臨床画像
2024年12月号 Vol.40 No.12
特集1:永久保存版! 眼科の画像診断/特集2:CTにおけるDLRの基礎,臨床的有用性

定価 2,970円(税込) (本体2,700円+税)
- B5判 136ページ
- 2024年11月26日刊行
序説(特集1:永久保存版! 眼科の画像診断)
眼科は,単に眼球やその周囲の構造の局所異常を扱うだけでなく,視覚や眼球運動といった神経眼科領域やさまざまな内科的疾患に関連した病態も含み,眼に関する幅広い領域を網羅しています。周産期異常や先天性疾患などの新生児・乳児・小児から白内障のお年寄りまで幅広い年齢層の患者さんを対象とし,疾患は多岐にわたります。さらに,高齢化社会による加齢性疾患の増加,コンタクトレンズやスマートフォンの使用に伴う新たな眼科疾患など,時代とともに社会におけるニーズはより大きくなっているものと考えます。
眼科疾患の画像診断においては,眼科独自の画像検査が多くありますので,われわれ放射線科医への画像検査依頼が多いわけではありませんが,眼科的診察が困難な場合や,眼球・眼窩周囲の評価,神経眼科領域の精査,背景疾患の評価・検索等を要する場合など,放射線科での画像検査が依頼される場面は少なくありません。患者さんの主訴からどのように画像診断を進めるべきか放射線科医として考える際には,解剖や疾患・病態を想像することが求められます。また,頭部/頭頸部CT・MRIの読影中に偶発的に眼科疾患を見つけることもありますので,放射線科医として眼科領域の画像診断を知ることは重要と考えます。
本特集では,エキスパートの先生方に,眼科に関連のある眼球・眼窩・脳槽・脳幹・海綿静脈洞の解剖や疾患の画像診断を解説していただきました。読者の皆様の日常診療に役立てていただければ幸いです。
最後に,大変ご多忙ななか,また,限られた誌面にもかかわらず,大変素晴らしい原稿をご執筆くださいました先生方に,この場をお借りし御礼申し上げます。誠にありがとうございました。
東 美菜子
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序説(特集2:CTにおけるDLRの基礎,臨床的有用性)
CTスキャンでは,人体の周囲から回転させながらX線を照射し,人体を透過したX線を検出器で受けて投影データ(生データ)を収集する。この投影データから水平断面画像を作成する過程は,画像再構成とよばれる。従来,CTにおける画像再構成法としては,解析的手法であるフィルタ補正逆投影法と,逐次的に数値計算を行う逐次近似画像再構成法が用いられてきた。近年,これらに加えて,深層学習を応用した画像再構成法(deep learning reconstruction:DLR)が新たに登場した。DLRは,投影データあるいは従来法で再構成された断面画像に対して,人工知能の一種である深層学習を適用し高画質の断層画像を作成する技術である。DLRによるCT画像は,2018年に広島大学の中村らがヨーロッパ放射線学会において世界で初めて発表し大きな反響を呼んだ1)。その後,各社がDLRをリリースしたこともあり,臨床の現場において急速に普及しつつある。
DLRのCT画像における利点としては,構造物の輪郭のぼやけを最小限に抑えつつ,画像ノイズやアーチファクトを低減できる点が挙げられる。この結果,従来と同じ撮影線量であれば,より画像ノイズの少ない画像が得られ,低線量で撮影した場合でもノイズの増加を抑制することが可能である。体格の大きな患者では,しばしば相対的に撮影線量が不足するが,これに対してもDLRではノイズが少ない画像を作成することができる。さらに,最近では,空間分解能を向上させるDLRも登場している。従来のモデルベース逐次近似画像再構成法も,通常線量以上ではノイズが高く空間分解能が高い画像を提供できるが,低線量の場合は画像のテキスチャーが不自然となり,さらに画像の計算時間が長いことから,臨床現場でのルーチン使用には適していない。DLRの計算時間は実用範囲内であり,これもDLRの大きな利点の1つである。
現時点におけるDLRの懸念事項としては,ノイズやアーチファクトが生体内の構造に置換される「ハルシネーション」や,逆に実際に存在する構造が除去される「インバースハルシネーション」の可能性が挙げられる。今後,DLRの臨床使用に際しては,これらの点について十分な検証が求められる2)。
今回の特集では,DLRを臨床で活用しているエキスパートの先生方に,各領域におけるDLRの有用性についてご執筆いただいた。短期間にもかかわらずご執筆いただいた先生方に深謝申し上げる。
なお,MRIやPETにおけるDLRも各社からリリースされており,今後,これらの分野における臨床応用についても本誌『臨床画像』で取り上げる機会を作りたいと考えている。
粟井和夫
文献
1) Nakamura Y, et al:Improvement of diagnostic image quality of abdominal CT using a deep learning-based reconstruction: initial clinical trial targeting hepatic metastases(abstract). Insights Imaging, 9:279, 2018.
