2,3 A)/
テーパー型遠位固定ステム(Type 3 B,3 C)/
遠位固定円筒型フルコーティングステム(Type 4),モジュラーステム(Type 5),/
カーブドアナトミックステム(Type 6)/その他のセメントレスステム
ショートステム 大谷卓也
ショートステムの定義
ショートステムの分類
大腿骨頚部の骨切り部位による分類/固定コンセプトや荷重部位による分類
ショートステムの歴史
ショートステムの臨床成績
Type 1(Khanuja)ショートステムの成績/Type 2(Khanuja)ショートステムの成績/
Type 3(Khanuja)ショートステムの成績/Type 4(Khanuja)ショートステムの成績
ショートステムの問題点と使用上の注意点
ショートステムの問題点/ショートステム使用上の注意点
脱臼防止インプラント 河野俊介,馬渡正明
Elevated rim liner
オフセットライナー
Constrained liner
Dual mobility cup
表面置換型人工股関節置換術のコンセプトと現状 加畑多文
インプラントデザイン
手術適応
手術手技
臨床成績と合併症
頚部骨折/弛み/血清金属イオン濃度上昇/ARMD
将来への展望
■4章 人工股関節の耐久性と課題
メタル製人工股関節の課題①−メタル製摺動面の摩耗 久保宏介
カップ設置角の影響
流体潤滑の影響
摺動面クリアランスの摩耗への影響について
近年のMoM 摺動面デザインの摩耗への影響
Normal wear mode
Micro-separation
Edge-loading
Impingement,third-body abrasion wear
メタル製人工股関節の課題②−Head-neck junctionの腐食 湏藤啓広
Head-neck junction の腐食に関する基礎知識
すべてのTHA にかかわる問題/Head-neck junction 部の用語/
さまざまな腐食の種類と進行過程
Head-neck junction の腐食を進行させる因子
Head とneck の素材/Taper design/Head size/Lateral offset/術中操作
メタル製人工股関節の課題③−ARMD 名越 智
ARMD の概念
ARMD の診断
臨床症状/画像所見/臨床検査/血中,血清金属イオン濃度/病理組織学的検査
金属イオン,摩耗粉の発生源について
MoM stemmed THA/MoP stemmed THA
ARMD の対処方法
摺動面の交換/固定性良好なセメントレスステムの抜去方法
セラミック製人工股関節の課題①−摩耗,相転移,破損 宍戸孝明
セラミックの素材と物質特性
アルミナ(Al2 O3)/ジルコニア(ZrO2)/アルミナ-ジルコニア複合材料(ZTA)
セラミックTHA の摩耗特性
アルミナの摩耗過程
セラミックインプラント破損のメカニズム
セラミック骨頭の破損メカニズム/セラミックライナーの破損メカニズム
セラミック製人工股関節の課題②−Stripe wear,squeaking 坂井孝司
Stripe wear とは
Squeaking とは
Squeaking の発生要因
患者の要因/インプラントの要因/手術手技の要因/
メタアナリシスによるsqueaking 発生に関連する要因
Squeaking の発生機序
Squeaking の評価
第三世代・第四世代CoC におけるsqueaking の発生頻度
Squeaking に対する治療方針
ポリエチレン製人工股関節の課題①−摩耗,酸化,骨溶解 正岡利紀
摩耗(wear)
摩耗メカニズム
酸化(oxidation)
骨溶解(osteolysis)
ポリエチレン製人工股関節の課題②−変形と疲労破壊 髙橋康仁
HXLPE ライナーの生体内力学挙動
弾性変形(elastic deformation)/塑性変形(plastic deformation)/
クリープ(creep)/疲労破壊(fatigue fracture)
HXLPE ライナーの変形機序
変形の摩耗への関与
ライナーサイズと変形の関係
HXLPE ライナーの疲労破壊
メタル人工股関節の歴史 菅野伸彦
メタルインプラントのはじまり
米国での開発/英国での開発
標準ステム型人工股関節の金属材料の課題
セメントレス人工股関節の金属選択と表面加工
セラミック人工股関節の歴史 中村孝志
生体材料としてのセラミックス
分類
人工関節材料としてのアルミナセラミック
アルミナセラミック人工股関節開発の歴史/わが国でのアルミナセラミック
ジルコニア骨頭について
最近の進歩:ジルコニア強化アルミナとOxinium®
ポリエチレン人工股関節の歴史 河村 孟,飯田寛和
ポリエチレン使用に至る歴史
ポリエチレンの基礎
ポリエチレンの改良の失敗
第一世代クロスリンクポリエチレン
第二世代クロスリンクポリエチレン
日本人工関節登録制度 秋山治彦
NationalJointRegistry
日本人工関節登録制度
日本人工関節登録制度登録データ解析
人工股関節全置換術の合併症 石堂康弘,小宮節郎
再置換要因
再置換のリスクとして年齢は関与するか/
固定様式の違い(セメント VS非セメント)では差があるか?/
摺動面の選択は影響するか?/骨頭径の影響は?
