整形外科 骨折ギプスマニュアル
[Web動画付]
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定価 12,100円(税込) (本体11,000円+税)
- A4判 160ページ オールカラー,イラスト100点,写真140点,DVD-Video付き,Web動画視聴権付き
- 2014年3月25日刊行
- ISBN978-4-7583-1359-9
序文
刊行にあたって
骨折治療は目覚ましい進歩を遂げ,手術により多くの骨折で早期の機能回復と社会復帰が得られようになった。しかし骨折には保存療法で良好な結果が得られる骨折, 絶対手術が必要な骨折, 種々の条件により手術が勧められる骨折がある。当然,整形外科医は手術による治療で好結果を得るための研鑽には非常に熱心である。また学会の演題や論文,出版物も手術に関するものが大部分を占めている。しかし,日常遭遇する骨折のかなりの部分が保存療法で良好な結果が期待できる骨折である。いかに手術に上達しようとも,保存療法の知識,技能に欠ける整形外科医はバランスの取れた整形外科医とは言えず,患者の期待に十分応えることはできない。
日本骨折治療学会では骨折治療における知識を広く習得するため,2006年より学会主催の研修会を開催しており,その中では手術治療のみではなく保存療法を含めた研修を行っている。その研修会期間中に行ったギプス巻きの実習では希望者が殺到した。これは若手医師が手術のみならず,ギプス固定法の知識と手技の習得に多いに意欲があることを示すものである。
一方,見るに堪えないギプスに遭遇することも少なくない。きちんと巻かれていないギプスは,骨折に対する固定性が十分でなく,関節拘縮の原因となる。また患者にとっては苦痛である。かつては先輩からギプスの巻きかたの指導を受けることが多かったが,現在では指導医がよいギプスを巻けないことも少なくない。骨折の手術治療に関する出版物は溢れるほどあるが,ギプスの巻きかたに関する書籍は長年にわたりごくわずかしか出版されていない。また骨折治療の教科書も保存療法に充てる頁数は少なく,ギプス巻きの実際を学ぶことは難しい。
この点を補うため,日本骨折治療学会で『整形外科 骨折ギプスマニュアル』を企画したところ,教育委員会をはじめ多くの先生方の賛同をいただいた。本書は実際にギプスを巻く際に必要なポイントを,詳細にふんだんな画像や動画で学べるようにしている。また,日常診療でギプスを巻く際にパソコンやスマートフォンからすぐに見ることができるように,メジカルビュー社のホームページで閲覧できるようにしていただいた。
執筆いただいた先生方は骨折の手術治療のエキスパートであるとともに,保存療法にも精通している方々である。非常に多忙な中,動画の撮影やナレーションに多くの時間を割いていただいた執筆者各位に深謝いたします。また素晴らしい内容を企画編集いただいた濵西千秋先生に心からお礼を申し上げます。また多大なご協力をいただいたメジカルビュー社にも深謝いたします。読者には是非本書を通じてギプス手技を十分に習得し,保存療法も上手な整形外科医となっていただくことを期待しております。
平成26年2月
日本骨折治療学会理事長
澤口 毅
----------------------------------------
序文
日本骨折治療学会教育委員会の夢は二つあった。その一つ,骨折治療を基本から教育できる若手の為の研修会を定期的に開催するという夢,これは果たした。もう一つは骨折の保存的治療を網羅し,実際の徒手整復手技やギプスの巻きかたのマニュアルを出版するという夢であった。
「手術」マニュアルの発行は簡単で出版社にとっても魅力的である。手術しなければ整形外科医ではないと信じ,新しい固定材料に思わず飛びついてしまう整形外科医の購読を十分見込めるからである。しかし骨折は自然に治癒することを知っていて,できるだけ整復してギプスで治そうとする整形外科医はいつのまにか絶滅危惧種となった。本当に絶滅する前に何とかマニュアルを発行しておきたいと委員達が焦ったのも当然である。
しかし,保存治療はかなりの信念と自信に基づき,患者との共同作業でなしうる一種の芸術であるから個性が際立つ。整復法,整復許容範囲,固定肢位,固定材料,どれをとっても学会公認のこれというものは決めにくい。それらをまとめる困難さに直面して企画は何回も頓挫した。
しかし,骨折研修会も回を重ね,沢山の講師が手術治療の前にまずは保存的治療の可能性を考えるという原則や,それぞれの治療手技を述べられてきた。テキストや動画資料も蓄積され,まとめる機運も高まってきたわけである。そして澤口 毅先生が理事長に就任され,一気に製作に向けて舵がきられた。そして2012年10月には本書の概略が決定され,執筆作業が始まったのである。
