東京医科大学方式
皮下鋼線吊り上げ法による
婦人科腹腔鏡手術
[Web動画付]
- サンプルページ
どなたでもご覧いただけます
定価 9,900円(税込) (本体9,000円+税)
- B5判 144ページ オールカラー,イラスト50点,写真100点,Web動画 21本/計137分
- 2016年4月28日刊行
- ISBN978-4-7583-1735-1
序文
何故,いま吊り上げ式腹腔鏡手術なのか?
腹腔鏡手術は,その低侵襲性により患者にとっては “優しい” 手術法と考えられているが,その一方で,術者になるには開腹手術の十分な経験に加え,2Dの術野と開腹手術とはまったく操作性が異なる手術器具に熟達する必要がある。この点において腹腔鏡手術は,術者にとっては決して “優しい” 手術とは言えない。日々の練習により,鉗子を自分の手のように動かすようになって初めて術者となり得る。
しかし,すべての術者が達人になるのは難しく,難度の高い手術にはそれに見合った高度の技術が要求されるのは当然である。近年,多くの優れた腹腔鏡用deviceの登場により,確かに手術は容易になってきた。しかし,年月を重ね確立された開腹手術とは異なり,安易に使用すると経験不足による合併症を招く危険性を常に孕んでいる。
昨今,腹腔鏡手術の医療事故が,社会的問題となっているのは周知の通りである。低侵襲手術である一方で,ひと度,合併症が生じると開腹手術に比べ重篤な状態に陥りやすいのが腹腔鏡手術である。われわれが「初めて吊り上げ法」を導入したきっかけは,盲目的穿刺による誤穿刺や気腹によるさまざまな合併症を回避して,より安全性な腹腔鏡手術を目指したことにあった。それ以来,あっという間に25年が過ぎようとしている。これまでに多くの改良が加わり,長い時を経てようやく基本形としての「皮下鋼線吊り上げ法」を用いた “1.5孔式腹腔鏡手術” が確立されたと考える。
吊り上げ法は,操作性・安全性・経済性に優れた方法であると以前より報告してきたが,実は最も特筆すべき利点は,従来の気腹法を用いた腹腔鏡手術に比べ,学習曲線が極端に短いことにあると考える。これは術者にとって “易しく優しい” 手術,つまり “やさしい” 手術であると言える。これにより十分な開腹手術の経験があれば,安全性を担保しながら容易に腹腔鏡手術を導入することができると考える。
医療機器や器具の目覚ましい進歩により,多くの術者が腹腔鏡手術を行わなければならない時代が到来しようとしている。しかし,開腹手術に比べ腹腔鏡手術のハードルが高いことは動かしようがなく,すべての術者が腹腔鏡手術の達人になることは不可能である。それでは,もしも,もっと楽に学べる方法があればどうであろうか?
私は,われわれの行っている「皮下鋼線吊り上げ式腹腔鏡手術」がまさにその方法であると確信している。 “1.5孔式腹腔鏡手術” は,いわゆるガラパゴス腹腔鏡手術である。ディスポーザブル製品をほとんど使わないことから,企業のサポートもなく,当教室にて独自に進化した経緯がある。導入以来,症例数は約5,000例を超え,14名の内視鏡技術認定医が誕生した。そして現在,後期研修医から上級医まですべての医局員が本法をマスターしているように,容易に習得できる手術方法となった。
このような思いから,腹腔鏡手術をなかなか習得できないでいる諸君のために,今回本書を作成することを思い立った。本書がこれから腹腔鏡手術を習得しようとする皆様のお役に立つことがあれば幸せである。
2016年3月吉日
東京医科大学産婦人科教授
伊坂 恵一
腹腔鏡手術は,その低侵襲性により患者にとっては “優しい” 手術法と考えられているが,その一方で,術者になるには開腹手術の十分な経験に加え,2Dの術野と開腹手術とはまったく操作性が異なる手術器具に熟達する必要がある。この点において腹腔鏡手術は,術者にとっては決して “優しい” 手術とは言えない。日々の練習により,鉗子を自分の手のように動かすようになって初めて術者となり得る。
しかし,すべての術者が達人になるのは難しく,難度の高い手術にはそれに見合った高度の技術が要求されるのは当然である。近年,多くの優れた腹腔鏡用deviceの登場により,確かに手術は容易になってきた。しかし,年月を重ね確立された開腹手術とは異なり,安易に使用すると経験不足による合併症を招く危険性を常に孕んでいる。
昨今,腹腔鏡手術の医療事故が,社会的問題となっているのは周知の通りである。低侵襲手術である一方で,ひと度,合併症が生じると開腹手術に比べ重篤な状態に陥りやすいのが腹腔鏡手術である。われわれが「初めて吊り上げ法」を導入したきっかけは,盲目的穿刺による誤穿刺や気腹によるさまざまな合併症を回避して,より安全性な腹腔鏡手術を目指したことにあった。それ以来,あっという間に25年が過ぎようとしている。これまでに多くの改良が加わり,長い時を経てようやく基本形としての「皮下鋼線吊り上げ法」を用いた “1.5孔式腹腔鏡手術” が確立されたと考える。
吊り上げ法は,操作性・安全性・経済性に優れた方法であると以前より報告してきたが,実は最も特筆すべき利点は,従来の気腹法を用いた腹腔鏡手術に比べ,学習曲線が極端に短いことにあると考える。これは術者にとって “易しく優しい” 手術,つまり “やさしい” 手術であると言える。これにより十分な開腹手術の経験があれば,安全性を担保しながら容易に腹腔鏡手術を導入することができると考える。
医療機器や器具の目覚ましい進歩により,多くの術者が腹腔鏡手術を行わなければならない時代が到来しようとしている。しかし,開腹手術に比べ腹腔鏡手術のハードルが高いことは動かしようがなく,すべての術者が腹腔鏡手術の達人になることは不可能である。それでは,もしも,もっと楽に学べる方法があればどうであろうか?