合併症
脱臼/感染/静脈血栓塞栓症/骨溶解と弛み/応力遮蔽(stress shielding)
■2章 人工股関節の製造・構造・特性
メタル摺動面 塙 隆夫
金属の特徴:長所と短所
コバルトクロム合金
チタン合金
ジルコニウム合金
酸化物系セラミック摺動面 北島 将,馬渡正明
セラミックス
ファインセラミックスの材料
アルミナ(酸化アルミニウム,Al2 O3)/ジルコニア(ZrO2)
ファインセラミックスの製造過程
セラミックスの特性評価
セラミックスの性状/セラミックスの強度/破壊強度
ジルコニアの相転移
ジルコニア強化アルミナ(ZTA)
セラミックスの臨床使用
破損/摩耗
どのセラミックスを使用するか
高度架橋ポリエチレン摺動面①−放射線架橋と熱処理(remelt,anneal,sequential anneal) 山本謙吾,髙橋康仁
製造法,構造,および特性
放射線架橋/γ線架橋と電子線架橋の違い/
架橋後のフリーラジカル除去法の違い
高度架橋ポリエチレン摺動面②−ビタミンE添加ポリエチレン 富田直秀
ビタミンE の混合と浸潤
電子線照射
生体反応性抑制効果
筆者の私見・最近の動向
電子線照射/生体反応性
高度架橋ポリエチレン摺動面③−MPCポリマー処理 石原一彦
細胞膜表面に倣ったMPC ポリマー
特徴/現状
CLPE 表面のMPC ポリマー処理
PMPC 処理CLPE ライナーの臨床成績
ポーラス加工①−ステム 伊藤 浩
セメントレスステムと骨との生物学的固着
Ingrowth とongrowth
セメントレスステムの表面加工
Ingrowth 表面/Ongrowth 表面/ハイドロキシアパタイト/
接合部の剥離の解決法/全周性のコーティング
セメントレスステムの問題点
生体材料としてのチタン合金について
ポーラス加工②−シェル 兼氏 歩,福井清数
ポーラス材料の問題点
問題点を解決しうる材料
Trilogy® cup
金沢医科大学整形外科での成績
Press-fit 固定/カップ表面の加工の違いによる選択
症例提示
抗菌加工①−メタルコーティング 小関弘展,尾﨑 誠
光触媒TiO2
インプラント関連SSI とTiO2
光触媒TiO2 処理方法
TiO2膜の物理的特性
黄色ブドウ球菌への殺菌効果
創外固定のピン刺入部感染予防効果
抗菌加工②−ヨードコーティング 白井寿治,土屋弘行
細胞接着阻害コーティング
抗菌薬コーティング
抗菌薬以外の有機物コーティング
無機物コーティング
理想的なヨードコーティング
ヨードコーティング加工および構造
基礎研究
探索的臨床研究
カスタムメイドインプラント 岡崎義光
インプラント分野の技術革新と積層造形技術の進歩
カスタムメイドインプラントの新たな定義
三次元積層造形技術の活用分野
三次元積層造形技術の利点および考慮すべき点/代表的な三次元積層造形技術
三次元積層造形技術を用いた製品開発上有用となる考え方
三次元積層造形技術のプロセス
三次元積層造形材のレギュラトリーサイエンス
生物学的安全性評価/金属イオンの毒性学および高生体適合性元素/
高生体適合性チタン合金の鍛錬プロセス/三次元積層造形材のミクロ構造/
積層造形材の機械的性質/三次元積層造形材の疲労特性/
大腿骨ステムの力学的安全性評価
骨セメント 立岩俊之
組成
重合反応
物性
抗菌薬含有セメント
セメントの重合熱と抗菌薬/抗菌薬とセメント強度/ALAC の抗菌薬濃度と徐放性
合併症
■3章 人工股関節のデザイン
セメント/セメントレスカップ 稲葉 裕,池 裕之,齋藤知行
セメントレスカップ
Hemispherical cup/Threaded cup/フィン,ペグ,スパイク
セメントカップ
骨溶解への影響
セメント/セメントレスステム 神野哲也
セメントステム
分類とデザインコンセプト/セメントステムの素材金属/
コンポジットビームステム/ポリッシュテーパーステム
セメントレスステム
セメントレスステムの固定様式/セメントレスステムの表面/
セメントレスステムの素材金属/セメントレスステムの分類とデザインコンセプト/
テーパー型近位固定ステム(Type 1,2,3 A)/
テーパー型遠位固定ステム(Type 3 B,3 C)/
遠位固定円筒型フルコーティングステム(Type 4),モジュラーステム(Type 5),/
カーブドアナトミックステム(Type 6)/その他のセメントレスステム
ショートステム 大谷卓也
ショートステムの定義
ショートステムの分類
大腿骨頚部の骨切り部位による分類/固定コンセプトや荷重部位による分類
ショートステムの歴史
