どう診て どう治す? 網膜剥離
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定価 14,300円(税込) (本体13,000円+税)
- B5変型判 256ページ オールカラー,イラスト50点,写真400点
- 2016年3月30日刊行
- ISBN978-4-7583-1621-7
序文
手術前に手術の流れを考えること,いわゆる「手術戦略」をたてることは,手術に万全の準備をするために大切です。白内障手術は,各手術手技の順番などが比較的定まっているので,手術の流れがパターン化しやすく,パターン認識によって安全に効率よく手術を遂行するために多くの工夫がなされてきました。一方,網膜剥離の手術は,その病態のバリエーションが広く,合併症の種類も多いことから,パターン化しにくい難点があります。近年の硝子体手術の進歩によって,網膜剥離に対する硝子体手術の適応は拡大し,以前よりは手術の流れは単純化してきていますが,それでも剥離の形態や裂孔の大きさ,増殖性変化の有無などによって注意すべき手術操作のポイントは異なります。また,依然として強膜バックリング手術を適応すべき病態も多く,術者による手術手技のアプローチは硝子体手術よりもさらに多彩です。したがって,網膜剥離治療にあたって手術前に手術戦略を練ることは,手術実施と同様に治療成績向上のために重要になります。そして,手術戦略どおりに手術が行われて,網膜が綺麗に伸展復位し,明るくなったと喜ぶ患者さんの笑顔を前にすることが,術者にとって大きなやりがいになるのです。
網膜剥離に対して手術戦略を効率よくたてるためには,病態をいくつかに区分して整理することが役立ちます。しかし,網膜剥離の全体像を写真などで撮影することが難しかったため,具体例を客観的に表現することがなかなかできませんでした。眼底チャートによる解説書はありましたが,眼底チャートを記載すること自体に術者による力量に差があり,初心者にとって経験を積まないと各症例の特徴を把握しにくいことも少なくありませんでした。この点に関して,最近の超広角眼底写真などの画像検査の進歩で網膜剥離の病態を客観的に表現する手段が広がり,大いに改善してきました。そこで本書では,さまざまなタイプの網膜剥離をできるだけ広角写真などを利用しながら簡潔に呈示して,各病態に対する治療戦略や経過を具体的に記載するようにしました。できるだけ手術治療に対峙する現場の臨場感を出すために,杏林アイセンターの網膜硝子体手術を担当する医師に,各症例に対する手術計画などを気負わずに率直に記載するように依頼しました。単一施設での手術法ですので,手術手技などに偏りがみられるかもしれませんし,手術戦略に関しては,読者である先生の方がより良いことを考えられるのかもしれません。しかし,具体例を思い浮かべながら担当医の記載と先生の考えを比較していただくことが,読者の先生にとっても手術向上につながるのではないかと考えます。
本書に関わる著者は,杏林アイセンターの網膜硝子体グループの同志ですが,年間500例以上の網膜剥離手術に対応しています。彼らの経験の一端が本書を介して網膜剥離診療の一助に生かされれば幸いです。そして,本書をアイセンター網膜硝子体グループの礎を築いた故樋田哲夫先生に捧げたいと思います。
最後に,画像検査を担当した眼科検査員諸氏,また編集にご尽力いただいたメジカルビュー社の吉川みゆき氏に深謝します。
2016年2月26日
平形明人
井上 真
