クリニカル・レクチャー 
柔道整復 実践技術

クリニカル・レクチャー 柔道整復 実践技術

■監修 平澤 泰介

■編集 樽本 修和

■編集協力 伊藤 譲
佐藤 裕二
田宮 慎二
加藤 明雄
煙山 奨也

定価 5,720円(税込) (本体5,200円+税)
  • B5判  240ページ  オールカラー,イラスト50点,写真560点
  • 2019年3月3日刊行
  • ISBN978-4-7583-1939-3

600点以上の写真とイラストで柔道整復の実技を解説! 臨床で最も役立つ1冊

本書は,柔道整復実技を解説した柔道整復師養成校の学生,若手の柔道整復師向けの書籍である。600点を超えるイラスト・写真を用い,視覚的に理解しやすい内容となっている。臨床で遭遇する頻度が高い疾患を精選して掲載し,さらに臨床で必要な柔道整復のコツを「Tips」として盛り込んだ。
「柔道整復実技」の教科書としてはもちろん,その後の臨床でも役立つ一冊。


序文

監修の序

 最近の医療の動きをみますと少子高齢化社会の到来とともに,人々の生活の質(quality of life:QOL)を大切にし,外傷や疾患によって生じる二次的障害を積極的に予防しようとする傾向が強くなり,「リハビリテーション医療」が注目されるようになりました。このように残る障害を最小限にとどめ,早期回復そして早期社会復帰へと導くリハビリテーション医療の知識や技術についても深い理解をもって臨床にあたる重要性がクローズアップされるようになりました。
 また近年,大災害や交通事故などが多く発生して,救急現場でみる損傷部の病態は多様性を呈しています。同時に「運動器」の損傷や疾患で病院を訪ねて来る人の数も増加の一途を辿っています。さて日常生活活動(activities of daily living:ADL)は,骨・関節,靱帯,神経などで構成される運動器が中心となって行われます。運動器の外傷・疾患によって生じる障害は歩行・書字・食事など,さらには仕事や社会活動に大きな困難を生じさせます。これらに対処すべく病院の訓練室では理学療法士が歩行訓練などを,また作業療法士が食事動作などの生活能力を高めるための訓練の適応を吟味しながら,ADLの早期獲得をめざして治療にあたっています。すなわち,種々の障害をかかえる個々の患者に対して「チーム医療」で対応するようになったのです。チームのメンバーは医師を中心として看護師,種々のセラピスト,ソーシャル・ワーカーなどで,個々の症例に対して各自の立場から医療上のアプローチを中心に頻繁に検討会を開催し,経過や方針についての検討を行い,より良い治療成績を得ているのです。
 以上のようにひとりひとりの疾病や障害に対して専門家がチームワークで対処する時代となりました。それが人々のための健康維持のために大切であり,平均寿命の延伸から健康寿命の延伸へと貢献してゆくものと考えます。柔道整復師も孤立せずに東洋医学や西洋医学と連携をとり合って進んでゆくことによって人々のさらなる幸せを提供してゆけることと信じます。
 メジカルビュー社から今まで『柔道整復師 ブルー・ノート 基礎編』『柔道整復師 イエロー・ノート 臨床編』『柔道整復師 グリーン・ノート 基礎/臨床編』と種々の参考書が出版されていますが,それらの基礎や臨床に役立つ書籍で充分に学び,活用することによって知識をレベルアップし,切磋琢磨してゆくことが大切です。
 今まで出版された柔道整復の実技の書が多くあるなかで,より臨床に役立つ実践書として本書が完成しました。柔道整復師の育成のための教育経験豊かなこの道のエキスパートの先生方の努力によってまとめられました。日常診療で遭遇する頻度の高い外傷例を選び,必要な知識をまとめ,わかりやすいイラストや画像に簡潔な表現でポイントを提示しています。将来,臨床の場においても座右に置いて知識や技術を確かめるために活用していただきたいと思います。
 発刊にあたり,編集・出版に多大なる尽力をいただいたメジカルビュー社のスタッフの方々に心から感謝申し上げます。