ショートステムの臨床成績
Type 1(Khanuja)ショートステムの成績/Type 2(Khanuja)ショートステムの成績/
Type 3(Khanuja)ショートステムの成績/Type 4(Khanuja)ショートステムの成績
ショートステムの問題点と使用上の注意点
ショートステムの問題点/ショートステム使用上の注意点
脱臼防止インプラント 河野俊介,馬渡正明
Elevated rim liner
オフセットライナー
Constrained liner
Dual mobility cup
表面置換型人工股関節置換術のコンセプトと現状 加畑多文
インプラントデザイン
手術適応
手術手技
臨床成績と合併症
頚部骨折/弛み/血清金属イオン濃度上昇/ARMD
将来への展望
■4章 人工股関節の耐久性と課題
メタル製人工股関節の課題①−メタル製摺動面の摩耗 久保宏介
カップ設置角の影響
流体潤滑の影響
摺動面クリアランスの摩耗への影響について
近年のMoM 摺動面デザインの摩耗への影響
Normal wear mode
Micro-separation
Edge-loading
Impingement,third-body abrasion wear
メタル製人工股関節の課題②−Head-neck junctionの腐食 湏藤啓広
Head-neck junction の腐食に関する基礎知識
すべてのTHA にかかわる問題/Head-neck junction 部の用語/
さまざまな腐食の種類と進行過程
Head-neck junction の腐食を進行させる因子
Head とneck の素材/Taper design/Head size/Lateral offset/術中操作
メタル製人工股関節の課題③−ARMD 名越 智
ARMD の概念
ARMD の診断
臨床症状/画像所見/臨床検査/血中,血清金属イオン濃度/病理組織学的検査
金属イオン,摩耗粉の発生源について
MoM stemmed THA/MoP stemmed THA
ARMD の対処方法
摺動面の交換/固定性良好なセメントレスステムの抜去方法
セラミック製人工股関節の課題①−摩耗,相転移,破損 宍戸孝明
セラミックの素材と物質特性
アルミナ(Al2 O3)/ジルコニア(ZrO2)/アルミナ-ジルコニア複合材料(ZTA)
セラミックTHA の摩耗特性
アルミナの摩耗過程
セラミックインプラント破損のメカニズム
セラミック骨頭の破損メカニズム/セラミックライナーの破損メカニズム
セラミック製人工股関節の課題②−Stripe wear,squeaking 坂井孝司
Stripe wear とは
Squeaking とは
Squeaking の発生要因
患者の要因/インプラントの要因/手術手技の要因/
メタアナリシスによるsqueaking 発生に関連する要因
Squeaking の発生機序
Squeaking の評価
第三世代・第四世代CoC におけるsqueaking の発生頻度
Squeaking に対する治療方針
ポリエチレン製人工股関節の課題①−摩耗,酸化,骨溶解 正岡利紀
摩耗(wear)
摩耗メカニズム
酸化(oxidation)
骨溶解(osteolysis)
ポリエチレン製人工股関節の課題②−変形と疲労破壊 髙橋康仁
HXLPE ライナーの生体内力学挙動
弾性変形(elastic deformation)/塑性変形(plastic deformation)/
クリープ(creep)/疲労破壊(fatigue fracture)
HXLPE ライナーの変形機序
変形の摩耗への関与
ライナーサイズと変形の関係
HXLPE ライナーの疲労破壊
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インプラントの長所や材料とデザインの相性,きちんとわかって使っていますか?
THAは,年間5.5万件を超える患者さんに行われている。それに伴い,インプラントの材質起因による合併症なども起こるようになってきた。個々の患者に合った手術を行うためにも,術者は自分が使用するインプラントの材質や特徴,そしてその相性などを十分に把握しておく必要がある。
本書は,人工股関節の製造,構造,特性から,そのデザイン,そしてインプラントの耐久性などについて,特徴を系統立てて丁寧に解説している。
日進月歩を続けるインプラントの最先端を知ることで,今現在のTHAに関し克服できる課題があるはずである。本書は,よりよい手術につなげるための,THAを行うすべての医師必読の1冊である。