新NS NOW 17

脳動脈瘤

専門医になるための基本ポイント

脳動脈瘤

■担当編集委員 菊田 健一郎

定価 13,200円(税込) (本体12,000円+税)
  • A4判  176ページ  オールカラー,イラスト130点,写真330点
  • 2019年4月28日刊行
  • ISBN978-4-7583-1840-2

脳神経外科専門医を目指す若手医師必携,脳動脈瘤クリッピング術・外科的治療手技とその基本ポイント

No.17では,「脳動脈瘤」を取り上げた。
本書では,専門医を目指す若手医師に向け,脳動脈瘤に対するクリッピング術・外科的治療手技を解説。
経験豊かな執筆陣が,豊富なイラスト・写真とともにPitfall,Essential Techniques,さらにをAdvanced Techniquesを随所に交え,手技ならびにその基本ポイントを丁寧に紐解く書籍となっている。
これから脳神経外科専門医を目指す若手医師には必携の1冊である。

■シリーズ編集委員
森田明夫/伊達 勲/菊田健一郎


序文

 コイル塞栓術がまだ登場していなかった私たちが研修医時代は,脳神経外科医のメインの仕事はくも膜下出血の脳動脈瘤クリッピング術であった。この手術は手術の腕の差がはっきり予後の差として出る上,手技料も高く,しかも腕の良い外科医であれば2〜3時間で終わってもらえる研修医にとって嬉しい疾患であった。脳動脈瘤クリッピング術こそが一人前の脳神経外科医の象徴であり憧れであった。しかも,くも膜下出血は手術の腕も大切であったが,術後管理も重要な仕事であった。研修医にはスパズムを乗り切るという重要な任務が与えられ,カテコラミンや輸液で血圧とCVPを操作し,脳室や脳槽ドレナージ駆使して,患者の脳循環と脳圧をコントロールする術を身につけていった。毎日スパズムがいつ来るかと身構えながら過ごし,いざスパズムが生じたらPTAやパパベリン動注療法などに出撃し,血管内治療の初期教育を受けることもできた。うまくスパズム期を乗り切ると,研修医には水頭症に対するVPシャントや外減圧後の頭蓋形成術の手術の執刀チャンスが与えられ,バイポーラーの使い方や脳室穿刺など基本的外科技術を磨くことができた。そして,脳神経外科専門医試験に8月に合格すると,ご褒美として9月に破裂瘤のクリッピング術が部長より当てられた。初クリッピングの時には,仲間が手術室に集合し見守ってくれた。手術後は寿司屋で盛大な祝賀会が開催され,みんなで初クリッピングをお祝いしてくれた。この日初めて脳神経外科医として一人前になれた気がした。
 このように脳動脈瘤の手術は我々脳神経外科医に技術的にも精神的にも多くのものを与えてくれる手術教育の根幹であり,成長に必須のものといえる。また,脳動脈瘤手術は先人たちが絶え間なく技術革新し,我が国が世界を牽引しトップランナーであった。
 しかし,時代は様変わりした。大多数の動脈瘤が血管内治療で治療されるようになり,クリップは血管内治療で治療困難な動脈瘤に対するオプションとする時代となった。BA topの動脈瘤のクリッピング術などは治療をしたことはおろか,実際に見たことがない脳神経外科医も増えてきた。二刀流といっても自分に当たる症例を半分に分割して修練していくため,日本のように医療施設が多く症例集積がなされない国では,直達術のラーニングカーブの立ち上がりは昔よりさらに遅いものになっていると思う。我が国の次世代の脳動脈瘤の直達術者は,良い技術の良い外科医という意味では減少はおろか絶滅寸前と思われる。
 中国では一人の脳神経外科医が一種類の手術しか行わず,症例を集中させるシステムがある。そのため一人当たりの症例数は日本の十倍はある。彼らは,世界中から有名な外科医を招いて技術を学び,豊富な症例で猛烈なスピードでそれを習得している。
 普通にやっていては彼らに勝つことは困難である。個人的には,もはや次世代の直達術者は,これまでのように自然発生的に出てくるのを待っているのでは難しいと感じている。才能がありそうな若手を選んで,その人に直達術に専念するよう決めさせ,さらに症例を集中して育てなければならない時代に入ったと思う。さらに言うと,直達術を育てるためのハイボリュームセンターも必要と思われる。
 この「新NS NOW No.17」は,我が国を代表する脳動脈瘤手術のハイボリュームセンターで,若手脳神経外科医の育成にも力を注いでいらっしゃるエキスパートの皆様に執筆いただいた。ご多忙の中,かくも充実した内容の原稿を賜りましたことに心より御礼申し上げる。全体を見渡すと,これまで我が国が牽引してきた脳動脈瘤手術に関する技術的留意点があまねく記載されており,各先生の情熱を感じさせる。この教科書は脳動脈瘤の直達術者の最後の生き残り世代から,次世代の若手直達術者に送るエールとも言える。手術技術の伝承に少しでもお役にたてば編者としてこれに勝る喜びはない。

2019年3月
福井大学医学部脳脊髄神経外科教授
菊田健一郎
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目次

前交通動脈瘤クリッピング術(pterional approach / orbitocranial approach)  水成隆之
前交通動脈瘤クリッピング術(Interhemispheric approach)  中山若樹
内頚動脈-後交通動脈分岐部瘤のクリッピング術  波出石弘
内頚動脈前脈絡叢動脈分岐部および内頚動脈分岐部動脈瘤のクリッピング術  吉岡秀幸,ほか
中大脳動脈瘤クリッピング術  髙木康志
椎骨動脈-後下小脳動脈分岐部(VA-PICA)動脈瘤,後下小脳(PICA)動脈瘤クリッピング術  瀧澤克己
脳底動脈分岐部動脈瘤,脳底動脈-上小脳動脈分岐部動脈瘤クリッピング術(Extradural temporopolar approachを中心に)  森健太郎
脳底動脈分岐部動脈瘤,脳底動脈-上小脳動脈分岐部動脈瘤クリッピング術  幸治孝裕,ほか
傍鞍部内頚動脈瘤クリッピング術  堀内哲吉,ほか
大型中大脳動脈瘤,前大脳動脈瘤の外科的治療  井上智弘
大型・巨大内頚動脈瘤の外科的治療  伊達 勲,ほか
内頚動脈前壁動脈瘤の外科的治療  吉川雄一郎,ほか
大型・巨大高位脳底動脈瘤の外科的治療  菊池隆幸,ほか
大型・巨大椎骨動脈瘤の外科的治療  水谷 徹
解離性椎骨動脈瘤の外科的治療  太田仲郎,ほか

◆シリーズ わたしの手術記載
 ①増大傾向を示した未破裂内頚動脈瘤  出雲 剛
 ②血栓化した巨大右内頚動脈瘤  波出石弘
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