2019年1月
平澤泰介

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編集の序

 柔道整復の歴史は古く,武道と結びつくことで独特の発展を遂げ,その医療技術は柔道整復術として現代に継承されている。近年,高齢化やスポーツ愛好家の増加に伴い,柔道整復師による手術をしないでケガを治す技術,整復や固定といった技術に対するニーズはますます高まっている。こうした背景を受けて,厚生労働省は平成27(2015)年に柔道整復師学校養成施設カリキュラム等改善検討会を設置し,学校養成施設における臨床実習の充実および柔道整復師の質の向上などについて検討し,これまでに増して臨床教育を強化することとなった。
 本書は,柔道整復師を目指す学生や,すでに臨床現場で活躍している柔道整復師を対象とした,臨床実習や現場で多く遭遇する外傷についての実践的な技術書である。学生は,実技の授業や臨床実習のサブテキストとして,資格取得者は臨床時の技術書として活用されたい。そのために,臨床技術の再現性に重点を置き,解説は箇条書きで簡潔に,その分,写真やイラストを豊富に盛り込み,視覚的に理解できるように工夫した。
 内容は,評価法,徒手検査法,骨折・脱臼・筋腱軟部組織損傷については,概要,治療の流れ,整復・固定法のポイントを1冊で理解できるように工夫されている。
 「第1章 柔道整復の評価法・徒手検査の概要」では,医療面接・問診・視診・触診・四肢計測・関節可動域(ROM)計測・徒手筋力テスト(MMT)・整復と固定について述べた。
 「第2章 上肢 臨床編」では,肩関節前方脱臼・肩鎖関節脱臼・鎖骨骨折(中・外1/3境界部骨折),肘関節後方脱臼・ 肘内障など,コーレス骨折・中手骨頚部骨折(ボクサー骨折)・近位指節間関節背側脱臼・ロッキングフィンガー・マレットフィンガー(槌指)などについて述べた。特に,コーレス骨折の整復・固定については,患者の苦痛を最小限に抑える方法について,図や写真を多用してわかりやすく解説している。
 「第3章 下肢 臨床編」では,膝関節内側側副靱帯損傷・前十字靱帯損傷・半月板損傷,下腿三頭筋肉ばなれ・アキレス腱断裂・足関節捻挫(足関節外側靱帯損傷)・第5中足骨結節部骨折(下駄骨折)などについて述べた。特に,膝関節の検査法,および足関節捻挫の治療法については,図や写真を用いてわかりやすく解説している。
 「第4章 顔面部・体幹の外傷 臨床編」では,顎関節前方脱臼・肋骨骨折などについて述べた。特に,顎関節前方脱臼の整復法を詳述し,図や写真を多用してわかりやすく解説している。
 本書の執筆は,臨床・教育経験豊富な先生方が行っているので,学生から臨床家まで幅広い層に対応できる内容の実践書になったと確信している。われわれ柔道整復師は,知識・技術の研鑽と,患者に対し極力痛みを与えず,安全で安心のできる治療が求められるため,その一助となれば幸いである。第5章では,整形外科医から本書全般にわたり辛辣な意見をいただいた。医接連携が重視されるなか,画期的なことであると考えている。意見が割れることが予想されるが,本書の解釈は臨床現場で活躍される 読者諸氏に判断を委ね,また不備な点についてはご教示をお願いしたい。
 今回,「クリニカル・レクチャ-柔道整復 実践技術」を刊行できることは,長きにわたり柔道整復の臨床と教育・研究に尽力してきた立場から,望外の喜びである。刊行にあたり,本書の編集にご協力いただいたメジカルビュー社スタッフの方々に心から御礼を申し上げたい。

