脳卒中理学療法の理論と技術

第3版

脳卒中理学療法の理論と技術

■編集 原 寛美
吉尾 雅春

定価 7,150円(税込) (本体6,500円+税)
  • B5変型判  560ページ  2色(一部カラー),イラスト450点,写真380点
  • 2019年3月25日刊行
  • ISBN978-4-7583-1936-2

エビデンスに基づく治療のために。日進月歩の脳卒中医療における最新の理論と技術を集約!

脳卒中医療の進歩はとどまるところを知らず,理学療法の理論や技術に関しても日々発展を遂げている。このような状況を踏まえ,今回約3年ぶりの改訂を行った。
本書では新たに「ロボットを用いた理学療法」,「ニューロリハビリテーション」の項目を追加。これらの新規項目においても,“エビデンスに基づく治療理論を,技術として臨床に導入する”という初版からのコンセプトを踏襲した。
また,退院後の生活に大きくかかわる「歩行訓練・ADL訓練のすすめ方」を新設した。さらに,既存の項目についてもアップデートを行い,今日の臨床現場に即した内容を盛り込んだ。
脳卒中リハビリテーションの実践において根幹となる「理論と技術」を集約した本書をぜひとも参考にしてほしい。


序文

第3版 序文

 本書を最初に上梓したのは2013年であり,その3年後の2016年に改訂第2版を出版し,進化している脳卒中医療とリハビリテーション医学・医療の知見を盛り込んだ。そして3年余を経て,いっそう新しい知見を収載して改訂第3版を出版する運びとなった。急性期脳卒中医療では,主幹動脈閉塞に対する血栓回収療法のエビデンスが明らかになり,標準的な治療法となってきている。急性期脳卒中リハビリテーションでは,24時間以内の離床の有用性と安全性を企図した大規模RCTであるAVERT(A Very Early Rehabilitation Trial)において,早期離床群のアウトカムが不良であったことが2015年に明らかにされた。しかし翌2016年にはAVERTの年齢と重症度のサブ解析を行うことで,短時間で頻回の介入により,早期離床群における3カ月後のアウトカムは,対照群に比して良好である解析結果が報告されている。早期リハビリテーション開始時には,画一的な離床ではなく,層別化に基づいた離床のリハビリテーションプログラム立案の重要性を示唆している知見といえる。
 リハビリテーションにおいては,痙縮に対するボツリヌス治療は標準的治療として確立されつつある。またニューロモデュレーションとしての反復性経頭蓋磁気刺激(rTMS)では,非損傷側大脳半球運動野への低頻度rTMSのメタ解析結果などが明らかにされてきている。そうした流れも踏まえて,第3版では,各項の刷新とともに,ニューロリハビリテーション,ロボットを用いた理学療法,歩行練習のすすめ方の項を加えた。
 ロボット機器などに代表される新しい治療機器のリハビリテーション領域への導入は,一見魅力的ではある。しかし,脳卒中リハビリテーションのいかなるステージにおいて,どのように導入していくことが効果的であるのか,今後の臨床データの治療成績を検証していくことが求められている段階でもあるといえる。臨床に携わる理学療法のスタッフの的確な観察による評価が,その有用性の可否を判断するうえで重要となると思われる。
 「脳卒中,心臓病その他の循環器病対策基本法」が2018年12月に成立している。脳卒中リハビリテーション医療が,今日ほど質の評価を含めて注目されている時代はなかったといえる。本改訂第3版が,脳卒中医療とリハビリテーションに関与する関係者に利用されて,患者さんの回復に寄与することができれば幸甚である。

2019年3月
原 寛美
吉尾雅春
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目次

I 解剖生理学の知識
 大脳の構造と機能  渡辺雅彦
  大脳皮質
  海馬
  扁桃体
  大脳基底核
  大脳のその他の構造
 脳のシステム  渡辺雅彦
  神経系の機能的構成
  脳幹
  間脳
  中脳
  橋
  延髄
  小脳
  ニューロンの基本構造
  シナプスの基本構造
  ニューロンの細胞体
  樹状突起
  軸索
  神経伝達物質
  受容体
  シナプス可塑性
 脳の血管  中村 元
  はじめに
  脳血管の構造について
  脳の血管:動脈について
  各種脳血管:静脈について
  正常変異(破格)について
  脳血流量の調節
  脳血管や脳血流の評価法
  疾患との関連
  おわりに

II 脳卒中の病態と治療
 脳卒中の原因と病態  牧原典子,岡田 靖
  脳卒中の病型分類
  虚血性脳卒中
  脳出血
  くも膜下出血
  脳卒中のチーム医療と医療連携
 脳卒中の内科的治療  湯浅浩之
  はじめに
  脳卒中の病態
  脳卒中全般の一次予防
  脳卒中急性期とは
  脳梗塞の病型分類
  脳梗塞超急性期(発症4.5時間以内)の診療-救急外来にて
  rt-PA治療
  脳梗塞急性期の治療-急性期病院の病棟にて
  脳梗塞慢性期の治療(二次予防)-外来にて
  脳出血の内科的治療
  最後に
 脳卒中に対する外科治療  千田光平,小笠原邦昭
  はじめに
  高血圧性脳内出血
  脳動脈瘤
  脳動静脈奇形
  虚血性脳卒中
  おわりに
 脳卒中の反復性経頭蓋磁気刺激治療 rTMS とボツリヌス治療  原 貴敏,安保雅博
  はじめに
  経頭蓋磁気刺激療法(TMS)とは
  経頭蓋磁気刺激療法のリハへの応用
  ボツリヌス療法(BoNT-A療法)
  まとめ
 急性期から開始する脳卒中リハビリテーションの理論とリスク管理  原 寛美
  はじめに
  なぜ急性期からのリハビリテーションの開始が必要なのか?
  運動麻痺回復のステージ理論(3つの回復ステージ)
  随意運動の2つの運動制御系
  運動麻痺の回復を阻害するもの-ワーラー変性と痙縮-
  回復ステージ別のリハビリテーションプログラム
  ステージ理論に依拠したリハビリテーションプログラムを進めた症例の提示
  急性期リハビリテーションにおけるリスク管理
  早期離床の実際
  急性期脳卒中におけるベッドサイドリハビリテーション(離床)の方法
  まとめ
  
