膀胱全摘除術と新膀胱造設術
Studer変法を究める
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定価 13,200円(税込) (本体12,000円+税)
- B5変型判 148ページ オールカラー,イラスト150点,DVD-Video付き
- 2011年6月30日刊行
- ISBN978-4-7583-0567-9
序文
Neobladderが臨床に登場してから20年以上が経過した。2004年に開催されたWHO/SIU/ICUD consensus conferenceでは,小腸利用neobladderの短期的・長期的合併症は回腸導管造設術より少ないかほぼ同等であることから,標準医療として認識された。近年,neobladderを膀胱全摘術後の尿路変向術の第一選択としている施設が増加しているが,残念ながら国内では依然として失禁型尿路変向術の実施率が高い。これは,neobladderの術式が標準化されていないことや,安定した成績を得るためにはある程度の手術経験を要することが一因と推定される。
私は1986年に右結腸を利用したneobladder(Goldwasser法)を実施して以来,排尿効率や尿禁制などの術後成績に関してさまざまな角度から臨床研究を行ってきた。Mayo ClinicでDr. Meyersからはじめてこの手術の指導を受けた時,尿禁制については神経温存手術の重要性を指摘されたが(Dr. Meyersの手紙),当初はその意義を十分に理解できず,neobladderの機能は主としてその形態に依存すると考えていた。しかし,2005年頃から前立腺全摘除術における広範囲神経温存手術(veil technique)を応用した神経温存膀胱全摘除術を採用してから,正常膀胱と機能的に遜色のない症例を多数経験し,neobladderを前提とする場合は神経温存手術が重要であることを確信するに至った。Neobladderに関する手術書は多数出版されているが,このような考え方に基づき,膀胱全摘除術からneobladderまでの一連の手術手技を解説したものはほとんどない。
私は昨年3月に神鋼病院を退職し,郷里の宇和島市で父の診療所を継承した。勤務医時代と違って自由な時間ができたので,20年以上にわたるneobladderの経験を何らかの形でまとめたいと考えていたところ,Urologic SurgeryシリーズやUrology Viewでお世話になったメジカルビュー社に全面的なご協力をいただくことになった。本書ではneobladderを前提とした膀胱全摘除術からneobladderの作成および閉創まで,ビデオを見るような連続性のあるイラストを描くことに留意した。付録のDVDはイラストと異なる手技を採用している場合もあるが,両者を見比べていただくとより理解が深まると思う。欧米に比較して国内ではneobladder普及率は低い。本書がneobladder普及の一助になれば望外の喜びである。
本書は歴代の神鋼病院スタッフの叡智と努力の集大成である。各位に深甚なる敬意を表する。また,メジカルビュー社編集部の鈴木吉広さんには企画から出版まで献身的なご協力をいただいた。心からお礼申し上げます。
2010年,秋。寓居にて
山中 望
私は1986年に右結腸を利用したneobladder(Goldwasser法)を実施して以来,排尿効率や尿禁制などの術後成績に関してさまざまな角度から臨床研究を行ってきた。Mayo ClinicでDr. Meyersからはじめてこの手術の指導を受けた時,尿禁制については神経温存手術の重要性を指摘されたが(Dr. Meyersの手紙),当初はその意義を十分に理解できず,neobladderの機能は主としてその形態に依存すると考えていた。しかし,2005年頃から前立腺全摘除術における広範囲神経温存手術(veil technique)を応用した神経温存膀胱全摘除術を採用してから,正常膀胱と機能的に遜色のない症例を多数経験し,neobladderを前提とする場合は神経温存手術が重要であることを確信するに至った。Neobladderに関する手術書は多数出版されているが,このような考え方に基づき,膀胱全摘除術からneobladderまでの一連の手術手技を解説したものはほとんどない。
