うまくいく!

超音波でさがす末梢神経
[Web動画付]

100%効く四肢伝達麻酔のために

超音波でさがす末梢神経[Web動画付]

■監修 田中 康仁

■著者 仲西 康顕

定価 8,800円(税込) (本体8,000円+税)
  • i_movie.jpg
  • B5判  176ページ  オールカラー,イラスト140点,写真300点,Web動画 4本/計9分
  • 2015年9月28日刊行
  • ISBN978-4-7583-1364-3

「多分ここに神経が・・・」を「確実にここに神経がある!」に変える一冊

整形外科医にとって,超音波ガイド下伝達麻酔は非常に魅力的な手技である。超音波で末梢神経や穿刺針,薬液の広がり方をリアルタイムで確認しながら行う伝達麻酔の手技では,必ずしも放散痛を必要とせず,必要最小限の局所麻酔薬で確実な効果を得ることが可能である。救急外来,手術室,病棟などで実施する確実な伝達麻酔は,緊急で痛みを止めたいときだけでなく,術後の痛みの少ないリハビリテーションなど整形外科治療の幅を大きく広げることが期待できる。
しかし,思ったような超音波画像を初心者が得ることは難しく,特に末梢神経の描出には困難が伴う。本書は,初心者でも必ず見える組織からスタートし,そこからどういう順番で目的の神経を探し当てるかについて,一手順ごとに,イラスト,写真で詳述し,効果的な針の進め方のテクニックを動画で示している。


序文

 超音波診断装置の進歩により,運動器疾患に対する医療が変わろうとしています。私は足の外科を専門としておりますが,四肢先端の知覚は鋭敏であり,そのために「足の手術は痛いものである」という固定観念がありました。せっかく完璧と思えるような手術をしても,術後の強い疼痛のために患者満足度が下がってしまうこともあったように思います。そこに,当時まだ大学院生であった仲西康顕君により,超音波ガイド下伝達麻酔が導入され,周術期の患者満足度が飛躍的に向上いたしました。あまりにも手術が楽なために,足関節固定術を受けた方が,帰室後すぐに杖もなく独歩でトイレに行こうとして,肝を冷やしたこともありました。
 また,目から鱗でありましたのは,伝達麻酔は痛くないということでした。私が研修医の頃には,「放散痛を生じなければ麻酔は効かない」と教えられ,それまで伝達麻酔は痛いものであると思い込んでおりました。しかし,超音波診断装置で神経がよく見え,直接穿刺することがないために,麻酔薬を注入しても痛みを生じません。
 当院では病棟で伝達麻酔をかけ,手術場に入ってすぐに執刀できる状況にあります。入れ替え時間も短く,非常にスムーズに手術が進みます。経験の浅い研修医であっても,1カ月もすれば上手に麻酔をかけることができるようになります。麻酔科医の少ない地域でのその恩恵は計り知れないものがあり,早急にこの手技を普及させるべきであると強く思い,本書の発刊を考えました。紐解いていただければわかると思いますが,解剖学の成書には載っていない,臨床の視点からみた超音波による末梢神経の解剖が網羅されております。まさに「超音波解剖学」であります。仲西康顕君の知識と技術のすべてが詰め込まれた,渾身の素晴らしい内容にできあがりました。本書を臨床現場に携帯いただき,必要な部位を参照しながらご活用いただければ,今大きな医療革命が起こりつつあるということを実感いただけると思います。
 奈良県立医科大学では,整形外科の恩地 裕・初代教授が1960年に『常用伝達麻酔手技』という書籍を上梓し,1961 年に日本で初めてペインクリニック外来を開始いたしました。そこに東京大学から若杉文吉先生が見学に来られたという記録も残されております。今回本書を刊行するにあたり,脈々と受け継がれた宿命のようなものを感じております。超音波ガイド下伝達麻酔は,整形外科,ペインクリニック,麻酔科,リハビリテーション科,総合診療科など,運動器にかかわるすべての診療科の必須アイテムであり,本書が少しでも皆様方のお役に立つことを祈念いたしております。
 最後になりますが,晴れて上梓できましたのは,ひとえに編集部の三宅優美子様の粘り強いサポートとメジカルビュー社の皆様方の多大なご協力のおかげであります。心から厚く御礼申し上げます。

2015年9月
奈良県立医科大学整形外科教授
田中康仁
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目次