そのときに委員から出された希望は,誰も読まない懐古資料集にはしない,実技マニュアルだから画像が主になる,ハイビジョン動画も必須,それをスマートフォンやタブレットからも覗けるものにしたいなどであった。
それで,各執筆者は原稿を書くだけではなく,自らモデルを依頼し,にわかビデオカメラマンになって何回も撮り直したり,にわかナレーターになるなど,とにかく苦労して頂いた。いいものができ上がったと自負している。200枚の画像は屈指であろう。そして骨折治療第一人者の声が聞こえる15項目に及ぶ動画はDVD以外にもメジカルビュー社のホームページから閲覧できることになった。ギプス場で若い整形外科医がスマートフォンを見ながらギプス巻きの練習をしている姿を見たいものである。そして自信をもって保存的治療にあたってほしい。
最後に難しい項目を押し付けられて苦労して下さった執筆者各位に深くお礼申し上げたい。そしてこの利の薄い企画を実現させて下さったメジカルビュー社にも深謝する次第である。
平成26年2月
日本骨折治療学会教育委員会アドバイザー
濵西千秋
骨折治療は目覚ましい進歩を遂げ,手術により多くの骨折で早期の機能回復と社会復帰が得られようになった。しかし骨折には保存療法で良好な結果が得られる骨折, 絶対手術が必要な骨折, 種々の条件により手術が勧められる骨折がある。当然,整形外科医は手術による治療で好結果を得るための研鑽には非常に熱心である。また学会の演題や論文,出版物も手術に関するものが大部分を占めている。しかし,日常遭遇する骨折のかなりの部分が保存療法で良好な結果が期待できる骨折である。いかに手術に上達しようとも,保存療法の知識,技能に欠ける整形外科医はバランスの取れた整形外科医とは言えず,患者の期待に十分応えることはできない。
日本骨折治療学会では骨折治療における知識を広く習得するため,2006年より学会主催の研修会を開催しており,その中では手術治療のみではなく保存療法を含めた研修を行っている。その研修会期間中に行ったギプス巻きの実習では希望者が殺到した。これは若手医師が手術のみならず,ギプス固定法の知識と手技の習得に多いに意欲があることを示すものである。
一方,見るに堪えないギプスに遭遇することも少なくない。きちんと巻かれていないギプスは,骨折に対する固定性が十分でなく,関節拘縮の原因となる。また患者にとっては苦痛である。かつては先輩からギプスの巻きかたの指導を受けることが多かったが,現在では指導医がよいギプスを巻けないことも少なくない。骨折の手術治療に関する出版物は溢れるほどあるが,ギプスの巻きかたに関する書籍は長年にわたりごくわずかしか出版されていない。また骨折治療の教科書も保存療法に充てる頁数は少なく,ギプス巻きの実際を学ぶことは難しい。
この点を補うため,日本骨折治療学会で『整形外科 骨折ギプスマニュアル』を企画したところ,教育委員会をはじめ多くの先生方の賛同をいただいた。本書は実際にギプスを巻く際に必要なポイントを,詳細にふんだんな画像や動画で学べるようにしている。また,日常診療でギプスを巻く際にパソコンやスマートフォンからすぐに見ることができるように,メジカルビュー社のホームページで閲覧できるようにしていただいた。
執筆いただいた先生方は骨折の手術治療のエキスパートであるとともに,保存療法にも精通している方々である。非常に多忙な中,動画の撮影やナレーションに多くの時間を割いていただいた執筆者各位に深謝いたします。また素晴らしい内容を企画編集いただいた濵西千秋先生に心からお礼を申し上げます。また多大なご協力をいただいたメジカルビュー社にも深謝いたします。読者には是非本書を通じてギプス手技を十分に習得し,保存療法も上手な整形外科医となっていただくことを期待しております。
平成26年2月
日本骨折治療学会理事長
澤口 毅
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序文
日本骨折治療学会教育委員会の夢は二つあった。その一つ,骨折治療を基本から教育できる若手の為の研修会を定期的に開催するという夢,これは果たした。もう一つは骨折の保存的治療を網羅し,実際の徒手整復手技やギプスの巻きかたのマニュアルを出版するという夢であった。
「手術」マニュアルの発行は簡単で出版社にとっても魅力的である。手術しなければ整形外科医ではないと信じ,新しい固定材料に思わず飛びついてしまう整形外科医の購読を十分見込めるからである。しかし骨折は自然に治癒することを知っていて,できるだけ整復してギプスで治そうとする整形外科医はいつのまにか絶滅危惧種となった。本当に絶滅する前に何とかマニュアルを発行しておきたいと委員達が焦ったのも当然である。
