新 癌の外科 -手術手技シリーズ 5
食道癌
定価 10,450円(税込) (本体9,500円+税)
- A4判 168ページ 2色
- 2002年7月23日刊行
- ISBN978-4-89553-959-3
在庫僅少です。
序文
食道癌の治療成績の向上は近年とくに著しい。その治療成績向上をもたらした大きな要因の1つは,内視鏡を中心とした診断の進歩による早期発見の増加であることはいうまでもない。しかし,早期発見の恩恵に浴さなかった進行食道癌においても,近年,その治療成績が著明に向上していることも事実である。進行食道癌の根治治療という意味では,これまでに外科治療の果たしてきた役割は絶大なものである。したがって,近年達成されている進行食道癌の治療成績向上に関して,麻酔,周術期管理を含めた外科治療の果たした役割が大きかったことは間違いなかろう。
本シリーズの「食道癌」では,前版が発行されてから,すでに9年が経過している。その間,当時は比較的先進的な術式であった3領域リンパ節郭清は日本全国に普及してー般的な術式の1つとなり,国際的にも"3-field lymph node dissection"という言葉で,食道癌の専門家の間で通用する言葉となっているとともに,欧米などの諸外国でも3領域リンパ節郭清を採用する外科医がでてきている。ー方では,過大な治療侵襲を避けたいとする世界的な潮流があり,日本を除く諸外国では「経食道裂孔的食道切除術(transhiatal esophagectomy)」が好んで用いられる傾向にあるのも事実である。さらには,手術に代わる低侵襲治療法として,放射線・抗癌剤併用療法の有効性が注目され,その効果の,科学的な評価の試みが開始されている。そのような情勢の今日においても,進行食道癌に対する標準治療は相変わらず外科治療であることは,国際的にもコンセンサスが得られているといってよかろう。
国立がんセンター中央病院では, 「抗癌剤を用いた手術補助療法」や「放射線・抗癌剤併用療法」を臨床研究として採用し,これらの治療法の科学的な評価をめざすことも使命の1つとして取り組んでいるが,本書では「手術手技シリーズ」という主旨に沿って,論点を手術手技に限って示している。
本書で示した食道癌の外科治療は,基本的には前版の時代のそれと大きく異なるものではない。しかし,その間に手技的に一層完成され,標準化されたものになっている。新版では,前版以降の新しい工夫を付け加えて示すのみならず,前版と異なって,手術術式別に分類して示すような様式に改訂し,さらに近年行われ始めた胸視下手術などの術式も加えて,各々の術式の適応や注意点を示した。
本書で示すわれわれの手術術式は,今日,国際的にみても最先端の技術を示しており,その成績も国内外で他に恥じることのないものであるので,読者に参考となることが多いと確信している。
2002年6月
加藤抱一
本シリーズの「食道癌」では,前版が発行されてから,すでに9年が経過している。その間,当時は比較的先進的な術式であった3領域リンパ節郭清は日本全国に普及してー般的な術式の1つとなり,国際的にも"3-field lymph node dissection"という言葉で,食道癌の専門家の間で通用する言葉となっているとともに,欧米などの諸外国でも3領域リンパ節郭清を採用する外科医がでてきている。ー方では,過大な治療侵襲を避けたいとする世界的な潮流があり,日本を除く諸外国では「経食道裂孔的食道切除術(transhiatal esophagectomy)」が好んで用いられる傾向にあるのも事実である。さらには,手術に代わる低侵襲治療法として,放射線・抗癌剤併用療法の有効性が注目され,その効果の,科学的な評価の試みが開始されている。そのような情勢の今日においても,進行食道癌に対する標準治療は相変わらず外科治療であることは,国際的にもコンセンサスが得られているといってよかろう。