私は昨年3月に神鋼病院を退職し,郷里の宇和島市で父の診療所を継承した。勤務医時代と違って自由な時間ができたので,20年以上にわたるneobladderの経験を何らかの形でまとめたいと考えていたところ,Urologic SurgeryシリーズやUrology Viewでお世話になったメジカルビュー社に全面的なご協力をいただくことになった。本書ではneobladderを前提とした膀胱全摘除術からneobladderの作成および閉創まで,ビデオを見るような連続性のあるイラストを描くことに留意した。付録のDVDはイラストと異なる手技を採用している場合もあるが,両者を見比べていただくとより理解が深まると思う。欧米に比較して国内ではneobladder普及率は低い。本書がneobladder普及の一助になれば望外の喜びである。
本書は歴代の神鋼病院スタッフの叡智と努力の集大成である。各位に深甚なる敬意を表する。また,メジカルビュー社編集部の鈴木吉広さんには企画から出版まで献身的なご協力をいただいた。心からお礼申し上げます。
2010年,秋。寓居にて
山中 望
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目次
I Neobladderを前提とした男性の膀胱全摘除術
1 体位
2 皮切
3 筋膜切開〜腹直筋の切開
4 Retzius腔(retropubic space)の展開
5 左精索の切断
6 後腹膜腔の展開
7 左尿管の遊離 [DVD 1〜3]
8 リンパ節郭清(PLND) [DVD 4〜7]
9 内骨盤筋膜および前立腺周囲の脂肪組織の除去
10 内骨盤筋膜の切開 [DVD 8]
11 恥骨前立腺靱帯の切離 [DVD 9,10]
12 DVCの処理 [DVD 11]
13 順行性膀胱摘除 [DVD 12,13]
II 小腸利用膀胱再建術
neobladderの適応
手術方法選択の趨勢
Studer変法(Shinko Method)の特徴
reservoir形成方法
尿管腸吻合法
内尿道口作成方法
作成手順
Studer変法(Shinko Method)の実際
1 小腸遊離のデザイン [DVD 14]
2 腸管の遊離および連続性の再建 [DVD 15,16]
3 遊離腸管の洗浄
4 detubularization [DVD 17]
5 reconfiguration [DVD 18,19]
6 内尿道口の作成 [DVD 20]
7 尿道吻合 [DVD 21,22]
8 尿管吻合(Wallace変法) [DVD 23,24]
9 閉創 [DVD 25]
III Neobladderを前提とした女性の膀胱全摘除術 [DVD 26]
手術に必要な解剖学的事項
潜在的間隙(potential space)
blood supply
内骨盤筋膜と近位尿道の位置関係
子宮温存膀胱全摘除術
1 後腹膜の展開
2 尿管の遊離
3 恥骨膀胱靱帯の切離と陰核背静脈浅枝の切断
4 腹膜切開と術野の確保
5 vesicouterine pouchの切開
6 vesicovaginal spaceの展開 [DVD 27]
7 lateral wingの処理 [DVD 28]
8 神経温存手技
9 尿道切断と運針 [DVD 29,30]
膀胱子宮合併切除術
1 子宮付属器の処理
2 rectovaginal spaceの展開
3 基靱帯の処理
4 腟の切断
5 大網充填 [DVD 31]
6 尿道吻合
7 閉創:大網充填を行った場合の閉創のポイント
IV 応用編
逆行性膀胱全摘除術
1 神経温存と前立腺尖部処理 [DVD 32]
2 尿道括約筋後壁の切開と膀胱後面の展開 [DVD 33,34]
3 lateral wingの切断
4 癒着部分の処理
前立腺被膜温存膀胱全摘除術
1 内骨盤筋膜の切開
2 外科的被膜の切開と前立腺内腺の核出
3 膀胱摘除
4 尿道吻合
恥骨結節部分切除による術野の展開 [DVD 35]
1 恥骨結節切除範囲のマーキング
2 恥骨結節の切除
3 切除部の処置
単腎のneobladder
1 reservoir作成
2 Le Duc法
sigmoid neobladder(Reddy法)
1 新膀胱最下点の調節
2 reservoirの作成と尿道との吻合
3 粘膜下トンネル法による尿管腸吻合
4 尿管の吻合とreservoir上部の閉鎖
V 排尿指導
排尿指導のタイミング
neobladderの排尿に関する症候
尿意の不確実性
排尿困難
女性のhypercontinence
昼間尿失禁
夜間遺尿
