スポーツ理学療法学

動作に基づく外傷・障害の理解と評価・治療の進め方

第3版

スポーツ理学療法学

■監修 陶山 哲夫

■編集 赤坂 清和

定価 6,600円(税込) (本体6,000円+税)
  • B5判  440ページ  2色(一部カラー),イラスト170点,写真1250点
  • 2023年8月3日刊行
  • ISBN978-4-7583-2085-6

最先端の知見が充実したアスリートファーストの理学療法に役立つアップデート版!

理学療法士向けに,スポーツ医学の基礎知識と競技別に外傷・障害の原因となる動作および改善のためのアプローチについて解説。
改訂にあたっては,東京オリンピック・パラリンピックでの経験を踏まえて情報をアップデート! 感染症対策や国際大会の運営・サポートといったトレンドの情報や,フェンシング,カヌー,車いすラグビーの3競技に関する情報を追加。物理療法や栄養学,メンタルトレーニングなどの基礎知識もさらに充実。『理学療法ガイドライン第2版』にも準拠し,最先端の知見を集約したアスリートファーストの理学療法に役立つ最新版。


序文

第3版 監修の序

 日本におけるスポーツには明治時代以前から行われていた剣道,柔道,拿捕や護身を目的とする柔術などがありました。その後,第二次世界大戦後から欧米で隆興していた競技がオリンピックを通して国際的な種目へと発展し,さらに冬季種目も加わったことで競技種目は増えています。最近では新種目も考案され,スポーツはますます興隆の一途を辿っております。
 競技種目が多岐にわたるほど,競技特性に応じた救急処置やトレーニング方法,傷害発生の予防,コーチングなどスポーツに関与する専門家が担う領域は拡大し,スポーツ界における責任と重要性がいっそう問われてきております。
 スポーツの基本的な動作は,走る・跳ぶ・投げる・打つ・捕る・蹴る・組む・バランス・リズムなどがあります。これらはスポーツ全体に共通しており,この基本的動作の組み合わせにより各種目・競技別の応用的動作がありますが,今後は現在の種々の科学的分析則り競技への導入・指導が必須となります。これらを理解したうえで,新たな知識の導入や現場での実行が必要となり,スポーツ関係者同士の協力が求められます。
 本書は2014年に初版が刊行され,2018年に第2版,そして2023年に第3版へと改訂を重ねてきました。スポーツに携わる理学療法士を中心として,柔道整復師やトレーナーコーチ,医師,その他スポーツ関係者にとって,高度な理論的学問体系および専門的な競技性を熟知した専門家たちの知識に基づく本書の内容は,競技現場において非常に有益な情報を集約したものだと思います。
 本書の主要な特徴として,以下の2章構成が挙げられます。

Ⅰ.スポーツ医学の基礎知識・基本手技
 アスリートに必要な基礎的な事項について,非常にわかりやすく述べております。第3版では,感染症対策,物理療法,メンタルトレーニング,栄養学,女性アスリートの特性,国際競技大会における役割・サポート活動に関する項目を新しく追加し,さらに充実した内容となりました。

Ⅱ.競技動作にかかわる外傷・障害と理学療法
 競技・種目別に,外傷・障害の原因となる動作および改善のためのアプローチについて,読者に理解しやすく記述されております。陸上競技や体操競技,競泳,バスケットボール,バレーボール,ハンドボール,サッカー,野球,テニス,柔道,剣道,スキー競技,ラグビーフットボール,ゴルフ,パラスポーツ(視覚障害と車いすテニス)に加えて,オリンピック・パラリンピック種目であるフェンシング,カヌー,車いすラグビーの3競技を新しく加えております。

 スポーツにおける諸問題を解決する一助として,是非本書を一読されることを勧めたいと思います。
 最後に本書を編集していただきました赤坂先生とご執筆の方々,メジカルビュー社編集部の皆様にこの場を借りて厚くお礼申し上げます。

