新OS NOW No.16

脳性麻痺と脳血管障害後片麻痺の手術療法

脳性麻痺と脳血管障害後片麻痺の手術療法

■担当編集委員 落合 直之

定価 9,350円(税込) (本体8,500円+税)
  • A4判  192ページ  
  • 2002年10月31日刊行
  • ISBN978-4-89553-981-4

脳性麻痺治療をさまざまな角度から解説

脳性麻痺による運動発達異常や姿勢の異常・変形に対する整形外科的治療には,運動療法,ギプス療法,補装具療法があるが,痙直型に対しては手術療法も重要な手段である。本書は“脳性麻痺”“脳血管障害後片麻痺”の2つの章で構成し,筋・腱・骨に対する手術療法に加え,神経に侵襲を加える方法を脳外科領域から取り上げている。各治療法の適応,手技,効果の内容がダイナミックな写真・イラストによりわかりやすく解説されている。

■シリーズ編集委員
高岡邦夫/岩本幸英/落合直之/清水克時

■シリーズ編集顧問
林浩一郎


序文

 今回は,脳性麻痺と脳血管障害後片麻痺を話題に取り上げてみた。
 脳性麻痺では,運動と姿勢の異常が生じる。その臨床型は,筋のトーヌスの変化からみると,痙直型,低緊張型,失調型,アテトーゼ型とに分類される。これらの筋緊張異常により,患児は正常の運動発達が阻害され,ひいては四肢の筋・腱の短縮や,関節の拘縮・変形が発生する。これらに対する整形外科治療には,運動発達や姿勢の矯正を促すことを目的とした各種の運動療法,ギプス療法,補装具療法があるが,観血的治療も重要な手段である。
 脳性麻痺で手術対象になるのは,一般に痙直型である。筋緊張の亢進により発生する四肢の変形や運動の随意性の低下からくる下肢の歩容障害・上肢の巧緻性低下の改善を目指す。
 本来,脳性麻痺の運動障害を各関節,あるいは上肢・下肢とに分けて考えるのは必ずしも適切ではない。総合的に障害をとらえなくてはならないことは自明である。しかし,あえて本特集を組むに当たり,各執筆者の方々に特色を出していただけるよう特定のテーマごとにお願いすることにした。しかし,特定の部位のみ観血的に侵襲を加えればそれで完結するものではないので,執筆者の方々も書きにくかったことと推察する。
 特集を組み終えて,改めて松尾先生の理論,すなわち抗重力筋である単関節筋と推進筋である多関節筋の分類が手術法の根幹になっていることを再認識することになった。また,多関節筋の切腱術の塩梅加減は絶妙なものであり,なかなか文章にはしづらいと推察されるが,読者はそのあたりの工夫を行間から読みとっていただきたい。
 また,筋・腱・骨に対する手術療法に加え,神経に侵襲を加える方法も取り上げてみた。古くから末梢神経を意図的に切断する方法はあったが,アルコール等でブロックする方法が導入され省みられなくなっていた。微小手術手技と電気生理学的機器の発達で神経に侵襲を加える方法が再び注目されつつある。今回は末梢神経縮小術,機能的後根切断術の現状を脳外科領域から執筆いただいた。
 脳性麻痺では,痙性による運動障害の他に整形外科にとっての難題の一つであるアテトーゼ型の異常な頚部運動に伴う変形性頚椎症を基盤とした脊髄症がある。単なる椎弓切除から椎弓形成術の導入で脊椎外科も多大な進歩を遂げたが,アテトーゼ運動を伴う症例への対処法は,一般の頚髄症と異なり工夫が必要である。4名の方々に,それぞれの工夫を執筆していただいた。
 このほか,脳血管障害により生ずる痙性片麻痺に伴う四肢の変形・運動障害も多くの方々の生活の質を低下させている。困難な問題ではあるが,観血療法が整容上の改善や,補装具・杖などからの解放に役立ち,一人でも多くの方の生活の質の向上に役立つことを願う次第である。

2002年10月
落合直之
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目次

[脳性麻痺]
 ●はさみ歩行
  中小殿筋前方移行術(Steel法)  月村泰規,月村泰治
  脳性麻痺はさみ脚に対する下肢軟部組織解離手術  朝貝芳美
 ●亜脱臼股関節
  臼蓋回転骨切り術  林 靖人
  脳性麻痺の亜脱臼性股関節症に対する寛骨臼回転骨切り術  横畠由美子,土方浩美
  股関節周囲筋解離術  本間政文
 ●脱臼・亜脱臼股関節
  関節包全周解離術を併用した観血的整復術  池田啓一,坂本公宣
 ●足部変形
  尖足矯正手術  芳賀信彦
  足部内反変形に対する手術  鈴木茂夫
 ●アテトーゼ型脳性麻痺に合併する頚髄症
  筋解離術と後方除圧固定  斎木都夫,都築暢之
  椎弓形成術と後側方固定術  和田英路,米延策雄
  除圧固定−前方法  波呂浩孝,四宮謙一
  選択的緊張筋解離術  松尾 隆
 ●その他
  痙性対・四肢麻痺に対する機能的脊髄後根切断術  師田信人,粟国敦男
  脳性麻痺と脳血管の痙縮の外科治療  平 孝臣,堀 智勝
[脳血管障害後片麻痺]
 ●上肢
  痙性麻痺手に対する上肢選択的痙性コントロール手術  神前智一
  痙性麻痺手に対する筋解離術  片山信昭,中塚洋一
  痙性麻痺手に対する手術  飛松治基
 ●下肢
  痙性内反尖足変形に対する手術  角南勝利
  痙性麻痺足の手術療法  飛松治基
  痙性内反尖足に対する手術  三橋 徹,音琴 勝
  脳卒中片麻痺の歩行障害に対する装具療法  飛松好子
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