排尿指導の実際
排尿理論(括約筋協調不全)
排尿方法
排尿日誌
CICの適応
索引
あとがき
1 体位
2 皮切
3 筋膜切開〜腹直筋の切開
4 Retzius腔(retropubic space)の展開
5 左精索の切断
6 後腹膜腔の展開
7 左尿管の遊離 [DVD 1〜3]
8 リンパ節郭清(PLND) [DVD 4〜7]
9 内骨盤筋膜および前立腺周囲の脂肪組織の除去
10 内骨盤筋膜の切開 [DVD 8]
11 恥骨前立腺靱帯の切離 [DVD 9,10]
12 DVCの処理 [DVD 11]
13 順行性膀胱摘除 [DVD 12,13]
II 小腸利用膀胱再建術
neobladderの適応
手術方法選択の趨勢
Studer変法(Shinko Method)の特徴
reservoir形成方法
尿管腸吻合法
内尿道口作成方法
作成手順
Studer変法(Shinko Method)の実際
1 小腸遊離のデザイン [DVD 14]
2 腸管の遊離および連続性の再建 [DVD 15,16]
3 遊離腸管の洗浄
4 detubularization [DVD 17]
5 reconfiguration [DVD 18,19]
6 内尿道口の作成 [DVD 20]
7 尿道吻合 [DVD 21,22]
8 尿管吻合(Wallace変法) [DVD 23,24]
9 閉創 [DVD 25]
III Neobladderを前提とした女性の膀胱全摘除術 [DVD 26]
手術に必要な解剖学的事項
潜在的間隙(potential space)
blood supply
内骨盤筋膜と近位尿道の位置関係
子宮温存膀胱全摘除術
1 後腹膜の展開
2 尿管の遊離
3 恥骨膀胱靱帯の切離と陰核背静脈浅枝の切断
4 腹膜切開と術野の確保
5 vesicouterine pouchの切開
6 vesicovaginal spaceの展開 [DVD 27]
7 lateral wingの処理 [DVD 28]
8 神経温存手技
9 尿道切断と運針 [DVD 29,30]
膀胱子宮合併切除術
1 子宮付属器の処理
2 rectovaginal spaceの展開
3 基靱帯の処理
4 腟の切断
5 大網充填 [DVD 31]
6 尿道吻合
7 閉創:大網充填を行った場合の閉創のポイント
IV 応用編
逆行性膀胱全摘除術
1 神経温存と前立腺尖部処理 [DVD 32]
2 尿道括約筋後壁の切開と膀胱後面の展開 [DVD 33,34]
3 lateral wingの切断
4 癒着部分の処理
前立腺被膜温存膀胱全摘除術
1 内骨盤筋膜の切開
2 外科的被膜の切開と前立腺内腺の核出
3 膀胱摘除
4 尿道吻合
恥骨結節部分切除による術野の展開 [DVD 35]
1 恥骨結節切除範囲のマーキング
2 恥骨結節の切除
3 切除部の処置
単腎のneobladder
1 reservoir作成
2 Le Duc法
sigmoid neobladder(Reddy法)
1 新膀胱最下点の調節
2 reservoirの作成と尿道との吻合
3 粘膜下トンネル法による尿管腸吻合
4 尿管の吻合とreservoir上部の閉鎖
V 排尿指導
排尿指導のタイミング
neobladderの排尿に関する症候
尿意の不確実性
排尿困難
女性のhypercontinence
昼間尿失禁
夜間遺尿
排尿指導の実際
排尿理論(括約筋協調不全)
排尿方法
排尿日誌
CICの適応
索引
あとがき
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達人に学ぶStuder変法
膀胱癌の根治術は膀胱全摘術であるが,膀胱全摘は必ず尿路変向や新膀胱の造設を伴う。本書はその新膀胱造設術のなかでも国内で広く普及してきているStuder変法の手術手技を図説し,35動画を収録したDVD-Videoも付属した書籍である。
Studer変法は小腸を利用して新たな膀胱を作成する手術であり,著者の山中先生が日本で初めて実施した術式である。自然排尿が可能でストーマや集尿器が不要であることから,他の尿路変向術や新膀胱造設術に比べて著明なQOLの向上が得られ,今後より幅広く施行されていくであろう。小腸による新膀胱作成手技は他の膀胱造設術にも応用でき,泌尿器科臨床医が是非習得しておきたい手技である。
Studer変法手術のエキスパートである山中先生の指南で,あなたも尿路変向手術の達人をめざそう。