加齢黄斑変性 診療20のコツ
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定価 9,900円(税込) (本体9,000円+税)
- B5変型判 160ページ オールカラー,写真550点
- 2015年9月28日刊行
- ISBN978-4-7583-1098-7
電子版
序文
私が加齢黄斑変性の診療に携わるようになってから,約20年となります。この間に加齢黄斑変性の検査,治療ともに大きく変わりました。そして,現在でもまだ大きな変化の中にある疾患であると思います。
診療を始めた当初はインドシアニングリーン蛍光眼底造影検査が臨床に用いられ,ようやく本格的な加齢黄斑変性の診療ができるようになった時代でした。初めてポリープ状脈絡膜血管症の概念が提唱され,さらに,網膜血管腫状増殖という特殊な病態が明らかになり,診療に大きな変化が起こりました。私について言えば,当時は診断についても暗中模索の状況で,造影検査の読影も容易ではなく,悩みながら診断していたことをよく覚えています。診療に用いられる造影検査機器も当時と今とでは隔世の感があり,専門医試験にも加齢黄斑変性のサブタイプの診断が出題されるほど,診断も一般的になってきました。
治療に関しても2000年ごろまでは光凝固が唯一の治療であったのが,その後経瞳孔温熱療法や脈絡膜新生血管抜去術などの新たな治療が報告されました。いずれの治療も残念ながら有効性が証明されなかったため現在では行われることはありませんが,新しい報告を知るだけでも治療が大きく変わったと感じたものです。このように2004年ごろまではいかに治癒するかが議論になっていたのですが,治療に光線力学療法,さらに,抗VEGF療法が治療に用いられるようになってから,加齢黄斑変性は慢性疾患で,治療の継続が必要であることを認識することが大切になってきました。
このような診療技術・治療の進歩とともに,患者数の増加に伴い,加齢黄斑変性はそれまで一部のメディカルレチナの専門家が診療する疾患であったのが,今では多くの眼科医が携わる疾患となってきました。
加齢黄斑変性の診療に関する書籍としましては,これまでにもいくつもの教科書が出版されています。すでに,国内では京都大学の吉村長久教授を中心として編纂された立派な教科書があり,加齢黄斑変性の全てを網羅した書籍だと思います。また,OCTの診断学についても同様に吉村長久教授,あるいは,群馬大学の岸章治教授を中心に編纂された成書があります。そのような中,本書執筆の依頼がございました。そのとき考えましたのは,私が臨床の経験から学んできたことをもとに,加齢黄斑変性の診療のエッセンスをなるべく平易な形で読者の皆さんにお伝えすることができれば,ということです。
これまでに私はメジカルビュー社から網膜疾患を網羅するテキストとして「網膜疾患クローズアップ」を執筆させていただきました。こちらは重要な網膜疾患を網羅的に記載したテキストで内容は多岐にわたります。本書は加齢黄斑変性に特化してより実践的な内容になっており,日常診療により役立つのではないかと自負しております。
本書では加齢黄斑変性の診療について,幾つかのポイントに焦点を当て実際の症例を診察する際にどのような点に注意して診療したらよいかを述べています。私の臨床経験に基づく記載も多くございますので,違った考えをもたれる専門家の方もいらっしゃるかもしれません。場合によっては批判もあるかもしれません。しかしながら臨床の良いところはそのような意見の違いにより発展するところではないかと考えます(言い訳なのかもしれませんが)。本書を加齢黄斑変性について議論していただく良い機会にしていただければ幸いに存じます。
執筆するにあたりましては東京大学医学系研究科外科学専攻眼科学教室の黄斑グループの先生方には大変お世話になりました。視能訓練士の小川麻子様には多くの症例の記録,収集をしていただき感謝してもしきれない程です。また,メジカルビュー社の榊原優子様をはじめとして多くの方々にお世話になりました。これらの方々の支えがなければ本書が日の目を見ることはなかったと思います。ここに御礼を申し上げます。
2015年8月
柳 靖雄
診療を始めた当初はインドシアニングリーン蛍光眼底造影検査が臨床に用いられ,ようやく本格的な加齢黄斑変性の診療ができるようになった時代でした。初めてポリープ状脈絡膜血管症の概念が提唱され,さらに,網膜血管腫状増殖という特殊な病態が明らかになり,診療に大きな変化が起こりました。私について言えば,当時は診断についても暗中模索の状況で,造影検査の読影も容易ではなく,悩みながら診断していたことをよく覚えています。診療に用いられる造影検査機器も当時と今とでは隔世の感があり,専門医試験にも加齢黄斑変性のサブタイプの診断が出題されるほど,診断も一般的になってきました。