Ⅰ章 伝達麻酔を行う前に
 超音波ガイド下伝達麻酔の魅力
  肩関節脱臼整復への応用
  前腕骨折治療への応用
  足関節・足部手術への応用
  人工膝関節置換術術後鎮痛への応用
  周術期のペインコントロールへの応用
  臨床での実践にあたって

 末梢神経のための装置選択
  どんな超音波機器がよい?
  プローブの選択は?
  機器が複雑すぎる?
  画像処理が重くなると

 超音波の特性・組織の見え方
  何が白くて何が黒いのか
  異方性とfibrillar pattern

 末梢神経と筋膜の構造
  末梢神経の構造とparaneural sheath
  末梢神経の基本的な超音波像
  筋膜の基本的な構造

 四肢末梢神経の存在パターンと超音波での見え方
  3つ以上の筋肉や筋膜,骨に囲まれたスペースを通過する場合
  2つの筋肉の間を通過する場合
  筋肉内に存在する末梢神経
  骨間膜に末梢神経が沿う場合
  皮神経

 神経描出のテクニック(総論)
  伝達麻酔はなぜ失敗するのか?
  プレスキャンの重要性
  どうして末梢神経は超音波で見えにくい?
  どのようにして神経を確実に同定したらよいだろうか?
  短軸操作・とにかく中枢←→末梢の往復で索状物を探す
  神経が見つからないときは?

 伝達麻酔の準備
  伝達麻酔のための器具・物品
  ブロック前の確認事項
  ロピバカイン使用の実際

 超音波ガイド下穿刺のテクニック(総論)
  穿刺方法
  針の描出について
  針の種類
  体位の工夫
  穿刺時の消毒とプローブの清潔・不潔について
  穿刺前の注意
  穿刺中の注意
  ブロック針のカット面の方向について
  液性剥離のテクニック
  どの順番で注入する?
  平行法で針が見えにくいときは?

 超音波ガイド下伝達麻酔の適応と禁忌
  どこまでを適応とするべきか
  禁忌・特に注意すべき合併症とは

 局所麻酔薬・ブロックの合併症と安全対策
  局所麻酔薬の種類と基本的な薬理
  ブロックの合併症

 どの伝達麻酔から経験を積むべきか
  超音波診断装置に慣れるために
  最初に末梢神経ブロックを開始するにあたってリスクが比較的少なく効果の高い手技・適応
  使用頻度の特に高い伝達麻酔手技・適応

Ⅱ章 実践 末梢神経のさがし方
上肢
 正中神経
  はじめに/解剖
  正中神経の走行と知覚支配
  超音波での描出テクニック
   腋窩から上腕部
    上腕動脈に伴走する索状物を探す
    上腕動脈と正中神経は上腕で交差する
    正中神経を腋窩部で同定する
    腋窩部での正中神経ブロック
   肘から前腕
    正中神経はまず前腕中央部で同定する
    前腕近位部では円回内筋により描出がやや難しい
    前骨間神経
    前腕から手関節での走行
    正中神経掌枝
    手根管での正中神経

 尺骨神経
  はじめに/解剖
  尺骨神経の走行と知覚支配
  超音波での描出テクニック
   腋窩から上腕部
    尺骨神経は上腕中央で同定する
    尺骨神経は上腕三頭筋の筋膜の内側に沿って走行する
    尺骨神経が同定できたら,腋窩まで追ってみる
    腋窩でのブロック
   前腕部
    前腕中央部から前腕遠位部で尺骨神経を同定する
    尺骨神経は尺側手根屈筋の裏側で,尺骨動脈の尺側を走行する
    尺骨神経背側枝の同定
    手関節部での同定

 橈骨神経
  はじめに/解剖
  橈骨神経の走行と知覚支配
  超音波での描出テクニック
   腋窩から上腕近位部
    腋窩部では橈骨神経の輪郭は描出しにくい
    上腕三頭筋の内側頭と長頭の間から上腕骨背側面に至る
    腋窩でのブロック
   上腕遠位部から肘関節
    肘関節正面で,上腕骨小頭が橈骨神経の目印となる
    橈骨神経のレスキューブロック
    上腕遠位部の観察時には,肘関節屈曲で肩関節内旋位
    上腕中央部から末梢方向で,橈骨神経から分岐する後前腕皮神経を同定する
   肘関節から前腕
    橈骨神経浅枝は橈骨動静脈に伴走する
    後骨間神経(橈骨神経深枝)の観察
    回外筋を通過する橈骨神経深枝を見つける
    前腕での橈骨神経深枝の走行

