病理からアプローチする

腎移植マネジメント

腎移植マネジメント

■監修 木村 健二郎
力石 辰也

■編集 小池 淳樹
柴垣 有吾
白井 小百合

定価 6,600円(税込) (本体6,000円+税)
  • B5判  192ページ  オールカラー,写真118点
  • 2015年3月26日刊行
  • ISBN978-4-7583-0381-1

移植腎生検を臨床に活かそう!

年々増加傾向の腎移植。移植腎生検は主に病理医が診断するが,臨床医(腎臓内科医・泌尿器科医)も理解して診断・対処する必要がある。
本書は,臨床医が知っておくべき移植腎生検の基礎知識から正常・異常病理像の所見,術後の拒絶反応とその鑑別診断,経過観察時に見られる再発腎炎・感染症など,腎移植患者に特有の病態・疾患の臨床情報までを網羅。実臨床で困らないための疾患の情報と,診断・治療の際に押さえておくべき病理像・病理学的情報をともに掲載し,「腎移植の臨床につながる病理の理解」をモットーにわかりやすく解説している。
移植腎生検を実臨床に活かすための1冊。


序文

 腎移植医療に内科医が参画するようになって久しいが,未だ,内科医の腎移植の認知度が高いとは言えない。これには,腎移植施設自体の数が多くない,あるいは偏在していることも大きいと思われるが,もう1つの高いハードルが,腎移植に関する実践的な教科書がほとんどないことにある。さらに,内科医が腎移植医療で求められやすいのが,移植腎病理への関与であるのだが,これが腎移植医療へのとっつきにくさを与えている原因の1つになっている。
 今回,聖マリアンナ医科大学腎臓病センターおよび病理学教室の人材の知識・経験を総動員してこれを作成した。折角作るなら,当学だけではなく,より多くの施設の移植外科医・泌尿器科医・内科医・病理医が勉強になるような,また,できるだけ実践的な指南書とすることに努めた。病理が苦手と感じる人も,臨床の観点から病理を学ぶことが可能になるであろう。
 このような本を作ることができたのは当センター及び病理の科の垣根を越えた協力があったからであり,執筆された各先生方に感謝したい。さらに,メジカルビュー社の藤原琢也さんには我々を常に刺激し,多大なエネルギーを費やして頂き,深謝したい。

2015年2月
聖マリアンナ医科大学腎臓・高血圧内科
柴垣有吾
------------------------------------------
 腎移植例を管理する上で移植腎生検は避けられない検査の1つです。このことを受け入れるのであれば,移植腎生検の検体から,有用な情報をできるだけ沢山取り出せるよう準備しておくことは,腎移植患者さんのよりよいマネジメントのために有効であることは明らかです。
 本書は,腎移植に携わる医師(移植医,腎移植患者さんの診療に携わる内科医や小児科医,移植腎生検の診断を担当する病理医が含まれます)に,現時点(2015年春)で是非持っていてほしい移植腎生検診断のための知識を整理したものです。診療上の疑問点に答えるため,診療の合間に知識を整理するためなど,常にお手元においていただき,腎移植患者さんのよりよいマネジメントのために役立てていただけたら心から嬉しく思います。
 なお,移植腎生検の病理診断学は,その歴史が浅く,比較的速いスピードで進歩している領域です。今は正しいと信じられていることが,少しするとそうではないと考えられるようになることもあります。「現時点(2015年春)で」としましたのは,そのような背景を意識したものであることをご承知置きいただきたいと思います。

2015年2月
聖マリアンナ医科大学病理学
小池淳樹
全文表示する
閉じる

目次

chapter1 移植腎生検はいつ,どうやって行うべきか?
 ベースライン(0時間・1時間)生検  柴垣有吾
  ベースライン生検のタイミング
  ベースライン(0時間)生検の必要性

 プロトコール生検  松井勝臣
  プロトコール生検の意義
  拒絶反応の有病率
  プロトコール生検の施行時期
  腎病理の時系列変化の評価

 エピソード生検  市川大介
  エピソード生検のタイミング
  エピソード生検を行う理由
  モニタリング
  禁忌

 生検の準備・方法・後観察  鶴岡佳代
  移植腎生検の適応
  移植腎生検の禁忌
  移植腎生検の合併症
  腎生検前のチェック項目および準備
  移植腎生検の実際の方法