網膜剥離に対して手術戦略を効率よくたてるためには,病態をいくつかに区分して整理することが役立ちます。しかし,網膜剥離の全体像を写真などで撮影することが難しかったため,具体例を客観的に表現することがなかなかできませんでした。眼底チャートによる解説書はありましたが,眼底チャートを記載すること自体に術者による力量に差があり,初心者にとって経験を積まないと各症例の特徴を把握しにくいことも少なくありませんでした。この点に関して,最近の超広角眼底写真などの画像検査の進歩で網膜剥離の病態を客観的に表現する手段が広がり,大いに改善してきました。そこで本書では,さまざまなタイプの網膜剥離をできるだけ広角写真などを利用しながら簡潔に呈示して,各病態に対する治療戦略や経過を具体的に記載するようにしました。できるだけ手術治療に対峙する現場の臨場感を出すために,杏林アイセンターの網膜硝子体手術を担当する医師に,各症例に対する手術計画などを気負わずに率直に記載するように依頼しました。単一施設での手術法ですので,手術手技などに偏りがみられるかもしれませんし,手術戦略に関しては,読者である先生の方がより良いことを考えられるのかもしれません。しかし,具体例を思い浮かべながら担当医の記載と先生の考えを比較していただくことが,読者の先生にとっても手術向上につながるのではないかと考えます。
本書に関わる著者は,杏林アイセンターの網膜硝子体グループの同志ですが,年間500例以上の網膜剥離手術に対応しています。彼らの経験の一端が本書を介して網膜剥離診療の一助に生かされれば幸いです。そして,本書をアイセンター網膜硝子体グループの礎を築いた故樋田哲夫先生に捧げたいと思います。
最後に,画像検査を担当した眼科検査員諸氏,また編集にご尽力いただいたメジカルビュー社の吉川みゆき氏に深謝します。
2016年2月26日
平形明人
井上 真
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目次
1 画像検査と網膜剥離
2 裂孔の位置,剥離の型による分類
3 治療戦略のパターン
4 各術式の手順
強膜バックリング手術
小切開硝子体手術(MIVS)
増殖性硝子体網膜症(PVR)の術式の基本
眼内タンポナーデ物質の選択
5 網膜剥離の病型別診療
格子状変性巣内の萎縮性円孔による網膜剥離
格子状変性巣内の萎縮性円孔による網膜剥離(陳旧例)
格子状変性巣内の円孔による網膜剥離(後部硝子体剥離合併例)
多発円孔による網膜剥離(FEVRその1)
多発円孔による網膜剥離(FEVRその2)
多発円孔による網膜剥離(強度近視眼)
巨大な萎縮性円孔による網膜剥離
鋸状縁断裂による陳旧性網膜剥離
鋸状縁断裂による網膜剥離(アトピー性皮膚炎)
鋸状縁断裂による網膜剥離(外傷性)
眼球破裂による外傷性毛様体裂孔網膜剥離
外傷後の網膜壊死病変の裂孔による網膜剥離
高齢者の格子状変性巣内円孔による網膜剥離
上方弁状裂孔による網膜剥離
上方弁状裂孔による胞状網膜剥離(その1)
上方弁状裂孔による胞状網膜剥離(その2)
下方弁状裂孔による網膜剥離
強度近視眼に合併する遊離網膜弁を伴った裂孔による網膜剥離
多発裂孔による網膜剥離(巨大裂孔合併)
多発裂孔による網膜剥離(強度近視眼)
硝子体出血合併の多発裂孔による網膜剥離
硝子体出血合併の網膜剥離(LASIK眼)
硝子体出血合併の網膜剥離(新鮮例)
硝子体出血合併の網膜全剥離
脈絡膜剥離合併の網膜剥離
黄斑裂孔による網膜剥離
後極裂孔による網膜剥離(その1)
後極裂孔による網膜剥離(その2)
網膜静脈分枝閉塞症に続発した網膜剥離
巨大裂孔網膜剥離(アトピー性皮膚炎)
巨大裂孔網膜剥離(LASIK眼)
