関節外科
2026年3月号 Vol.45 No.3
スポーツ医学研究の最前線

定価 2,860円(税込) (本体2,600円+税)
- B5判 108ページ
- 2026年2月19日刊行予定
近刊のため予約販売となります。
introduction
Sportの語源は,ラテン語の「deportare(デポルターレ)」であるとされています。Deportareのdeは「away」を,portareは「carry」を意味する合成語であることから,「ある所から別の場所に運ぶ・移す・転換する・追放する」という意味が元となっているのが理解できます。動きや移動を可能ならしめる運動器を対象とする整形外科との深い関連性を想起させます。その後「気分を転じさせる」といった精神的な次元の移動・転換へと変化し「義務からの気分転換」「元気の回復」という意味を表すようになったとされており,中世フランス語の「気分を転じる・楽しませる・遊ぶ」といった意味をもつ「depoter(デポテア)」や「desporter(デスポッティ)」に転じていきます。さらに16世紀になると「ゲーム・ショー・見世物」といった意味をもつ英語の「disport(ディスポート)」「sporte(スポート)」「sport(スポートゥ)」になったとされています。つまり「スポーツ」には「日々の生活から離れる」気晴らしや遊び,楽しみ,休養といった要素が含まれていることがわかります。
わが国でのスポーツに関する唯一の法律であるスポーツ基本法において「スポーツは,心身の健全な発達,健康及び体力の保持増進,精神的な充足感の獲得,自律心その他の精神の涵養等のために個人または集団で行われる運動競技その他の身体活動」とされていることは,まさに言い得て妙といえます。
われわれ整形外科医にとって「スポーツ医学」というと,病院やクリニックで扱うスポーツ外傷・障害に対する治療をイメージしてしまいがちですが,スポーツ医学とは身体運動科学の一つの専門領域であり,人間の「身体運動」を研究の対象とする学問領域といえます。日常生活動作に加え,スポーツによる運動や障害者の動作など,あらゆる身体の動きを研究するためには,運動生理学,運動神経生理学,運動生化学,運動(スポーツ)心理学,バイオメカニクス(生体力学),スポーツ工学,生命科学といった他のさまざまな専門領域の知識も活用し,さらに栄養学や薬学など医学関連領域も加えた包括的見地から総合的に科学する必要があります。
この特集は,スポーツ医学研究に対する考え方に大きな変容を与える可能性を秘めた最新のトピックスを提供していると自負しています。手術室での最新のスキルを活用したスポーツ障害後の治療法というよりは,スポーツという身体運動の本質を再考するうえで最も重要となる運動機能の評価法と,そこから抽出されたデータの解析・活用法を示すことで,障害予防へとつなげるテーマを取り上げています。また治療への応用では,近年,めざましい普及をとげている物理療法と再生医療についてのトピックスを提供しています。
いずれの項目においても,編者の一方的な(少し偏った?)要求にもかかわらず貴重な情報をご提供いただき,改めて執筆者の先生方に心より感謝申し上げます。本特集号が,皆様の今後のスポーツ医学研究における新たな展開の一助となることを願っています。
早稲田大学スポーツ科学学術院
熊井 司
Sportの語源は,ラテン語の「deportare(デポルターレ)」であるとされています。Deportareのdeは「away」を,portareは「carry」を意味する合成語であることから,「ある所から別の場所に運ぶ・移す・転換する・追放する」という意味が元となっているのが理解できます。動きや移動を可能ならしめる運動器を対象とする整形外科との深い関連性を想起させます。その後「気分を転じさせる」といった精神的な次元の移動・転換へと変化し「義務からの気分転換」「元気の回復」という意味を表すようになったとされており,中世フランス語の「気分を転じる・楽しませる・遊ぶ」といった意味をもつ「depoter(デポテア)」や「desporter(デスポッティ)」に転じていきます。さらに16世紀になると「ゲーム・ショー・見世物」といった意味をもつ英語の「disport(ディスポート)」「sporte(スポート)」「sport(スポートゥ)」になったとされています。つまり「スポーツ」には「日々の生活から離れる」気晴らしや遊び,楽しみ,休養といった要素が含まれていることがわかります。
わが国でのスポーツに関する唯一の法律であるスポーツ基本法において「スポーツは,心身の健全な発達,健康及び体力の保持増進,精神的な充足感の獲得,自律心その他の精神の涵養等のために個人または集団で行われる運動競技その他の身体活動」とされていることは,まさに言い得て妙といえます。