治療に関しても2000年ごろまでは光凝固が唯一の治療であったのが,その後経瞳孔温熱療法や脈絡膜新生血管抜去術などの新たな治療が報告されました。いずれの治療も残念ながら有効性が証明されなかったため現在では行われることはありませんが,新しい報告を知るだけでも治療が大きく変わったと感じたものです。このように2004年ごろまではいかに治癒するかが議論になっていたのですが,治療に光線力学療法,さらに,抗VEGF療法が治療に用いられるようになってから,加齢黄斑変性は慢性疾患で,治療の継続が必要であることを認識することが大切になってきました。
このような診療技術・治療の進歩とともに,患者数の増加に伴い,加齢黄斑変性はそれまで一部のメディカルレチナの専門家が診療する疾患であったのが,今では多くの眼科医が携わる疾患となってきました。
加齢黄斑変性の診療に関する書籍としましては,これまでにもいくつもの教科書が出版されています。すでに,国内では京都大学の吉村長久教授を中心として編纂された立派な教科書があり,加齢黄斑変性の全てを網羅した書籍だと思います。また,OCTの診断学についても同様に吉村長久教授,あるいは,群馬大学の岸章治教授を中心に編纂された成書があります。そのような中,本書執筆の依頼がございました。そのとき考えましたのは,私が臨床の経験から学んできたことをもとに,加齢黄斑変性の診療のエッセンスをなるべく平易な形で読者の皆さんにお伝えすることができれば,ということです。
これまでに私はメジカルビュー社から網膜疾患を網羅するテキストとして「網膜疾患クローズアップ」を執筆させていただきました。こちらは重要な網膜疾患を網羅的に記載したテキストで内容は多岐にわたります。本書は加齢黄斑変性に特化してより実践的な内容になっており,日常診療により役立つのではないかと自負しております。
本書では加齢黄斑変性の診療について,幾つかのポイントに焦点を当て実際の症例を診察する際にどのような点に注意して診療したらよいかを述べています。私の臨床経験に基づく記載も多くございますので,違った考えをもたれる専門家の方もいらっしゃるかもしれません。場合によっては批判もあるかもしれません。しかしながら臨床の良いところはそのような意見の違いにより発展するところではないかと考えます(言い訳なのかもしれませんが)。本書を加齢黄斑変性について議論していただく良い機会にしていただければ幸いに存じます。
執筆するにあたりましては東京大学医学系研究科外科学専攻眼科学教室の黄斑グループの先生方には大変お世話になりました。視能訓練士の小川麻子様には多くの症例の記録,収集をしていただき感謝してもしきれない程です。また,メジカルビュー社の榊原優子様をはじめとして多くの方々にお世話になりました。これらの方々の支えがなければ本書が日の目を見ることはなかったと思います。ここに御礼を申し上げます。
2015年8月
柳 靖雄
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目次
1 高齢者が歪視を訴えて来院したら
2 若い症例でも加齢黄斑変性に気をつける
3 ドルーゼンを見かけたら
4 網膜色素上皮異常の見方
5 ドルーゼン・網膜色素上皮異常のフォローアップ
6 視機能障害の自覚症状がない症例でたまたま黄斑部に眼底出血を認めたら
7 本当に加齢黄斑変性と診断してよいか?
8 眼底所見だけで加齢黄斑変性ではなく網膜の血管病変と考えてよい場合は?
9 滲出性変化を認めるが出血がないときの注意点
10 大量の黄斑出血を認める場合の注意点
11 OCTだけでわかることとOCTだけに頼ってはいけないこと
12 造影検査はどのタイミングで行うか?
13 治療開始にあたっての注意点
14 レーザー光凝固が推奨される場面は?
15 マクジェンⓇを使うときのポイント
16 ルセンティスⓇを使うときのポイント
17 アイリーアⓇを使うときのポイント
18 光線力学療法を考慮する場面は?
19 経過観察:病状と自覚症状の悪化はパラレル?
20 長期にわたって良好な視力を維持するためには
2 若い症例でも加齢黄斑変性に気をつける
3 ドルーゼンを見かけたら
4 網膜色素上皮異常の見方
5 ドルーゼン・網膜色素上皮異常のフォローアップ
6 視機能障害の自覚症状がない症例でたまたま黄斑部に眼底出血を認めたら
7 本当に加齢黄斑変性と診断してよいか?
8 眼底所見だけで加齢黄斑変性ではなく網膜の血管病変と考えてよい場合は?
9 滲出性変化を認めるが出血がないときの注意点
10 大量の黄斑出血を認める場合の注意点
11 OCTだけでわかることとOCTだけに頼ってはいけないこと
12 造影検査はどのタイミングで行うか?
13 治療開始にあたっての注意点
14 レーザー光凝固が推奨される場面は?
15 マクジェンⓇを使うときのポイント
16 ルセンティスⓇを使うときのポイント
17 アイリーアⓇを使うときのポイント
18 光線力学療法を考慮する場面は?
19 経過観察:病状と自覚症状の悪化はパラレル?
20 長期にわたって良好な視力を維持するためには
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