巨大裂孔網膜剥離(強度近視眼)
先天性白内障術後無水晶体眼網膜剥離
裂孔不明の全剥離
周辺部小裂孔による網膜全剥離
増殖性硝子体網膜症(P-PVR)
増殖性硝子体網膜症
予防的網膜光凝固後の網膜剥離
外傷性網膜壊死部への光凝固後の網膜剥離
再手術:網膜剥離術後再剥離
再手術:硝子体手術後の網膜剥離
Coats病に合併する滲出性網膜剥離
サラソタに戻りたい人達の座談会
超広角と網膜剥離診断
バックル手術,黄斑円孔網膜剥離手術
MIVS時代のRRD手術
PVRに対する治療,手術手技
長年の経験を踏まえ将来の網膜剥離診療を考える
2 裂孔の位置,剥離の型による分類
3 治療戦略のパターン
4 各術式の手順
強膜バックリング手術
小切開硝子体手術(MIVS)
増殖性硝子体網膜症(PVR)の術式の基本
眼内タンポナーデ物質の選択
5 網膜剥離の病型別診療
格子状変性巣内の萎縮性円孔による網膜剥離
格子状変性巣内の萎縮性円孔による網膜剥離(陳旧例)
格子状変性巣内の円孔による網膜剥離(後部硝子体剥離合併例)
多発円孔による網膜剥離(FEVRその1)
多発円孔による網膜剥離(FEVRその2)
多発円孔による網膜剥離(強度近視眼)
巨大な萎縮性円孔による網膜剥離
鋸状縁断裂による陳旧性網膜剥離
鋸状縁断裂による網膜剥離(アトピー性皮膚炎)
鋸状縁断裂による網膜剥離(外傷性)
眼球破裂による外傷性毛様体裂孔網膜剥離
外傷後の網膜壊死病変の裂孔による網膜剥離
高齢者の格子状変性巣内円孔による網膜剥離
上方弁状裂孔による網膜剥離
上方弁状裂孔による胞状網膜剥離(その1)
上方弁状裂孔による胞状網膜剥離(その2)
下方弁状裂孔による網膜剥離
強度近視眼に合併する遊離網膜弁を伴った裂孔による網膜剥離
多発裂孔による網膜剥離(巨大裂孔合併)
多発裂孔による網膜剥離(強度近視眼)
硝子体出血合併の多発裂孔による網膜剥離
硝子体出血合併の網膜剥離(LASIK眼)
硝子体出血合併の網膜剥離(新鮮例)
硝子体出血合併の網膜全剥離
脈絡膜剥離合併の網膜剥離
黄斑裂孔による網膜剥離
後極裂孔による網膜剥離(その1)
後極裂孔による網膜剥離(その2)
網膜静脈分枝閉塞症に続発した網膜剥離
巨大裂孔網膜剥離(アトピー性皮膚炎)
巨大裂孔網膜剥離(LASIK眼)
巨大裂孔網膜剥離(強度近視眼)
先天性白内障術後無水晶体眼網膜剥離
裂孔不明の全剥離
周辺部小裂孔による網膜全剥離
増殖性硝子体網膜症(P-PVR)
増殖性硝子体網膜症
予防的網膜光凝固後の網膜剥離
外傷性網膜壊死部への光凝固後の網膜剥離
再手術:網膜剥離術後再剥離
再手術:硝子体手術後の網膜剥離
Coats病に合併する滲出性網膜剥離
サラソタに戻りたい人達の座談会
超広角と網膜剥離診断
バックル手術,黄斑円孔網膜剥離手術
MIVS時代のRRD手術
PVRに対する治療,手術手技
長年の経験を踏まえ将来の網膜剥離診療を考える
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本書は網膜剥離の診断と治療のコツを解説する実用的内容の書籍である。
昨今のOCTや広角観察できる眼底撮影の普及により,それまでは診断しきれず症状の類推しかできなかった剥離が明確にとらえられるようになった。本書ではまず鑑別診断,確定診断を正確に行えるコツをしっかり伝え,それを踏まえたうえでの治療法を実際に示してある。
治療方針決定の要となる検査所見は鮮明に大きく掲載し,その典型的な特徴,他の病型との鑑別点を明確に見せ,そのうえでどういった手術法,治療を施すのがベター,ベストなのかが解説されている。