しかし,保存治療はかなりの信念と自信に基づき,患者との共同作業でなしうる一種の芸術であるから個性が際立つ。整復法,整復許容範囲,固定肢位,固定材料,どれをとっても学会公認のこれというものは決めにくい。それらをまとめる困難さに直面して企画は何回も頓挫した。
しかし,骨折研修会も回を重ね,沢山の講師が手術治療の前にまずは保存的治療の可能性を考えるという原則や,それぞれの治療手技を述べられてきた。テキストや動画資料も蓄積され,まとめる機運も高まってきたわけである。そして澤口 毅先生が理事長に就任され,一気に製作に向けて舵がきられた。そして2012年10月には本書の概略が決定され,執筆作業が始まったのである。
そのときに委員から出された希望は,誰も読まない懐古資料集にはしない,実技マニュアルだから画像が主になる,ハイビジョン動画も必須,それをスマートフォンやタブレットからも覗けるものにしたいなどであった。
それで,各執筆者は原稿を書くだけではなく,自らモデルを依頼し,にわかビデオカメラマンになって何回も撮り直したり,にわかナレーターになるなど,とにかく苦労して頂いた。いいものができ上がったと自負している。200枚の画像は屈指であろう。そして骨折治療第一人者の声が聞こえる15項目に及ぶ動画はDVD以外にもメジカルビュー社のホームページから閲覧できることになった。ギプス場で若い整形外科医がスマートフォンを見ながらギプス巻きの練習をしている姿を見たいものである。そして自信をもって保存的治療にあたってほしい。
最後に難しい項目を押し付けられて苦労して下さった執筆者各位に深くお礼申し上げたい。そしてこの利の薄い企画を実現させて下さったメジカルビュー社にも深謝する次第である。
平成26年2月
日本骨折治療学会教育委員会アドバイザー
濵西千秋
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目次
総論
骨折治癒とバイオメカニクス 澤口 毅
外固定材料の変遷と特徴 吉田健治
ギプスの基本操作 松村福広
ギプスシーネ,ギプスシャーレ,ブレースの基本操作 市村和徳
骨折ギプス治療の適応・合併症・禁忌
小児 中瀬尚長
成人 市村和徳
高齢者 松村福広
骨折整復手技と外固定
上肢骨折 石黒 隆
下肢骨折 長野博志
各論
アキレス腱断裂に対するギプス固定
新鮮アキレス腱断裂に対するギプス固定 林 光俊
骨折に対するギプス固定
小児上腕骨顆上骨折 渡邉英明ほか
上腕骨骨折に対するハンギングキャスト 土田芳彦ほか
前腕骨折 香月憲一
橈骨遠位端骨折 香月憲一
舟状骨骨折 石黒 隆
基節骨骨折 石黒 隆
小児大腿骨骨幹部骨折に対するhip spica 渡邉英明ほか
椎体骨折 佐藤公昭ほか
膝シリンダーキャスト 中瀬尚長
下腿骨骨折 長野博志
足部骨折 高木基行ほか
骨折治癒とバイオメカニクス 澤口 毅
外固定材料の変遷と特徴 吉田健治
ギプスの基本操作 松村福広
ギプスシーネ,ギプスシャーレ,ブレースの基本操作 市村和徳
骨折ギプス治療の適応・合併症・禁忌
小児 中瀬尚長
成人 市村和徳
高齢者 松村福広
骨折整復手技と外固定
上肢骨折 石黒 隆
下肢骨折 長野博志
各論
アキレス腱断裂に対するギプス固定
新鮮アキレス腱断裂に対するギプス固定 林 光俊
骨折に対するギプス固定
小児上腕骨顆上骨折 渡邉英明ほか
上腕骨骨折に対するハンギングキャスト 土田芳彦ほか
前腕骨折 香月憲一
橈骨遠位端骨折 香月憲一
舟状骨骨折 石黒 隆
基節骨骨折 石黒 隆
小児大腿骨骨幹部骨折に対するhip spica 渡邉英明ほか
椎体骨折 佐藤公昭ほか
膝シリンダーキャスト 中瀬尚長
下腿骨骨折 長野博志
足部骨折 高木基行ほか
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ギプス治療は骨折に対する最も基本的な治療法である。折れた骨をしっかり整復・固定するためには適切なギプス巻きの技術が必要となる。本書では「総論」でギプスの基本的な操作・適応・合併症と禁忌を,「各論」で各種骨折に対する具体的なギプス巻きのテクニックを順を追って学べるよう記載されている。
付属DVDおよびWeb配信による動画では,著者による字幕・音声により注意点やコツがよりわかりやすく解説され,書籍では動画中のポイントを確認しやすいようにマークで関連付けられている。注意や工夫が必要な点は「+1 Step」として著者からのアドバイスを記載し,書籍と動画を合わせることでギプステクニックに熟達できる1冊である。