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- 基礎医学関連
Step Forward
医療系学生のための基礎生物学

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定価 3,300円(税込) (本体3,000円+税)
- B5判 208ページ オールカラー,イラスト350点,写真20点
- 2025年8月3日刊行予定
- ISBN978-4-7583-2276-8
近刊のため予約販売となります。
電子版
序文
編集の序
この本を手に取ってくれた皆さんへ
医療の仕事は人(ヒト)を対象としています。ヒトの体が何で構成されているのか,どのようなしくみでヒトの体が動くのか,どうして食べ物を食べているのか。それらのしくみを理解することは,医療の現場で働くうえで欠かせない知識となります。生物学は上記のしくみを解き明かす学問であり,その知識は現在の医療の現場においてさまざまな場面で求められます。
この教科書は,医療者(薬剤師,看護師,臨床検査技師,理学療法士,視能訓練士,作業療法士,診療放射線技師,言語聴覚士,臨床工学技士など)を目指す医療系大学をはじめとした養成校の1年生を対象に,医療に必要となる生物学の第一歩をわかりやすく学べるように構成されています。特に本書では専門課程に進む前の段階の学生向けに,生物学の基本として是非とも知っておきたい事柄を15章にわたってやさしく説明しています。皆さんの中には高校生のときに生物を詳しく学んでこなかった方もいるかもしれません。そのような方にもわかりやすく,楽しく読める工夫が随所に盛り込まれています。本書を読んだ後で専門講義を聴けば,講義内容がスッと頭に入ってくることと思います。
本書の内容は,一番始めに「生物とは?」という生命の起源の話から始まり,細胞の構造,代謝,生体を構成する分子,遺伝とDNA,遺伝情報の発現といった生命の基本的なしくみを学びます。その後,細胞周期や発生,組織や器官の構造,ホルモンや神経による調節機構,免疫や感染症,そしてがんとその治療に至るまで,生命現象を段階的に理解できるような構成になっています。専門用語や概念に戸惑うかもしれませんが,それらはすべて,これから出会う患者さんの体や病気を理解するための「はじめの一歩」となります。
各章の末尾には,「コラム」として各医療者の立場を経験した執筆者による現場での話,豆知識などを掲載しています。自分が病院で活躍している姿を思い描きながら本書を読み進めていっていただけたらと思います。
また,本書は医療系職種に興味がある高校生の方にも,是非とも読んでいただきたいです。養成校で学ぶ生物学の入り口,そして医療現場のコラムを読みながら,医療の世界を少しでも知っていただけたら幸いです。
基礎生物学は,医学への入り口であると同時に,人の生命に対する理解の出発点でもあります。本書を通じて得た知識が,やがて臨床現場での適切な判断や患者さんへのケアの力につながることを願っています。
この一冊が,皆さん一人ひとりの「Step Forward」,医療人として歩み始める最初の一歩になりますように。
最後になりますが,本書の出版にあたっては,メジカルビュー社の野口真一氏のお力なくしては成し遂げられませんでした。出版の機会を与えてくださったこと,困ったときには常に適切な助言をいただけたこと,癖の強いわれわれをひとつにまとめ上げて本の完成に導いてくださったことに心より感謝申し上げます。
2025年7月
仲田栄子 小林純也 飯島典生
この本を手に取ってくれた皆さんへ
医療の仕事は人(ヒト)を対象としています。ヒトの体が何で構成されているのか,どのようなしくみでヒトの体が動くのか,どうして食べ物を食べているのか。それらのしくみを理解することは,医療の現場で働くうえで欠かせない知識となります。生物学は上記のしくみを解き明かす学問であり,その知識は現在の医療の現場においてさまざまな場面で求められます。
この教科書は,医療者(薬剤師,看護師,臨床検査技師,理学療法士,視能訓練士,作業療法士,診療放射線技師,言語聴覚士,臨床工学技士など)を目指す医療系大学をはじめとした養成校の1年生を対象に,医療に必要となる生物学の第一歩をわかりやすく学べるように構成されています。特に本書では専門課程に進む前の段階の学生向けに,生物学の基本として是非とも知っておきたい事柄を15章にわたってやさしく説明しています。皆さんの中には高校生のときに生物を詳しく学んでこなかった方もいるかもしれません。そのような方にもわかりやすく,楽しく読める工夫が随所に盛り込まれています。本書を読んだ後で専門講義を聴けば,講義内容がスッと頭に入ってくることと思います。