 標本の取り扱い  鶴岡佳代
  検体処理
  光学顕微鏡
  免疫組織診断
  電子顕微鏡

 依頼書の書き方  鈴木 智
  ①原疾患
  ②移植の種類(ABO血液型適合or不適合,HLAマッチorミスマッチ,クロスマッチ試験陽性or陰性,血縁間or非血縁間,生体or脳死or心停止後,など)
  ③移植後のどの時期に生検が行われたか
  ④生検の種類(ベースライン,プロトコール,エピソード)
  ⑤薬剤(特に導入,維持免疫抑制薬)
  ⑥既往歴,妊娠歴,輸血歴
  ⑦ベースライン生検の情報
  その他

 報告書の書き方,読み方  鈴木 智
  ①診断
  ②光学顕微鏡所見
  ③免疫染色
  ④電子顕微鏡

chapter2 移植腎障害の鑑別診断は時期によって決まる
 移植腎機能低下の鑑別診断  河原崎宏雄
  【オーバービュー】
  移植腎生着率
  腎機能低下の鑑別
  【時期による鑑別診断の実際】
  移植後の時期による腎機能の鑑別
  検査

 蛋白尿の鑑別診断  白井小百合
  【オーバービュー】
  有病率,発症時期,蛋白尿の程度
  移植後蛋白尿の原因
  蛋白尿と移植腎生着率
  移植1年後の蛋白尿の増加と関連する因子
  【時期による鑑別診断の実際】
  移植後の時期による蛋白尿の鑑別
  移植後の時期による蛋白尿の評価

chapter3 移植腎特有の正常(典型)病理像を知ろう!
 ベースライン生検の病理像  
  【臨床を知る】  市川大介
  生体腎移植と献腎移植の違い
  動脈硬化の評価,加齢による影響の評価
  その他
  【病理像をみる】  小池淳樹
  献腎移植の移植腎における持ち込み尿細管上皮障害
  蛍光抗体法上の持ち込みIgA腎症(沈着症)
  1時間生検にみられる超急性/促進型急性拒絶反応の徴候

 持ち込み腎炎とその意義
  【臨床を知る】  柴垣有吾
  【病理像をみる】  小池淳樹
  持ち込みIgA腎症の蛍光抗体法におけるIgA沈着の推移

 プロトコール生検の病理像  
  【臨床を知る】  松井勝臣
  プロトコール生検の合併症
  プロトコール生検の費用対効果
  【病理像をみる】  小池淳樹
  プロトコール生検の検索課題
  皮髄境界部の稠密なリンパ球浸潤
  尿細管上皮細胞多角化
  尿細管上皮細胞のリポフスチン沈着

chapter4 移植腎の異常病理像と臨床を知ろう!
拒絶反応
 Banff分類の概要  北島和樹
  Banff分類の変遷
  ABMRの検討

 迅速診断の適応と標本の読み方
  【臨床を知る】  谷澤雅彦
  迅速診断の適応
  迅速診断の必要性—臨床医は何を求めるのか—
  迅速診断の信頼性
  【病理像をみる】  小池淳樹
  有意な所見のない迅速標本の組織像
  迅速標本で診断可能であった急性拒絶反応

 超急性拒絶反応(ABO不適合移植)
  【臨床を知る】  工藤浩也
  病因
  診断
  治療
  予防
  【病理像をみる】  小池淳樹
  免疫学的順応
  超急性拒絶反応の組織所見

 急性Tリンパ球関連型拒絶反応
  【臨床を知る】  佐々木秀郎
  病因
  診断
  治療
  予防
  【病理像をみる】  小池淳樹
  Banff分類で規定された間質リンパ球浸潤(i因子)と尿細管炎(t因子)
  Banff分類で規定された動脈炎(v因子)
  「慢性活動性」Tリンパ球関連型型拒絶反応

 急性抗体関連型拒絶反応
  【臨床を知る】  谷澤雅彦
  病因・分類
  診断方法
  acute ABMRの予防
  acute ABMRの治療
  予後
  【病理像をみる】  川西邦夫
  Banff2013分類における急性活動性ABMR
  移植腎生検における急性活動性ABMRの具体例
  病理学的な課題

 慢性抗体関連型拒絶反応
  【臨床を知る】  北島和樹
  病因
  診断
  治療
  【病理像をみる】  川西邦夫
  Banff2013分類における慢性活動性ABMR
  移植腎生検における慢性活動性ABMRの具体例
  慢性活動性ABMRの免疫組織化学(蛍光抗体法)
  病理学的な課題

