がん研スタイル 癌の標準手術
食道癌
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定価 14,300円(税込) (本体13,000円+税)
- A4判 216ページ オールカラー,イラスト249点
- 2016年3月28日刊行
- ISBN978-4-7583-1506-7
電子版
序文
食道癌手術は消化器癌の手術の中で最も侵襲の大きな手術のひとつである。これには,食道が頸部・胸部・腹部にわたる縦に長い臓器であり,縦隔の最深部に位置して多くのvital organと境を接するという解剖学的な要因と,食道癌が比較的早期から頸部・縦隔・腹部の広い範囲にリンパ節転移をきたすという腫瘍学的な特性が関与する。このため,食道癌手術には正確な解剖学的知識と経験に基づいた高度な手術手技が求められる。
近年,食道癌に対する外科治療は2つの要因で大きな変化を遂げつつある。ひとつは術前を中心とした補助療法の標準化であり,もうひとつは鏡視下手術の導入である。現在,切除可能な進行食道癌に対しては術前治療を行うのが世界的なコンセンサスである。わが国では術前化学療法が標準治療となったが,術前治療が入るからといってリンパ節郭清をおろそかにしてよいわけではない。確実なリンパ節郭清があって初めて補助療法による生存期間の延長が得られる。鏡視下手術は食道癌手術の過大な侵襲を軽減し,術後合併症を減少させることが期待される。しかしながら,適切な適応の判断と技術の習熟があって初めて低侵襲が実現できることを忘れてはならない。
食道癌治療で最も大切なものは治療戦略の構築である。がん研有明病院では年間200例を超える食道癌の初診症例があり,食道外科・消化器内科・内視鏡科・放射線治療科で構成される食道カンファレンスで全例の治療戦略を検討する。これらの症例のうち,毎年100例以上が食道切除によって治療されるが,手術症例においては,患者の全身状態と腫瘍の進行度を考慮しながら,適切な術式を選択する必要がある。また,食道癌手術の安全性を担保するためにはチーム医療による周術期管理が重要である。
本書には,これら治療戦略の構築や手術のプランニング,周術期管理における「がん研スタイル」を盛り込んだ。全体を総論と手術手技に分け,総論においては治療戦略の判断基準を示すとともに,チーム医療に基づいた周術期管理についてまとめた。手術手技の章は切除,再建,特殊例,その他の手技で構成されるが,特に切除と再建に関して,その基本方針をそれぞれの冒頭に示した。手術手技にはそれぞれの術者の経験に基づいた様々なコツや工夫があり,時としてはそれが手術の成績を左右することもある。手術手技の各論に関しては,できるだけこのようなコツや工夫がイラストで伝えられるように心がけたつもりである。
手術手技に絶対的な正解はなく,それぞれの術者が,常に進化を求めながら自分のスタイルを築き上げる必要がある。本書が,これから食道外科専門医を志す若い外科医にとって,自分スタイルの食道癌手術を確立する一助となれば幸いである。
2016年2月
渡邊雅之
近年,食道癌に対する外科治療は2つの要因で大きな変化を遂げつつある。ひとつは術前を中心とした補助療法の標準化であり,もうひとつは鏡視下手術の導入である。現在,切除可能な進行食道癌に対しては術前治療を行うのが世界的なコンセンサスである。わが国では術前化学療法が標準治療となったが,術前治療が入るからといってリンパ節郭清をおろそかにしてよいわけではない。確実なリンパ節郭清があって初めて補助療法による生存期間の延長が得られる。鏡視下手術は食道癌手術の過大な侵襲を軽減し,術後合併症を減少させることが期待される。しかしながら,適切な適応の判断と技術の習熟があって初めて低侵襲が実現できることを忘れてはならない。
食道癌治療で最も大切なものは治療戦略の構築である。がん研有明病院では年間200例を超える食道癌の初診症例があり,食道外科・消化器内科・内視鏡科・放射線治療科で構成される食道カンファレンスで全例の治療戦略を検討する。これらの症例のうち,毎年100例以上が食道切除によって治療されるが,手術症例においては,患者の全身状態と腫瘍の進行度を考慮しながら,適切な術式を選択する必要がある。また,食道癌手術の安全性を担保するためにはチーム医療による周術期管理が重要である。