本書の内容は,一番始めに「生物とは?」という生命の起源の話から始まり,細胞の構造,代謝,生体を構成する分子,遺伝とDNA,遺伝情報の発現といった生命の基本的なしくみを学びます。その後,細胞周期や発生,組織や器官の構造,ホルモンや神経による調節機構,免疫や感染症,そしてがんとその治療に至るまで,生命現象を段階的に理解できるような構成になっています。専門用語や概念に戸惑うかもしれませんが,それらはすべて,これから出会う患者さんの体や病気を理解するための「はじめの一歩」となります。
各章の末尾には,「コラム」として各医療者の立場を経験した執筆者による現場での話,豆知識などを掲載しています。自分が病院で活躍している姿を思い描きながら本書を読み進めていっていただけたらと思います。
また,本書は医療系職種に興味がある高校生の方にも,是非とも読んでいただきたいです。養成校で学ぶ生物学の入り口,そして医療現場のコラムを読みながら,医療の世界を少しでも知っていただけたら幸いです。
基礎生物学は,医学への入り口であると同時に,人の生命に対する理解の出発点でもあります。本書を通じて得た知識が,やがて臨床現場での適切な判断や患者さんへのケアの力につながることを願っています。
この一冊が,皆さん一人ひとりの「Step Forward」,医療人として歩み始める最初の一歩になりますように。
最後になりますが,本書の出版にあたっては,メジカルビュー社の野口真一氏のお力なくしては成し遂げられませんでした。出版の機会を与えてくださったこと,困ったときには常に適切な助言をいただけたこと,癖の強いわれわれをひとつにまとめ上げて本の完成に導いてくださったことに心より感謝申し上げます。
2025年7月
仲田栄子 小林純也 飯島典生
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目次
1章|生命とは何か―われわれはどこから来たのか|仲田栄子
1 生物とは?
2 生物の誕生そして原核生物から真核生物へ
3 生体を構成する物質
2章|生物の最小単位―細胞の構造としくみを探る|佐藤 光
1 細胞の中の構造
2 細胞膜の構造と働き
3 特殊な構造体―細胞小器官
4 細胞における環境応答,環境ストレス
3章|食べたものがエネルギーになるまで―栄養と代謝のしくみ|山口剛史
1 栄養素とは何か?
2 代謝―生命活動を進めるエネルギーの流れ
3 酵素と補酵素―反応を効率化する鍵
4 栄養素の代謝
5 エネルギー代謝―糖や脂質の分解からATP 生成まで
6 その他の代謝の主役たち
7 光合成―光をエネルギーに変えるしくみ
4章|遺伝―親から子へ情報が受け継がれるしくみ|仲田栄子
1 遺伝とは?
2 メンデルの遺伝の法則
3 メンデルの遺伝の法則では説明できない現象
4 メンデルの遺伝の法則から遺伝子本体へ
5 遺伝性疾患
6 遺伝における環境応答,環境ストレスとの関連
5章|生命の情報を守り,伝えるしくみ―DNA,染色体|小林純也
1 DNAの構造,染色体の構成・構造
2 DNAの複製
3 DNA損傷,突然変異,染色体異常の発生
4 DNAの修復機構
5 ストレス環境下からDNAや染色体を守るしくみ
6章|遺伝子の働きと制御のしくみ―遺伝子からタンパク質へ|小林純也
1 セントラルドグマ
2 転写の仕組み―DNAの情報がRNAになるまで
3 転写の調節
4 RNA の成熟・スプライシング―RNAの加工と編集作業
5 翻訳―RNAのメッセージが形になる
6 タンパク質について
7 遺伝情報における環境応答,環境ストレス
7章|細胞増殖のしくみ―細胞分裂とその制御|有吉健太郎
1 細胞分裂
2 細胞周期について
3 細胞周期の調節に関する因子
4 細胞周期を監視する機構(チェックポイント機構)
5 細胞の死について(アポトーシスとネクローシス)
6 細胞の老化について
7 細胞の情報交換―シグナル伝達
8 細胞増殖における環境応答,環境ストレス
8章|新しい個体ができるまで―生殖・発生・分化のしくみ|飯島典生
1 有性生殖と無性生殖
2 生活環について
3 動物の発生―細胞から体ができるしくみ
4 体軸・体節を決める遺伝子―上下前後はこうして決まる
5 ヒトの発生―1つの細胞が人間になるまで
6 分化,幹細胞の話
7 生殖・発生・分化における環境応答
9章|動物の体をつくる組織―動物組織の構造と役割|菅野恵美
1 組織とは?