国立がんセンター中央病院では, 「抗癌剤を用いた手術補助療法」や「放射線・抗癌剤併用療法」を臨床研究として採用し,これらの治療法の科学的な評価をめざすことも使命の1つとして取り組んでいるが,本書では「手術手技シリーズ」という主旨に沿って,論点を手術手技に限って示している。
本書で示した食道癌の外科治療は,基本的には前版の時代のそれと大きく異なるものではない。しかし,その間に手技的に一層完成され,標準化されたものになっている。新版では,前版以降の新しい工夫を付け加えて示すのみならず,前版と異なって,手術術式別に分類して示すような様式に改訂し,さらに近年行われ始めた胸視下手術などの術式も加えて,各々の術式の適応や注意点を示した。
本書で示すわれわれの手術術式は,今日,国際的にみても最先端の技術を示しており,その成績も国内外で他に恥じることのないものであるので,読者に参考となることが多いと確信している。
2002年6月
加藤抱一
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目次
手術手技概説
手術手技の歴史と外科治療の役割 (加藤抱一)
食道癌手術手技の歴史
外科治療の役割
周術期管理
術前管理 (佐藤 弘/井垣弘康)
術前の生活指導
インフォームド・コンセント
術前処置と術前検査
術中管理 (本田 完/横川陽子/平賀一陽)
術前合併症と術前評価
麻酔を含めた術中管理
麻酔方法
術中モニタリング
術中呼吸管理
循環管理
術中輸液・輸血管理
術直後の管理
術後鎮痛
その他
術後管理 (佐藤 弘/井垣弘康)
0〜2病日の管理
回復期(3〜4病日)の管理
安定期(5〜6病日)の管理
7病日以降の管理
手術手技各論(適応・手技)
食道切除術式−右開胸開腹,食道亜全摘,胃噴門部切除術 (日月裕司)
手術適応
右胸部操作
腹部操作
頸部操作
食道切除術式−左開胸開腹,下部食道胃噴門部切除術 (日月裕司)
適応と術式の選択
手術手技
食道切除術式−非開胸食道抜去術 (日月裕司)
手術適応
手術手技
食道切除術式−食道部分切除術 (日月裕司)
頸部食道切除術
下部食道部分切除術
食道再建術式 (佐藤 弘/井垣弘康)
胸骨後経路食道再建術
皮下経路食道再建術
後縦隔経路食道再建術
複数の再建法の組み合わせによる食道再建術
食道再建臓器−胃による食道再建 (大幸宏幸/井垣弘康)
胃の血流
胃壁の血流分布
全胃による再建
亜全胃胃管
手術手技
食道再建臓器−有茎結腸による食道再建 (大幸宏幸/加藤抱一)
手術手技
食道再建臓器−有茎小腸による食道再建 (大幸宏幸/井垣弘康)
Roux-en-Y法
interposition法
食道再建臓器−頸部食道癌術後の再建 (大幸宏幸/井垣弘康)
手術手技
リンパ節郭清術 (加藤抱一)
概説
頸部リンパ節郭清
縦隔リンパ節郭清
腹部リンパ節郭清
縦隔気管瘻 (日月裕司)
手術適応
手術手技
左胸腹連続斜切開術 (加藤抱一)
手術適応
手術手技
二期分割手術 (深谷昌秀/井垣弘康)
初回手術
再建手術
当院の治療成績
考察
ドレーン (加藤抱一)
消化管吻合部に設置するドレーン
胸腔内の脱気と浸出液排出目的のドレーン
遺残食道二次癌 (加藤抱一)
進入路
切除術
再建術
再建臓器癌 (佐藤 弘/井垣弘康)
胃管癌
手術手技
再建結腸癌
腫瘍占居部位別手術手技の選択 (日月裕司)
腫瘍占居部位別手術手技の選択
頸部食道癌
頸胸境界部食道癌
胸部上部食道癌
