臨床画像
2021年3月号 Vol.37 No.3
特集1:地力が伸ばせる頭部画像診断/特集2:MRI室のヒヤリ・ハットをつぶせ!

定価 2,750円(税込) (本体2,500円+税)
- B5判 128ページ
- 2021年2月26日刊行
在庫僅少です。
電子版
序説(特集1:地力が伸ばせる頭部画像診断)
最近,あるcommon diseaseの画像診断でこんな経験をした。結果として誤診してしまったのだが,診断した医師に尋ねると「所見が典型的ではない」との回答であった。確かに教科書的な所見ではなかったが,筆者には「まれだが知っておくべき所見」と教わった記憶があった。
そこで,「典型的」について考えた。典型的な画像所見とは,一般的には「診断における感度(高い頻度でみられる)と特異度が高い所見」を意味すると思う。この点からは,確かに今回の所見は典型的ではなかった。では逆に,非典型的(典型的ではない)を考えた場合,非典型的な所見に頻度は低いが知っておくべき所見(さらに特異度の高い所見)が含まれていることに気付いた。振り返ると,筆者自身,「非典型的な所見」を安易に,ときに言い訳に使ってきたのだ。さらにおそろしいのは,典型的ではないと考えた今回の所見が,common diseaseを否定する根拠になってしまったことである。画像診断医が常日ごろより心がけている「自分が知らない所見が存在する」「誤診の多くはcommon diseaseが典型的でない所見を呈した場合に生じる」も併せて忘れていたのである
今回の企画では,新進気鋭の先生方に執筆をお願いした。いずれも高い診断能で知られる方々であり,それを裏付ける診断哲学,画像検査法(撮影・撮像のテクニックなど),画像診断のポイントをおもちである。疾患もcommon diseaseを中心に,画像検査法,典型とされる基本的な画像所見に加え,まれだが知っておくべき画像所見についても取り上げていただいた。また筆者は,時間軸をとおして,最も多くの疾患を観察できるのは放射線科医であると自負している。電子カルテの普及により,この観察には詳細な臨床像と検査データも含まれる。
そこで今回,鑑別診断のために注目する臨床像・経過,検査所見についても解説していただいた。専門医を目指す先生方にはすべてが知識になると信じている。また,経験ある先生方にとっても,本稿が典型的所見について再認識いただく機会になれば幸いである。
掛田伸吾
------------------
序説(特集2:MRI室のヒヤリ・ハットをつぶせ!)
医療における安全とは,①患者を守る(患者に障害を負わすことはあってはならない),②技術者を守る(技術者の身体を守り法的責任を果たす),③装置を守る(装置を損傷することなく精度を維持する),ことである。MRIは,最先端の存在診断・機能診断・病態診断を比較的簡便に取得できるモダリティとして多くの方に恩恵を提供する反面,正しく管理しないと強力な静磁場と高周波磁場および傾斜磁場が人体に危害を与える可能性のある検査でもある。
Heinrichの法則によると,1件の重大事故の裏には29件の軽傷事故と300件のエラーが存在するとされる。330件の1件が重大事故であれば決して少ない数字ではない。2019年,日本画像医療システム工業会(Japan Medical Imaging and Radiological Systems Industries Association;JIRA)に149件の強磁性体の吸引事故報告があった。全国で1年間に約1,200万人(全国に6,000台のMRI装置があり1台で10人のMRIを年間に200日実施したとして算出)のMRI受検者に対する発生率は0.00125%であり,年間に1万人のMRIを実施している施設では10年に1度,重大な吸引事故を起こす計算になる。MRIの危険性は,吸引事故だけでなく発熱事故が吸引の7倍,転倒や切創が1.3倍発生しているという報告があり1),MRIにかかわる事故はさらに多いことを示している。
Heinrichの法則でいう300件は,エラーを起こしたがたまたま事故に至らなかった幸運な事例であり,一歩間違えば重大事故を起こしていたと認識し,ヒヤリ・ハットも起こさない気概で業務に臨まなければない。特にMRIのエラーを回避するには,MRIの原理を理解しておくことが重要である。
今回の特集では,安全なMRIを実施するために必要な知識と技術を,多角的にかつ論理的に解説していただく。ぜひ,この記事を活用してヒヤリ・ハットも起こさないMRIを確立していただきたい。
圡井 司
文献
1)Delfino JG, et al:MRI-related FDA adverse event reports:A 10-yr review. Med Phys, 46:5562–5571, 2019.
最近,あるcommon diseaseの画像診断でこんな経験をした。結果として誤診してしまったのだが,診断した医師に尋ねると「所見が典型的ではない」との回答であった。確かに教科書的な所見ではなかったが,筆者には「まれだが知っておくべき所見」と教わった記憶があった。
そこで,「典型的」について考えた。典型的な画像所見とは,一般的には「診断における感度(高い頻度でみられる)と特異度が高い所見」を意味すると思う。この点からは,確かに今回の所見は典型的ではなかった。では逆に,非典型的(典型的ではない)を考えた場合,非典型的な所見に頻度は低いが知っておくべき所見(さらに特異度の高い所見)が含まれていることに気付いた。振り返ると,筆者自身,「非典型的な所見」を安易に,ときに言い訳に使ってきたのだ。さらにおそろしいのは,典型的ではないと考えた今回の所見が,common diseaseを否定する根拠になってしまったことである。画像診断医が常日ごろより心がけている「自分が知らない所見が存在する」「誤診の多くはcommon diseaseが典型的でない所見を呈した場合に生じる」も併せて忘れていたのである
今回の企画では,新進気鋭の先生方に執筆をお願いした。いずれも高い診断能で知られる方々であり,それを裏付ける診断哲学,画像検査法(撮影・撮像のテクニックなど),画像診断のポイントをおもちである。疾患もcommon diseaseを中心に,画像検査法,典型とされる基本的な画像所見に加え,まれだが知っておくべき画像所見についても取り上げていただいた。また筆者は,時間軸をとおして,最も多くの疾患を観察できるのは放射線科医であると自負している。電子カルテの普及により,この観察には詳細な臨床像と検査データも含まれる。
そこで今回,鑑別診断のために注目する臨床像・経過,検査所見についても解説していただいた。専門医を目指す先生方にはすべてが知識になると信じている。また,経験ある先生方にとっても,本稿が典型的所見について再認識いただく機会になれば幸いである。
掛田伸吾
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序説(特集2:MRI室のヒヤリ・ハットをつぶせ!)