2 上皮組織
3 結合組織
4 筋組織
5 神経組織
6 血液組織
7 組織における環境応答,環境ストレス
10章|動物が生きていくシステム―器官の構造と役割|岡野真弓,伊藤晃洋
1 器官とは?
2 感覚系―感じて伝えるシステム
3 循環器系―心臓,血液系およびリンパ系
4 呼吸器系―肺,ガス交換
5 消化器系―口〜大腸と肝臓,胆嚢,膵臓
6 排出系―腎臓,膀胱
7 器官における環境応答,環境ストレス
11章|情報伝達の中枢―神経系の働き|屋嘉比章紘
1 命令を伝える神経の構造
2 神経経路の伝達機構
3 自律神経系と交感・副交感神経
4 ニューロンの構造,神経興奮の伝達機構
5 神経伝達物質―命令を伝える伝令役
6 反射のしくみ
7 神経系の病気
8 神経系における環境応答,環境ストレス
12章|体内のバランスを保つしくみ―生体内部環境の維持・調節機構|岡野真弓,伊藤晃洋
1 自律神経系による調節
2 内分泌系による調節
3 血糖値の調節機構
4 体温の維持機構
5 水分の調整機構
6 内部環境における環境応答,環境ストレス
13章|生体の防御システム―免疫系|八木秀樹
1 生体を守る“知的”システム―免疫とは何か?
2 自然免疫―体を守る最初の盾
3 獲得免疫―体を守る強力な盾
4 免疫応答のしくみ―敵を見つけ防御を開始
5 抗体―特定の敵を攻撃する
6 医療と免疫
7 アレルギー―行き過ぎた防御反応
8 免疫疾患―攻撃の矛先が自分に向かう
9 免疫と環境ストレス
14章|体に忍び込む小さな侵入者―微生物とヒトへの感染症の関係|佐藤 光
1 微生物の世界をのぞく
2 細菌とは?
3 ウイルスとは?
4 微生物がもたらすヒトへの病気
15章|暴走する細胞―がん|橋本光康
1 がんとは?
2 がん細胞の特徴について,正常細胞と何が違う?
3 がん関連遺伝子とは(代表的ながん遺伝子について)
4 がんの原因と考えられているもの
5 がんの治療(手術療法,放射線療法,薬物療法)
1 生物とは?
2 生物の誕生そして原核生物から真核生物へ
3 生体を構成する物質
2章|生物の最小単位―細胞の構造としくみを探る|佐藤 光
1 細胞の中の構造
2 細胞膜の構造と働き
3 特殊な構造体―細胞小器官
4 細胞における環境応答,環境ストレス
3章|食べたものがエネルギーになるまで―栄養と代謝のしくみ|山口剛史
1 栄養素とは何か?
2 代謝―生命活動を進めるエネルギーの流れ
3 酵素と補酵素―反応を効率化する鍵
4 栄養素の代謝
5 エネルギー代謝―糖や脂質の分解からATP 生成まで
6 その他の代謝の主役たち
7 光合成―光をエネルギーに変えるしくみ
4章|遺伝―親から子へ情報が受け継がれるしくみ|仲田栄子
1 遺伝とは?