 筋皮神経
  はじめに/解剖
  筋皮神経の走行と知覚支配
  超音波での描出テクニック
   腋窩では内側前方,肘関節では外側前方
   腋窩で正中神経の外側・筋肉内に走行する筋皮神経を見つける
   上腕中央から遠位部での筋皮神経本幹を見つけるには
   上腕筋・上腕二頭筋同定のコツ
   筋皮神経のブロック
   前腕での外側前腕皮神経

 内側前腕皮神経(内側上腕皮神経)
  はじめに/解剖
  内側前腕皮神経(内側上腕皮神経)の走行と知覚支配
  超音波での描出テクニック
   上腕中央で尺側皮静脈を同定する
   尺側皮静脈に伴走する内側前腕皮神経を同定する
   腋窩から上腕中央部でブロックを行う
   肘関節から前腕まで同定する

 腕神経叢(斜角筋間・鎖骨上)
  はじめに/解剖
  腕神経叢の走行と知覚支配
  側臥位のほうが仰臥位よりも容易にブロックできる
  超音波での描出テクニック
   鎖骨上ブロック
    鎖骨上ブロックでは,鎖骨の下を覗き込むようにプローブを当てる
    鎖骨上ブロックでは,鎖骨下動脈と第1 肋骨の間のコーナーを狙う
    頚横動脈に注意して穿刺する
   斜角筋間ブロック
    斜角筋間ブロックの際も,鎖骨上から走査を始め中枢に向かう
    神経根の高位確認は,第6 頚椎横突起を基準とする
    椎骨動脈の変異に注意する
    肩関節手術の際のターゲットはC5,C6
    浅神経叢ブロック

下肢
 大腿神経・外側大腿皮神経
  はじめに/解剖
  大腿神経の走行と知覚支配
  外側大腿皮神経の走行と知覚支配
  超音波での描出テクニック
   大腿神経ブロック
    大腿動脈の外側・深層で腸腰筋筋膜の輪郭をイメージする
    大腿神経ブロック
   外側大腿皮神経ブロック
    大腿近位1/3で同定すると簡単
    カテーテル留置
    転倒に注意する

 伏在神経(大腿神経の枝)
  はじめに/解剖
  伏在神経の走行と知覚支配
  超音波での描出テクニック
   大腿中央部
    縫工筋の走行が鍵
    大腿動静脈が観察しにくくなる理由
    大腿動脈・縫工筋・内側広筋で囲まれた領域を探す
   下腿近位部
    膝関節内側,脛骨後縁が最初の目印
    伏在神経と大伏在静脈は,縫工筋筋膜で隔てられている
    下腿近位部での伏在神経ブロック

 閉鎖神経
  はじめに/解剖
  閉鎖神経の走行と知覚支配
  超音波での描出テクニック
   筋肉をはさんで2つの層で走行する高エコー像を探す
   閉鎖神経ブロック

 坐骨神経(脛骨神経・総腓骨神経)
  はじめに/解剖
  脛骨神経の走行と知覚支配
  総腓骨神経の走行と知覚支配
  後大腿皮神経の走行と知覚支配
  坐骨神経への異なるアプローチ
  超音波での描出テクニック
   傍仙骨アプローチ
    坐骨神経は傍仙骨部ではかなり深い
    傍仙骨アプローチの利点と欠点
   殿下部アプローチ
    坐骨結節と大転子が目印
    坐骨神経は大殿筋の裏側に沿っている
   膝窩アプローチ
    膝窩動静脈の表層に走行する脛骨神経を同定する
    総腓骨神経を同定する
    脛骨神経・総腓骨神経の分岐部でブロックする
   総腓骨神経
    深腓骨神経は,前脛骨動脈に伴走する
    浅腓骨神経は,下腿約1/3で筋膜を貫いて皮下に出る
   脛骨神経
    脛骨神経は後脛骨動静脈に沿う
    足根管での描出は比較的容易
   腓腹神経
    小伏在静脈に伴走する

コラム
 術後持続注入カテーテル留置
 コンパートメント症候群の減張切開に伝達麻酔は禁忌?
 ターニケットペインについての仮説
 神経1本にどれだけの局所麻酔薬が必要か
 超音波ガイド下選択的知覚神経ブロックでの手術について
 鋭針?鈍針?
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