医療における安全とは,①患者を守る(患者に障害を負わすことはあってはならない),②技術者を守る(技術者の身体を守り法的責任を果たす),③装置を守る(装置を損傷することなく精度を維持する),ことである。MRIは,最先端の存在診断・機能診断・病態診断を比較的簡便に取得できるモダリティとして多くの方に恩恵を提供する反面,正しく管理しないと強力な静磁場と高周波磁場および傾斜磁場が人体に危害を与える可能性のある検査でもある。
Heinrichの法則によると,1件の重大事故の裏には29件の軽傷事故と300件のエラーが存在するとされる。330件の1件が重大事故であれば決して少ない数字ではない。2019年,日本画像医療システム工業会(Japan Medical Imaging and Radiological Systems Industries Association;JIRA)に149件の強磁性体の吸引事故報告があった。全国で1年間に約1,200万人(全国に6,000台のMRI装置があり1台で10人のMRIを年間に200日実施したとして算出)のMRI受検者に対する発生率は0.00125%であり,年間に1万人のMRIを実施している施設では10年に1度,重大な吸引事故を起こす計算になる。MRIの危険性は,吸引事故だけでなく発熱事故が吸引の7倍,転倒や切創が1.3倍発生しているという報告があり1),MRIにかかわる事故はさらに多いことを示している。
Heinrichの法則でいう300件は,エラーを起こしたがたまたま事故に至らなかった幸運な事例であり,一歩間違えば重大事故を起こしていたと認識し,ヒヤリ・ハットも起こさない気概で業務に臨まなければない。特にMRIのエラーを回避するには,MRIの原理を理解しておくことが重要である。
今回の特集では,安全なMRIを実施するために必要な知識と技術を,多角的にかつ論理的に解説していただく。ぜひ,この記事を活用してヒヤリ・ハットも起こさないMRIを確立していただきたい。
圡井 司
文献
1)Delfino JG, et al:MRI-related FDA adverse event reports:A 10-yr review. Med Phys, 46:5562–5571, 2019.
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目次
■特集1:地力が伸ばせる頭部画像診断 企画・編集:掛田伸吾
序説 掛田伸吾
脳血管性疾患 海地陽子ほか
神経変性疾患 櫻井圭太ほか
炎症性脱髄性疾患と関連疾患 明石敏昭
そのほかの炎症性疾患 井手 智ほか
腫瘍性疾患 上谷浩之ほか
■特集2:MRI室のヒヤリ・ハットをつぶせ! 企画・編集:圡井 司
序説 圡井 司
MRIの安全性を確保するための知識 黒田 輝
MRI従事者の安全性と胎児のMRI 山口さち子
MRI撮影室への大型強磁性体の持ち込みを防ぐために 秦 博文ほか
RF熱傷事故の現状と電磁界解析による知見 唐 明輝ほか
体外装着品への対応 坂井上之
体内金属への対応 圡井 司
MRI従事者の教育と時間外対応 土橋俊男
医療機器のMR適合性検索 藤原康博ほか
●連載
・先生, 日本専門医機構認定専門医制度について聞かせてください![第2回]
専門医ですが,専門医資格更新に必要な単位取得について教えてください 高瀬 圭
・特集アドバンストコース[Vol.36 11月号]
かすかな所見からひも解く非外傷性救急疾患の画像診断 黒川 遼
序説 掛田伸吾
脳血管性疾患 海地陽子ほか
神経変性疾患 櫻井圭太ほか
炎症性脱髄性疾患と関連疾患 明石敏昭
そのほかの炎症性疾患 井手 智ほか
腫瘍性疾患 上谷浩之ほか
■特集2:MRI室のヒヤリ・ハットをつぶせ! 企画・編集:圡井 司
序説 圡井 司
MRIの安全性を確保するための知識 黒田 輝
MRI従事者の安全性と胎児のMRI 山口さち子
MRI撮影室への大型強磁性体の持ち込みを防ぐために 秦 博文ほか
RF熱傷事故の現状と電磁界解析による知見 唐 明輝ほか
体外装着品への対応 坂井上之
体内金属への対応 圡井 司
MRI従事者の教育と時間外対応 土橋俊男
医療機器のMR適合性検索 藤原康博ほか
●連載
・先生, 日本専門医機構認定専門医制度について聞かせてください![第2回]
専門医ですが,専門医資格更新に必要な単位取得について教えてください 高瀬 圭
・特集アドバンストコース[Vol.36 11月号]
かすかな所見からひも解く非外傷性救急疾患の画像診断 黒川 遼
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