 慢性移植腎症
  【臨床を知る】  上原圭太
  慢性移植腎症とは
  IF/TA誕生までのBanff分類の変遷
  IF/TAの分類
  老化腎
  移植後の巣状糸球体硬化病変
  【病理像をみる】  小池淳樹
  IF/TA, mid(ci1, ct1)
  IF/TA, moderate(ci2, ct2)
  IF/TA, severe(ci3, ct3)

薬剤性腎障害
 カルシニューリン阻害薬(TMA除く)
  【臨床を知る】  小板橋賢一郎
  病因
  診断
  治療
  【病理像をみる】  小池淳樹
  急性期尿細管障害(toxic tubulopathy)
  慢性期細動脈硝子化病変(CNI-associated arteriolopathy)

 その他の薬剤性腎障害(エベロリムスなど)
  【臨床を知る】  今井直彦
  病因
  診断
  治療
  【病理像をみる】  小池淳樹
  移植腎に発生する間質性腎炎
  トリメトプリム・スルファメトキサゾール(ST合剤)によると考えられた移植腎の薬剤性間質性腎炎

再発腎炎
 巣状糸球体硬化症(FSGS)
  【臨床を知る】  市川大介
  FGSの分類
  再発とリスク
  液性因子
  発症様式
  診断
  予防
  治療
  【病理像をみる】  川西邦夫
  Columbia分類
  移植腎におけるFSGSの病理診断
  移植腎におけるFSGS病変の具体例
  再発性FSGSにおけるFSGS病変の変遷

 IgA腎症
  【臨床を知る】  白井小百合
  病因
  診断
  治療
  再発のリスク因子
  予後
  予防
  【病理像をみる】  小池淳樹
  光学顕微鏡的に組織破壊が認められた症例の組織像

 膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)
  【臨床を知る】  鈴木 智
  病因
  診断
  再発時の治療
  【病理像をみる】  小池淳樹
  腎移植後2週間で発症したMPGNの組織所見
  MPGN再発例の移植後8年目の組織所見

 その他の腎炎
  【臨床を知る】  鈴木 智
  膜性腎症
  ループス腎炎
  抗GBM腎炎
  ANCA関連血管炎
  HUS
  糖尿病性腎症
  【病理像をみる(ANCA関連腎炎)】  小池淳樹
  自己腎生検の病変の確認
  移植後再発時の急性病変
  治療後の組織所見

感染症・腫瘍
 BKポリオーマウイルス腎症
  【臨床を知る】  鶴岡佳代
  病因
  診断
  治療
  予防
  【病理像をみる】  小池淳樹
  移植腎生検の動機づけとなる尿細胞診のdecoy細胞(DC)
  移植腎生検の組織所見

 移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)
  【臨床を知る】  山内淳司
  病因
  診断
  治療
  予防
  【病理像をみる】  小池淳樹
  リンパ節に発生するPTLD
  中枢神経に発生するPTLD
  移植腎に発生するPTLD

 アデノウイルス
  【臨床を知る】  山内淳司
  病因
  診断
  治療
  予防
  【病理像をみる】  川西邦夫
  鑑別を要する病態
  移植腎生検の組織所見

その他の異常病理像
 血栓性微小血管障害症(TMA)
  【臨床を知る】  今井直彦
  病因
  診断
  治療
  予防
  【病理像をみる】  小池淳樹
  TMAの組織所見
  de novo TMAにおける病因診断

 逆流性腎症
  【臨床を知る】  中澤龍斗
  病因
  診断
  治療
  【病理像をみる】  小池淳樹
  髄放線病変の観察の基本
  逆流性腎症の尿細管障害

 移植後糖尿病・移植後発症糖尿病(PTDM/NODAT)  谷澤雅彦
  PTDM/NODATとは
  移植後の耐糖能障害の原因
  NODATの弊害
  治療
  スクリーニング・管理目標値

column
  plasma cell rich acute rejection  佐々木秀郎
  C4d沈着の意義  工藤浩也
  ポリオーマウイルス関連腎症(JCウイルス腎症)  鶴岡佳代
  サイトメガロウイルスは腎障害を起こす?  山内淳司
全文表示する
閉じる

関連する
オススメ書籍

会員登録されている方

メールアドレスとパスワードを入力してログインしてください。

注)共有パソコンの方はチェックを外してください。

会員登録されていない方

会員登録されると次回からお客様情報をご入力いただく必要がありません。
また,購入履歴の確認ができる便利な機能がご利用いただけます。

個人情報の取り扱いについてはこちら