2) Koetzier LR, et al:Deep Learning Image Reconstruction for CT:Technical Principles and Clinical Prospects. Radiology, 306:e221257, 2023.
眼科は,単に眼球やその周囲の構造の局所異常を扱うだけでなく,視覚や眼球運動といった神経眼科領域やさまざまな内科的疾患に関連した病態も含み,眼に関する幅広い領域を網羅しています。周産期異常や先天性疾患などの新生児・乳児・小児から白内障のお年寄りまで幅広い年齢層の患者さんを対象とし,疾患は多岐にわたります。さらに,高齢化社会による加齢性疾患の増加,コンタクトレンズやスマートフォンの使用に伴う新たな眼科疾患など,時代とともに社会におけるニーズはより大きくなっているものと考えます。
眼科疾患の画像診断においては,眼科独自の画像検査が多くありますので,われわれ放射線科医への画像検査依頼が多いわけではありませんが,眼科的診察が困難な場合や,眼球・眼窩周囲の評価,神経眼科領域の精査,背景疾患の評価・検索等を要する場合など,放射線科での画像検査が依頼される場面は少なくありません。患者さんの主訴からどのように画像診断を進めるべきか放射線科医として考える際には,解剖や疾患・病態を想像することが求められます。また,頭部/頭頸部CT・MRIの読影中に偶発的に眼科疾患を見つけることもありますので,放射線科医として眼科領域の画像診断を知ることは重要と考えます。
本特集では,エキスパートの先生方に,眼科に関連のある眼球・眼窩・脳槽・脳幹・海綿静脈洞の解剖や疾患の画像診断を解説していただきました。読者の皆様の日常診療に役立てていただければ幸いです。
最後に,大変ご多忙ななか,また,限られた誌面にもかかわらず,大変素晴らしい原稿をご執筆くださいました先生方に,この場をお借りし御礼申し上げます。誠にありがとうございました。
東 美菜子
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序説(特集2:CTにおけるDLRの基礎,臨床的有用性)
CTスキャンでは,人体の周囲から回転させながらX線を照射し,人体を透過したX線を検出器で受けて投影データ(生データ)を収集する。この投影データから水平断面画像を作成する過程は,画像再構成とよばれる。従来,CTにおける画像再構成法としては,解析的手法であるフィルタ補正逆投影法と,逐次的に数値計算を行う逐次近似画像再構成法が用いられてきた。近年,これらに加えて,深層学習を応用した画像再構成法(deep learning reconstruction:DLR)が新たに登場した。DLRは,投影データあるいは従来法で再構成された断面画像に対して,人工知能の一種である深層学習を適用し高画質の断層画像を作成する技術である。DLRによるCT画像は,2018年に広島大学の中村らがヨーロッパ放射線学会において世界で初めて発表し大きな反響を呼んだ1)。その後,各社がDLRをリリースしたこともあり,臨床の現場において急速に普及しつつある。
DLRのCT画像における利点としては,構造物の輪郭のぼやけを最小限に抑えつつ,画像ノイズやアーチファクトを低減できる点が挙げられる。この結果,従来と同じ撮影線量であれば,より画像ノイズの少ない画像が得られ,低線量で撮影した場合でもノイズの増加を抑制することが可能である。体格の大きな患者では,しばしば相対的に撮影線量が不足するが,これに対してもDLRではノイズが少ない画像を作成することができる。さらに,最近では,空間分解能を向上させるDLRも登場している。従来のモデルベース逐次近似画像再構成法も,通常線量以上ではノイズが高く空間分解能が高い画像を提供できるが,低線量の場合は画像のテキスチャーが不自然となり,さらに画像の計算時間が長いことから,臨床現場でのルーチン使用には適していない。DLRの計算時間は実用範囲内であり,これもDLRの大きな利点の1つである。
現時点におけるDLRの懸念事項としては,ノイズやアーチファクトが生体内の構造に置換される「ハルシネーション」や,逆に実際に存在する構造が除去される「インバースハルシネーション」の可能性が挙げられる。今後,DLRの臨床使用に際しては,これらの点について十分な検証が求められる2)。
今回の特集では,DLRを臨床で活用しているエキスパートの先生方に,各領域におけるDLRの有用性についてご執筆いただいた。短期間にもかかわらずご執筆いただいた先生方に深謝申し上げる。
なお,MRIやPETにおけるDLRも各社からリリースされており,今後,これらの分野における臨床応用についても本誌『臨床画像』で取り上げる機会を作りたいと考えている。
粟井和夫
文献
1) Nakamura Y, et al:Improvement of diagnostic image quality of abdominal CT using a deep learning-based reconstruction: initial clinical trial targeting hepatic metastases(abstract). Insights Imaging, 9:279, 2018.