私は,われわれの行っている「皮下鋼線吊り上げ式腹腔鏡手術」がまさにその方法であると確信している。 “1.5孔式腹腔鏡手術” は,いわゆるガラパゴス腹腔鏡手術である。ディスポーザブル製品をほとんど使わないことから,企業のサポートもなく,当教室にて独自に進化した経緯がある。導入以来,症例数は約5,000例を超え,14名の内視鏡技術認定医が誕生した。そして現在,後期研修医から上級医まですべての医局員が本法をマスターしているように,容易に習得できる手術方法となった。
このような思いから,腹腔鏡手術をなかなか習得できないでいる諸君のために,今回本書を作成することを思い立った。本書がこれから腹腔鏡手術を習得しようとする皆様のお役に立つことがあれば幸せである。
2016年3月吉日
東京医科大学産婦人科教授
伊坂 恵一
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目次
なぜ,いま吊り上げ法による腹腔鏡手術なのか? 井坂惠一
総論:基本知識と基本手技
吊り上げ法による腹腔鏡(歴史,種類)
産婦人科における皮下鋼線吊り上げ法の導入
皮下鋼線吊り上げ法の利点・欠点
皮下鋼線吊り上げ法に必要な器具と周辺機器
適応疾患
麻酔
基本手技
1.5孔式腹腔鏡手術
その他の皮下鋼線吊り上げ法を用いた腹腔鏡手術
1孔式腹腔鏡手術
2.5孔式腹腔鏡手術
細孔式腹腔鏡手術
皮下鋼線吊り上げ法特有の合併症
教室における成績
新しい手術用器具の考案・開発
各論:実際の手術方法
卵巣腫瘍
皮様嚢腫
漿液性腫瘍
粘液性腫瘍
線維腫
妊娠合併卵巣腫瘍
子宮内膜症:チョコレート嚢胞
異所性妊娠(頸管妊娠を除く)
子宮筋腫
子宮筋腫核出術
子宮全摘術
子宮腺筋症
骨盤臓器脱
子宮体癌
オンラインでの動画視聴方法
収録動画一覧
総論:基本知識と基本手技
吊り上げ法による腹腔鏡(歴史,種類)
産婦人科における皮下鋼線吊り上げ法の導入
皮下鋼線吊り上げ法の利点・欠点
皮下鋼線吊り上げ法に必要な器具と周辺機器
適応疾患
麻酔
基本手技
1.5孔式腹腔鏡手術
その他の皮下鋼線吊り上げ法を用いた腹腔鏡手術
1孔式腹腔鏡手術
2.5孔式腹腔鏡手術
細孔式腹腔鏡手術
皮下鋼線吊り上げ法特有の合併症
教室における成績
新しい手術用器具の考案・開発
各論:実際の手術方法
卵巣腫瘍
皮様嚢腫
漿液性腫瘍
粘液性腫瘍
線維腫
妊娠合併卵巣腫瘍
子宮内膜症:チョコレート嚢胞
異所性妊娠(頸管妊娠を除く)
子宮筋腫
子宮筋腫核出術
子宮全摘術
子宮腺筋症
骨盤臓器脱
子宮体癌
オンラインでの動画視聴方法
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腹腔鏡手術をより簡単に行うために。気腹法ではないもう一つの腹腔鏡手術である皮下鋼線吊り上げ法を詳細に解説
操作性・安全性・経済性に優れた腹腔鏡手術の方法として,東京医科大学産科婦人科学教室で行われている皮下鋼線吊り上げ法を,詳細な手技の解説に加え,手術手技のストリーミング動画で学ぶことができる1冊。従来の気腹法に比べ合併症が少なく,かつラーニングカーブが短いこのもう一つの腹腔鏡手術手技を学ぶことは,難易度の高い腹腔鏡手術を習得するうえで,大きな助けとなる。