2019年1月
樽本修和

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編集協力を代表して

 私自身,柔道整復師の資格を取得してすぐに思ったのは,「治療」に特化した書籍をほとんど目にしないということでした。外傷治療を生業とする資格で,「治療」の書籍を見受けないことに当時は驚きました。確かに外傷に対する施術は病態,損傷程度,年齢,性別,生活背景など,同じ疾患名であっても答えは患者さんにより異なります。「治療」において万人に通ずる手法はなく,答えは常に一つではありません。また治療においていかに「根拠」に基づくか問われているなか,経験則を列挙するわけにはいきません。これらのことが「治療」に特化する書籍を出版するのが困難な理由ではないかと考えられます。この書籍は私自身が欲しかったものであり,臨床現場において試行錯誤している若手柔道整復師の一助となればと考えています。
 柔道整復師の大学ができて15年経ちます。個人的な意見ではございますが,熟練の柔道整復師が「経験則」を世間に披露し,「本当にその治療は有用なのか?」「実はあまり意味がないのでは?」など,若い学生が問題提起し,それを研究し,「根拠」を確立していくことが柔道整復の大学が出来たことの意義と考えています。
 先述したように,「治療」に答えは一つではありません。日本中にいる熟練の先生方からはこの書籍を読んで「自分ならこう治す」「こういうアプローチが必要」など,たくさんのご意見が生まれるかと想像しています。私はさまざまなところから類似する書籍が刊行されて,そして本屋さんに「柔道整復師」のコーナーができることを心より願います。
 最後にこの書籍を刊行するにあたって長年の経験を惜しみなく披露して頂いた著者の先生方,ご尽力いただいたメジカルビュー社の髙橋祐太朗氏,小松朋寛氏に心より御礼申し上げます。

2019年1月
加藤明雄
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目次

1章 柔道整復の評価法・徒手検査の概要
 (1)医療面接(問診) 煙山奨也
  医療面接とは
  医療面接で聴取すべき内容
 (2)視診  伊藤 譲
  来所時の観察
  全身の観察
  局所の観察
  疾患別視診のポイント
 (3)触診  行田直人
  触診の訓練
  触診の実際
  脈の触診
  感覚検査
 (4)四肢計測  田口大輔
  上肢長の計測
  下肢長の計測
  上肢周径の計測
  下肢周径の計測
 (5)関節可動域(ROM)計測  田口大輔
  運動の種類
  ROM計測の基準
  計測上の注意点
 (6)徒手筋力テスト(MMT) 田口大輔
  目的
  評価基準
  評価の進め方
  評価時の注意点
 (7)整復と固定  田口大輔
  整復
  固定
  
2章 上肢 臨床編
 1. 肩関節周辺部の外傷
  (1)肩関節前方脱臼  大澤裕行,加藤明雄
  (2)肩鎖関節脱臼  大澤裕行,加藤明雄
  (3)鎖骨骨折(中・外1/3境界部骨折) 大澤裕行,加藤明雄
 2. 肘関節〜前腕部の外傷
  (1)肘関節後方脱臼  田宮慎二,加藤明雄,小野澤大輔
  (2)肘内障  櫻井庄二,加藤明雄,小野澤大輔
  (3)コーレス骨折  樽本修和,加藤明雄
 3. 手指部の外傷
  (1)中手骨頚部骨折(ボクサー骨折) 樽本修和,加藤明雄
  (2)近位指節間関節背側脱臼  樽本悦郎,二神弘子,西沢正樹
  (3)ロッキングフィンガー  樽本悦郎,樽本修和,二神弘子,西沢正樹
  (4)マレットフィンガー(槌指) 樽本悦郎,二神弘子,西沢正樹

3章 下肢 臨床編
 1. 大腿部〜膝関節周辺部の外傷
  (1)膝関節内側側副靱帯損傷  鈴木義博,田宮慎二
  (2)前十字靱帯損傷  鈴木義博,田宮慎二
  (3)半月板損傷   鈴木義博,田宮慎二
 2. 下腿部〜足部の外傷
  (1)下腿三頭筋肉ばなれ  市毛雅之,佐藤裕二,細野 昇
  (2)アキレス腱断裂  市毛雅之,佐藤裕二,細野 昇
  (3)足関節捻挫(足関節外側靱帯損傷) 樽本修和,原口力也
  (4)第5中足骨結節部骨折(下駄骨折) 樽本修和,原口力也

4章 顔面部・体幹の外傷 臨床編
 1. 顎関節前方脱臼  佐藤光浩,荒木誠一,廣岡 聡
 2. 肋骨骨折  佐藤光浩,荒木誠一,廣岡 聡

5章 整形外科医から柔道整復師へ〜アドバイスと整形外科医が思うこと〜  伊藤正明
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