2) Koetzier LR, et al:Deep Learning Image Reconstruction for CT:Technical Principles and Clinical Prospects. Radiology, 306:e221257, 2023.
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目次
■特集1:永久保存版! 眼科の画像診断 企画・編集:東 美菜子
【眼球・眼窩】
眼球・眼窩の解剖 豊田圭子ほか
眼球疾患の画像診断 東 美菜子
眼窩の腫瘍①−視神経・視神経鞘由来の腫瘍− 竹下祐平ほか
眼窩の腫瘍②−視神経・視神経鞘以外の腫瘍− 沖 達也ほか
眼窩の炎症を中心に 前田正幸
【脳槽・脳幹・海綿静脈洞】
眼球運動にかかわる脳幹・脳槽(脳神経)・海綿静脈洞の解剖 石本優香ほか
眼球運動にかかわる脳幹・脳槽(脳神経)・海綿静脈洞の病変 松下 周ほか
■特集2:CTにおけるDLRの基礎,臨床的有用性 企画・編集:粟井和夫
DLRの原理,画像の物理特性 檜垣 徹ほか
頭部CTにおけるDLRの臨床応用 村山和宏ほか
心臓CTにおけるDLRの応用 立神史稔
びまん性肺疾患におけるDLRの応用 岩澤多恵
腹部CTにおけるDLRの有用性 中村優子ほか
DLIRの臨床活用 市川泰崇
●緊急企画
『JCRミッドサマーセミナー2024』ハンズオンセミナー リポート 東 美菜子
●連載
・何としても読んでもらいたい あの論文,この論文[第29回]
腎腫瘤画像スコア提唱についての論文2題 山田隆之
【眼球・眼窩】
眼球・眼窩の解剖 豊田圭子ほか
眼球疾患の画像診断 東 美菜子
眼窩の腫瘍①−視神経・視神経鞘由来の腫瘍− 竹下祐平ほか
眼窩の腫瘍②−視神経・視神経鞘以外の腫瘍− 沖 達也ほか
眼窩の炎症を中心に 前田正幸
【脳槽・脳幹・海綿静脈洞】
眼球運動にかかわる脳幹・脳槽(脳神経)・海綿静脈洞の解剖 石本優香ほか
眼球運動にかかわる脳幹・脳槽(脳神経)・海綿静脈洞の病変 松下 周ほか
■特集2:CTにおけるDLRの基礎,臨床的有用性 企画・編集:粟井和夫
DLRの原理,画像の物理特性 檜垣 徹ほか
頭部CTにおけるDLRの臨床応用 村山和宏ほか
心臓CTにおけるDLRの応用 立神史稔
びまん性肺疾患におけるDLRの応用 岩澤多恵
腹部CTにおけるDLRの有用性 中村優子ほか
DLIRの臨床活用 市川泰崇
●緊急企画
『JCRミッドサマーセミナー2024』ハンズオンセミナー リポート 東 美菜子
●連載
・何としても読んでもらいたい あの論文,この論文[第29回]
腎腫瘤画像スコア提唱についての論文2題 山田隆之
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