III 評価の知識
 ADLと総合評価  奥山夕子
  脳卒中の障害構造と評価
  評価の目的
  ADL評価
  総合評価
 運動機能検査  髙見彰淑
  運動機能障害の指標
  体幹機能(骨盤,頸部)障害の評価
  筋緊張の評価
  関節可動域測定
  筋力検査
  運動失調の検査
  バランス検査
  移乗・移動能力評価
  pushingの評価
  上肢機能検査
  脳卒中患者の姿勢バランスのみかた
 高次脳機能検査  網本 和,渡辺 学
  高次脳機能検査の準備
  全般性認知機能検査
  高次脳機能障害の検査
 動作(歩行)分析  大畑光司
  動作分析
  動作分析の基礎知識
  動作,歩行評価の実際
  まとめ
 画像からみた脳の障害と可能性  手塚純一
  運動線維系
  感覚線維系
  大脳小脳神経回路
  空間認知系
  姿勢調節系
  脳損傷画像の時間経過
  まとめ
  
IV 理論と理学療法
 脳卒中の早期運動療法  髙橋忠志,栗田慎也
  脳卒中における早期運動療法
  早期離床
  離床に関連するリスク管理
  中枢神経系理学療法の変遷
  ステージ理論に依拠した理学療法
  皮質脊髄路の興奮を高めるアプローチ
  上肢に対するアプローチ
  肩関節の保護
  歩行再建に対するアプローチ
  急性期病院における早期オーダーメイド長下肢装具作製の意義
  急性期病院でのオーダーメイドKAFO作製の実際
  Trousseau症候群への対応
  おわりに
 装具療法  吉尾雅春
  はじめに
  脳卒中患者の治療用装具
  脳卒中患者の装具療法の背景
  歩行の神経学的特性と歩行練習
  膝ロックの解除とカットダウン
  生活用装具への切り替え
  おわりに
 ロボットを用いた理学療法  渡邊亜紀
  はじめに
  ロボットアシスト歩行トレーニングの理論的背景
  ロボットを臨床で活かすためには
  ロボットスーツHAL
  Honda歩行アシスト
  歩行リハビリ支援ツールTree
  まとめ
 脳卒中患者の痛みと理学療法  吉尾雅春
  はじめに
  痛みを伴う肩関節と上肢
  痛みを伴う股関節前面と足趾
 回復期の運動療法  野口大助,濵崎寛臣
  回復期における脳卒中の運動療法の位置づけ
  運動療法の実際
  回復期から生活期へ引き継ぐ
  最後に
 歩行練習のすすめ方  増田知子
  中枢神経系の変化からみた脳卒中者の回復期歩行トレーニング
  脳卒中者の歩行にかかわる機能の理解
  回復期の歩行リハビリテーション
  歩行トレーニングの方法
  症例紹介
  KAFOからの離脱
  移動手段としての歩行の再建
 脳の可塑性と運動療法  森岡 周
  脳損傷後の機能回復メカニズム
  脳の可塑性の手続き-動物実験から-
  脳の可塑性の手続き-ヒトを対象にした脳イメージング研究から
  脳卒中後の運動機能回復に影響を与える要因
  脳の可塑性をもたらす運動学習プロセス
 CI療法  佐野恭子
  CI療法とは
  CI療法の理論的背景
  CI療法の実際
  CI療法の可能性
 バイオフィードバック療法  辻下守弘
  BFの基本原理
  片麻痺に対するBFの応用
  片麻痺に対するBFの課題と展望
 姿勢定位と空間認知の障害と理学療法  阿部浩明
  空間認知と垂直および正中正面判断の障害
  半側空間無視の姿勢異常と空間認知障害
  脳卒中後の特徴的姿勢定位障害と空間認知-contraversive pushing
  lateropulsion
 小脳系の理学療法  諸橋 勇
  はじめに
  小脳障害による症状
  脳血管障害による小脳系の運動障害の特徴
  小脳症状に対する理学療法アプローチのための基礎
  小脳系障害の理学療法評価およびアプローチの要点
  小脳系障害に対する理学療法アプローチの実際
  最後に
 脳卒中後痙縮のボツリヌス治療と理学療法  君浦隆ノ介
  はじめに
  脳卒中後痙縮とは
  脳卒中後痙縮のボツリヌス治療とは
  ボツリヌス治療後の「痙縮のリハビリテーション」
  おわりに
 ニューロリハビリテーション  松田雅弘
  ニューロリハビリテーションの幕開け
  ニューロリハビリテーションの基盤とした理論的背景
  ニューロリハビリテーションの発展に寄与した非侵襲的な脳機能画像分析
  ニューロリハビリテーションの概念を用いたリハビリテーションの展開
  再生医療とリハビリテーション
  電気刺激療法
  複数の手法を用いた併用療法の実際
  ニューロリハビリテーションの今後
 嚥下障害  内田 学
  脳卒中と摂食嚥下障害
  摂食嚥下障害の定義
  摂食嚥下障害の原因
  摂食嚥下障害を起こしやすい脳血管障害
  嚥下障害の検査
  脳血管障害における摂食嚥下練習
  脳血管障害患者における摂食・嚥下リハビリテーションの考え方
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