産婦人科手術
産婦人科手術 No.31
定価 7,700円(税込) (本体7,000円+税)
- B5判 216ページ 一部カラー,写真120点
- 2020年8月14日刊行
- ISBN978-4-7583-1766-5
序文
巻頭言
2020年2月22〜23日にかけ,メルパルク京都におきまして,第42回日本産婦人科手術学会を第8回日本婦人科ロボット手術学会と同時開催の形で行わせていただきました。京都での開催は,2012年に小西郁生先生が京都東急ホテルで第35回大会を開催されて以来でした。
今回は,学会自体の目的とは全然違うところで思い出に残る学術集会となりました。「コロナ感染症」です。さまざまな社会活動を中止するかどうかで大揺れしていた時期の開催であり,まさに当時,日本中で最後のタイミングで実開催された学会となりました。開催に当たっては,もちろん,中止,あるいはWeb開催も考えましたし,平松理事長をはじめ,多くの先生方のご助言を賜りました。最終的には感染予防策をさまざま講じ,懇親会は残念ながら中止,という形で何とか開催させていただきました。例年の半分も出席されないだろうと思いきや,600名を超える参加をいただき,逆に,この中から感染される先生が出たらどうしようと学会後も気が気ではありませんでしたが,幸いひとりの感染者もなく(のはず)終えることができました。出席いただいた先生方のご協力に心より感謝申し上げます。今はまだ,日本中が危機の真っ最中で感染症自体や活動自粛による社会的影響が深刻ですが,10年,20年経った後で,そうか,この時だったのだな,と思い出していただくためにも敢えて記させていただきました。現在,婦人科手術も多くの施設で減らさざるを得ない状態であり世界的に医療システムが重大な危機にあります。一方でWeb会議とか,これまでになかった形での社会活動がさかんになっており,診療も遠隔診療の流れが加速しそうです。手術にも中・長期には何らかの影響が出るでしょう。この危機が終わったあとのことは予測できませんが,new normalという言葉が言われており,医療もさまざまな不可逆的変化にさらされそうです。学会としてもしっかり時代の波を乗り越えていかなければならないと思います。
さて,学会ですが,今回のテーマは「温故知新」とさせていただきました。私自身も新し物好きでつい,新しいものが良いもの,と思いがちですが,実は歴史をしっかり勉強してみると,どの時代にも先達はその時代における最新技術・技術革新を目指して努力して来られ,その技術や考え方は驚くほど新しく,今にも通用するものだ,ということがわかります。われわれは常に前を向いて勇気を持って古い技術から脱却し,新しい技術を開発していかなければなりませんが,その過程で長年かけて培ってきた技術をきちんと取り入れていかなければ,結局,せっかく苦労して得たものを捨てて初めからやり直すという無駄になってしまいます。適切な取捨選択を行えるような精神の自由,ということを「温故知新」という言葉に込めました。学術集会がその趣旨に応えられたかどうか,わかりませんが,多くの先生から良いプログラムだった,と言っていただき,楽しんで帰っていただいたようで,ほっとしております。ありがとうございました。本書から学会の雰囲気を少しでも感じていただけたらと思います。
第42回日本産婦人科手術学会
第8回日本婦人科ロボット手術学会
会長 万代 昌紀
(京都大学大学院医学研究科器官外科学講座婦人科学産科学教授)
2020年2月22〜23日にかけ,メルパルク京都におきまして,第42回日本産婦人科手術学会を第8回日本婦人科ロボット手術学会と同時開催の形で行わせていただきました。京都での開催は,2012年に小西郁生先生が京都東急ホテルで第35回大会を開催されて以来でした。
今回は,学会自体の目的とは全然違うところで思い出に残る学術集会となりました。「コロナ感染症」です。さまざまな社会活動を中止するかどうかで大揺れしていた時期の開催であり,まさに当時,日本中で最後のタイミングで実開催された学会となりました。開催に当たっては,もちろん,中止,あるいはWeb開催も考えましたし,平松理事長をはじめ,多くの先生方のご助言を賜りました。最終的には感染予防策をさまざま講じ,懇親会は残念ながら中止,という形で何とか開催させていただきました。例年の半分も出席されないだろうと思いきや,600名を超える参加をいただき,逆に,この中から感染される先生が出たらどうしようと学会後も気が気ではありませんでしたが,幸いひとりの感染者もなく(のはず)終えることができました。出席いただいた先生方のご協力に心より感謝申し上げます。今はまだ,日本中が危機の真っ最中で感染症自体や活動自粛による社会的影響が深刻ですが,10年,20年経った後で,そうか,この時だったのだな,と思い出していただくためにも敢えて記させていただきました。現在,婦人科手術も多くの施設で減らさざるを得ない状態であり世界的に医療システムが重大な危機にあります。一方でWeb会議とか,これまでになかった形での社会活動がさかんになっており,診療も遠隔診療の流れが加速しそうです。手術にも中・長期には何らかの影響が出るでしょう。この危機が終わったあとのことは予測できませんが,new normalという言葉が言われており,医療もさまざまな不可逆的変化にさらされそうです。学会としてもしっかり時代の波を乗り越えていかなければならないと思います。