本書には,これら治療戦略の構築や手術のプランニング,周術期管理における「がん研スタイル」を盛り込んだ。全体を総論と手術手技に分け,総論においては治療戦略の判断基準を示すとともに,チーム医療に基づいた周術期管理についてまとめた。手術手技の章は切除,再建,特殊例,その他の手技で構成されるが,特に切除と再建に関して,その基本方針をそれぞれの冒頭に示した。手術手技にはそれぞれの術者の経験に基づいた様々なコツや工夫があり,時としてはそれが手術の成績を左右することもある。手術手技の各論に関しては,できるだけこのようなコツや工夫がイラストで伝えられるように心がけたつもりである。
手術手技に絶対的な正解はなく,それぞれの術者が,常に進化を求めながら自分のスタイルを築き上げる必要がある。本書が,これから食道外科専門医を志す若い外科医にとって,自分スタイルの食道癌手術を確立する一助となれば幸いである。
2016年2月
渡邊雅之
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目次
Ⅰ.総論
1.手術適応の評価 渡邊雅之
2.術前管理 志垣博信,峯 真司
3.食道癌の麻酔・術中管理 横田美幸,大里彰二郎,森野良蔵,長田 理
4.術後管理 松本 晶,西田康二郎
Ⅱ.手術手技
食道切除
1.切除術式の選択 渡邊雅之
2.右開胸食道切除術 渡邊雅之
3.胸腔鏡下食道切除 峯 真司
4.頸腹先行食道切除 渡邊雅之
5.食道抜去 西田康二郎
6.頸部食道切除 川端一嘉
7.食道癌に対する左胸腹連続切開アプローチ 峯 真司
8.経裂孔的下部食道切除 山田和彦
食道再建
1.再建術式の選択 渡邊雅之
2.胃管再建 渡邊雅之
3.結腸再建 峯 真司
4.有茎空腸再建 西田康二郎
5.遊離空腸再建 原田和人,峯 真司
特殊例に対する手術手技
1.サルベージ手術における留意点 峯 真司
2.頭頸部癌術後の食道癌手術 渡邊雅之
3.二期分割手術の適応と手技 西田康二郎
4.食道バイパス術の適応と手技 志垣博信,渡邊雅之
5.再建胃管癌の手術 山田和彦
その他の手技
1.頸部郭清 山田和彦
2.腹部リンパ節郭清 西田康二郎
3.経管栄養チューブの留置 松本 晶,渡邊雅之
1.手術適応の評価 渡邊雅之
2.術前管理 志垣博信,峯 真司
3.食道癌の麻酔・術中管理 横田美幸,大里彰二郎,森野良蔵,長田 理
4.術後管理 松本 晶,西田康二郎
Ⅱ.手術手技
食道切除
1.切除術式の選択 渡邊雅之
2.右開胸食道切除術 渡邊雅之
3.胸腔鏡下食道切除 峯 真司
4.頸腹先行食道切除 渡邊雅之
5.食道抜去 西田康二郎
6.頸部食道切除 川端一嘉
7.食道癌に対する左胸腹連続切開アプローチ 峯 真司
8.経裂孔的下部食道切除 山田和彦
食道再建
1.再建術式の選択 渡邊雅之
2.胃管再建 渡邊雅之
3.結腸再建 峯 真司
4.有茎空腸再建 西田康二郎
5.遊離空腸再建 原田和人,峯 真司
特殊例に対する手術手技
1.サルベージ手術における留意点 峯 真司
2.頭頸部癌術後の食道癌手術 渡邊雅之
3.二期分割手術の適応と手技 西田康二郎
4.食道バイパス術の適応と手技 志垣博信,渡邊雅之
5.再建胃管癌の手術 山田和彦
その他の手技
1.頸部郭清 山田和彦
2.腹部リンパ節郭清 西田康二郎
3.経管栄養チューブの留置 松本 晶,渡邊雅之
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がん研有明病院で行われている食道癌の標準手術(がん研スタイル)を豊富なイラストで解説
「がん研有明病院」で行われている食道癌の標準手術(がん研スタイル)を,手術手順に沿って,各場面でのポイントをイラストで示しながら手技上の注意点・コツをわかりやすく解説。癌の基本的な手技を学ぼうとする若手外科医にとっては,どこにいても現在トップレベルの癌専門施設での手技が学べる書籍である。