股・膝関節の鏡視下手術
［Web動画付］

この度，『新OS NEXUS No.10 股・膝関節の鏡視下手術』を発刊することになりました。
　関節鏡は日本で開発された技術であり，世界的にみても日本がリードしている分野のひとつです。最近は専門性高く診療を行っていることも多いため，書籍においても股関節鏡，もしくは膝関節鏡を別々に扱うことが多くなっているかと思います。しかし，本シリーズのテーマは「専攻医が経験すべき手術」としていることもあり，広い臨床領域を関節鏡という視点から一元的に学んでいただきたいと思い，股関節と膝関節を合わせた企画としています。それぞれの専門家にとっても，違う分野の最新のテクニックは参考になることも多いと思いますので，是非ご一読いただければと思います。
　股関節鏡は，近年最も進歩した整形外科の手術手技のひとつであると思います。まず体位や牽引手術台も含めた準備が非常に重要ですので，各項目とも紙面を割いて丁寧に説明いただいています。関節唇縫合，FAIに対する処置，股関節外病変に対する対応から小児への適応まで幅広いテーマを取り上げています。是非手術のコツ，ピットフォールなどを学んでいただきたいと思っています。
　膝関節の鏡視下手術は歴史も長く，半月板損傷，靱帯損傷に対して多くの手術が行われています。近年，半月板はできるだけ温存するという考え方が浸透してきており，縫合術のデバイスや術式の進歩も大きなものがあります。本号でもさまざまな術式を紹介していただいています。靱帯再建も比較的症例の多い前十字靱帯再建から後外側支持機構再建まで多くの術式を取り上げています。関節鏡視下手術の教育上の強みはビデオ映像が豊富なことです。本号でも多くのビデオを閲覧することができるようになっていますので，是非参考にしていただければと思います。
　また毎号の企画として比較的低侵襲な手術や保存療法も基本的手技として紹介しています。今回は股関節疾患に対する注射療法，膝窩嚢胞を取り上げています。日常の診療に役立ていただければ幸いです。
　本号も第一線でご活躍中の先生方にご執筆いただいております。お忙しいところ執筆を快くお引き受けいただいた先生方に厚く御礼申し上げます。
　本シリーズの内容が新たな手技習得に役立つだけでなく，ご自身の手術技術を更に向上させるきっかけとなることを願っています。

2024年3月
京都大学大学院医学研究科整形外科学教授
松田秀一