どう診て どう治す? 円錐角膜
定価 9,900円(税込) (本体9,000円+税)
- B5変型判 200ページ オールカラー,写真270点
- 2017年9月29日刊行
- ISBN978-4-7583-1630-9
序文
円錐角膜は,眼科医であれば誰でも知っている疾患です。しかし長い年月,私たち眼科医は,進行していく円錐角膜に対してハードコンタクトレンズで矯正を施すのみで,最終的に急性水腫,角膜移植の適応になるのを手をこまねいて見ていることしかできませんでした。さらに,角膜屈折矯正手術を施せば角膜拡張症という最悪の合併症を発症するために,円錐角膜症例にはハードコンタクトレンズ以外の屈折矯正の手段がほとんどない,という状態でした。
しかし,そのような時代はもう終わりました。屈折矯正手術の技術革新が円錐角膜治療にも数多くの発展をもたらし,そして,2003年に登場した角膜クロスリンキングにより円錐角膜は人為的に進行を停止させられる疾患になりました。円錐角膜も早期診断,早期介入が可能な時代になったのです。近年,海外の学会に参加すると,円錐角膜関連の演題数の多さに驚かされます。原因遺伝子の研究,発生機序に関する基礎研究,新しい治療法の開発と初期成績等,今まさに,円錐角膜診療は劇的な変化の時期を迎えていると言えます。
そして,もう1つの昨今の大きな世の中の変化として,インターネットの普及があげられます。インターネットの普及により一般の患者さんの情報リテラシーが高くなり,英語のウェブサイトにアクセスして情報を得ることのできる若者も増えてきました。しかし,一人一人の患者さんがインターネット上に氾濫する多くの情報の中から,自分に最も適した方法を自分で選ぶことはなかなか難しいことです。個々の患者さんの状態を客観的に判断し,その人にとって適切な治療を選択しアドバイスをすることは,インターネットの時代とはいえ,眼科医にしかできないことでしょう。
そこで本書は,円錐角膜に関する現時点における最新の情報をお伝えすることを目的に企画しています。基礎的なことから,診断方法,様々な手術の適応と実際,そしてコンタクトレンズ処方に至るまで,10年前とは異なってきた円錐角膜に関連する最新の知見を,全国のエキスパートの先生方にわかりやすくまとめていただいています。あまりに変化が早いために,治療法の中には国内での承認や保険収載が追いついていないものも複数ありますが,そのような治療に関しても余すことなく章を作り詳しい解説をしていただきました。円錐角膜治療は今後もまた変化・発展していくと推測されますが,2017年現在の標準的な治療法を知るための参考書としてご活用いただければ幸いです。
最後に,本書の企画から編集までご尽力いただいたメジカルビュー社の吉川みゆき氏,榊原優子氏に心より感謝申し上げます。
2017年8月
島㟢 潤
前田直之
加藤直子
しかし,そのような時代はもう終わりました。屈折矯正手術の技術革新が円錐角膜治療にも数多くの発展をもたらし,そして,2003年に登場した角膜クロスリンキングにより円錐角膜は人為的に進行を停止させられる疾患になりました。円錐角膜も早期診断,早期介入が可能な時代になったのです。近年,海外の学会に参加すると,円錐角膜関連の演題数の多さに驚かされます。原因遺伝子の研究,発生機序に関する基礎研究,新しい治療法の開発と初期成績等,今まさに,円錐角膜診療は劇的な変化の時期を迎えていると言えます。
そして,もう1つの昨今の大きな世の中の変化として,インターネットの普及があげられます。インターネットの普及により一般の患者さんの情報リテラシーが高くなり,英語のウェブサイトにアクセスして情報を得ることのできる若者も増えてきました。しかし,一人一人の患者さんがインターネット上に氾濫する多くの情報の中から,自分に最も適した方法を自分で選ぶことはなかなか難しいことです。個々の患者さんの状態を客観的に判断し,その人にとって適切な治療を選択しアドバイスをすることは,インターネットの時代とはいえ,眼科医にしかできないことでしょう。