われわれ整形外科医にとって「スポーツ医学」というと,病院やクリニックで扱うスポーツ外傷・障害に対する治療をイメージしてしまいがちですが,スポーツ医学とは身体運動科学の一つの専門領域であり,人間の「身体運動」を研究の対象とする学問領域といえます。日常生活動作に加え,スポーツによる運動や障害者の動作など,あらゆる身体の動きを研究するためには,運動生理学,運動神経生理学,運動生化学,運動(スポーツ)心理学,バイオメカニクス(生体力学),スポーツ工学,生命科学といった他のさまざまな専門領域の知識も活用し,さらに栄養学や薬学など医学関連領域も加えた包括的見地から総合的に科学する必要があります。
この特集は,スポーツ医学研究に対する考え方に大きな変容を与える可能性を秘めた最新のトピックスを提供していると自負しています。手術室での最新のスキルを活用したスポーツ障害後の治療法というよりは,スポーツという身体運動の本質を再考するうえで最も重要となる運動機能の評価法と,そこから抽出されたデータの解析・活用法を示すことで,障害予防へとつなげるテーマを取り上げています。また治療への応用では,近年,めざましい普及をとげている物理療法と再生医療についてのトピックスを提供しています。
いずれの項目においても,編者の一方的な(少し偏った?)要求にもかかわらず貴重な情報をご提供いただき,改めて執筆者の先生方に心より感謝申し上げます。本特集号が,皆様の今後のスポーツ医学研究における新たな展開の一助となることを願っています。
早稲田大学スポーツ科学学術院
熊井 司
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目次
■特集:スポーツ医学研究の最前線 企画・編集:熊井 司
Ⅰ.障害予防・診断への研究
スポーツ・運動を通じた運動器の一次予防 室伏広治
スポーツにおけるマスデータの活用~障害予防に向けて~ 井上純爾ほか
筋シナジーから考えるアスリートの腰痛予防 金岡恒治
動作解析と障害予防:バイオメカニクスデータの臨床応用 永元英明ほか
Task specific focal dystoniaにおける病態可視化:エリートランナーにおける「ランナーズ・ジストニア」症例を通じて 小笠原一生
超音波診断装置の最新知見と臨床応用の可能性 前道俊宏ほか
筋ダメージとコンディショニングの可視化:ミオグロビンが変えるフィジカルマネジメント 齋田良知
動作観察によって誘発される内部シミュレーションを基盤とした運動適応・学習 中本浩揮
Ⅱ.治療への応用
半月板損傷に対する体外衝撃波治療 橋本章吾ほか
上腕骨小頭離断性骨軟骨炎に対する集束型衝撃波 横山賢二ほか
機能連鎖からみたスポーツ外傷・障害のリハビリテーション 坂田 淳
高純度アルギン酸を用いた軟骨修復材の開発と臨床応用 小野寺智洋
アスリートの早期復帰を目指した骨折・偽関節に対するバイオセラピーの活用 羽田晋之介
●連載
・すっきりわかる 骨折の分類使い方講座(肩~肘関節編 第9回)
「肩甲骨体部・頚部・烏口突起・肩峰・肩甲棘骨折に使われる骨折分類」 江川琢也ほか
・人工膝関節 ~大切なのに誰も教えてくれない基本~(第16回)
「EBMを超えて考えるTKA機種選択③-Medial pivot型」 格谷義徳
・おもしろ 医人 ヒストリー(第44回)
「Crow-深瀬症候群,高月病からPOEMS症候群へ:免疫と骨病変をめぐる疾患たち」 小橋由紋子
Ⅰ.障害予防・診断への研究
スポーツ・運動を通じた運動器の一次予防 室伏広治
スポーツにおけるマスデータの活用~障害予防に向けて~ 井上純爾ほか
筋シナジーから考えるアスリートの腰痛予防 金岡恒治
動作解析と障害予防:バイオメカニクスデータの臨床応用 永元英明ほか
Task specific focal dystoniaにおける病態可視化:エリートランナーにおける「ランナーズ・ジストニア」症例を通じて 小笠原一生
超音波診断装置の最新知見と臨床応用の可能性 前道俊宏ほか
筋ダメージとコンディショニングの可視化:ミオグロビンが変えるフィジカルマネジメント 齋田良知
動作観察によって誘発される内部シミュレーションを基盤とした運動適応・学習 中本浩揮
Ⅱ.治療への応用
半月板損傷に対する体外衝撃波治療 橋本章吾ほか
上腕骨小頭離断性骨軟骨炎に対する集束型衝撃波 横山賢二ほか
機能連鎖からみたスポーツ外傷・障害のリハビリテーション 坂田 淳
高純度アルギン酸を用いた軟骨修復材の開発と臨床応用 小野寺智洋
アスリートの早期復帰を目指した骨折・偽関節に対するバイオセラピーの活用 羽田晋之介
●連載
・すっきりわかる 骨折の分類使い方講座(肩~肘関節編 第9回)
「肩甲骨体部・頚部・烏口突起・肩峰・肩甲棘骨折に使われる骨折分類」 江川琢也ほか
・人工膝関節 ~大切なのに誰も教えてくれない基本~(第16回)
「EBMを超えて考えるTKA機種選択③-Medial pivot型」 格谷義徳
・おもしろ 医人 ヒストリー(第44回)
「Crow-深瀬症候群,高月病からPOEMS症候群へ:免疫と骨病変をめぐる疾患たち」 小橋由紋子
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