さて,学会ですが,今回のテーマは「温故知新」とさせていただきました。私自身も新し物好きでつい,新しいものが良いもの,と思いがちですが,実は歴史をしっかり勉強してみると,どの時代にも先達はその時代における最新技術・技術革新を目指して努力して来られ,その技術や考え方は驚くほど新しく,今にも通用するものだ,ということがわかります。われわれは常に前を向いて勇気を持って古い技術から脱却し,新しい技術を開発していかなければなりませんが,その過程で長年かけて培ってきた技術をきちんと取り入れていかなければ,結局,せっかく苦労して得たものを捨てて初めからやり直すという無駄になってしまいます。適切な取捨選択を行えるような精神の自由,ということを「温故知新」という言葉に込めました。学術集会がその趣旨に応えられたかどうか,わかりませんが,多くの先生から良いプログラムだった,と言っていただき,楽しんで帰っていただいたようで,ほっとしております。ありがとうございました。本書から学会の雰囲気を少しでも感じていただけたらと思います。
第42回日本産婦人科手術学会
第8回日本婦人科ロボット手術学会
会長 万代 昌紀
(京都大学大学院医学研究科器官外科学講座婦人科学産科学教授)
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目次
巻頭言 第42 回日本産婦人科手術学会 会長 万代昌紀
日本産婦人科手術学会のホームページで閲覧できる学術集会講演の動画一覧
■産科手術の真髄
直腸腟瘻・陳旧性会陰裂傷の修復 ~骨盤臓器脱の後腟壁形成を応用する手技~ 小辻文和
分娩時第4度会陰裂傷に対する修復術:排便障害を回避する術式の工夫 大原佑介
分娩に伴う会陰裂傷後の直腸腟瘻の治療 橋本京三
■ロボット手術を始めよう─良性手術と悪性手術 どのように始めるか?
当科でのロボット支援悪性腫瘍手術導入および治療成績 中山健太郎
当院での早期子宮体癌に対するロボット支援下手術(ダビンチSi, Xi およびX)導入の経験 吉岡信也
当センターにおける,婦人科腫瘍に対するロボット手術の導入後の課題と悪性腫瘍手術開始へのアプローチ 田中尚武
ロボット手術を安全に運用するには 伊東宏絵
■産科出血への対応
レセプト情報・特定健診等情報データベースを用いた産科危機的出血の全国動向調査 植田彰彦
産科危機的出血への対応 子宮温存の立場から 竹田 純
子宮摘出・compression suture の工夫 松永茂剛
産科出血への対応 子宮摘出の立場から 内田季之
■企画記事
「開腹手術,腹腔鏡下手術,ダヴィンチ支援下手術の割合」に関するアンケート調査 全国調査(2018 年) 田中京子
「子宮腺筋症手術」に関するアンケート調査全国調査(2016 ~ 2018 年) 鎌田泰彦
日本産婦人科手術学会のホームページで閲覧できる学術集会講演の動画一覧
■産科手術の真髄
直腸腟瘻・陳旧性会陰裂傷の修復 ~骨盤臓器脱の後腟壁形成を応用する手技~ 小辻文和
分娩時第4度会陰裂傷に対する修復術:排便障害を回避する術式の工夫 大原佑介
分娩に伴う会陰裂傷後の直腸腟瘻の治療 橋本京三
■ロボット手術を始めよう─良性手術と悪性手術 どのように始めるか?
当科でのロボット支援悪性腫瘍手術導入および治療成績 中山健太郎
当院での早期子宮体癌に対するロボット支援下手術(ダビンチSi, Xi およびX)導入の経験 吉岡信也
当センターにおける,婦人科腫瘍に対するロボット手術の導入後の課題と悪性腫瘍手術開始へのアプローチ 田中尚武
ロボット手術を安全に運用するには 伊東宏絵
■産科出血への対応
レセプト情報・特定健診等情報データベースを用いた産科危機的出血の全国動向調査 植田彰彦
産科危機的出血への対応 子宮温存の立場から 竹田 純
子宮摘出・compression suture の工夫 松永茂剛
産科出血への対応 子宮摘出の立場から 内田季之
■企画記事
「開腹手術,腹腔鏡下手術,ダヴィンチ支援下手術の割合」に関するアンケート調査 全国調査(2018 年) 田中京子
「子宮腺筋症手術」に関するアンケート調査全国調査(2016 ~ 2018 年) 鎌田泰彦
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日本産婦人科手術学会機関誌。特集はさまざまな産婦人科手術における「温故知新」
日本産婦人科手術学会機関誌。
2020年2月に東京で開催された「第42回日本産婦人科手術学会」の,主題「温故知新」から「産科手術の真髄」「ロボット手術を始めよう-良性手術と悪性手術 どのように始めるか?」「産科出血への対応」というテーマにて選出した論文や企画記事を掲載している。
本号の企画記事テーマ「『開腹手術,腹腔鏡手術,ダヴィンチ手術の割合』に関するアンケート調査」「『子宮腺筋症』に関するアンケート調査」。