そこで本書は,円錐角膜に関する現時点における最新の情報をお伝えすることを目的に企画しています。基礎的なことから,診断方法,様々な手術の適応と実際,そしてコンタクトレンズ処方に至るまで,10年前とは異なってきた円錐角膜に関連する最新の知見を,全国のエキスパートの先生方にわかりやすくまとめていただいています。あまりに変化が早いために,治療法の中には国内での承認や保険収載が追いついていないものも複数ありますが,そのような治療に関しても余すことなく章を作り詳しい解説をしていただきました。円錐角膜治療は今後もまた変化・発展していくと推測されますが,2017年現在の標準的な治療法を知るための参考書としてご活用いただければ幸いです。
最後に,本書の企画から編集までご尽力いただいたメジカルビュー社の吉川みゆき氏,榊原優子氏に心より感謝申し上げます。
2017年8月
島㟢 潤
前田直之
加藤直子
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目次
Ⅰ 診療前の基礎知識
定義,診断基準,重症度 島﨑 潤
病因と病理 加藤直子
疫学 許斐健二
合併する全身疾患 土至田 宏
円錐角膜は見逃されやすい( SILENT DISEASE) 井手 武
Ⅱ 診断
視力検査 阿曽沼早苗,高 静花
細隙灯顕微鏡検査 脇舛耕一
角膜形状
トポグラフィー 糸井素啓
トモグラフィー 髙橋 綾,山口剛史
波面収差解析 湖﨑 亮
角膜生体力学特性 前田直之
屈折矯正手術でのスクリーニングの重要性 根岸一乃
Ⅲ 治療
アレルギー・アトピーの治療 加藤直子
コンタクトレンズ処方
球面ハード 東原尚代
多段カーブハード 糸井素純
カスタム・ハード 森 秀樹
ピギーバックレンズシステム 佐野研二
強膜レンズ 吉野健一
角膜クロスリンキング 愛新覚羅 維
phakic IOL 小島隆司
角膜内リング 荒井宏幸
深層角膜移植 佐竹良之
全層角膜移植 天野史郎,井上賢治
白内障手術
円錐角膜に対するIOL度数計算 神谷和孝
トーリックIOLの適応 福岡佐知子
急性角膜水腫の治療 宮井尊史
続発性角膜アミロイドーシスの治療 戸田良太郎
Ⅳ 類縁疾患と鑑別診断
ペルーシド角膜辺縁変性 前田直之
keratectasia 戸田郁子
コンタクトレンズによる角膜変形 平岡孝浩
鑑別診断 五藤智子
定義,診断基準,重症度 島﨑 潤
病因と病理 加藤直子
疫学 許斐健二
合併する全身疾患 土至田 宏
円錐角膜は見逃されやすい( SILENT DISEASE) 井手 武
Ⅱ 診断
視力検査 阿曽沼早苗,高 静花
細隙灯顕微鏡検査 脇舛耕一
角膜形状
トポグラフィー 糸井素啓
トモグラフィー 髙橋 綾,山口剛史
波面収差解析 湖﨑 亮
角膜生体力学特性 前田直之
屈折矯正手術でのスクリーニングの重要性 根岸一乃
Ⅲ 治療
アレルギー・アトピーの治療 加藤直子
コンタクトレンズ処方
球面ハード 東原尚代
多段カーブハード 糸井素純
カスタム・ハード 森 秀樹
ピギーバックレンズシステム 佐野研二
強膜レンズ 吉野健一
角膜クロスリンキング 愛新覚羅 維
phakic IOL 小島隆司
角膜内リング 荒井宏幸
深層角膜移植 佐竹良之
全層角膜移植 天野史郎,井上賢治
白内障手術
円錐角膜に対するIOL度数計算 神谷和孝
トーリックIOLの適応 福岡佐知子
急性角膜水腫の治療 宮井尊史
続発性角膜アミロイドーシスの治療 戸田良太郎
Ⅳ 類縁疾患と鑑別診断
ペルーシド角膜辺縁変性 前田直之
keratectasia 戸田郁子
コンタクトレンズによる角膜変形 平岡孝浩
鑑別診断 五藤智子
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眼鏡で矯正できないその視力低下は円錐角膜かも? 早期発見・治療・専門医への紹介のために
日本初,円錐角膜の診断治療に特化した書籍。主に若年層において眼鏡で矯正できない視力低下,乱視症例などに潜む円錐角膜を早期に発見し,適切なタイミングで専門医に紹介するために必要な基礎知識,診断のコツ,治療のポイントを,円錐角膜のエキスパートが解説。画像診断やコンタクトレンズ処方,眼内レンズ処方などでは具体的な症例を呈示しながら,前眼部OCT,角膜トポグラフィーや波面形状解析などの検査所見を豊富に掲載し解説している。