2023年6月
陶山哲夫

――――――――――――

第3版 編集の序

 『スポーツ理学療法学』の第1版は,競技動作と治療アプローチを副題に据えて,理学療法士がアスリートのスポーツ外傷・障害に対してみるべきポイントと理学療法の実際の介入方法が具体的に理解できることを意識した書籍として2014年に刊行された。そして2018年に刊行された第2 版では,2020東京オリンピック・パラリンピックの開催準備が進むなか,スポーツ現場で共通するスポーツ医学の基礎知識や基本手技を加えるとともに,パラスポーツの充実,筋骨格系徒手検査法を網羅的に整理して,スポーツ大会において理学療法士がサポート活動を行ううえで,実際に必要となる知識や技術などを含めるように工夫した。
 今回の第3版の制作では,次に挙げる大きな2つの内容を編集方針に含めることを計画した。第1には,2021年に東京オリンピック・パラリンピック大会が開催され,理学療法士が長時間の多岐にわたる対面およびオンデマンドの研修を受け,実際にスポーツ理学療法として大会の準備作業や大会サポートに参加した経験を含めることとした。これまでの国内大会や国際大会を遥かに上回る規模のスポーツ大会である東京オリンピック・パラリンピック大会では,多くの実務を経験し,現場における医師や看護師などのスタッフと知識および役割を共有し,スポーツ理学療法士として成長することができた。それらの内容をできるだけ本書に反映させるために,新たに医師やスポーツトレーナー,心理学者の先生方にも第3版の執筆者として加わっていただき,これまで以上に充実したスポーツ理学療法のサービスが提供できるような内容とした。第2には,同年秋に『理学療法ガイドライン第2版』が刊行され,アスリートの外傷・障害や筋骨格系の問題に関するエビデンスが公開されたため,その内容を本書に反映させるようにした。スポーツ理学療法では,急性外傷やオーバーユースが原因で筋骨格系に問題を抱える一人ひとりのアスリートに対してサービスが提供されるが,本書の読者がスポーツ理学療法の専門家として,これまでの研究成果の蓄積によるエビデンスを熟知しておくべきであると考え,各章を担当する執筆者にできる限り『理学療法ガイドライン第2版』の内容を反映していただくように依頼した。
 このように,スポーツ理学療法学について内容を吟味するとともに,充実した構成となって第3版を刊行することができたのは,監修の陶山哲夫先生や多くの執筆者の方々にご理解ご協力をいただいた成果であり,さらには多くの読者の方々に長年ご支持をいただいているお陰であり,心より感謝申し上げます。また,本書の刊行にご理解いただくとともに,多大なるご尽力をいただいたメジカルビュー社および編集者である水上 優氏に重ねて感謝申し上げます。

2023年6月

執筆者を代表して
赤坂清和
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目次

Ⅰ スポーツ医学の基礎知識・基本手技
 メディカルチェック  渡邊裕之 
 アスリートに共通するコンディショニング  岡戸敦男 
 アンチ・ドーピングの基礎知識  草野修輔  
 スポーツ競技を実施するための感染症対策  坂本雅昭,加藤大悟  
 アスリートの傷害予防  浦辺幸夫,田城 翼  
 外傷の応急処置①:固定・初期評価・搬送  山田睦雄  
 外傷の応急処置②:皮膚損傷・捻挫・肉ばなれ・靱帯損傷・骨折  伊藤浩充
 スポーツ活動における暑熱対策  細川由梨  
 アスリートに対するテーピングの基礎知識  澤田 豊  
 アスリートに対する徒手理学療法  赤坂清和  
 アスリートに好まれる物理療法  高橋佐江子,鈴木 章  
 アスリートに対するパフォーマンスエンハンスメント  相澤純也 
 メンタルトレーニング  笠原 彰  
 アスリートと栄養学  鈴木志保子  
 女性アスリートの特性  平野佳代子  
 国際総合競技大会における日本代表選手団メディカルの活動と理学療法士のかかわり  鈴川仁人  
 理学療法士によるホストとしての国際競技大会サポート活動  玉置龍也  
 
Ⅱ 競技動作にかかわる外傷・障害と理学療法
 陸上競技  舌 正史  
 体操競技  岡田 亨,関口貴博,内之倉真大,室井聖史
 競泳  小泉圭介    
 バスケットボール  川島達宏,川島敏生,眞田 崇  
 バレーボール  板倉尚子,水石 裕  
 ハンドボール  浦辺幸夫,島 俊也  
 サッカー  松田直樹,堀田泰史  
 野球  高村 隆,鈴木 智,小川靖之,高見悠也,澤野靖之
 テニス  赤坂清和  
 柔道  濵中康治  
 剣道  田中 聡,岡村和典  
 フェンシング  渡邊祐介,鈴木享之,板倉尚子
 スキー競技  寒川美奈  
 ラグビーフットボール(ラグビー)  金村朋直,小林寛和,濱野武彦,野村真嗣
 カヌー  中川和昌  
 ゴルフ  市川繁之  
 パラスポーツ①:視覚障害  門田正久,松井 康,樋口毅史  
 パラスポーツ②:車いすラグビー  中山 孝,藤縄道子,森田融枝  
 パラスポーツ③:車いすテニス  蛯江共生
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