2 メンデルの遺伝の法則
3 メンデルの遺伝の法則では説明できない現象
4 メンデルの遺伝の法則から遺伝子本体へ
5 遺伝性疾患
6 遺伝における環境応答,環境ストレスとの関連
5章|生命の情報を守り,伝えるしくみ―DNA,染色体|小林純也
1 DNAの構造,染色体の構成・構造
2 DNAの複製
3 DNA損傷,突然変異,染色体異常の発生
4 DNAの修復機構
5 ストレス環境下からDNAや染色体を守るしくみ
6章|遺伝子の働きと制御のしくみ―遺伝子からタンパク質へ|小林純也
1 セントラルドグマ
2 転写の仕組み―DNAの情報がRNAになるまで
3 転写の調節
4 RNA の成熟・スプライシング―RNAの加工と編集作業
5 翻訳―RNAのメッセージが形になる
6 タンパク質について
7 遺伝情報における環境応答,環境ストレス
7章|細胞増殖のしくみ―細胞分裂とその制御|有吉健太郎
1 細胞分裂
2 細胞周期について
3 細胞周期の調節に関する因子
4 細胞周期を監視する機構(チェックポイント機構)
5 細胞の死について(アポトーシスとネクローシス)
6 細胞の老化について
7 細胞の情報交換―シグナル伝達
8 細胞増殖における環境応答,環境ストレス
8章|新しい個体ができるまで―生殖・発生・分化のしくみ|飯島典生
1 有性生殖と無性生殖
2 生活環について
3 動物の発生―細胞から体ができるしくみ
4 体軸・体節を決める遺伝子―上下前後はこうして決まる
5 ヒトの発生―1つの細胞が人間になるまで
6 分化,幹細胞の話
7 生殖・発生・分化における環境応答
9章|動物の体をつくる組織―動物組織の構造と役割|菅野恵美
1 組織とは?
2 上皮組織
3 結合組織
4 筋組織
5 神経組織
6 血液組織
7 組織における環境応答,環境ストレス
10章|動物が生きていくシステム―器官の構造と役割|岡野真弓,伊藤晃洋
1 器官とは?
2 感覚系―感じて伝えるシステム
3 循環器系―心臓,血液系およびリンパ系
4 呼吸器系―肺,ガス交換
5 消化器系―口〜大腸と肝臓,胆嚢,膵臓
6 排出系―腎臓,膀胱
7 器官における環境応答,環境ストレス
11章|情報伝達の中枢―神経系の働き|屋嘉比章紘
1 命令を伝える神経の構造
2 神経経路の伝達機構
3 自律神経系と交感・副交感神経
4 ニューロンの構造,神経興奮の伝達機構
5 神経伝達物質―命令を伝える伝令役
6 反射のしくみ
7 神経系の病気
8 神経系における環境応答,環境ストレス
12章|体内のバランスを保つしくみ―生体内部環境の維持・調節機構|岡野真弓,伊藤晃洋
1 自律神経系による調節
2 内分泌系による調節
3 血糖値の調節機構
4 体温の維持機構
5 水分の調整機構
6 内部環境における環境応答,環境ストレス
13章|生体の防御システム―免疫系|八木秀樹
1 生体を守る“知的”システム―免疫とは何か?
2 自然免疫―体を守る最初の盾
3 獲得免疫―体を守る強力な盾
4 免疫応答のしくみ―敵を見つけ防御を開始
5 抗体―特定の敵を攻撃する
6 医療と免疫
7 アレルギー―行き過ぎた防御反応
8 免疫疾患―攻撃の矛先が自分に向かう
9 免疫と環境ストレス
14章|体に忍び込む小さな侵入者―微生物とヒトへの感染症の関係|佐藤 光
1 微生物の世界をのぞく
2 細菌とは?
3 ウイルスとは?
4 微生物がもたらすヒトへの病気
15章|暴走する細胞―がん|橋本光康
1 がんとは?
2 がん細胞の特徴について,正常細胞と何が違う?
3 がん関連遺伝子とは(代表的ながん遺伝子について)
4 がんの原因と考えられているもの
5 がんの治療(手術療法,放射線療法,薬物療法)
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高校生物を履修しなかった学生に救いの一手! 解剖学,生理学を学ぶ前に必ず読みたい教科書の登場
「基礎生物学」は養成校1年生で学ぶ一般教養科目として,解剖学や生理学を学ぶ前に必要となる細胞や遺伝の知識が主な内容となっている。また,生物学の視点から解剖学・生理学の基本を予習することができる。遺伝子などの分子レベルのことが疾患や薬剤,放射線などを理解するために必須となっていることから,医療系学生にとって基盤となる知識が盛り込まれている。内容は難解な解説は避け,図に吹き出しコメントを設けて,学生さんが馴染みやすいように心掛けた。