胸部中下部食道癌
食道胃接合部食道癌
食道多発癌
食道頭頸部胃重複癌
隣接臓器浸潤食道癌の手術 (大幸宏幸/日月裕司)
合併切除と姑息切除
合併切除
姑息切除
鏡視下食道手術 (井垣弘康/加藤抱一)
縦隔鏡補助下食道抜去術・胸腔鏡下縦隔リンパ節郭清術
手術手技
手術手技の歴史と外科治療の役割 (加藤抱一)
食道癌手術手技の歴史
外科治療の役割
周術期管理
術前管理 (佐藤 弘/井垣弘康)
術前の生活指導
インフォームド・コンセント
術前処置と術前検査
術中管理 (本田 完/横川陽子/平賀一陽)
術前合併症と術前評価
麻酔を含めた術中管理
麻酔方法
術中モニタリング
術中呼吸管理
循環管理
術中輸液・輸血管理
術直後の管理
術後鎮痛
その他
術後管理 (佐藤 弘/井垣弘康)
0〜2病日の管理
回復期(3〜4病日)の管理
安定期(5〜6病日)の管理
7病日以降の管理
手術手技各論(適応・手技)
食道切除術式−右開胸開腹,食道亜全摘,胃噴門部切除術 (日月裕司)
手術適応
右胸部操作
腹部操作
頸部操作
食道切除術式−左開胸開腹,下部食道胃噴門部切除術 (日月裕司)
適応と術式の選択
手術手技
食道切除術式−非開胸食道抜去術 (日月裕司)
手術適応
手術手技
食道切除術式−食道部分切除術 (日月裕司)
頸部食道切除術
下部食道部分切除術
食道再建術式 (佐藤 弘/井垣弘康)
胸骨後経路食道再建術
皮下経路食道再建術
後縦隔経路食道再建術
複数の再建法の組み合わせによる食道再建術
食道再建臓器−胃による食道再建 (大幸宏幸/井垣弘康)
胃の血流
胃壁の血流分布
全胃による再建
亜全胃胃管
手術手技
食道再建臓器−有茎結腸による食道再建 (大幸宏幸/加藤抱一)
手術手技
食道再建臓器−有茎小腸による食道再建 (大幸宏幸/井垣弘康)
Roux-en-Y法
interposition法
食道再建臓器−頸部食道癌術後の再建 (大幸宏幸/井垣弘康)
手術手技
リンパ節郭清術 (加藤抱一)
概説
頸部リンパ節郭清
縦隔リンパ節郭清
腹部リンパ節郭清
縦隔気管瘻 (日月裕司)
手術適応
手術手技
左胸腹連続斜切開術 (加藤抱一)
手術適応
手術手技
二期分割手術 (深谷昌秀/井垣弘康)
初回手術
再建手術
当院の治療成績
考察
ドレーン (加藤抱一)
消化管吻合部に設置するドレーン
胸腔内の脱気と浸出液排出目的のドレーン
遺残食道二次癌 (加藤抱一)
進入路
切除術
再建術
再建臓器癌 (佐藤 弘/井垣弘康)
胃管癌
手術手技
再建結腸癌
腫瘍占居部位別手術手技の選択 (日月裕司)
腫瘍占居部位別手術手技の選択
頸部食道癌
頸胸境界部食道癌
胸部上部食道癌
胸部中下部食道癌
食道胃接合部食道癌
食道多発癌
食道頭頸部胃重複癌
隣接臓器浸潤食道癌の手術 (大幸宏幸/日月裕司)
合併切除と姑息切除
合併切除
姑息切除
鏡視下食道手術 (井垣弘康/加藤抱一)
縦隔鏡補助下食道抜去術・胸腔鏡下縦隔リンパ節郭清術
手術手技
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本書をみれば,食道癌手術の最先端技術がわかる!
前版の「食道癌」が刊行されてから9年が経過したが,その当時先進的な術式であった手技が一般的な術式として,日本全国に普及していること,低侵襲の治療法として放射線・抗癌剤併用療法の有効性が注目されていること,などが特徴としてあげられる。しかし,いずれにせよ進行食道癌に対する標準治療は外科治療であることには変らず,本書ではその手技をわかりやすくイラストで解説した。とくに手術術式別に分類した目次立てとし,さらに近年行われ始めた鏡視下食道手術などの術式も加えた。